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第11話
「デイドリーム」
魔女はかすみとリンを、さらにもうひとつ奧の部屋へ招くと、
ぱちりと指を鳴らした。
ごっ、と重々しい音をさせて1メートル四方ほどの床板が持ち上がり、そこから地下への階段が続いているのが見える。
かすみとリンは魔女をみつめる。
リンが尋ねる。
「これは?」
しかし答えたのは、ふたりの背後に付き従っていたコーネルだ。
「抜け穴でございます。表はグラビトン一家の者に張られていますものですから。出口にはフライヤーが用意してございますので、それで遺跡まで参りましょう」
「張られてるって・・・なぜ?」
「《紅い天使》の到着を待って後を付け、レッキー様の居場所を知ろうと躍起なのでございます」
「そういうことさね。今までのところは隠しおおせてるけどねぇ」
と、これはマダムジュジュ。
「なるほどね」
リンが頷くと、
「ではどうぞ」
コーネルはそう言って先に立って階段を下りて行く。
そのあとを屈託無く付いて行くかすみ。
しんがりをリンが務める。
「あ、そうじゃそうじゃ、ちょいとお待ち」
魔女がリンを呼び止める。
「情報をひとつあげようかいの。なに、これはサービスじゃ、遠慮することは無い」
足を止めたリンに
「《蒼き死神》、ついさっき着いたようじゃぞ。いま、河をのぼってこっちへ向かっておるところじゃ。せいぜい用心するんじゃな」
楽しんでいるような口ぶりだ。
「ありがと」 リンは棘を含ませて答える。 「マダムジュジュ、あなたは一緒に来ないの?」
「ふぉっふぉっ、残念じゃな。一緒に行きたいのは山々じゃが、ワシも仕事があるでな。これでも人気占い師じゃで」
鼻白む思いのリンをよそに、
ぱちり、
魔女が指を鳴らすとリンの頭上で床板が閉じ始め、すぐに魔女の姿を視界から消し去ってしまう。
がこん、と思い余韻を残して扉が閉まる。
「なーにが!」
リンは右手の人差し指と小指だけを立てて閉じた入り口に向かって、ぐっと差し出す。
宇宙船乗りたちの間で広く使われる 「くたばりやがれ」 のサインだ。
「まー、そう言わないで」
階段の下でかすみが苦笑を浮かべてリンを見上げる。
表情の乏しいかすみだ。
それが苦笑だと判るのはリンくらいのものだろう。
「だって・・・」
口の中でもごもご言いながら、かすみとコーネルが待ち受ける地下室に降りて行く。
そこは3メートル四方ほどの小さな部屋だった。
灰色のセラパネルが張られただけの味も素っ気もない小部屋で、今降りてきた階段と、あとは何処へ続くものやら人ひとり通れる程度の通路が3方に向かって開いている。
照明はところどころに埋め込まれた発光パネルが、ぼうっと足元を照らし出している。
「こちらへ」
コーネルが通路のひとつを選んで歩き出し、てとてと と続くかすみ。
「よくこんなもの街の下に作れたわね」
リンが後に続きながら軽い驚きを込めて述懐を漏らすと
「蛇の道は蛇と申しますからね」
コーネルが訳知り顔に答えた。 (リンからその顔は見えなかったけれど)
なるほど、いろいろツテがあるわけだ。裏の世界にもいろんな力関係があるらしいと、リンにもなんとなく想像はつく。
「それよりさっきの聞いた? 《蒼き死神》がこっちに向かってるってマダムジュジュが言ってたけど?」
前を歩くかすみのかたちの良い尻がくりくり動くのを見ながらリンが言う。
かすみは振り返ることなく、歩きながらリンに答える。
「うん、知ってた」
「知ってた???」
知ってたってどういう意味?
聞こえてたっていう意味?
それとも――?
リンが当惑していると、かすみはくるっと振り向いた。
紅いお下げと黄色いリボンがふわっと踊る。
今朝、リンが結ってあげたものだ。
「うん、知ってたよ、ゾーンフェルドたちが到着したことも。こっちへ向かっていることも」
「どうやって――?」
かすみがコミュニケータを使うところなど見た覚えがない。
だいいち、コミュバイザーはリンが預かったきりだ。
ずっと一緒だったし、《天使の翼》と連絡が取れた筈が無い。
なのにどうやって?
その疑問を口に出そうとしたとき、
「さすがレイ様」
コーネルが賛嘆をこめてそう呟いた。
瞬間!
かすみの肢体が紅くかすんだ。
だんっ!
激しい音と共に、コーネルはかすみに通路の壁に叩きつけられ、その口には黒い単分子ブレードを押し込まれている。
かすみの、またも電光石火の技だった。
左腕と肩だけで、自分より遙かに背の高い半植物人間のからだをおさえこんでいる。
紅いお下げがまだ、振り子のように揺れて踊っている。
ブラックブレードはただ口に突っ込んだだけだった。まだ。
まだ斬ってはいない。
刃先を口に突っ込んだだけで止めているが、ほんのわずか動かすだけで半植物人の頭部を苦もなく切り刻む事が可能だ。
「コーネル・・・」
まるで恋人の前で漏らす熱い吐息のように甘い声でかすみが囁く。
それだけにかえって不気味な響きがある。
「おまえとの付き合いは長い。だがこれで2度目だ。3度目は無い」
それは紛れもない死の宣告――執行猶予つきの――だった。
あうあう・・・と言葉にならない声をあげてコーネルが、口が傷つくのも構わずに激しく頷く。
そんな様子をリンはわけの判らないまま見つめている。
なにがかすみの逆鱗に触れたのか?
そんな怒るようなことをこの半植物人は口にしたろうか?
『さすがレイ様』――コーネルはそう言ったか?
レイとは《零》のことだろうか?
それが、かすみの気に障った?
どういうことだろう?まるで意味がわからない。
コーネルがかすみを《零》と呼んだことも、かすみがそれで怒ったことも。
そのとき、通路に甘い香りがふわっと広がった。
コーネルの冷や汗の匂いだった。
「あ゛・・・」
鼻腔をうつ甘い香りに、リンはショックの呻きを漏らす。
だってやっぱり、それはさっきのお茶の香りととても良く似ていたから・・・。
※
ショウはもううんざりしていた。
何を好きこのんでこの炎天下に占い婆さんの見張りなんかしていなければならないのか。
もうとっくにお昼をまわり、お茶の時間さえ過ぎている。
通りを行き過ぎる人々は、ふてくされたように塀に寄りかかっているショウなんかには見向きもしない。
あまりの情けない境遇に涙も出やしない。
暑いし喉は乾くし腹は減るし。
朝からずっとマダムジュジュの占い館を見張っているが、人の出入りはわずかに1度。
そりゃぁそうだろう。
まだ陽は高い。営業時間は陽が暮れてからだ。
1度の出入りは1時間ほど前。
2人組の女が入って行った。
入ったきり、まだ出てこない。
怪しいやつらを見かけたら連絡しろと言われているが、あのふたりはふたりがふたり、とびっきりの美少女だった。
美少女は怪しいだろうか?
いや、怪しくない。
もともと占いなんて女子供のものだ。
そこへ女の2人連れが入って行ったところで怪しいことなどひとつも無い。
わざわざ連絡するには値しない。
当然の結論だ。
ショウはもう14才。
自他共に認める立派な 「男」 である。
・・・いや、他は認めてないかもしれないが、少なくとも自分はそう認めている。
男たる自分が自分を男と強く認めているのだからこれはもう立派に男以外の何物でもあるまい。
ゆくゆくはグラビトン一家の大患部。・・・いや大幹部。
明日を信じて今日も使いっ走りの見張り役。
けどきっと。
これをこなせば次はもっと何かこう、未来の大幹部に相応しい仕事をさせて貰えるに違いない。
だから。
暑いし腹も減ったし喉も乾いてるしでうんざりだけど、男たるもの耐えに耐え、今日のところは見張りを続けるしか無いのだった。
実際、自分てヤツはつくづく偉いヤツだと、ショウは思う。
さっき、例の二人組の美少女が来る少し前、通りの向こうで撃ち合いだか斬り合いだか、果たし合いみたいな真似があったらしい。
うお〜〜〜、見に行かなきゃ!!
これはもう男たる者、本物の斬った張った、ナマの喧嘩は後学のためにも絶対見ておくべきなのだが、これまた未来の大幹部として耐えに耐え、ぐっとコラエた程なのである。
自分のあまりの男っぷりに感動の涙が一筋二筋、頬を伝いさえした。
ショウよ、よくぞ堪えた。
さすが男の中の男よと、想像の中でグラビトンのオヤジさんも誉めてくれたほどだ。
もっとも想像の中だけだけど。
ショウはまだグラビトンのオヤジさん――ガイ・グラビトンとは口を利いたことも無ければ声をかけて貰ったことすら無い。
でもそのうち、ショウの実力を知ればすぐにオレオマエの仲になる。
それはそう遠い事じゃない。
その日を夢想してショウは、へへっと笑う。
少し生意気そうだが少年らしい、いい笑顔だ。
そのとき。
背後の塀の中から機械音――なにかのエンジン音らしい、くぐもった音が響いてきた。
キーンと甲高い音が可聴域を超えて響く。
「なんだ?」
ショウは塀から身を離した。
この塀の中って、何かの倉庫じゃなかったっけ?
ショウは邪魔なローブを脱ぎ捨てると、えいっとばかりに塀に飛びついた。
中を覗いてやる!
ぎりぎり指先が引っ掛かる。
こう見えてもショウは身が軽いのだ。
「ふんっ!」
懸垂の要領でなんとか塀の上まで上体を持ち上げる。
そして塀の中を見て
「うわっ!」
声をあげた。
ばたん、ばたん、ばたん・・・音を立てて倉庫の壁や屋根が畳まれて行くところだった。
中には小型のフライヤーがエンジン音も高らかにあたりの塵を舞い上げている。
と思う間に、すぅっと浮かび上がり始めるフライヤー。
機体上部の透明なキャノピーの中の乗員と目があってしまった。
操縦席には木肌色の顔の亜ヒューマノイド。
マダムジュジュの使用人の半植物人だ。見たことがある。
そいつがショウを見てびっくりしたしたように目を丸くしている。
なんだコイツ、失敬なヤツだな。
少し憮然とするが、
それより後の席だ!
すげぇ!!
後の席にはふたりの美少女が座っていた。
「わぉ!!」
ショウは驚きの声をあげる。
このふたり、さっきジュジュの館に入って行った二人組じゃないか!
驚きの声をあげたのはふたりがとびっきりの美人だからなのか、いつのまに出てきたのか気付かなかったためなのか、自分でもわからない。
混乱していると、妙にそそられるほう、紅い髪の少女がひらひらと手を振ってきた。
うお!めちゃかわいいやんけ!!
俺に気があんのか・・・?
思わず、でれっとしてショウも手を振り返す――が、その拍子にバランスを崩して塀の上から落ちてしまう。
「むぎゃっ!」
ショウはカエルの潰れたような声をあげて道に転がる。
尻をさすりながら立ち上がったときにはもうとっくにフライヤーは頭上高く舞い上がったあとだった。
フライヤーはそのままぐんぐん高度を上げて行く。
「ちぇっ」
手で庇をつくってフライヤーの機影を見送る。
青く澄んだ空の中、その機影はすぐに見えなくなる。
もしかして戻ってくるかもと、しばらくそうして空を見ていたがやがて諦めて、また塀によりかかる。
「ふぅ〜〜〜〜〜」
長い吐息をつきながら、ショウは考える。
今のは怪しかったか?
ん〜、半植物人はちょっと怪しかったな。
だけどうしろの二人の美女。
特に、ひらひら手を振ってきた紅い髪の子。
あの子はいい子じゃんか。
全然怪しく無かった。
うん、これっぽっちも怪しく無かった。
未来の大幹部ショウ様の仕事は怪しいヤツの出入りをチェックすることだ。 美女のケツを追い回すことじゃ無い。
てことは、今のはわざわざ連絡を入れるようなこっちゃ無いな。
うんうんと、ひとり大きく頷くとショウはマダムジュジュの館の見張りを再開する。
けれど頭の中はもう、自分に惚れてしまった紅い髪の美少女のことでいっぱいだった。
※
「今のはなんなのッ?」
そう言ってかすみに詰め寄るリンの声音に隠しきれない険がある。
キャノピーの外は青い空。遙か眼下には緑の絨毯。前方には遺跡都市の摩天楼群が臨める。
「いまのって?」
のんびりしたとも取れるかすみの口調。
知らない者が聞いたらこの娘は天然ボケと思うことだろう。
「これよ」
リンが顔の横で小さく手をひらひらと振ってみせる。
大げさな作り物の笑顔と一緒に。
すぐに真顔に戻って、
「塀の上から覗き見してた男の子に振ってじゃない?」
かすみをきっと見る。
「そんな顔してた?」
不思議そうな表情でリンを見上げる紅い瞳は濡れて輝いている。
正視出来なくて思わずリンは視線を逸らす。
地平線までずうっと緑のジャングルが続いているのが見える。ところどころ霞んでいるのはスコールでも降っているんだろうか。
「してたよ・・・」
リンの口調が少し拗ねたようなものに変わっている。
「リン・・・?」
かすみの繊細な指が、そっぽを向いたリンの頬の輪郭を、つつっとなぞる。
そのまま両手で頬を挟み自分のほうを向かせる。
リンは抵抗しない。
かすみの紅い瞳に魅入られたようにぼうっと緑の目を煙らせる。
かすみの紅くなまめかしい唇が近づく。
「あ・・・」
リンは躊躇いの吐息を漏らす。
「見てる・・・」
フライヤーの操縦をしているコーネルのことが頭を過ぎる。
けれど
「かまわない」
かすみの唇が紡ぐ言葉は魔法の言葉だ。
かすみがそう言うならきっとそうなのだ。
そうだね、構わないね、と頭の中でリンは答える。
唇はもう、ふさがれている。
フライヤーの前には遺跡都市が大きく迫っている。
目的地はそう遠くない。
しかしコーネルは少し遠回りをすることにした。
高度を下げ始めるのは少し先の話になりそうだ。
※
その頃、アイはひとり、《天使の翼》左舷ドールデッキにいた。
《天使の翼》には右舷と左舷にドール格納デッキがある。
ドールのクラスにもよるが片舷デッキで3機から5機程度収容することができる。
かすみの《零》などはかなり小型の部類なので、もし《零》タイプだけで一杯にするとすれば10機も搭載できるということになる。
《零》を10機なんてあり得ない話だが。
しかし今、右舷デッキはガルガンティスが占領し、最初《零》専用としてかすみが確保した筈の左舷デッキも、アイの持ち込んださまざまな部品が山を築いている。
価値の判らない者が見れば粗大ゴミの山と思うに違いない。
価値の判らない者?
たいがいの人間てことだ。
《零》と、その整備用の3機のパペットは粗大ゴミ捨て場の片隅に追いやられ、応急隔壁で作られた狭い個室にちんまりと収まっている。
かすみがこれを好んでいないのは明らかなので、近いうちに艦内を改装して艦最上部の後部観測室に移って貰うことになっている。
さてそうなると―――
「そうなるともう見せて貰えないかもしれないものね〜」
えへへ〜と、怪しい笑いを浮かべながらアイがジャンクの山の中を《零》の収まる 「個室」 に向かって匍匐前進を続けている。
《天使の翼》のTASドライブエンジンの整備も勿論継続中である。
今現在、《零》に向かって進撃しながらも眼鏡型コントローラを使って、ちゃんとパペットを操っている。
なぜこんなこそこそした真似をして《零》に接近を計っているかと言えば、実はまだアイは《零》をその目で見ていない。
《天使の翼》整備主任として《零》を見ておきたいと再三申し出ているのだが、かすみは頑としてきかない。
「《零》の整備はかすみが自分でします。《零》とかすみのパペットにはアイは触れないで。近寄るのも厳禁」
けんもほろろ。
かすみはそう言って、《零》のまわりを囲って立ち入り禁止にしてしまった。
「だからってハイソウデスカって聞けますかってーの。機械屋魂を舐めないで欲しーわん」
もちろんアイが《零》に興味を持っているのは整備主任としての責任感・・・だけでは決して無い。
いや、むしろそれは刺身のつま。オマケ程度だ。
本音を言えば、ただ見てみたい。
さわってみたい。
いじってみたい。
リンからざっと話を聞いただけでも《零》がそこらのドールと違うのは明らかだ。
もしかすると喪われたテクノロジーの集大成みたいなものかもしれない。
かすみが留守の今こそチャンスだ!
ぜひ拝ませて貰わねば!
今ならパペットはかすみのコントロール圏外だ。
パペットの遠隔操作限界距離は数キロ程度だ。
200キロも内陸のカンタスからは届かない。
不安要素といえば、かすみのことだ、案外地雷の敷設くらいはしてるかもしれない。
「かすみちゃん、あれでなかなか人を人とも思わないトコあるもんね〜」
それで用心して慎重に進んでいる。
この認識は正しい。
アイの片手に握られた爆発物探知機は既に3度、ブービートラップを検知している。
いずれ劣らぬ殺傷兵器だ。
決して冗談事では無いのだ。
だがますます・・・
「燃えるじゃ〜ん」
なのだった。
「機械屋の熱きパトスは地雷ごときで抑えられるものではないのよ〜、ごめんね、かすみちゃん」
なのである。
アイは道無き道を乗り越えて、仕切られたドアの前までようよう到達する。
ドアには複雑な電子ロックのボックスが取り付けられている。
おそらくかすみのDNAや音声、パスワードなど複合的な仕掛けになっているに違いない。
「ふふん・・・けど、ひとの作ったものである以上、ひとに開けられないものなど無いのよ」
アイはにやりとほくそ笑むとポケットから小箱を取り出した。
小箱から細いワイヤを引き伸ばして眼鏡のつるの部分に接続。
途端にアイの瓶底眼鏡がぶん・・・と音を立てて青白く輝き出す。
すると小箱の蓋がぱくんと開いて中から、身長が小指の爪の先ほどのパペットが飛び出した。
アイお手製の精密作業用パペットだ。
それがドアノブのロックシステムに取り付く。
瞬く間にコード入力用シートを外し、その隙間から内部に潜り込んでしまう。
「ふむふむ・・・え? なにこれ?」
ロックを解除しようとしたアイの顔に当惑の表情が浮かぶ。
「これ・・・ダミーじゃないの!」
アイは驚きの声を挙げる。
それもその筈、この外側のロックシステムはダミーだった。
何の意味も無いただの箱だ。
鍵は・・・内側からのみ開け閉め出来る単純な機械式だった。
「・・・・どういうこと?」
わけが判らない。
が、取り敢えずパペットを操って内側の機械式ロックを解錠する。
かちり。
音がしてロックが外れる。
開いた。
これで中へ入れる。
しかし・・・
「かすみちゃん、ここにどうやって入ってるんだろ?」
思わずひとりごちる。
中からは簡単に出られるが、これではドアを破壊しない限り中には入れない。
いや。
もちろん中に誰かいて開けてくれるのなら話が別だが。
「中に人? 《零》? まさかね・・・」
ドールはドライバが乗らない限りぴくりとも動かない。
《零》では無い。
ではパペットか?
「あ、そっか」
アイは謎が解けたとばかり破顔する。
内側からパペットを使って開け閉めしているのだ。
どうやらかすみはアイに金庫泥棒並みの解錠能力があるとは思っていないらしい。
しめしめ。
今ならパペットも動けないし楽勝だよん。
にんまりと笑う。
「怪盗アイちゃんだよ〜ん」
けろ〜んとした調子で呟くとドアに手をかけた。
どうやらアイはこういうことをあまり深く考えない質らしい。
重いドアがずずっと開き始める。
「うふ〜、いよいよですよ〜」
本当に楽しそうだ。
が。
30センチほど開いたところでその手が止まる。
顔がこわばるのがアイは自分でもわかった。
ドアの向こうにパペットが立っていた。
そのパペットの手が自分に突き付けられている。
なんで?
アイは混乱を覚えた。
パペットの遠隔操作は数キロが限界の筈だ。
かすみが街へ出かけている今、パペットが動ける筈が無いのだ。
だから《零》を見られると思った。
なのにいま、かすみのパペットは動いている!
いったい誰が!?
しかもそのパペットの、アイに向けられた手のひらにぽっかり開いた穴。
その暗い穴の奧に、はっきりそれと判る眩い分子溶接の光が輝き始めていた。
アイの身体が紙のように燃え尽きるまで1秒とはかかるまい。
義眼の男、名をデュメクという。
河を遡上するエアバージの甲板でデュメクが不気味な笑みを浮かべた。
「まずひとり・・・」
呟く声を風が吹き消す。
第11話「デイドリーム」 了
いやー、参りましたね。
前回の「ファントムシャドウ」。
よほど詰まらなかったらしい。
そりゃま、確かに話としてまったく完結してないし、当然といえば当然なんだろうけど。
・・・けど、ちょっとさみしいっす。
【ちょちお願い】
今後の展開の予想をお願いします。
いちおう自分としてはある程度十分なだけの伏線、もしくは材料を提供しているつもりです。
たぶん、かすみの出自に関わる部分くらいじゃないかと思うんですよね、もし判らないとしても。
そういう、紅天自体の謎〜な部分と、このグリーンマット編がどう進むのか、その予想を聞かせていただければ幸いです。
かすみの秘密についてはもう決まっちゃってるから変えるわけに行かないんですけど(^^;) グリーンマット編の展開につきましては、あまりにもバレバレな場合、別の展開を考えるかもしれません。
考えないかもしれませんが。
もちろん「かすみがゾーンフェルドとケルベロスをやっつける」みたいな当たり前のことは予想と見なしません。(笑)
なるべく細かくお教えいただけると嬉しいです。
伝心門でもメールでも結構です。
(トップページからのメールを「メールトゥー」を辞めてメールデコードを導入しました(^^))
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