これは岩手県の山村に独り暮らす年老いた父と都会に出た息子たちとの交流を描いた映画で、わたしは劇場公開時に観て熱く感動した覚えがある。
映画の中では農家の暮らしや山村の風景も描かれていて、今見てみると当時は気づかなかった小さな発見がいくつかあった。それは……
・父親が畑で作ってる作物はたばこ(だよね?)。
・家の中にある黒い物体は薪ストーブ。
・方言のかんじが秋田のことばにも似ているぞ。
これらの事は秋田に来て暮らしているからこそ分かったことだ。
農業を生業とすることの厳しさについて語る場面もあり、考えさせられる。息子たちも農業を継がずに村を離れているが、かといって都会での生活の方が良いかというと、話はそう単純ではないんだという事も描かれていて、現代における幸せって何?というのがテーマのひとつかなとも思う。
印象的なのは、息子夫婦との同居を拒んで雪に埋もれた我が家に戻ってきた父親が幻想を見るシーンだ。雪をかき分けて玄関に向かう姿は、これからの暮らしの大変さと孤独に立ち向かっていくようだし、本当の気持ちは家族一緒に暮らしたいんだろう。
それにつけてもこの映画のすごいところは、農業問題や労働・就職問題、親子・家族問題、恋愛問題、住宅問題、高齢化問題など実に多くのテーマを盛り込んでいながら、随所に笑いが散りばめられた娯楽作品に仕上がっているところだ。さすがは「男はつらいよ」シリーズの山田洋次と朝間義隆の脚本です。
それに加えて三國連太郎、永瀬正敏、レオナルド熊、田中邦衛、佐藤B作、松村達雄、いかりや長介、和久井映見、原田美枝子、音無美紀子、奈良岡朋子、中村メイ子、他の超豪華な俳優陣による名演技ぶりがあってこそだろう。
ちなみにわたしがいちばん好きなシーンは、飲み屋でいかりや長介が
「やっぱビールは最初の一口がうめェなー」
と言うところ。ほんとうにおいしそうな顔をしている。