リルガミンサーガその1

これは、リルガミンの地下深く
ダンジョンの探索に情熱の総てを賭けた男たちの
熱き魂の記録である!


ふたつのパーティー
(2000/09/13)
いやはや何年ぶりでしょう。こうしてリルガミンの地に立つのは。
この地下迷宮に挑むのもたしか3度目ですが、まだクリアしたことって無いんだよねぇ。
前回も4階どまりだったし。
今回こそ頑張りたいねぇ…。

さて、今回主要パーティーは二組。
さら夫とかすみを中心としたシリアス組と、その他大勢お笑い突貫組だ。
ざっと紹介しよう。

さら夫チーム

さら夫
戦士 人間(善) L5
力12 知恵11 信仰13 生命12 早さ12 運12

押しも押されもしない堂々の主役である。(笑)
突出した能力は持たないがすべてに均等な潜在力を持つ。
将来はロードか?
17才(笑)。

かすみ
戦士 エルフ(善) L5
力15 知恵13 信仰9 生命13 早さ15 運13

ひそかにさら夫に想いをよせている。
肩を並べて戦えるのが至福の時、らしい。
エルフには珍しい89センチの巨乳の持ち主。
いつか忍者になるのが夢でもある15才の少女だ。
速さはパーティー中、随一。

けん1
僧侶 ホビット(善) 18才 L5
力9 知恵13 信仰13 生命9 早さ10 運13

3人目の前衛。
通常、戦闘中は僧侶としてより戦士としての働きが期待されている。
フレイスの腕前はかなりのもの。
国元に愛しい妻と生まれて間もない長男坊を残してきている。
キャンプを張るときなど、妻子を映した水晶球を誰彼かまわず見せてまわるので、周囲はちょっと閉口している。

べちょ
僧侶 人間(善) 15才 L4
力12 知恵11 信仰13 生命12 早さ12 運12

まだまだ初心者には違いないが、もしかすると将来はかなりの大物になるかもしれない。

歪王
魔術師 エルフ(善) 17才 L5
力10 知恵16 信仰15 生命9 早さ11 運11

いまのとこまだたいした活躍はみせていないが、最近ようやくハリトが少し使えるようになってきた。

角角角
魔術師 エルフ(中立) 17才 L4
力9 知恵13 信仰12 生命11 早さ10 運9

ひとことで言ってしまえばオタク
だいたいは後衛で「身を守って」いることが多いので、よく歪王と濃い〜話題を論じているようである。
現状では「使えない」。あと少しすれば状況も違ってこよう。

電撃Pチーム


戦士 ドワーフ(中立) 15才 L4
力13 知恵8 信仰12 生命12 早さ12 運12

もとは人間だったという説もある謎のドワーフ。
なんでも、とある神の娘に恋をして、それが破れて呪いをかけられたのだとか…。
その上背から繰り出される「必殺イムラソニックランプパイプストリートインラインオーバーブーストアタック音速カプラー斬り」は決まるとかなり凄いらしい。
残念ながら技名が長すぎて、実戦では繰り出すチャンスに恵まれないらしく、まだ誰も見たことが無い。(笑)
弱点は柑橘系と胃の弱いとこ。

アリムラ
シーフ ホビット(中立) 15才 L4
力8 知恵11 信仰9 生命13 早さ18 運18

Pの天敵。
同じパーティー内で天敵というのもどうかと思うが、事実だからしょうがない。
しかし彼の存在がこのチームの特色となっているのも事実。
彼の指先が無ければ宝箱は開けられない。

サト
戦士 ノーム(中立) 19才 L2
力12 知恵8 信仰11 生命8 早さ11 運8

このチームのもうひとつの特徴といえないことも無い。
前衛3人戦士制の要。(まぁひとりはシーフなんだが)
MA-2と同一チームを組むことによって、その能力は優に3倍に高まる。
3倍に高まってこれか?という話もあるが。

あるづらー
司教 エルフ(善) 15才 L2
力7 知恵12 信仰12 生命8 早さ10 運8

もともとはふたりの人間(魔術師と僧侶)だったらしいが5年前の古代魔法大流出事件の現場に居合わせたばかりに融合してしまったものらしい。
ふたたび分離するための方法を探して旅をしていたところを、Pとアリムラにみつかってスカウトされた。

TO−Y
 魔術師 ドワーフ(善) 18才 L2
力10 知恵11 信仰11 生命11 早さ7 運7

遠距離攻撃を得意とするイケイケの魔術師。
生まれ故郷では木こりをしていたらしい。それがどういう経緯で魔術師になったかは不明。

MA-2
僧侶 ホビット(中立) 15才 L2
力9 知恵11 信仰13 生命10 早さ10 運16

守りの堅さは半端じゃない。(笑)
サトと組むことによってその能力は優に3倍に高まる。
3倍に高まって…以下略。(笑)


以上のメンバーに加えて、ギルガメッシュの酒場に居残って、2チームの金庫番を務めるせっきー
冒険には参加しないがこれも重要な仕事だ!
以上13名が繰り広げる冒険冒険また冒険!(というのは、いささか嘘臭いが…(^^;))
乞うご期待!!


地下1階確保!(さら夫チーム)
(2000/09/13)

地下1階のマップを作り終わった一行は、2階へと進む前に、いったん地上に戻ることにした。
その途次…

この階の雑魚モンスターは、さほど苦労しないで制圧できるようになったとは言うものの、厄介なのは宝箱の処理であった。
腐っても鯛、シーフのアリムラなら難なく開けてしまうであろう宝箱だが、現行のメンバーには正直言って荷が重い。

その宝箱がいま、目の前にある。
さて、どうするか?

さら夫が罠を調べる。
スタンナー。
けん1がカルフォで罠の種類を特定する。
毒針
むう…
ここはやはりけん1を信用すべきだろう。

誰があけるか?
「俺があけよう」
さら夫がそう言って1歩前に出るのを、かすみがとめた。
「待って。あたしにやらせて」
さら夫さまに何かあったらたいへんだもの、という言葉は飲み込む。
パーティーのリーダーとして、という意味も勿論あったが、かすみにとってはそれ以上の意味がある。
さら夫は、怪訝な表情でかすみをみつめて、しばし黙考。
この男にはこの男なりの考えが何かあるらしい。
「いいだろう。やってごらん。」
その声に頷くと、エルフの娘は前に出た。
その姿に緊張は隠せない。
先の尖った大きな耳が震えている。
「毒針…だったよね」
誰に言うともなくつぶやく。
舌足らずな甘い声音に、けん1がそっと頷く。

かすみが震える手で罠の解除を始めるのを背後から覗き込みながら、けん1は、かすかな罪悪感を覚えている。
このような幼気な少女にこんな危険な仕事をさせてしまって良いものか。
出来れば自分が替わってやりたい。
が、国元に残してきた愛しい妻子を思うと、躊躇いを覚えずにいられないのもまた事実だった。
ごめん、かすみちゃん。
心の中で手を合わせる。

きゅばっ!

「きゃー!」
かすみの悲鳴が石の通路にこだました。
罠の解除に失敗してしまったのだ。
しかし、さら夫の反応は早かった。
かすみの腕に刺さった毒針を引き抜き、患部に口をあてて毒を吸う。
吸いながら何かつぶやいている。

「いそいで、口で、吸え!…いそいで、口で、吸え!…」
なにかの呪文だろうか。

とりあえず毒は吸い出したものの、かすみはぐったりしている。
宝箱も罠の解除失敗と同時に消えてしまっているが、そんなことなど最早どうでも良かった。
一刻も早くかすみをダンジョンから連れ出さなければならない。
さら夫は意識朦朧となったかすみを背に負う。
出口へとひた走る一行。
しかし一歩毎にかすみは弱っていくようだ。
けん1は一緒に駆けながら必死に回復呪文をかけて延命をはかる。

出口はもうすぐだ。
走れ、さら夫!
頑張れ、かすみ!
果たして、かすみの運命やいかに!!

(つづく)


さよなら、あるづらーさん(T-T)/~~~~(Aパート)
(ギルガメッシュの酒場)

(2000/09/14)

「どうしちゃったのかしら、あるづらーさん?」
かすみはあたりをはばかるようにしてと、隣に座ったさら夫の耳元にそう囁いた。
ここはギルガメッシュの酒場。
もうもうたるたばこの煙や、酒の臭い、人の喧噪が立ちこめる。
すっかり毒も抜けたかすみは、さら夫と酒場で食事をしながら軽く飲んでいる。
いま、このテーブルには二人だけだ。
パーティーのほかのメンバーは…
角角角は「ちょっと本屋へ…(^^)」、
べちょはゲームコーナーにいるし、
けん1と歪王は、酒場の入り口脇にある公衆水晶玉のところで順番待ちをしている。

だから、いまはふたりだけなのだが…少し離れたテーブルでひとりで酒を飲んでいるあるづらーが、かすみをにらみつけてきたのだ。
もちろんかすみには、睨まれるような覚えはないし、それは「あるづらーさんらしくない」様子にも思えた。

それで、声を潜めてさら夫にきいてみた。
ひとの耳をはばかるまでも無く、このテーブルでの会話が隣のテーブルにさえ、そうそう容易に聞き取れるものでは無かったが、エルフの耳は鋭い。
離れたテーブルにひとりで座っているあるづらーを横目で見ながら、かすみの声はどうしても、か細くなる。

「あん?」
さら夫もかすみの視線を追い、あるづらーの方を見やる。
「うん…」さら夫は飲みかけのビールのジョッキを置くと、かすみのほうへからだを傾けた。
「ほら、見てごらんよ、あるづらーさんの顔。…眉間にしわを寄せてるだろう?」
「うん。なんだか目つきも悪いね」
「それさ」
「それって?」
「ちょっと行ってみようか(^^)」
さら夫はかすみを連れてあるづらーのテーブルに向かった。

ふたりがあるづらーのテーブルに近づくと、
あるづらーはいきなり顔を上げて「しゃーっ!」と猫の子みたいな威嚇を放ってきた。
びくっとしたかすみがさら夫の陰に隠れる。
さら夫は苦笑しながら、背中にまわした手でかすみの掌を包んでやり、あるづらーには持ってきたジョッキを掲げながら笑顔を向けた。
「一緒に飲みましょうよ、あるづらーさん」

しかしあるづらーは「あ・あ〜ん?」
ぎりぎりと顔をかたむけ、表情をゆがめてみせる。
「私と飲むんですか〜、私はこうみえてもワルなんですよ、それでもいいとおっしゃるんでしたら…」
なんだか投げやりな言い方で、あるづらーはさらに続ける。
「ワルもワル、見てくださっていいですよ。ほら、…おねーさん、ちょっと。」
最後のところは酒場のウエイトレスへの言葉だ。
しかし、
「はい、ご注文ですか?(^^)」
ウエイトレスが寄ってくると、
「はぁ?私は誰も呼んじゃいませんよ、なに言ってんですか、アナタ」
にべもない。
ウエイトレスは困惑した表情で立ち去る。

困惑した表情なのはさら夫とかすみも一緒だ。
しかし、あるづらーは悦に入ったものだ。
「ほらね」ウインクしながら言う「ほぉら、私はこんなにワルなんですよ、もう善人じゃないんすよ…」
遠い目をしている…。

つまり、こういうことである。
Pやアリムラと組んでいた善人あるづらーさんは、彼らの善悪を問わぬ無差別攻撃にすっかり心がすさんでしまって、いまや大悪人になってしまったのである。
ウエイトレスをよんでおきながら、知らぬ、というなどまだ可愛いほう。
テーブルの上の爪楊枝はごそっとポケットに入れるわ、
たばこを吸うのにひとのライターを使うわ、
ひとが見てなきゃトイレの水は流さないわ、
いまやちょっとした小市民的極悪人なのであった。
まぁ、ひとより感受性が強いとこうなってしまうものなのかもしれない…。
で、Pちゃんチームは今、あるづらー抜きでダンジョンに潜っているところで…
それでますますあるづらーが荒れている、と そういう状況なのである。

「ふぅん…」
事情を把握したかすみだったが、その表情はどこか複雑だ。


さよなら、あるづらーさん(T-T)/~~~~(Bパート)
(電撃P小隊)
 (2000/09/14)

P小隊は地下1階をうろうろと彷徨っている。
あるづらーの穴は、角角角(中立)で埋めている。
目的はあるが目的地は特に無い。
どういうことかといえば…

モンスターが現れた!
Pたちにとっても1階のモンスターは全然敵じゃない。
鼻歌まじりの戦闘だ。
しかも…
「やったじゃないですか、友好的なモンスターですよ」
「あほちゃうか!モンスターはもんすたあぁああ!
 もんすたあは…もんす・たあっ!」
「2度言うな」
「え?なに?俺はハリト使えばいいわけ、アリムラくん?」
「ディオース!…どっ、コレ?どっ?どっ?」
「私としてはですね…あんまりこの戦闘には…。いや、いいんですよ、いいんですけどね」

ようは、Pとアリムラの狙いとしては無差別攻撃を続けることで残る二人…TO−YとMA-2の属性も悪に変えてしまおうとゆーわけである。
そうすれば元通り、あるづらーとパーティーを組めるわけだ。
思ったよりは時間がかかってしまったが、どうにか成功をおさめた。
TO−Yがいささか頑固で洗脳に時間がかかってしまったが、成功してしまえばそれでヨシ。
ダンジョンを出る頃には、メインチームよりもレベルが上がっていた。
「いえ〜ぃ(^^)v」
ギルガメッシュの酒場に戻ってくるなりVサインをかかげるPたちに、さら夫は苦虫を噛んだような表情をみせている。(笑)


《おかえり、あるづらーさん編 −完− 》


敗走!決死の逃避行!!(2000/09/16)

うぬぼれが無かったと言えば嘘になる。
階段側からの4階の探索に行き詰まったさら夫達は、マップを検討し、エレベーター側に開けていない扉のあることに気づき、そちらに回ることにしたのだった。
お気楽なものだった。
4階から3階に上がり、最短距離で2階へもどり、さらに1階へ上がる。
石造りの通廊を歩きながら、かすみが不安げな表情でさら夫を見上げた。
「さら夫さま〜、1度、リルガミンへ戻ったほうがよくないですかぁ?」
舌足らずな声の語尾がかすかにふるえを帯びている。
耳が伏せられ、目を潤ませている様子は、どこにでもいる普通の(エルフの)娘だ。
しかし、いったんモンスターに相対するや、このエルフの娘が鬼神もかくやという働きをみせることを仲間なら知っている。

さら夫はかすみの頭に手をのせて、わしわしと髪をかきまわしながら、
「だいじょぶだいじょぶ、ほとんど消耗してないし、このまま行けるよ」
と笑顔をみせる。
「はい〜」
かすみも子犬のような笑顔をさら夫に返す。
ほかのメンバーはそんな様子を目一杯暖かい表情で見守っている。
幸せそうな一行である。

エレベーターを4階まで直行し、問題の扉の前に立つ。
途中1戦交えたが、魔術を使うまでもない、さら夫とかすみの剣がモンスターを蹴散らす。
おまけのようにけん1が「むひょひょ〜(^^)」とフレイルを振り回す。
ほとんど戦局に影響は無いのだが、けん1は直接戦闘が好きだった。
もはや基本的なステップさえ踏んでいれば、この近辺にはさら夫達の敵はいなかった。
居ないはずだった。
扉の前で剣をかまえ、小さく叫ぶように言う。
「行くぞ!」
ゴッと扉を蹴り開けると同時に部屋の中に突入する。
中では案の定、モンスターたちが歓迎パーティーの準備をしていた。
蹴散らしてやる!
しかし、頬に浮かんだ凄惨な笑みが凍り付く。
見たことの無いやつらだった!!
敵はハイ忍者がひとり。
ハイプリーストが二人。
メイジが二人。
そしてレベル7ファイターが二人だ。

以心伝心、かすみとさら夫はふたりがかりでハイ忍者に襲いかかる。ヤバイ相手だ、確実に叩く!
さら夫のロングソードが、刀に伸ばしたハイ忍者の利き腕を叩っ斬る。
ほとんど同時にかすみの剣が忍者の脇をすり抜けざま胴をふたつ斬りにする。
さら夫の返す刀が忍者の頸をたたき落とす。
みごとなコンビネーションだった。
しかしそのとき…
敵メイジの作り出した火球が後方で爆発した!
さらにハイプリーストの攻撃魔法が襲いかかる。
しまった!
ハイプリーストを甘くみたか!?
あとは乱戦だった。
吹き飛ばされる歪王と角角角。 歪王は半ば意識を混濁させながらも呪文詠唱を始める。
口の端から血を滴らせている。かなりのダメージを受けているようだ。
助けようとするけん1ごと、すさまじい火球がふたりを包み込む。
一瞬にして炭化する二人の身体。
マハリトで敵を倒しながらも、ファイターに切り捨てられる角角角
解毒呪文をかすみにかけながら敵魔法で、全身をずたずたに引き裂かれるべちょ

わずかな時間で、全滅に近い状況に陥っている。
毒におかされ満身創痍のさら夫とかすみ。
だが、敵もまだふたり。ハイプリーストとファイターが残っている。
「まだ行ける!」
血まみれの剣でファイターに斬りかかりながらさら夫が叫ぶ。
「はいっ!」
エルフの少女は気丈に答えてハイプリーストに向かって走り寄る。
一気に距離を詰めて、剣をふりかぶる。
その姿が、敵ファイターの首を一瞬ではね飛ばしたさら夫の視界の片隅で白く染まった。 空間が震え、かすみのからだが、まるで玩具のように宙に舞う。
まるでスローモーションのように。

「かすみーーーーーーーーーーっっっ!!!」
気がついたら走っていた。
怯えながら次の呪文を詠唱中のハイプリーストを袈裟懸けに切り捨てる。
その血飛沫をあびながら、うち捨てられたボロ雑巾のように倒れているかすみの元に駆け寄る。
「かすみっ、かすみっ、かすみぃぃぃぃぃっ」
跪き、既に物言わぬかすみのからだを抱きしめる。
「かすみぃぃぃぃぃぃぃっ」
悲痛な号泣が地下回廊にこだまする…。
それは聞く者の心臓をさえしめつけずにおかない悲しい悲しい叫びだった。

どれだけそうしていたろう。
やがて、さら夫は立ち上がった。
まだ、大丈夫だ。助ける方法はある。
リルガミンまで帰り着くことが出来れば。
カント寺院に連れて行けば。
必ず生き返らせてみせる。安心しろ、かすみ。
さら夫は帰る道順を思い浮かべる。
地下4階から地上までの道筋を。
遙かな道筋を。
残る体力はあとわずか。
回復の見込みも無い。
もし戦闘になったら一撃も受けてはいけない。
先制で倒さなければならない。
だが。
俺は負けない。
かすみ、おまえを助けるまでは。
さら夫はかすみのからだを抱いたまま、ゆっくりと歩き始めた。
絶望的な戦いが始まろうとしていた。


おぼろ、夢、かすみ(2000/09/16)

かすみは稲妻の速度でプリーストとの間合いを詰める。
プリーストは、眉間に皺を寄せ、顔いっぱいに怯懦の冷や汗を流しながらも口をもごもごさせている。
何を言っているのかは判らないが、呪文を詠唱しているのだ。まだ。
間一髪、間に合う!
かすみの剣はその軌道にプリーストを、すでに捉えている。
勝った!
と思った。
その瞬間。
プリーストの口の動きが止まり、その端がわずかに、吊り上がったと見たのは気のせいか。
恐怖と、そしてそれを打ち消すように、さら夫の優しい笑顔が脳裏に浮かぶ。
ごつごつしたさら夫の手が自分の髪をかき回す感触が蘇る。
もう2度とその手がこの髪を撫でてくれることは無い。
泣きそうな想いが胸の内をかきむしる。
剣の切っ先は今まさにプリーストの身体に到達しようとしている。
だがこれは永遠にプリーストに届くことは無いだろう。
極大に引き延ばされた一瞬の中で、かすみはそれを知った。
さら夫さま!
あらゆる想いを込めて心の中で叫ぶ。
刹那。
かすみの意識は白い闇に飲み込まれてた。
苦痛を感じる暇さえ無い。
まったき「無」の世界へと、かすみは落とされていた。

どれくらい時間がたったのだろう?
永遠とも思えるし、一瞬であるような気もする。
時間の感覚は消失しているが、気が付けば、ほんわか暖かいものに包まれているみたいだ。
ふんわりふわふわ柔らかくて暖かく、溶けてしまいそうな程の心地よさと、そして…なんだか泣きたいほどに懐かしい。
これが死後の世界だろうかと、かすみは思う。
だとしたら、死ぬのもそう悪くはない。
そのとき。

「……み………かす……み……」
声がきこえた気がした。
あたたかい大きな手が髪を撫でてくれているのがわかる。
急速に五体の感触がもどってくる。
それはまるで…
まるで…

うっすらと目をあけると、憔悴しきったさら夫の顔があった。
さら夫の右手は、かすみの髪に埋まっている。
武骨だが、優しい愛撫だ。
「さら夫…さま…」
まるで1年ぶりに声を発するような乾いた声が恥ずかしい。
が、その声がさら夫の顔に明るさを呼び戻した。
「かすみ!」
かすみの身体が軽々と抱き上げられた。
そのままぐるぐると回り出す。
かすみはさら夫にしがみついた。
衣服ごしに、さら夫の熱い体温が伝わってくるようで、なんだか嬉しい。
でも自分の体温も伝わるのだろうか。
そう思うとちょっと恥ずかしい。
「ど、どうしたんですかぁ」
かすみは真っ赤になって、それでも、さら夫の抱擁を受け止め続けた。
いつまでも。


お宝稼ぎ隊(2000/09/16)

ギルガメッシュの酒場。
さら夫がひとりで食事をしている。
いつもそばにいるかすみの姿は、そこには見あたらない。
まだ体調が戻らないため上の部屋で寝ているのだ。
ギルガメッシュの酒場は宿屋もやっている。
「どしたんスか、元気ないじゃないッスか」
アリムラがひょいひょい近寄っていく。
「ああ…?まぁね…」
答えるさら夫の声にいつもの張りは無い。
アリムラはあたりをきょろきょろ見まわして
「かすみッチは?それにほかのみんなは?」
言いながら、さら夫の向かいの席につく。
さら夫は、無言のまま上を指さす。
「上…?」アリムラが店の天井を見上げる。
そして、はっとした表情で目を瞠る。
「上って…天国ぅ〜?」
アリムラの目がうるうるし始めている。

「ちげーって」
さら夫がむっとした声で低く言う。
「みんな、上で寝てんの。カント寺院で助けて貰ったけど、みんな、1度は死んだ身体だからね、なかなか疲れがとれないみたいよ」
「え!そんなことあったんスか?」
アリムラは身を乗り出してくる。
逆にさら夫はその圧迫にのけぞるようにして答える。
「まーね。4階まで降りたんだけどさぁ…」
顛末を話し始めた。

「それは災難でしたね〜、無理しちゃダメですって。さら夫さん、ダンジョンの中は用心だいいち。」
いつの間に現れたのか若造が、いやPが目を糸のように細めてそう言った。
嬉しそうだ。
言葉はおみまいだが、口調も表情も見事なまでに言葉を裏切っている。
「ああ、ご忠告ありがとさん。…そうだ、お礼にいいことおせーてやんよ。これ見て…」
4階のマップを示して、宝物庫の場所を教えてやる。
「ありがとうございます、そいじゃ、いまから行ってみますわ」
「んじゃね、かすみッチによろしく〜ん」
立ち去る二人の背中を見送ると、
そろそろかすみが目を覚ます頃かな、
そう思いながら、さら夫も席を立った。

「エレベーター、エレベーター…と。」
「って、なんで縄ばしご降りてんですか、アリムラさん(^"^;)」
早速ダンジョンに潜ったP小隊だったが、いきなり道に迷っていた。
アリムラが先導をつとめているためである。
「なに間違ってんだよ、おめーわ」
サトが地図を奪い、1階にもどる。
「こっちだって。」
「って、サトさん、そっちワープゾーンですって。エレベーターはこっちです」
「なんだよう、この地図ぜってーおかしい。」
「でしょでしょ、俺もそう思う。俺、悪くないって。」
「ハシゴ降りるのは違うと思う」
「いーから!さっさとすませようぜ」
やいのやいの言いながら進むP小隊なのであった。

しかしピンチはほどなくやってきた!
エレベーターを降りて突き当たりにある宝物庫に入る。
そこで出会ったモンスターの意外な強さに6人はびびった。
「こんなの相手に生還してたの、あいつら!」
「まじっすか?ま、じっ、っす、かあああ!」
「余裕あるじゃねーか」
どうにか倒したものの、アリムラもPも毒に犯されてしまった。
MA-2もあるづらーも解毒魔法をまだ収得していない。
回復魔法もとても十分とはいえない。
このままでは生還などままならない。
「むかえに来て貰うしか無いでしょうねえ…えーい、召還魔法!(^^;)」

もちろん、あるづらーの召還魔法にはなんの効果も無い。
あ「やっぱりダメなんですかねぇ…おかしいなぁ」
ア「使えねェ…(ぼそっ)」
P「使えない言うな」
しかし、さら夫達が迎えに来てくれたのも事実。
ほっとした一行であった。

「行ける!行けるって、俺達!」
「そうですよねぇ、けっこう行けますよねぇ」
今回の生還に気をよくしたPとアリムラ。
早速、第2回目の4階行きを敢行するも、再び毒まみれになって立ち往生。
さら夫達による再度の救出。
しかし、これくらいではまだまだ懲りないようである。
今日も今日とて地下迷宮には6人の賑やかな声が反響している。


お宝稼ぎ隊 2(2000/09/17)

「行っくぜ〜」
例によって4階のお宝部屋へ向かった6人。
出てきたモンスターにも最早動じるものじゃない。
たしかに彼らはこのあたりを平気で歩けるほどには腕が十分とはまだ言えないが、1戦2戦程度なら全力で当たれば決して負けやしない。
そういう自信が彼らの足取りを軽くする。
「どわりゃあああぁぁぁっ」
「ディルトォォォっ!」
「バマツ〜!」
「ここはマハリト、かな」
「いぇぃ!」
「アリムラさん、そこ違う」
わりとあっさり戦闘も終わり、モンスターの持っていた宝箱が目の前にある。

「カルフォかける〜?」
「大丈夫っすよ、MA-2さん。俺、あけられるし。」
「お願いしますよ、アリムラさん」
「すげー不安(笑)」

アリムラはかがみ込んで、宝箱の罠を調べる。
普段、おちゃらけたところもあるアリムラだが、こういうときはさすがに真剣な表情だ。
素早く、しかし慎重に罠を調べて…
「うん、これ、テレポーターっすね」
確信をこめて言う。
「あけられる、アリムラくん?」
TO−Yの言葉はクールだ。しかしそこにはアリムラに対するいたわりがある。
…たぶん。
自信が無ければ無理しなくていいよ、という想いが込められているようだ。
…きっと。
しかしそんな機微には頓着無い人間もいる。
「じゃ、やりますか」と前に出るサト。
「ざけんなって!」止めるMA-2。
「出てくんなよ、おめ。俺がやるつってんだろ!!」

結局(当然の話だが)アリムラが罠の解除を始めた。
指先の魔術師と異名を持つアリムラである。
その技は見事なものだった。
罠が解除される…
「うっそ〜ん」
アリムラが突然変な声を上げた。
「なになに?アリムラくん、また何かやっちゃった?」
「しょーがねーなー、だから俺が」
「違うって」
「ちょっと待ってくださいよ、みなさん。今はそういうときでは無いのでは?」
あるづらーが言い終わるのを待っていたかのように、周囲の空間が歪み始めた。
テレポーターが作動している!
「使えねぇ、アリムラさん」
Pの楽しげな声が歪んだ空間に飲み込まれ、6人の姿も消えてしまう。
あとには静寂と闇が残るだけだ。

変わって、喧噪に満たされたのが、同じ階、別の場所。
「マップみて、マップ」
「ここは4階ですねぇ」
「どーんすんのよ、ここ孤立してるよ」
その通りだった。
マップで見る限り、その場所は階段側からは入って来れない場所だった。
「ここ行けるんじゃないかな」
TO−Yが示したのはエレベータを出てすぐの十字路だ。
まだその十字路は左右に曲がったことがなく、道は示されていない。
なるほど、行けるかもしれない。
「わかったっ、こっち行くんだね…」
「それ逆だって」
サトが歩き出そうとするのをMA-2が止めた。

びくびくしながら進むパーティーだったが、結局エレベーター側へは行けないことが判明。
遭遇するモンスターとはそのたびに総力戦。
一時はどうなることかと思われたが、運良く階段へ到達。
「そりゃ、走れ〜」
どうにかこうにか6人は無事帰還することが出来たのだった。
6人は少し腕を上げた。(^^)


夢、第一夜(2000/09/17)

「さら夫様!」
かすみの声にさら夫は目を覚ました。
いつのまにかうたた寝をしていたようだ。
かすみが心配そうにさら夫の顔を覗き込んでいる。
ぴくぴく動く耳が愛らしい。
さら夫はほっと吐息をついた。
ここはいつものギルガメッシュの酒場。
まわりにはパーティーメンバー。
そうだ。
ここでみんなで軽く一杯やっていたのだ。
「疲れがたまってるのかもしれませんね、うなされてましたよぉ」
かすみが心配そうに言う。
「そう…かな」
「う〜ん、さら夫さぁん、飲みが足りないんじゃない〜?」
けん1がさら夫のゴブレットに酒をつぎたす。
「そうかもね…」
受けながら言葉の穂を継ぐ。
「いま、いや〜な夢を見てたんだ、起こしてくれて良かったよ」
「どんな夢っすか?」と歪王が目を輝かす。
「うん、実はね…」
と、さら夫は話し出す。

さら夫のみた夢を要約するとこうなる。
先般、例のモンスター群に雪辱を果たしブルーリボンを手に入れた一行は、その勢いを駆って一気に9階に降りた。
そこまではいい。
ところが数歩も歩かないうちに遭遇したモンスターとの激戦の末、角角角と歪王が死亡。
そこでけん1が腕によりをかけて蘇生呪文を使った。
その結果、歪王は無事蘇生したものの、角角角については無様に失敗。蘇生どころかアッシュ化してしまう。
「塩の分量を間違えたかも(^^;)」とは、けん1の言葉。
4階まで戻ったところで今度はドラゴンに遭遇、炎に灼かれ、またしても歪王、焼け死ぬ。
そのときはもう、蘇生呪文に必要なマナはけん1には残っていなかった。
そのまま死体を抱えてリルガミンに戻る。
カント寺院に駆け込んでまずは歪王を蘇生させる。
次は角角角だ。
しかしここで問題が持ち上がった。
なんと金が足りないのである。
それも半端じゃなく。
いったいどうしたらいいのか?
途方にくれる一同。
そこで目が覚めた。

「やだなぁ、さら夫さん、ボク、2度も死んじゃうんですか?」とウニ丼をかっ込みながらの歪王。もう2杯めだ。
「う〜ん、私もそれは心外だなぁ、こ〜のけん1、そんな失敗は致しません!」と、けん1。
「さら夫さま、さら夫さまぁ、あたしはあたしは?夢に出てこなかったんですかぁ?」そう言ったのはもちろんかすみだ。
「かすみ? おまえは1回、戦闘中にぐーすか寝てたぞ」さら夫が笑いながら言う。
「ひっど〜い」
かすみは、ぷうっと頬を膨らませた。
そんなみんなを、べちょが波目で見守っている。
楽しげな笑いが場を満たす。
平和な風景だ。
過酷な冒険の合間にはこんな時もあっていい…。

…ん?
角角角は?

角角角も、うたた寝をしていた。
みんな、疲れが溜まっているのだろう。 そのとき、ひとつびくんと大きな痙攣をして角角角は「はっ」と目を覚ました。
一同の目が角角角に集まる。
それに気づいて角角角が照れ笑いを浮かべた。
「ふい〜、いま悪夢みてましたよ」
その言葉に、なぜか一同に緊張が走る。
誰かが言った。
「あくむ?」
まさかそれは…
「夢だからいいようなもんですけどね」角角角が言う「私、死んじゃいましてねぇ、それはいいんだけど、生き返らせて貰うお金も無いという…」
酔いが醒めてゆく。
それは、夢…だよね?



絶体絶命P小隊!地下迷宮の罠!!(2000/09/19)

「さら夫さまぁ?なに作ってんですかぁ?」
ギルガメッシュの酒場。
いつものテーブル、いつものふたり。
さら夫は、なにやら赤い組みひもをいじっている。
「あ、綺麗な組みひも〜」
「なんでもない、別になんでもないって」
あわてて、テーブルの上にひろげた小道具をしまい始めながら、
「な、せっきー?」
誤魔化すように、せっきーに同意を求めるさら夫。
「え?ええっ??俺ですか?」
あわてたのは、振られたせっきーだ。
「あ、すみません。俺…気づいてなかった、ここにいるって。ははは」
「なに言ってんの、せっきー。いっつも一緒にいるじゃない?」とかすみ。
「そうだよ、ぼけてんね、きみ。ま、存在感無いんだよね、きみってさ。」
「そっすかね〜」
一同、わははと笑い合う。
さら夫の組みひもの件はいつのまにか、うやむやだ。

「それはそうと…」
ふと思いついたようにせっきーが言う。「ここ2〜3日、サトさんやMA-2さん、見ませんね、どうしたんだろ?」
ちょっぴり心配そうだ。
「そういえば見ませんね〜。なにかあったんでしょうかぁ?」
かすみの声にも少し不安が滲んでいる。
動じないのはさら夫だ。
「なんか『腕を上げるぞ〜!』とかって息巻いてたぜ。ここ寄るのも惜しんで迷宮に通ってんじゃないのォ?」
「でもそれにしては全然お金預けにきませんよ」
せっきーが言う。
せっきーはさら夫隊とP小隊、両方の会計係を務めている。
まんがいちの事態を考慮して、両チームとも、稼いだお金はこまめにせっきーに預けることになっている。
にも関わらず、P小隊はここ数日せっきーの前に現れていないと言うのである。
「今頃、地下迷宮の中で全滅してたりしてな」
だわはははとさら夫が笑う。

「うっせ、黙れ!」
アリムラが天を仰いで怒鳴った。
話は2日ほど前に遡る。
ここは地下迷宮4階、エレベーターの前だ。
P小隊はいましもエレベーターを降りたところだった。
「どったの、アリムラくん?」
なぜか突然、天井に向かって毒づいたアリムラにTO−Yが声をかけた。
「いや…なんかわかんないッスけど、いきなりムカついたんスよ」
アリムラはなぜ急に腹が立ったのか、自分でも腑に落ちない様子だ。
そこへ、
「アリムラくん、それ、詰まんね」
「ギャグじゃねーって」
「みんなそう言いますよねー」
「バカは黙ってろ!」
「ば、ば、ばかって…うーん、反論できん。たしかに知恵低いですからねー」
「あちゃー、アリムラくんてばとうとう言っちゃったあ。」
「アリムラくんのことだからいつか言う言うと思っちゃいたけど、ほんとに言うとはねー」
いつも通り、にぎやかな6人だ。

扉をあけて通廊に出る。
モンスターの群れに遭遇したが、難なく撃退。
モンスターは宝箱を残していった。
アリムラが罠を調べて、テレポーターと判明。
そのままあけようとして…なぜかその手が停まる。
振り返ったその目がきらきら光ってる。
いたずらっ子のような目だ。
「これっさー、罠、解除しないでこのままあけちゃわねぇ?」
「?」
「ただ、宝物庫の前でモンスター狩りすんのも面白くないじゃねぇ?それだったら、ワープでどっか飛んでマップ埋まってないとこ作っちゃうての、良くない?」
「それ貰った」
「指、突きつけんなっての」
「そのアイデア貰った〜」
「だからやめろっての!あほか!」

とにかく話はそれでまとまった。
わざとに罠解除をせずに宝箱をあける。
途端に周囲の空間が歪み始める…。
「だっしゃぁぁぁぁっ!」
と、ガッツポーズ。
陽気なもんである。
そして、次の瞬間には別の場所への転移が終了。
「マップ〜」
「どう?どう?やった?」
「ああ、これはですねぇ、うん、うまくいったみたいですよ」
なるほど、未踏部分への転移が成功したことが魔法の羊皮紙のお陰でよくわかる。
「ナイス!」
「さすが俺」
「サトさん、俺だって!」

ところが!
ほどなく、とんでもない事実が明るみに出た。
この空間、なんと出口が無い!
外界から完全に隔絶されているのだ!
「うっそ〜ん」
「おまえのせい」
「だから指突きつけるなっての!」
「使えね〜、アリムラくん」
「アリムラさん、美味しすぎ」
「そんなこと言い争ってる場合じゃありませんよ。ここはひとつ真面目に考えませんとね。」
あるづらーの言葉に一同は頷いた。
たしかに、じゃれあってる場合じゃ無い。

やっぱりここは、方法はひとつしかあるまい。
この閉鎖空間を歩き回ってモンスターを討伐。
モンスターがテレポーター付き宝箱を落としていくのを待ち、それを罠解除せずに開封、 別の場所に空間転移する。
「完璧じゃん」

しかし残念ながら、お気楽6人組が考えるほどには、事態は甘くなかった。
ひとつ。4階のモンスターは、たいしたこと無いのもいるが、彼らにはいささかキツイ相手もいる。
ひとつ。モンスターが宝箱を落として行かなくなった!

「どうすんの?もう魔法、幾らも残ってないじゃん!」
TO−Yはがっくりその場にへたりこんだ。
魔法の使いすぎでへとへとだ。
「う〜ん、この場はキャンプして救けを待つのがベストなんじゃないでしょうか」
あるづらーがクールに答える。
ほかには…
ほかには答える気配は無い。
すでにアリムラは、あえなく死亡
P、MA-2、サトはモンスターにやられて全身麻痺状態。回復なんぞしそうに無い。
P小隊、絶体絶命のピンチであった。

それが2日前。
あいかわらず、P、MA-2、サトは麻痺しっぱなし。
アリムラの死体は腐乱して、悪臭を放ち始めている。
いつになったら救けがくるものやら…。
…あるづらーとTO−Yはため息を漏らすばかりだ。
「大丈夫、大丈夫ですとも。必ず来てくれますって。魔法の水盤が危機を伝えているはずです」
「?…なによ、魔法の水盤て?」
「ほら…血の盟約で…色が…あれ?…あれっ???…でした?もしかして?」
愕然とするあるづらーなのだった。
彼はどんな夢を見たのだろうか?

再びギルガメッシュ亭。
例によって地下迷宮に降りない日は、さら夫隊の面々は宴会だ。
酔った角角角が自慢する。
「魔法の羊皮紙は正解だったでしょう、はっはっはっ」
「うん、あれさえあれば離れてても連絡できるんもんね」
「そこなんですよ。同じ骨董屋で『魔法の水盤』もみつけたんですがねぇ、ギミック的には面白いんですが、実用上、魔法の羊皮紙さえあれば十分ですからねぇ」
「う〜ん、さすが角角角さん、グッドな選択でしたねぇ、ま、飲んで飲んで〜」
「マップどこまで出来てるのォ〜?みせてみせて〜」
「ああ、いま部屋に置いてあります、持ってきましょうか?」
「なら、あとでいーよ。それより飲も飲も」
「は〜い」
一同「かんぱ〜〜〜〜〜〜い!!!
宴会は夜更けてなお続く……。


燃えろ!マジシャンズ!(前編)(2000/09/21)

「ものは相談なんですがねえ…」
角角角が、けん1、歪王、べちょの3人を前になにやら思わせぶりな発言を始めた。
さら夫とかすみの姿は無い。
もちろん、P小隊の面々も見あたらない。
彼らはたぶんまだ地下迷宮に捕らわれたままなのだろう。
ここはギルガメッシュ亭。
4人が頭をよせて、なにやらこそこそと話しこんでいる。

その少し後。
さら夫が朝食を摂りに、かすみと一緒に2階から降りるころには、4人の姿は綺麗に消えていた。
「さら夫さまぁ、みんなどこ行っちゃったんでしょう?」
「さぁねぇ…なんとなく想像はつくけれど…。それよりおまえ、これ好きだろ?」
シチューの中の大きなニンジンをすくうと、かすみの皿の中にごろんと放り込む。
「…いいですけどォ、好き嫌いは良くないですよ?」
「大きなお世話。そのかし、これくれ」
かすみの皿の肉にフォークを突き刺し、素早くほおばる。かなりの早業だ。
「ひど〜い」
ぷくっと頬を膨らませて上目づかいにさら夫をにらみつけるかすみ。
なんとも楽しげな風景ではないか。

その頃、消えた4人はどこにいたか?
もちろん地下迷宮である。
4人だけで9階に向かっている。
「ちょっとはぼくらもいいとこ見せないとね〜」
というわけである。
「そうそうそうそう。我々だけでも戦えるとこ見せませんとねー」
「ファイターなんてしょせんは、ちからバカ。その点、魔術師はひと味違いますぞぉ、はっはっはっ」
「おお、そりゃまた問題発言〜、いいのかな〜そこまで言っちゃって」
「大丈夫でふよ。適切なフォーメーションを組くことさえ出来れば、戦闘力はむしろ上でふから」
その通り。
たしかにその通り。
しかし彼らはひとつ大きな勘違いをしていた。

「やですよ!なんでぼくが前に!」
「なんでもかんでも3人は前に出て貰わなきゃならないんですってば!」
「なこと言ったって、ぼく、虚弱体質なんですってばぁ」
「むひょひょ〜」
「やはりファイターも必要ですねぇ。ちからバカっていうよりむしろ、人間盾?」
「言えてる…って、あれ?なんですか、この足元?お?お!うわぁ!」
4人の足元が突如としてがらがらと崩れ落ちてしまう。

「みんな、無事でふか?」
ぱたぱたと石くれをはたき落としながら歪王がほかの3人に声をかける。
「うーん、なんとか…」
「なんなの〜ぉ、いまの?」
「ふ〜む、どうやら10階に落ちたようですなぁ」
あっけらかんと言うのは角角角である。
「落とし穴にハマったということで」
「落とし穴〜?そいつははた迷惑ですぞ〜」
「それよりもみなさん、」
べちょが冷静に4人を見回した。
「ここって、まるっきり初めての場所ですよ、我々、還れるんでしょうか?」
「ん〜、まぁ、なるようになる、というのが私の見方ですが…」
冷静なような角角角だが、実は声が震えている。
4人は不安に顔を見合わせた。

さてさて、この4人、無事地上へ帰れるのであろうか?


燃えよ!マジシャンズ!(解決しりつぼみ編)
(2000/09/21)

「おう、これは!」
角角角が絶句する。
いや、角角角だけではない。
4人が4人とも、息を呑んでそれをみつめた。
ロミルワの明かりでぼうっと照らされた壁面。
その一面に古代言語が彫り込まれていたのだ。
文字は薄明かりの中、金色に輝いている。
なるほど、よくみれば、壁に彫り込んだ文字に金を埋め込んであるのだった。

9階を4人の魔法使いだけで歩いていて、落とし穴にハマった彼ら…角角角、歪王、べちょ、けん1たちは、そのショックからたちなおり、あたりの様子を調べ始めたところでこの壁の文字をみつけた。

「…一体何者がこれを?」
「読めるかな〜ん、角角角さん?」
「いやぁ、私はちょっと」
「あ、私読めると思います」べちょが前に出る。
しばらく壁の前を行ったり来たりしながら忙しく解読を始めるべちょ。
15分ほどもそうしていたろうか。
「どうかな?」問いかけるけん1に、
「そうですね、だいたいのところはわかったように思いますよ。ここに書かれているのは…」
べちょは説明を始めた。

聞き終わった一同は、
「とすると、なんとしてもこのヒントは持ち帰らねばなりませんな」
「そーでふね。命にかえても!」
「やりましょう!」
「死して屍ひろうものな〜し!」
「あ、それはちょっと勘弁してください」
決心を固める4人に、とある決意がよぎる。
そうだ、生還したら必ずP小隊を救けに行こう、と。
P小隊がいなければ我々がお笑い担当をやらねばならん。それはいやだ、と。

「どっちへ行く?」
「私にまかせなさ〜い」
けん1が先導する。
1歩踏み出した途端…
「うわーーーーーーーーーーっ」
「でーーーーーーーーーーーっ」
「うっそぉぉおおおおおおおっ」
「・・・・・・・・・・・・・」
空間が歪み、上下感覚が失せる。
果てしないトンネルを落ちていくような感覚に4人は意識を失った…。

どしゃがしゃぐしゃがちゃどちゃあーーーーーん!
「きゃー!」
「うわったっ!」
かすみとさら夫は、悲鳴をあげてとびのいた。
ギルガメッシュ亭での昼食中、突然何かが天井から落ちてきたのだ。
食器が割れ、食べ物が飛び散り、テーブルがくだける。
瞬間的に数メートルは飛び退いただろう、さら夫はかすみをうしろに庇って、既に剣を抜いている。
しかし、その剣は構えられることなく、鍔鳴りの音と共に鞘に戻される。
さら夫は苦笑しながら前に出た。
テーブルの上に落ちてきたモノたちにその右手を差し出す。
「あれぇ、さら夫さん…ここ…リルガミンでふか?」
「そ。ギルガメッシュ亭」
「えーーーーーっ????」
「よかったああああっ」
カリーンうどぅー、お父さんは無事だからねーーーーっ」
奇跡的に無事帰り着いた4人なのであった。


9階確保!(2000/09/22)

モンスターが現れた!

さら夫の指示を待つまでもない。
かすみはゴーゴンへ向かって走った。
すぐうしろにさら夫が続いている。
ふたりがかりで確実にゴーゴンを倒す!
背後では、べちょとけん1が、ハイウイザードとビショップを無力化。
同時に歪王が、無力化されたビショップに魔法攻撃、角角角もキメラに対してラハリトをかけている。
モンスターの1群にしてみれば悪夢にも等しかったろう。
戦いはあっというまに終息した。
パーティーは腕も練度も驚くほど上がっている。
かつて、4階で敗戦を強いられたのが嘘のようだ。

「さら夫さまぁ、これ、とっても素敵です」
かすみが、まだ新しい小太刀をうち振ってみせる。
柄頭につけられた赤い房飾りの組み紐が、動きに連れて綺麗な軌跡を描く。
くるりと回してから、刀身を背部の鞘に収める。
ちん、と澄んだ音がした。
飾り紐が、ふわり、と踊った。
かすみはその房の部分を手に持って、嬉しそうに揺らしてみせる。
頬に擦りつけて、
「かわいい〜ぃ」
どうやら、かすみが「素敵」と評したのは切れ味についてでは無いらしい。

さら夫はかすみの髪をわしわしと撫でながら、
俺達は強くなった、と実感している。
本当に強くなった、と。

パーティーの全員を見回す。
かすみの小太刀だけではない。全員の装備がほぼ一新されている。
さら夫自身、これまでより強力な防具に身を包み、背には神剣ドラゴンスレイヤーを携えている。
戦いは新しい次元に進もうとしているのか。
「よし!みんな、行くぞ!」

9階のマップが完成したのはそれから程なくである。



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