農業と映画や本

まえがき
農業にまつわる映画や小説についての感想を綴るコーナー。

「息子」 監督:山田洋次/1991年
これは岩手県の山村に独り暮らす年老いた父と都会に出た息子たちとの交流を描いた映画で、わたしは劇場公開時に観て熱く感動した覚えがある。

映画の中では農家の暮らしや山村の風景も描かれていて、今見てみると当時は気づかなかった小さな発見がいくつかあった。それは……
・父親が畑で作ってる作物はたばこ(だよね?)。
・家の中にある黒い物体は薪ストーブ。
・方言のかんじが秋田のことばにも似ているぞ。
これらの事は秋田に来て暮らしているからこそ分かったことだ。

農業を生業とすることの厳しさについて語る場面もあり、考えさせられる。息子たちも農業を継がずに村を離れているが、かといって都会での生活の方が良いかというと、話はそう単純ではないんだという事も描かれていて、現代における幸せって何?というのがテーマのひとつかなとも思う。
印象的なのは、息子夫婦との同居を拒んで雪に埋もれた我が家に戻ってきた父親が幻想を見るシーンだ。雪をかき分けて玄関に向かう姿は、これからの暮らしの大変さと孤独に立ち向かっていくようだし、本当の気持ちは家族一緒に暮らしたいんだろう。

それにつけてもこの映画のすごいところは、農業問題や労働・就職問題、親子・家族問題、恋愛問題、住宅問題、高齢化問題など実に多くのテーマを盛り込んでいながら、随所に笑いが散りばめられた娯楽作品に仕上がっているところだ。さすがは「男はつらいよ」シリーズの山田洋次と朝間義隆の脚本です。
それに加えて三國連太郎、永瀬正敏、レオナルド熊、田中邦衛、佐藤B作、松村達雄、いかりや長介、和久井映見、原田美枝子、音無美紀子、奈良岡朋子、中村メイ子、他の超豪華な俳優陣による名演技ぶりがあってこそだろう。
ちなみにわたしがいちばん好きなシーンは、飲み屋でいかりや長介が
「やっぱビールは最初の一口がうめェなー」
と言うところ。ほんとうにおいしそうな顔をしている。

息子

(2006.2.26)

「天空の城ラピュタ」 監督:宮崎駿/1986年
この傑作冒険活劇漫画映画の中に気になるシーンがある。
劇中では少ししか触れられていないが、主人公の少女シータはヤギやヤクを家畜として飼っている。小説版「天空の城ラピュタ」によれば、じゃがいもも栽培していることが分かる。
彼女は農家だった。
となると、物語の終盤でシータが口にする
 「土に根をおろし風と共に生きよう
  種と共に冬を越え鳥と共に春を謳おう
  どんなに恐ろしい武器を持っても
  かわいそうなロボットたちを操っても
  土から離れて生きられないのよ」
という台詞も「農業やろうよ」と聞こえなくもない。
と思うのはわたしだけか。

どういうわけか、スタジオジブリの映画には農村風景がよく出てくる。
「田園・里山ハローワーク」(農文協)という本によれば、都市から農山村に向かう人は30〜34才の人が多いとある。その理由はさまざまあると思うが、ちょうどこの世代は多感な思春期の頃にこの映画や「風の谷のナウシカ」「となりのトトロ」「おもひでぽろぽろ」などを観ている人たちだ。意外とそのことも影響しているのかもしれない。
(2006.7.19)

「こどもの時間」 監督:野中真理子/2001年
よくテレビのニュースで、幼稚園のいも掘り体験だとかいちご狩りなどの風景が放送されるが、その様子はいつだって楽しげで、中には異常なまでにはしゃぐ子もいておかしい。農作物の収穫のよろこびは本能的なものなのだろうか。
自分のことを振り返ってみると、やはり幼稚園でさつまいも掘りをやったときの事を憶えており、これがわたしの農業原体験ともいえる。

そんな幼少時の自然とのふれあいの様子を記録した映画がこの映画で、とにかくどの子もいい顔をしている。特に食事をしている子どもたちの表情がいい。こんな顔で日々過ごせたらすばらしい。

「こどもの時間」HP : http://www.motherland.co.jp/inaho/
(2006.7.19)


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