友部正人

ミュージシャン友部正人の魅力について思う存分語りました(長いです)。
興味のある方は読んでみてください!

デビューはわたしが生まれた年
友部正人はそれほど知られている歌手ではない、と思う。
なぜならテレビやラジオで曲がかかることはまれだし、わたしの周りの知人、友人で友部正人を聴いているという人を知らないから。
また、名前が似ていることから友川かずきや南正人と混同されることもあるようだ。

しかし、わたしは最近意外なところで友部正人の名前を目にした。
それはどこかと言うと、劇作家宮沢章夫がネット上に公開している日記の中だ。
わたしは以前から宮沢章夫の書くそのあまりにも面白いエッセイのファンだったので、彼が「高校生のころに影響を受けたのが友部正人」と言っているのを読んで、嬉しいやらびっくりやらで気が動転してしまった。

そんな友部正人は1950年生まれの55才。レコードデビューは1972年だ。
1972年といえばわたしが生まれた年で、だからわたしが30才のときがデビュー30周年で、40になれば40周年ということになる。
そして、友部正人に影響を与えたのがボブ・ディランだ。

予言者
友部正人が自作の歌を作るようになったのは、ボブ・ディランの「Like A Rolling Stone」を聴いたことがきっかけだという。
その事だけでもボブ・ディランの影響の大きさを伺い知ることができるが、友部正人がボブ・ディランについて語った言葉をわたしは忘れることができない。

それは1999年にNHK−BSで放送された「伝説のフォークライブ」という番組(くしくも主題歌は「Like A Rolling Stone」!)の中での出来事だった。この中で友部正人へのインタビューが行われている(インタビュアーは笹野みちる)。

笹野「ボブ・ディランというのはどういう存在だったんですか?」
友部「…予言者。」

よ、予言者?わたしは最初なんのことだか理解できなかったが、もしかしたらインタビュアーもそんな様子だったのだろうか、友部正人は補足をしてくれた。それによるとボブ・ディランとは、
「想像(創造?)の中の人間が可能な事を実現していく人」
「聴いている人にその人の人生の可能性を確信させられる人」だ。

ものすごい影響を受けたことが分かる。

出会い
友部正人は自作の歌をギターを弾きながら歌う。
いまわたしの手元にある友部正人のCDを数えてみたら、シングル・アルバム合わせて21枚あった。えらい数だ。けど、まだ増えていくだろう。

わたしが友部正人の音楽に初めて出会ったのは19才のとき。しかし、最初の印象は決してよいものではなかった。
その年、友部正人は「たま」との共作アルバムを発表した。「たま」のファンだったわたしは「たま」の曲目当てでそのCDを買ったのだが、入っている曲はほとんどすべてが友部正人の曲だった。
全体的にテンポのゆったりとした、曲の抑揚に欠けた感じで、あんまり好きじゃないなあ、ああ買って損したなあという印象だった。

ところが、何度かそのCDをかけているうちにじわりじわりと気持ちよさを感じるようになった。それで別のアルバムを買ってみようかと思うようになり、そのあとは坂を転げ落ちるように虜になっていった。ライブにも足を運ぶようになっていた。

では、彼の魅力は一体なんなのだろうか。
最大の魅力は詞だ。

詩人のひと
友部正人の詞には豊かなイメージを連想させる、心に残るような言葉がたくさんある。わたしはひそかに友部正人は詩人だと思っている。実際、歌詞をまとめた詩集も出版されている。
たとえば、こんなのだ。

顔の真ん中でくるくると
女がひとり踊ります
踊る女は黒装束
想い出の形をしています
ああ この痛さがぼくの言葉です
空が落ちて来る

「空が落ちて来る」(作詞/作曲:友部正人)より

電車は着陸の態勢をととのえて
町のズボンの中に飛び込むいきおい
おもしろい電車
おもしろい電車

「おもしろい電車」(作詞/作曲:友部正人)より

インドの白いかんむりを
頭上にかざして飛び跳ねている
どんな喜びと結婚したら
あんなにしあわせな君になれるのだろう

「奇跡の果実」(作詞/作曲:友部正人)より

毛が生えはじめたばかりの少年たちが
映画館からお気に入りのシーンを万引きしようとしている

「少年とライオン」(作詞/作曲:友部正人)より

夜は君じゃない
夜はぼくじゃない
夜は夜じゃない
夜は言葉さ
どうやって伝えよう

「夜は言葉」(作詞/作曲:友部正人)より

聴いたり口ずさんだりすると、なんだかとてもここちよい。

悲しい歌が無い
デビュー25周年記念ベストアルバムの発売を知らせるちらしの裏面には、
遠藤賢司、永嶋しんじ、おおたか静流、大塚まさじ、矢野誠、甲本ヒロト、どんと、松本隆、町田康、高田渡といった錚々たるメンバーによるメッセージが記されているのだが、甲本ヒロトのコメントがすごかった。
「悲しい歌が無いから、好きです。」

この言葉はわたしに新たな視点を与えてくれた。言われてみると、たしかにそうだ。悲しい歌がない!
友部正人の歌には死を扱った曲がけっこうある。
たとえば「彼女と死」「6月の雨の夜、チルチル・ミチルは」「長井さん」「ゆうれいなんていかしてる」といった曲があり、題材は暗く重いのだけど、どの歌も決して悲しげではない。
「彼女と死」なんかは歌の最後で未来が明るくひらけるようだし、「ゆうれいなんていかしてる」は誰かに殺されてしまったひとを歌ってるけど、どうかと思うほど楽しげだ。

わたしは友部正人と突然段ボールの音楽を聴いているとなぜか元気が出てくるのだが、その理由は案外そんな点にあるのかもしれない。

人のなまえ
友部正人の歌にはよく人名が出てくる。
ちょっと歌詞カードをめくっただけでも、ジーナ・ロロブリジーダやマリア・カラス、モジリアーニ、金子光晴、内田勘太郎、ジェリー・ジェフ・ウォーカー(誰?)、ホアン・ミロ(誰だ?)の名前が見える。
友部正人の歌で名前だけ知って、あとからどんな人かを知ることもあった(きっとホアン・ミロのこともいずれ知るのだろう)。そういうとき、また歌のイメージが変わっておもしろい。

声の魅力
友部正人の声は決して美声ではないが、特徴のあるいい声だ。似てはいないが、森進一のような声をしている。
10年ほど前、声帯に良性の腫瘍ができて手術をするという話があり、そのときはもし歌えなくなったらどうしようと心配になったが、杞憂だったみたい。

これから
友部正人公式サイトによれば、最近レコーディングを行ったということで、また新曲が聴けるのをうれしく思う。
実は5月に秋田でライブがあったのだが、残念ながら仕事で行けなかった。2年くらい行ってないから、そろそろまた生で観たい。
あと宮沢章夫との関係の進展にも注目だ。なんか一緒に仕事しそうな雰囲気がある。

試聴リンク
友部正人の曲が試聴できるサイトのリンクです。興味のある方は聴いてみてください。

「何かを思いつくのを待っている」
「Speak Japanese, American」

(敬称略) 2005.6.11

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