恋愛詩集「恋詩織」        多聞の作品集へ



慕    情



もう引き帰せない歌方は
愛しき人の名前をうたう
ふるさとへ想いをかけて

石畳の見知らぬ町
行き止まりの小路
月明かりが濡らす

まるで彼をいざなうように


窓を叩いて泣いたひと
切ない肩で別れた夜を
今日も舞台にしていよう

船が行き交う波止場町
酒場の喧騒に隠れて
今日も詩を奏でいる

まるで償いの作業のように


ほんのつかのま夢を見て
まばたきほどの夢を見て
酒にまかせて奏でいる

愛する者に幸いあれと
旅立つ船へ願いをかける

もう引き帰せない歌方は
愛しき人の名前をうたう
なみだを酒にひたしつつ



2002・08・12   TAMON



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