イルカの多様な生態を
紹介する3カ所の代表ロケ地
 この映画の主なロケ地となったのは、バハマ諸島のグレートアバコ島東海岸沖に浮かぶ小島エルボー・キーにある、小さな港町ホープタウン。この熱帯の楽園のよな町を拠点に、若い海洋生物学者キャサリン・ダジンスキー博士は、自ら考案したステレオ録音が可能な水中ビデオ装置を使って、バハマ諸島海域に生息する大西洋マダライルカの音声と行動を記録し、彼らのコミュニケーションについての研究を行っている。
 チューチュー、キーキー、ギャーギャー、ヒューヒュー、カチッカチッという特徴的な音の組み合わせによる複雑な合図。相手に自分を認知させるための音声信号や、威嚇や攻撃のときの行動・・・。これまでの彼女の研究でわかったことは多い。年齢、性別、個体間の関係がそれぞれのメッセージに影響を与えているかなどの研究も行い、子どものイルカのほうが成長したイルカよりも多くの音を発するという、人間にも共通するような事実も発見している。
 
 この作品のなかで最も情緒的に描かれているのが、タークス=カイコス諸島沖に棲むジョジョという名のバンドウイルカとナチュラリストのディーン・バーナルの交流を描いたシーンだ。
 ジョジョは、群から離れ一頭で暮らす「はぐれイルカ」と呼ばれるイルカで、人間との交流を求めるような行動を示す珍しいイルカとして知られている。そんなジョジョとディーンは、15年に渡り一緒にタークス=カイコスの岩礁を泳ぎ、一度ならずお互いの命を救い合い、ディーンが「信頼できる友」と呼ぶ関係を築いてきた。
あるシーンでは、海中でディーンと向き合ったジョジョが、ディーンが腕を前後に動かすのを、胸びれを使って、まるで鏡を覗いているかのようにまねる。そんな彼らの姿は、人間とイルカという種を越えて交わされる美しいコミュニケーションとして、観客の心を揺さぶるだろう。
 
 毎夏、イワシ大群を求めてアルゼンチンのパタゴニア・バルデス半島沿岸に集まるハラジロカマイルカは、自然界で見られるもっとも素晴らしい光景のひとつとさえいわれるジャンプやダイビングを惜しげもなく披露する。
そして「ドルフィン」では、そんな彼らが群遊する魚を数頭の仲間で力を合わせて追いつめ、順番に採食するという、素晴らしい採食テクニックを初めて映像に収めることに成功した。独特の鳴き声を発し、仲間同士サインを交わしながらタイミングを計る様子が克明に記録された映像は、キャサリンや彼女の恩師でもあるベアーンド・ワージック博士らの研究資料としても価値あるものとなった。バハマの穏やかな海とは対照的な、荒々しい風が吹きつける冷たい海に生息するハラジロカマイルカの生態は、イルカがまぎれもなく野生動物であるということを見るものに印象付けるに違いない。
2000年アメリカ作品/上映時間40分
日本語版ナレーション:キャサリン・ダジンスキー/渡辺 徹