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▼最終更新日 2004.12.20
▼読書中 「本日の雑談・1」小林よしのり・西部邁

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犯人に告ぐ 雫井脩介  双葉社 初版2004.7 読了2004.12.20 ★★★★☆  
 かつて誘拐犯を目前にして取り逃がし、被害児童が殺害される という最悪の結果を 招いた過去を持つ巻島に、再び誘拐事件捜査の指示が下る。今回の捜査は、前代未聞のテレビ公開捜査だった。 「バッドマン」と自称する犯人は、巻島の呼びかけに応えるのか…。

 「ニュースナイトアイズ」=「ニュースステーション」?「ニュースライブ」=「ニュース23」?…かどうかはともかくとして、舞台が非常に親しみのあるニュース番組なので、場面が鮮明に 思い浮かぶ。かつ、テレビ局間の視聴率争いや捜査陣内部の抵抗勢力との軋轢など、興味深い 伏線をうまく織り交ぜてあり、読み始めると止まらない。クライマックスは、巻島の『<バッドマン>に告ぐ。』 から始まる名台詞だと思うが、個人的には、 巻島が完璧に植草を罠にかけて嵌める第八章が最高におもしろかった! 読んでいてこれだけ高揚した小説は久しぶり。スカッとします。 唯一残念なのは、肝心のバッドマンが尻尾を出してから逮捕までのやり取りに捻りが ないところか…。

巻島…特別捜査官
植草…巻島の上司
バッドマン…誘拐犯


  
考える技術 大前研一  講談社 2004.12.15 ★★★★☆  
 この、不透明な、従来の風習が通じない時代においては、思考することに怠惰な者に与えられる権利は多くない。 論理的な思考はもちろん、その論理の構成要素となる事実の質も重要。 末端の現場で集めた事実をもとに構築された論理は反論を許さない強さを備えるし、結果も正しい。 「誰々が唱えている説だから」と思考停止するのではなく、自然科学に相対するときのように「それはなぜ?」 を繰り返すべし。

 大半が、経歴や、自らの方法論がいかに有用かといういわば手前味噌な記載で占められているけれど、 論理が非常に明快だし、根拠となる材料に説得力があるので、微塵も嫌味っぽさを感じない。 この本を読むと、政府、マスコミ を始めとして、今の日本にいかに「非論理的」なモノが蔓延しているかがわかる。
 この人が総理大臣ならいいのに。


頭がいい人、悪い人の話し方 樋口裕一  PHP 2004.9.5   
 読み進めるうちに、本当にイヤな奴と話しているかのような不快感に苛まれて、途中でやめてしまった。


ヒレハレ草 太田光  幻冬社文庫 2004.8.30 ★★★  
 不思議、シュール、アホらしい。太田らしいエッセイです。


死の壁 養老孟司  新書 2004.8.20 ★★★★  
 本書は『バカの壁』で提示された内容(情報が不変のものなのであって、 人は不変ではなく絶えず変化するものである)が基礎となっている。

 現代の日本人は、自らを「死と隔絶された、情報としてやりとりされる概念である」と思い込んでいるのかもしれない。 死や死体が身近でなく、これらを避けて通る風習が根付いている。
 なぜ人を殺してはいけないか? →人はロケットと蝿のどちらに近いかといえば蝿に近いのであって、 人の手によってゼロから作り出すことのできない崇高なシステムであるから。
 自殺はなぜいけないか? →上述の理由+周囲への影響。人は自ら命を絶つ権利を有しない。
 身近な人の死を経験することを含めて、人生である。仕方ない。覚悟。



<疑う力>の習慣術 和田秀樹  PHP 2004.8.13   
 「新聞は疑って読め」の一言で終わる内容を、具体例で水増しして1冊の本にしたものでした。 とはいえ論旨はうなずける。


生き方 稲盛和夫  サンマーク出版 2004.8.10 ★★  
 論旨は、真摯につつましく生きていきましょう、ということだと思うが、理想に走りすぎているというか、 自分の中だけで完結しちゃってるというか、世の実情に合ってないよなぁ、と思う部分も幾つか。

 教育について
 ――「『個性教育』を重視するあまり、 人間として身につけるべき最低限のルールやモラルを教えない」
これはその通りだと思う。養老猛司『バカの壁』にも、「個性の錯誤」として同趣旨の記述がある。
 だからといって、
 ――「足るを知る」べし 
と来られても。 こういう精神論は「どうして?」の答えに説得力がない。
 ――「世界連邦政府構想」
?? 今の日本の外交を見れば、 中途半端なグローバルスタンダード志向が 国の立脚する土台をふにゃふにゃにしてるようにしか見えない。国としてのアイデンティティーを確固たる ものにするのが先決だと思うが…。
 ――「いまこそ経済成長至上主義に代わる新しい 国の理念・個人の生き方の指針を打ち立てる必要があります」  
…漠然としてよくわからなかったが、国の輪郭をはっきりさせろ、ということなら 「世界連邦政府構想」なるものと相反するものでしょう。 自己矛盾起こしてませんか…

って、こういう啓蒙書にたて突いても仕方ないですかねぇ。。。


100億稼ぐ仕事術 堀江貴文  ソフトバンク  2004.8.1 ★★  
 仕事術、とは言いながら、大半は氏の自叙伝だ。忙しい割によく寝る人だなぁ、というのが 印象に残る。
 IT企業の社長というだけあって、ツールの使い方やこだわりはおもしろい。 といってもそのまま参考にできるのは限られた職種の人だとは思うが。


邪魔 奥田英朗  講談社  2004.7.15 ★★★★  
 渡辺裕輔は、その日も仲間たちとオヤジ狩りに繰り出していた。ところが2人目に狙ったのが 運悪く本城署の刑事・九野薫だった。 一方、その九野薫は、自動車用品メーカー「ハイテックス」の放火事件の捜査を担当する。 ごく平穏な家庭に暮らす及川恭子は、ハイテックス社員である夫・茂則が放火事件の 第一発見者となったことから微妙に人生の歯車が狂い始める…。

 立場も年齢も違う3人にスポットを当て、それぞれがお互いに絡み合いながら 泥沼にはまっていく構成は、前作「最悪」と同じだ。 とにかく情景・心理とも細かな描写が非常にリアルで、読み手にまで「追い詰められ感」 がひしひしと伝わってくる。 読み終わったからといって何かを得る本ではないかもしれないが、 他人の救いようのない日常を堂々と覗き見るという、非日常体験の世界へ引き入れる力はこの筆者ならではだ。
 そこには確かに3人の人生がある。

渡辺裕輔…不良高校生
九野薫…本城署刑事
及川恭子…茂則の妻
及川茂則…ハイテックス社員
大倉…清和会幹部
井上…九野の部下
小室…共産党系活動家


重力ピエロ 伊坂幸太郎  新潮社  2004.7.2 ★★★☆  
 泉水は仙台の遺伝子調査会社で働いている。 弟の春は、その出生の秘密から性的なものをとても忌み嫌っている。 そんな兄弟の住む町で、連続放火事件が起こっていた。 なぜか放火現場の近くには必ずグラフィティアートが落書きしてあるのだった。 泉水と春は事件の謎について調査を始める。

 ミステリではあるけれど、とても文学色が強い。 洒落た言い回しや兄弟の会話が、やや平凡な?ミステリ部を補って余りある。 最後はじーんと来ます。 一見何のことやらさっぱりわからない「重力ピエロ」という言葉が、読み終わる頃にはスーッと 心に沁みるから不思議だ。
 激しいネタバレ→結局春は殺人を犯し、 泉水はそれを黙認するわけだが、全体を 通してそれに納得できるだけの背景が説得力を持って横たわっている。 貴志祐介よりはずっとこっちの方がいい。

 ――「正しい選択をしたかどうかなんて、死ぬまで判るはずがない。だからこそ、 自分で考えろ! きっと、そういうことだ。神は一人一人の内にいる。ガンジーもそう言った。」

泉水…遺伝子調査会社社員
春…泉水の弟
郷田順子…JLG所属員
葛城…自営業
黒澤…私立探偵


陽気なギャングが地球を回す 伊坂幸太郎  祥伝社  2004.6.26 ★★★★  
 成瀬(嘘発見器)雪子(人間ストップウオッチ)久遠(天才スリ)響野(おしゃべり)。 凄い特技を持った四人が今日も銀行強盗を企てる。計画は完璧だ。 いつもとちょっと違うのは、雪子の様子が少し変なことだが…。

 軽〜いタッチの銀行強盗小説。気の利いた(屁理屈だらけの!?)会話が楽しい。
 テンポがいい。 軽いだけじゃなくプロット自体も凄く考えられていて、伏線は効果的に張られているし、 要所要所で読み手を驚かせてくれるのもいい。 痛快読書を堪能しました。
 気になるのは「成瀬I」「雪子III」みたいな章題で、まぁ確かにその章はその人の主観 で書かれているんだけれど、さしてそれが特徴になっているわけでもなく…。 この作者の洒落たセンスの章題を見たかった気がする。
 あと、裏表紙のあらすじは読まないほうがいいです。結構なネタバレですよねこれ。

成瀬…銀行強盗リーダー
雪子…銀行強盗メンバー
久遠…銀行強盗メンバー
響野…銀行強盗メンバー
地道…雪子の元夫
祥子…響野の妻
慎一…雪子の息子


空中ブランコ 奥田英朗  文藝春秋  2004.6.12 ★★★★  
 山下公平は、サーカス団の空中ブランコ第一人者である。 ところが、内田と組んだときに必ず失敗するようになった。きっとわざとだ。 この自分が何か気に障ることでもしたというのか? 心身ともに疲れていた山下は勧められるまま伊良部総合病院の精神科を訪れる。 出てきたのは、外見は白いアザラシ、中身は5歳児のような男だった。(=「空中ブランコ」他4編)

 イン・ザ・プールに引き続き、超絶キャラ精神科医伊良部が登場。 今回の患者も、珍病のオンパレードだ。先端恐怖症のやくざ、ノーコン病のプロ野球選手、公衆の面前で 学部長のかつらを 取りたくなっちゃう医師、などなど。
 読んでいると、患者もろともおバカな伊良部の世界に引き込まれて開放された気分になる。 気分転換にはもってこいじゃないかなぁ。
 好きなものは好き、嫌なものは嫌、やりたいことはやる、やりたくないことはやらない。
伊良部は、ある意味傾奇者っぽい。ただ、自分でそうと意識してない。そこがまたおちゃめだ。 ベクトル的には、大きさこそ全然違うが方向は「一夢庵風流紀」の前田慶次郎と重なってるような気がする。

伊良部一郎 …精神科医
マユミ …看護婦


イン・ザ・プール 奥田英朗  文藝春秋  2004.6.5 ★★★★☆  
 ストレス性の心身症に悩む大森和夫は、伊良部総合病院の精神科を紹介される。 主治医・伊良部一郎は色白のデブで、欲望の赴くままに行動する子供のような男だった。 一瞬来た事を後悔するが、伊良部とのふとした会話から始めた水泳が、大森に 思いもかけない変化をもたらす。(=「イン・ザ・プール」 他全5編)

 伊良部総合病院の精神科にやってくるのは、どれも一癖ある心因性の病の患者ばかりだ けれど、これは現代人が抱えている「歪み」をちょっと誇張しただけで、 程度の差こそあれ誰でも持っている側面なのかもしれない。 例えば、一日200回もメールをやりとりしてだれかと繋がっていないと気が気でない人…なんて 実際よく話題になっている。
 そんな彼らをブットビ精神科医伊良部が迎え撃つ。 患者と伊良部の掛け合いがサイコーです。
 何だかんだ言いつつ癒されていく患者たち。 だけでなく、読んでる自分も何か解放された気分になった。ああ、これでいいんだよな、というか。
 「人の目を気にして本来の自分を曲げてもいいことないよ」ちゅう メッセージを感じます。 これと正反対に位置する伊良部によって浮き彫りになっている感じ。
 お笑い、と銘打ってあるけれど、これは癒し系の本です。

伊良部一郎 …精神科医
マユミ …看護婦


――「怒鳴りつけてやりたい衝動に駆られる。一方で、この男の非常識ぶりが羨ましくもあった。 他人にどう見られているかをまったくかまっていない。」
――「伊良部の屈託のない笑顔を見て、雄太は思った。この男は、人に好かれたいとか嫌われたいとか 思っていない。子供と一緒で、他人のペースに合わせるということをしない。だから一人でも 平気なのだ。」


山猫の夏 船戸与一  講談社文庫  2004.5.29 ★★☆  
 ブラジル東北部の小さな町エクルウは実質的にビーステルフェルト家とアンドラーデ家に支配 されており、両家の間では血なまぐさい争いが耐えなかった。 そんな町に「山猫」と名乗る日本人がふらりと現れる。 両家間の駆け落ち騒動に関する探索を依頼されたというが、その立ち居振る舞いは 並みの人間のそれではなかった。 山猫の真の狙いは…

 戦闘、駆引き、統率、と何でも完璧にこなす「山猫」こと弓削一徳が、両家の争い (と言ってもヤマダ電気とコジマ電気の争いとはわけが違い、そこには血しぶきが舞い死屍が 塁をなす)をまたにかけて暗躍する。
 山猫はものすごく魅力的に描かれているんだけれど、あまりに完璧すぎて面白みがない。 プロットも、映画の脚本のような出来事の羅列に終始し、ハードボイルドというよりは おとぎ話を読んでいるような感覚に陥ってしまった。
 初の船戸与一、期待が大きかっただけに肩透かしを喰らった感があります。合わないのかなぁ。



黒い家 貴志祐介  角川ホラー文庫  2004.5.22 ★★★★  
 生命保険会社で保険金の支払い査定を担当している若槻慎二は、ある日、顧客である 菰田重徳の自宅へ呼び出される。 営業担当者の対応に関するクレームのはずだったが、そこで若槻は期せずして子供の首吊り死体の 第一発見者となる。菰田の不審な言動から保険金殺人と確信した若槻は、独自に 調査を進める。しかし、その先には想像を絶する悪夢が待っていた…

 保険金にまつわる殺人事件がテーマである。 制度の問題点や、それを悪用する人間の暗部が一応テーマになっている。 が、何より、狂気の人間をここまで恐ろしく描けるのか、という筆力にとにかく脱帽である。 「リング」より「らせん」より「パラサイト・イブ」より「火の粉」より さらに怖い。今まで読んだ本の中でぴか一に怖かった…。 というよりむしろキモチワルイ。 想像力が豊かな人や、書中の世界を現実に引きずりやすい人は読まないほうが良いかもしれない。 しかしホラー小説としては裏を返せばそれが評価の高さであり…の星4.5個です。

若槻慎二 …生命保険会社社員
菰田重徳 …若槻の顧客
菰田幸子 …菰田重徳の妻


硝子のハンマー 貴志祐介  角川書店  2004.5.15 ★★★  
 六本木センタービルの最上12階で、ベイリーフ社社長が何者かに殺害された。 現場の社長室は出入口に監視カメラが備えられており、事件当時人の出入りはなく完全な密室だった。 犯人は社内の人物なのか。犯行の手口は?動機は? 被疑者・久永専務についた弁護士の青砥純子は、防犯コンサルタントの榎本とともに 事件の真相解明に挑む。

 前半は密室の舞台装置の説明と、手口の仮説・検証の繰り返しで若干退屈だ。 それらの仮説はかなり無理があって、しかも後々伏線として効いてくるわけでもない
 この著者はこういうミステリは苦手なのかなぁ、と思い始めたころで第2部に入ったが、 ここでガラッと雰囲気が変わる。 ある人物の視点から事件が再構築されるのだが、スピード感・緊張感があり読む手が とまらなくなった。 最終的なトリックも納得のいくもので、前半はここへ着地するための序章であったことが よくわかる。
 しかし、ネタバレ→ あそこまで準備をしてまで赤の他人を殺さなければならなかった 動機がまったく伝わってこなかった。 ダイヤを奪って逃げればそれでいいじゃん…
 「青の炎」もそうだったけれど、私はこの筆者の描く若者の、 犯罪を正当化する思考や暴走に全然共感できない。軽すぎるんだよな


榎本径 …防犯コンサルタント
青砥純子 …弁護士
頴原雅樹 …「ベイリーフ」副社長
久永篤二 …「ベイリーフ」専務
沢田正憲 …警備員
椎名章 …窓清掃員


ぼんくら 宮部みゆき  講談社文庫  2004.5.8 ★★☆  
 江戸・鉄瓶長屋で八百屋の太助が殺された。それを苦に差配人の久兵衛が姿を消し、 後釜として佐吉がやってくる。しかし、その後長屋の店子が次々と店をたたんで 出て行ってしまう。この長屋で何が起っているのか…。ぼんくら同心・平四郎と甥の弓之助が 事件の真相に迫る。

 太助殺しで華々しく(?)幕を上げるが、全体としてはのんびりゆったりの江戸風情を満喫 しながら謎解きが楽しめる、スローな時代物だ。 筆者お得意の、温かみのある優しい文章は読んでいて心地良い。
 ただ、ミステリーとして見るとかなり間延びした感は否めないかな。

筒井平四郎 …同心
弓之助 …平四郎の甥
お徳 …煮売屋
佐吉 …鉄瓶長屋差配人
葵 …佐吉の母


臨場 横山秀夫  光文社  2004.5.1 ★★★★☆  
 検視官心得の一之瀬のもとに検死の依頼が来た。しかし詳細を見た一之瀬は言葉を失う。 自殺者の身元は相沢ゆかり。かつての不倫相手だった。これが万一他殺であれば自分にも容疑がかかる。 しかし幸いにも現場にはそれらしい痕跡はなく、一之瀬は検視の結果自殺と断定する。ところが 「終身検視官」と謳われた伝説の検視官、倉石の見解は異なっていた…。(=「赤い名詞」他七編)

 検視に関しては誰よりも確かな目を持ち、型破りな振る舞いで上司を屁とも思わない検視官・倉石義男 を主人公とした警察短編集。臨場とは、検視官が現場に臨むことを言う。
 倉石は、筆者の作品には珍しく、かなり癖のある濃いキャラクタである。 しかしそれと人情味溢れる一面を巧く絡ませて、今作も好調。警察や報道業界の描写は言うに及ばず、 短歌に込められた謎、多重人格、密室、DNA鑑定など、アイテムは 豊富だ。感涙を誘う「餞」などはもう至高の域に達している。
 自らの鑑識眼と信念を貫き、組織に染まらない倉石という像は、会社組織に組み入れられている身 としては物凄く魅力的に写った。こんな人がいれば、そりゃ部下に慕われるだろう。
 たとえ見た目がやくざでも。

倉石義男 …捜査一課調査官
一之瀬和之 …検視官担当調査官心得
福園 …刑事課捜査係長
高嶋 …捜査一課長
小松崎 …刑事部長


ワイルド・ソウル 垣根涼介  幻冬社  2004.4.24 ★★★  
 1961年、衛藤は妻、弟とともにブラジル・アマゾン奥地へ向かう。 入植地はすでに開墾され灌漑用水や家も用意されているという謳い文句を信じ、政府の移民政策に乗った。 しかしあてがわれた土地はまさに未開のジャングルだった。政府の詐欺行為――。しかし衛藤らには そこで生き延びていくほか選択肢がなかった。原住民さながらの生活の中、病気や天災により 入植者は次々に命を落とす。
 そして四十年後。衛藤ら四人は政府への復讐計画を進めていた。


 一章のアマゾン入植地での苦闘の描写が真に迫っていて読んでいて息苦しくなる程だ。素晴らしい。 ただ、復讐編でのケイの性格の軽さがその雰囲気を打ち消してしまっているようで惜しい。 もちろんブラジリアンの陽気さ前向きさは本編のテーマの一つで不可欠なのは分かるのだが。。。復讐計画に 当の衛藤の意思があまり伝わってこない。 純粋な日系一世の復讐劇も読んでみたかった。
 ほんのチョイ役だが、秋津という管理官の官僚組織なにするものぞ的なキャラクタに好感をもった。
 ちなみに、首都高・走り屋・チューン・FD(RX-7)…といったキーワードに感応する人にはゾクっとくる 場面がある。一読してみるのもいいかも。

――「その命、後生大事に棺桶まで持ってゆくか?」
「何を言う」
「言葉どおりだ。自分可愛さに手一杯だ。だからいつも憂鬱そうな顔をぶら下げている。おまえのことだ」
「…ふん」
「それじゃ、あまりいい死に目には遭えんぞ」


衛藤 …アマゾン入植者
野口 …アマゾン入植者
山本 …アマゾン入植者
ノグチ=カルロス=ケイイチ …野口の息子
松尾 …宝石店店長
井上貴子 …NBS・TV ディレクター


幻夜 東野圭吾  集英社  2004.4.18 ★★★★  
 水原雅也は、金属加工会社の倒産を苦に自殺した父の通夜の翌朝、大地震に襲われる。 そのどさくさの中、借金返済を迫られていた叔父・米倉俊郎の頭に迷いなく瓦を叩きつける。 ところが、後ろに女が立っているのに気付くのだった…。 それが雅也と新海美冬の、決して日の目を見ることのない人生の始まりだった。周りで 起こる不自然な出来事に、美冬はどこまで関与しているのか。 彼女の正体を暴くべく追い詰めようとする者は、どこまで近づくことができるのか…。

 謎の女・新海美冬と彼女に魅せられた男たちをめぐる事件がテンポよく展開していく。 巧みに伏線を張り、かといってそれを引っ張りすぎずに小気味よく効かせながら謎が開示されていく。 次へ次へと読者を惹きつける力が強い本だ。ページを繰る手が止まらない。シドニー・シェルダンの作品を彷彿とさせる。
 ただし、ネタバレ→新海美冬があまりにも完璧すぎるために、かえって物語全体のリアリティを損なっている 感はある。
 全ラウンドで効果的なパンチが連続的に決まるもののKOには至らず。 しかし結果は大差で判定勝ち。そんな作品だ。

水原雅也 
新海美冬 
浜中洋一 …宝飾店「華屋」
加藤亘 …警視庁刑事
青江真一郎 …美容室「モン・アミ」美容師
曽我孝道 …美冬の父の元部下
秋村隆治 …宝飾店「華屋」社長


ボストン、沈黙の街 ウィリアム・ランディ  ハヤカワ文庫  2004.4.11 ★★★  
 田舎町で若くして警察署長になったベン・トルーマンは、湖畔のロッジで地方検事補の 死体を発見する。引退刑事ジョン・ケリーらの助けを借りつつ、容疑のかかる麻薬組織を追うためボストンに 乗り込むベン。しかし捜査は難航、新たな犠牲も発生した。さらに、十年前のトゥルーデル殺害事件、二十年前のファスーロ の事件との関連も捜査線上に上がってくる。

 前半は、殺人捜査は全く素人の田舎警察署長が、ボストンで同僚・検事・麻薬組織らとの駆け引きの中で 成長していく物語。後半は、証人の殺害、容疑者と目されていたブラクストンとの奇妙な交流ボストン市警ギトゥンスの ギリギリのやり口などから大きく話が展開し、最後は意外な結末が待っている。
 どうにも主人公が中途半端な印象で魅力を感じることができなかったのは、この オチに持っていくためなんだと思う。確かに切れ味があって驚く。が、その構成自体に納得がいかなかった。 ネタバレ→ 自分の父親が犯人だと知りながら捜査に加わっておいて、成長物語もなにもないよなぁ。。。


僕に踏まれた町と僕が踏まれた町 中島らも  集英社文庫  2004.4.3 ★★★★  
 灘高時代〜浪人時代〜大阪芸大時代の出来事を中心としたエッセイ。

 本当に久しぶりに中島らもを読んだ。「明るい悩み相談室」などを読んだのは確か中学か高校のときだったから、 かれこれ10年以上たつなぁ。  超有名進学校に入りながらも「課外活動」に力を入れすぎ、落ちこぼれていく。そんな中で起こったおバカな 出来事について綴っている。
 しょーもないというか、肩の力を抜いてくれる笑いが大半だが、 その中でキラリと光る一文があちこちにちりばめられている。 それらはやや人生踏み外した感のある視点からの素朴で素直な感情であり、共感できるもの、考えさせられる ものが多かった。 例えば友人が自殺してしまったくだりとか、 大学入試の面接官に対する憤りとか。

 最後に個人的な爆笑ポイントベスト3を次にあげておきます。
「ウンコがっ!」(「筆談のこと」より)
いわゆる「おっしゃる意味がよくわかりかねますが」という感じだった。 (「入試地獄2」より)
「なぁんぼかぁ〜っ」(「浪々の身1」より)


第三の時効 横山秀夫  集英社  2004.3.29 ★★★★☆  
 捜査一課一班の森は、本間敦志殺害容疑のかかった武内利晴を追っていた。 武内は逃亡を続け時効が迫っていたが、一週間の国外 逃亡期間はカウントされず7日遅れて真実の「第二の時効」がやってくる。 もし武内がそれを知らずに連絡をとってくれば…。 しかし捜査を仕切る二班の楠見は「第三の時効」の存在を示唆する。 海外渡航以外に時効の進行を止める方法はあるのか?(=第三の時効)

 F県警刑事部捜査第一課を舞台にした警察短編小説集。そのため共通の登場人物が数多く出てくるが、立場が様々に 異なる人物(下表中赤字)の視点で描かれているために全体を通して奥行き・立体感のある作品になっている (とは、先に読んだ彼女の評。言い得て妙なり!)。
 犯人を追い詰める頭脳と行動力、犯罪を憎む激しい感情、他班に先んじるための身内同士の熾烈な攻防、 などを緻密な構成で読ませつつも最後は切れ味鋭い謎解きが待っている。 ぜいたくな本だ。こういう作品に出会うためにミステリを読んでいるんだよなぁ、と思わせる一冊だった。

刑事部(尾関部長)
捜査第一課(田畑課長) 暴力団対策課(湯浅課長)
一班(朽木 二班(楠見) 三班(村瀬特捜班(小浜)
 島津 田中 矢代植草 東出 石上 氏家


三色ボールペン情報活用術 齋藤孝  角川oneテーマ21  2004.3.21 ★★★  
赤…客観的に見て、最も重要な箇所
青…客観的に見て、まぁ重要な箇所
緑…主観的に見て、自分がおもしろいと感じたり、興味を抱いたりした箇所

 この3つのルールにのっとって資料にマークをつける。すると読みながらにしてその資料を自分の"内側の" ものにし、資料をレジュメ化することができる。というもの。
 これだけだとなにやら半信半疑な感じだが、巻頭のカラーページに実際の例が載っており、 それを見ると確かに納得なのである。手帳のスケジュール管理にも応用している。すべて著者の言うとおり にする必要はないかもしれないが、客観的に重要・主観的におもしろい、という趣旨で色分けチェックするのは おもしろそうだ。一回やってみよう。
 しかしこの本を手に取った動機は、何を隠そう自分の上司が赤青緑の三色ボールペンをもっていたからなのです。 しっかり活用しているのかなぁ??


バカの壁 養老孟司  新潮新書  2004.3.21 ★★★★  
 書名から、「バカには何を言ってもわからんのです」みたいな突き放すようなことが書いてあるんだろう、 さて私はどのくらいバカの壁を持ってるのか、と読み始めたが…
 実際は意識中心=脳中心の偏った社会に警鐘を鳴らす内容になっている。
ある一つの価値観を絶対として自らを縛り付けるのではなく、 「常識=コモンセンス」をよりどころとした社会にしませんか、「人間ならばこうだろう」という感覚を 大事にしませんか、という。
 最後の章にあるように、本書は一元論、二元論の対比としてとらえるとわかりやすいかもしれない(もちろん筆者 は二元論)

一元論二元論
意識意識・無意識
科学的推論=科学的事実科学的推論≠科学的事実
反証されうるあいまいさが残る
個性は意識で発揮個性は身体で発揮
情報が変化、人は不変情報は不変、人が変化
一神教多神教


このくにの行方 筑紫哲也 集英社  2004.3.9 ★★★  
ニュース23での対論を本にしたもの。
カルロス・ゴーン/養老孟司/加藤周一/緒方貞子/奥田碩/野中広務/北野武/出井伸之

   読んでいておもしろかったのは養老・加藤・北野。何がいいかというと、組織ちゅうものの匂いがしない。組織を通さない、その人個人の自由な経験からくる人間観というか日本観というか、新鮮だし説得力がある。特に養老孟司がいい。「情報は刻々変わるというが、実は不変のものである」というのは、本当に目から鱗だ。だから「人間の方が変われば良い(いや、人間とは変わるものである)」。解剖学をやっていてどうしてそういう考えに至ったかは知らないけれど、説得力があって同時にある種の懐かしさみたいなものを感じさせる人間哲学だ。なんといいますかね、健全な感じがするんですよ。一匹の生き物としての人間とはどういうもんかという。
 ゴーン・奥田・出井の経営者組は、上とは対照的に、組織を通してマクロな視点から俯瞰した日本論だ。
 野中広務が意外と(失敬…)まっとうなことを言っているのに驚く。まっとうな、というのは養老孟司的な健全さを感じるという意味で。すごく悲観的というところが違うけれども(汗)。「どうして日本人というのは、自分のことだけを考えて、相手の痛みがわからないのか、不思議な感じがします。ひとつの風が吹くとひとつの方向になびいてしまう怖さがあります」。結局引退して今の政治にさじを投げてしまったわけだが、そうされてみるとかえって不安である。


壬生義士伝 浅田次郎 文春文庫  2004.3.2 ★★★★  
 南部藩士・吉村貫一郎は、貧しさから脱藩し新選組に入隊した。人から守銭奴呼ばわりされても妻子への仕送りのために生活を切り詰め、冷徹に人斬りの仕事をこなす貫一郎の真意は。貫一郎とその息子嘉一郎の生き方を、当時を知る者の回想で紡ぐ。

 題名から、新選組の切った張ったの話かと思いきゃ、そこは浅田次郎、心にしみる作品となっております。
 苦学の末に剣も学も一流となった吉村貫一郎だったが、困窮を極める南部藩の足軽二駄二人扶持ではとても一家を食わせてやれない。かといって金策のために脱藩しようものなら国賊のそしりを免れない――。
 このような、何かを犠牲にしなければならない窮地で何を第一義として行動するのか。貫一郎は、守銭奴と言われても人斬りと言われても、「最愛の妻子のために尽くす」という筋を一本通す。当時では考え難い道なのだが、そんなことは気にもかけずに自らの信念に基づいて行動する。そういう芯を持ってる人ァ強いってことだなぁ。
 世の中は、その時代時代によって様々な社会通念・常識があって、それはしばしば理不尽で歪んだものだったりする。けれども、おのおのが持つべき「義」は 厳然としてあり、社会の流れに左右されずに、例え常識に反してでもその「義」を通すのが男というものである。そしてその「義」とは、「忠義」ではなく「人道正義」である。そんなことを訴えかけられた気がした。
 
 その他、語り部たちのサイドストーリーも豊富でどれも味がある。特に新選組の活動の描写は、幕末好きな私には◎だった。幹部の一人である「斎藤一」に語らせてしまうあたり渋い。竜馬暗殺下手人に関する一考察もあります。

 以下引用です。

――佐助の、貫一郎と次郎衛についての語り
 武士道なんかくそくらえだ。男が男の道を貫いて生きれァ、ああいう見事な死に方ができるんだって、私ァ今も信じてますから。
 男なら男らしく生きなせえよ。潔く死ぬんじゃねえ。潔く生きるんだ。潔く生きるてえのは、てめえの分を全うするってこってす。てめえが今やらにゃならねえこと、てめえがやらにゃ誰もやらねえ、てめえにしかできねえことを、きっちりとやりとげなせえ。
 そうすりゃ誰だって、立派な男になれる。
 次郎衛様も吉村さんも、それぞれの分をきっちりと全うなせえやした。私に言わせりゃどちらさんも、男の中の男でござんす。

――次郎衛の書簡
 本邦日本者 古来以義至上之徳目ト為シ候也 乍併 先人以意趣 義之一字ヲ剽盗変改セシメ義道即忠義ト相定メ候 愚也哉 如斯詭弁天下之謬ニテ御座候 義之本領ハ正義ノ他無之 人道正義之謂ニテ御座候  義ノ一度喪失セバ 必至 人身荒穢シ 文化文明之興隆如何不拘 国殆ト存ジ候 人道正義ノ道扨置テ 何ノ繁栄欣喜有之候也  日本男子 身命不惜妻子息女ニ給尽御事 断テ非賤卑 断テ義挙存ジ候


パーフェクト・プラン 柳原慧 宝島社  2004.2.20 ★★  
 代理母としてかつて出産した子供が虐待されていることを知り、小田桐良江は発作的に連れ出してしまう。これを知った田代幸司、赤星サトル、張龍生はこの子を保護しつつ身代金を受け取るかつてない方法を考え出す。

 幼児虐待、ネットトレーディング、クラッカー、Eメール、代理母などなど、今風なネタをテンコ盛りにしたプロットは斬新で、誘拐のアイデアもおもしろかった。ただ、どれも深く掘り下げているわけではないので上滑りした感はあった。
 しかし何より読んでいて気になったのは、人物の描き込みの甘さだ。幸司と赤星はキャラが酷似しているように感じるし、刑事の鈴村馨の登場シーンなどは、男なのか女なのかすらも描かれずに終わっている。人を描いている部分や会話が、とにかく軽い。幼児虐待という重いテーマを取り上げているのので余計にそう感じるのかもしれない。また、この人の癖なのか、ひとまとまりの文章の中で頻繁に主観となる人物が変わる。これはものすごく読みづらいし、稚拙な印象を受ける。例えば236ページや243ページ。294〜295ページなどはもうよくわかりません(汗)。その他、ツッコミ所はいろいろとある作品である。
 とまぁ勝手なことを書いてしまったが、構想や個々のアイテムはすごくおもしろかった。それだけに、もったいないなぁ、と思ったわけです。


竜馬がゆく 司馬遼太郎 文春文庫  2004.2.9   
 久々に再読しています。あらすじのみですが感想は八巻読み終わった後で。作品内の年表も付けてみましたが歴史小説とはいえネタバレを含みますのでご注意下さい。わけあって二巻から読んでますがその内一巻も読みます…

(二巻)
 尊皇攘夷の機運は安政の大獄によりしぼむかに見えたが、大老井伊直弼が桜田門外で誅殺され、時勢は混沌とする。土佐藩では武市半平太が奸物吉田東洋を暗殺し藩全体を勤王へ傾けようと策略を巡らす。しかし竜馬はそれに参画せず、佐幕派の老公・上士が牛耳る土佐の体質に限界を感じて脱藩を決意する。一方、長州では久坂玄瑞、桂小五郎、薩摩では大久保利通らが勤王倒幕の気運を高めんと活動していた。

安政五年(1858年)
 竜馬、土佐藩邸にて中岡慎太郎をしたたかに殴る。
 大老井伊直弼、反井伊派の弾圧を始める(安政の大獄)。
 竜馬、江戸留学を終え土佐へ帰郷す。水原播磨介を警護するも失敗。
 竜馬、京都にてお田鶴さまと再開す。
 竜馬、河田小龍と緒外国の法律・産業について対話す。
安政六年(1859年)
 土佐上士・郷士の間に刃傷事件が勃発、池田寅之進切腹す。
万延元年(1860年)
 大老井伊直弼、桜田門外にて水戸・薩摩の志士らに暗殺さる。
 武市半平太、土佐勤王党を結成す。
文久元年(1861年)
 竜馬、讃州丸亀にて松木善十郎と邂逅す。
文久二年(1862年)
 竜馬、長州にて久坂玄瑞と時勢を談議す。
 竜馬、土佐藩を脱藩す。
 吉田東洋、土佐勤王党の那須信吾らに暗殺さる。


葉桜の季節に君を想うということ 歌野晶午 文藝春秋  2004.1.23 ★★★★   
 元私立探偵の成瀬将虎は、今はパソコン教室の講師や警備員などをこなす”なんでもやってやろう屋”である。ある日、ジム仲間の女性から身内のひき逃げ事件の調査を依頼される。事故には怪しい霊感商法を展開する「蓬莱倶楽部」がからんでいるようだが…。同じ頃、将虎は、駅のホームでの自殺を助けたのをきっかけに麻宮さくらと出会う。

 やや古臭いタイトルとは裏腹に、ひき逃げ事件の調査、人探し、恋愛、探偵時代の回顧などを軽快なテンポでつなぐ。とても読みやすい。だがそれゆえに自然とミスリードに乗ってしまい…最後に用意された大仕掛けにはしてやられました!真相が判明してから「あぁどれもこれも巧妙な伏線だったわけか」と振りかえることになるが、その落差が半端じゃない。この感触は、他の作品でいうとクリスティーの「アクロイド殺人事件」や、殊能将之の「ハサミ男」を彷彿とさせるものがあった(それ以上かも)。一つ腑に落ちないのは、昔のやくざ探偵の事件がそれだけで完結していて現在のストーリーになんら絡んでこないところ。近い過去と思わせておいて実は大昔だった、という意味で味のあるサイドストーリーではあるけれど…。



2003年ベスト5
1位 神々の山嶺 夢枕獏  集英社文庫 ★★★★★
2位 半落ち 横山秀夫  講談社 ★★★★★
3位 亡国のイージス 福井晴敏  講談社文庫 ★★★★
4位 のんびり行こうぜ 野田知佑  新潮文庫 ★★★★
5位 クライマーズ・ハイ  横山秀夫 文藝春秋  ★★★★

クライマーズ・ハイ 横山秀夫 文藝春秋 読了2003.9.30 ★★★★  
 地方新聞の記者悠木は、同僚の安西とともに谷川岳衝立山に登る計画を立てていた。しかしその前夜、日航ジャンボ機が墜落、混乱の中悠木は全権デスクに任命された。一方で谷川岳に向っていたはずの安西も歓楽街で倒れ昏睡状態で入院する。大事件との直面、安西の重態、職場の人間関係の軋轢などさまざまな問題を抱える悠木は…

 絶え間なく伝えられる現場の状況、締め切り、大事件の功績を積もうとしつつある悠木らに対する上司の嫉妬、圧力、大手他社の動向、それに加えて安西の危篤やぎくしゃくした家庭の問題など、悠木は泣きっ面に蚊虻蜂の3点セット的な差し迫った状況に追い込まれる。またそのような描写は筆者の十八番でもあり、今作もうまい。そんな状況で悠木が何をよりどころに判断し、投げ出さずに進んでいくかが一つのテーマだと思う。やはり自分のなす事に対してはプライド、こだわりを持っていたい。


小ブネ漕ぎしこの川 野田知佑 新潮文庫 読了2003.6.21 ★★★  

 今回はいつもの面々で海外の川をのんびり下る。「のんびり行こうぜ」もそうだが、自然の描写が美しくて、読んでいると瞼にその情景が目に浮かぶ。近くに小川のせせらぎのBGMでもあれば抜群のヒーリング効果をもたらすはず!
 椎名誠の息子さんが出てくるんだが、これが親ゆずりのアクティブ派ですごい。今ごろ何をやってるんだろう。


のんびり行こうぜ 野田知佑 新潮文庫 読了2003.6.1 ★★★★  
 カヌー川下りの先駆者である著者の川下り紀行+遊び日記+エッセイ

 読んでいると気分がすがすがしくなる。自然の中で遊ぶのが大好きで、そして自分の好きなことだけをやる。川を下ったり、魚を釣ったり、本を読んだり、小屋を建てちゃったり。逆に嫌いなものはとことん嫌いという潔さがイイ。お役人の不条理でお堅い対応に対する怒りなど、とても自然で共感できる。
 読む前は、「ぼかぁカヌーでこんなに遊べてこんなに楽しくやってるんだ、イイダロ!」みたいな本なのかなぁと思っていたが、違った。この人は純粋に好きなことをしているだけであって人に押し付けるようなところがみじんもない。例えば、カヌー、アウトドアを子供に習わせようとする親に対し、「ステータスとしてのアウトドアなど意味がない。その子の本当にやりたいこと好きなことを見つけてやらせてあげたほうがいい」といった下りがあって、この人の懐の深さを感じた。
 こうやって自由に生きていくこともできるんだなぁ。せめて心意気だけでも真似てみたいものだ。
 ちなみに椎名誠一家が結構出てくる。椎名好きな人にもオススメ!


立花隆秘書日記 佐々木千賀子 ポプラ社 初版2003.3 読了2003.4.29 ★★★  
 立花隆の秘書の日記(ってそのままだな)。

 最初の、秘書採用試験がまずおもしろい。成績だけで決めない。
 秘書さんの日記ではあるが、半分は立花隆の行動記録、みたいになっている。とてもおもしろい。何に興味があってなにに感心がないのか。好き嫌いについて。本人の筆では恐らく書かれることはなかったろう出来事がいっぱいつまっている。立花氏はとにかく仕事が楽しそう。こういう高度な知的活動に身を置いてみたいなぁ、という願望が沸いてくる一冊だった。


GO 金城一紀 講談社文庫 2003.4.29 ★★★  
 在日韓国人の主人公と、日本人の彼女との爽やかな?青春恋愛小説。

 名前、所属(国籍)はその人の本質に関係しないだろう。という考えが底にある。主人公たちが、自分の主観で「かっこいいもの」「かっこわるいもの」(音楽・本・映画)を主張し、自分がいいと思ったことをしていくのが印象に残った。国籍でひとくくりにされてしまうからこそ、自分の感性を一番大切にしたいという。
 今の日本は相変わらず、横に習え、がはびこっている。これはとてもかっこわるい。


五郎治殿御始末 浅田次郎 中央公論新社 2003.3.19 ★★  
 明治維新直後の日本、あまりに急速な時代の転換に戸惑いながらも自らの信念を貫きながら一歩を踏み出していく男たちを描いた短編集。

 現在の日本を、変化の時代、先行き不透明な時代と評しこれをよく幕末になぞらえることが多いが、従来の風習や概念が通用しなくなるという意味ではこの作品のように明治維新が成った後の方が近いような気もする。世のおじさんたちよ、この激動の時代をどう生きる?みたいなメッセージが行間から伝わってくる。
 話自体におもしろみのあるものは少ないけれども、維新直後の雰囲気を再現する、まさに「文芸」に触れられる。


火の粉 雫井脩介 幻冬社 2003.3.2 ★★★☆ 
 一家三人の殺害容疑で起訴された武内真伍に対し、裁判長であった梶間勲は証拠不十分として無罪判決を言い渡した。その武内が、退官した梶間の隣家に越してくる。紳士然とした態度で梶間家に打ち解けていく武内。しかし、これと期を同じくしていくつかの不可解な事件が起こるようになる。はたして梶間の下した無罪判決に誤りはなかったのか。

 武内は一家惨殺事件の犯人なのかどうか。その一点をやきもきしながら読み進むわけだが、梶間家に降りかかってくる不穏な空気とあいまってとにかく怖い。読み手の不安を煽りに煽る展開、ラストに向けて高まっていく緊張感など、これはミステリというより一級のホラー小説だ。人物の描き分けもうまい。ただ、精神的に元気な時に読みたい本ではある。
 余談だが、「13階段」に続き死刑にまつわる作品を読むことになった。どちらも、判決が誤認か正当か、を巡って展開するものだった。「13階段」は死刑執行をなんとか覆そうとする、制度の重さを考えさせられる話、今回の「火の粉」は死刑求刑に対し一転、無罪判決を下した裁判官に関するもの。


13階段 高野和明 講談社 2003.2.22 ★★★ 
 傷害致死による服役を終え仮出獄した三上純一は、同じ松山刑務所にいた刑務官南郷正二に、ある調査活動への協力を頼まれる。それは、刑執行が迫っている死刑囚樹原亮の罪状が冤罪であることを証明し、その命を助けるというものだった。しかし、活動拠点の千葉県中湊郡は純一がかつて罪を犯した場所でもあり、それは調査活動へも微妙な影を落とす。

 映画化を期に読んでみた。
 構成はそつなくまとまっていて、真相が判明するときの氷解感はなかなか。単にミステリーとして見てもかなり上質な部類に入ると思う。
 しかし読後最も印象に残ったのは、死刑執行の場面と刑務官の葛藤の部分だった。"生業として"人に手をかけなければならない刑務官が実際にいるのだという認識を新たにした。死刑制度は、その存在はだれもが知りながら、執行までの手続きや執行人について語られることは少ない気がする。この本を通じて初めて知った内容もあったし、また制度の問題点や矛盾、難しさにも触れられている。何か考えるきっかけを与えてくれる本かもしれない。
 


四日間の奇蹟 浅倉卓弥 宝島社 2003.2.16 ★★★ 
 ある事件の後遺症でピアニストとしての道を絶たれた如月敬輔は、同じ事件によって身寄りをなくした楠本千織の身元を引き受ける。千織は生まれつき脳に障害を負っていたが、類まれなピアニストとしての資質をもっていた。そんな二人が演奏旅行に赴いた施設で新たな事故は起こった。

 生と死、脳と心と体をテーマとした「癒しと再生のファンタジー」という赴きの作品。核心部のネタは、映画にもなったある有名な作品とまったく同じなので舞台装置に目新しさはない。実際それに気付いた瞬間かなりげんなりしたが、その後の展開は十分以上に読み手を引きつけるものがあった。クライマックスはグッとくる場面が続き、感涙ものが好きな人は必読でしょう。個人的には、いままでの人生の中の哀愁の深い場面を思い出させられた一冊で、全編通じて表紙のような夕暮れのもの哀しいイメージがつきまとった。
 


戦略的思考の技術 梶井厚志 中公新書 2003.2.10  
 ゲーム理論の入門書である。
 自分の利害が、自分の行動だけでなく他人の行動によってどう左右されるかを分析するツールがゲーム理論。企業の戦略やオークションを始め、様々な例をあげて説明されている。ただしその多くが、普通「戦略的思考」を意識せずとも最善の選択肢を選べているような簡単な局面なので、いまいちゲーム理論のありがたみが実感できない。もっと複雑な事象を抽象化して考える際にはきっと有効なんだろう。またあまりにも例が多くてかえって本質がつかみずらくなっている印象も受ける。
 一つ引用すると、ジャンケンの事例で、「勝った方は10円相手からもらえる、ただしグーで買った場合のみ100円もらえる」というルールの場合、どういう戦略が最善か?というもの。ここまでくると確率論にも近いような。。。


亡国のイージス 福井晴敏 講談社文庫 2003.2.9 ★★★★
 ストーリーは、ネタバレなしで書くのが難しいため省略

 とても良く練られた構成によって、事件の意外な全容が徐々に明らかになっていく。この過程だけでまず楽しませてくれるのだが、その後の展開、クライマックス、収束も言うに及ばず大満足。また艦船内部や戦闘シーンの細緻な描写が素晴らしく目前に場面場面をはっきり描写することができるほど。胸を打つヒューマンドラマという性格もあり、よくできた映画を見ているような感じがした。
 かと言って内容は上滑りするような軽いものではなく、根底には日本の国防に関する意識のあり方や制度の矛盾を鋭く抉った問題喚起的な要素が流れている。作中論文として出てくる『亡国の盾』に書かれた内容こそが作者の言いたかったことなのではと推測する。つまり、自らの在り方、国体というものををはっきり示せないまま場当たり的な外交を繰り返す日本という国について、守るべき国を見失ったイージス艦の姿を通じて考えて欲しい、ということなのではなかろうか。あらゆる邪悪を払うというイージスの盾。今の日本にはその真価を引き出す力も資格もないということか。
 現実問題として顕在化しつつある北朝鮮の脅威、アメリカのイラク攻撃に対して曖昧な態度を取り続ける日本の姿を見ながら、初版から3年以上たった今でも(むしろ今こそ!?)非常にタイムリーな感覚で読むことができた。


お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 橘玲 幻冬社 2003.2.3  
 拾い方、といっても精神論ではなく、法人に対する税制をうまく利用すると税金を減らすことができますよ、というのが主旨。倫理的にどうこうというのは置いといて。


お金を3倍稼ぐ人の習慣術 和田秀樹 青春出版社 2003.2.2  
 最近、和田秀樹がまた凄い勢いで本を書いている。氏は昔、受験指南書を多数出していて、その幾つかは読んだことがある。で、今この本を手にとってみると…当時と同じようなことを書いているような。
 こうしろああしろと様々なアドバイスが書いてある。平易な文章なので分かったような気になってすらすら読めてしまう。が、読後振り返ってみるとそれは「私はこうして生きてきて、その結果こんなに仕事に恵まれて成功しています」という”私の履歴書”に他ならないのだった。精神医学や心理学の専門家を標榜するなら、その立場から事例を傾向分析するなり、学術的に見て効果的な手法を紹介するなりして欲しいものだ。
 筆者がどのようにして稼いでいるかといえば、こういう本を次々に書いて売ることであり…。受験指南書ならそれでもよいだろうが、これはいかがなものか。
 唯一参考になったのは、心理学からの引用のメタ認知についての説明だった。


深追い 横山秀夫 実業之日本社 2003.1.29 ★★★ 
 三ツ鐘警察署交通課に勤める秋葉和彦は、交通死亡事故処理の現場でポケットベルを拾う。それは被害者の持ち物だったが、何故か事故後もメッセージを受信し続けるのだった。秋葉は、被害者の妻であり学生時代の知り合いでもある高田明子を訪ねる。(=深追い 他6編)

 全7編はいずれも、とある地方都市の郊外型警察署が舞台。それぞれは50ページ弱と短いが起承転結がかっちりとしている。中でも「転・結」はどの一編をとっても単なる謎解きだけに終始しない筆者特有の味付けがなされていて、読者の期待を裏切らない。


リスク 井上尚登 世界文化社 2002.12.29  
 三島洋次は、父の葬儀の翌日、父の貯金が解約され株券に変わっていることに気付く。郵政省勤めの真面目一本だった父がなぜ株に手を染めたのか?それを確かめるため、洋次は初めて自ら株を買ってみることに。(=お金持ちになる方法 他2編)

 T.R.Y.のイメージをもって読み始めたが、どうやらまったく指向の異なる作品のようだ。現代日本における、株式投資、住宅問題、雇用問題にまつわるリスクについて考える短編集で、エンターテインメント性は薄い。が、実際これらに当てはまる場面はかなり多いと思われ、勉強のつもりで読んでみるのも一考かと。


最悪 奥田英朗 講談社文庫 2002.12.22 ★★★★
 川谷信次郎の経営する鉄工所は不況の波に揉まれ、騒音問題で近隣の住民とのトラブルにも見舞われていた。都銀に勤める藤崎みどりは家庭の問題に加え組織の軋轢やセクハラに悩んでいた。パチンコやカツアゲでその日暮らしをしていた野村和也は、タカオと組んでトルエンを盗み出すが…

 3人が次々トラブルを抱えていくのだが、その様はむしろ読んでいて小気味よいくらい。偶然問題に巻き込まれる、というより各個人の、普通の人なら誰もが持っているようなネガティブ思考、心の隙間といったものに由来したトラブルが多いためリアリティがある。特に川谷の章は非常に味があってヨイ。3人それぞれの章だけでも十分楽しめるが、それが相互に絡み合ってからもこれでもかと言うほど掻き回され、息つく間もなく最後まで読み切らせてくれる。


ゲームの名は誘拐 東野圭吾 光文社 2002.12.15 ★★ 
 広告代理店で企業相手のイベント企画をしている佐久間駿介は、ひょんなきっかけで取引先の副社長葛城勝俊の娘、樹理を保護する。家に帰りたくないという樹理をなだめるが、彼女のとある一言がきっかけで事態は一転、葛城勝俊に対する狂言誘拐ゲームが始まった。佐久間にとっては、仕事で面子を潰された葛城勝俊に対する復讐でもあった。

 途中まではありがちな狂言誘拐のやりとりが続くが、そこは東野小説、最後にあっという切り返しを用意してある。流石の切れ味だ。しかし、そこに至るまでの本文の大半が、辻褄合わせともとれる説明的な文章で埋められているのが残念。「白夜行」の例を挙げるまでもなく、この著者が本気で構成、伏線を編み込んでいけば、この筋でもかなりの力作にすることは可能だったと思うのだが…。


神々の山嶺 夢枕獏 集英社文庫 2002.12.8 ★★★★★
 ネパール、カトマンドゥの登山用具店で、深町誠は古いコダックのカメラを手に入れた。それは、ジョージ・マロリーがエベレストに初登頂していたのかどうかの謎を解く鍵を握っているカメラだった。そしてカメラの過去を追う深町が出会った男、羽生丈二。この伝説の単独登攀者はエベレストの地で何を目指しているのか。生命の危機と隣り合わせの高度8000mの極限状態で、深町の、羽生の雑念は削ぎ落とされていく。彼らの心の最奥にあるものは…。

 小説として見れば、余分なもの、足りないものがあるのかもしれない。が、これはそんな些末な事を全て忘れさせる力を持った作品だ。人はなぜ、山に登るのか。人はなぜ、生きていくのか。日常の雑事に捕われている読者ほど、その真っ直ぐな思いに胸を打たれるだろう。久々に熱い小説を一気読みする充足感に浸った。

―― 「山に、なんかいいもんでも落ちてると思ったか。自分の生き甲斐だとか、 女だとか、そういうもんが山に落っこちてると思ったか」
―― 「人には権利がある。何を奪われようが、何を失おうが、最後に唯一つ残された権利だ。 それは、自分の選んだ生き方に、生命をかけてもいいという権利である。」


リアル鬼ごっこ 山田悠介 文芸社 2002.11.30  
 西暦3000年、二十人に一人が「佐藤」性のとある王国でサバイバルゲームが行われる。それは、「佐藤」姓の者は七日間、全国各地の鬼から逃げ切らなければ命を奪われるというリアル鬼ごっこだった。

 兎にも角にも日本語が拙い。中高生の空想をそのまま書き下ろしたような文体が続き、構成や話の展開にも特色や工夫は感じられない。帯に「期待の新鋭が放つニュータイプ・ホラー・ノベル」とあるが全くの的はずれであると言わざるを得ない。


マンゴー・レイン 馳星周 角川書店 2002.11.23 ★★★ 
 タイ生まれの日本人、十河将人は、バンコクで偶然会った幼馴染の小倉富生からとある仕事の依頼を受ける。中国人の女、メイをシンガポールへ密出国させること、依頼内容はそれだけだったが、メイと接触した瞬間から複数の組織に付け狙われるはめに。メイの持つ仏像が鍵を握っているらしいが…

 暗鬱なテンションは物語を通じて高いレベルで保たれていて、暗黒小説の世界に浸りたい、という読者の期待は裏切られることはない。全編十河の視点から描かれているので一旦読み始めると否応無しに引き込まれていく。ただ、注文をつけるなら、全体に十河がメイと行動を共にしなければならない理由が希薄な気がする。また、十河を狙う組織間の関係が描きこまれていないので、十河の視点から見ている読者にはどの組織の人間もみな同じように映る。このあたりは「不夜城」は素晴らしかったのだが。その他にも構成上首を捻りたくなる部分がいくつか。ラストは印象的です。


椿山課長の七日間 浅田次郎 朝日新聞社 2002.11.17 ★★★ 
 百貨店婦人服課長の椿山和昭はバーゲンセールの真っ只中に突然倒れ、あっけなく冥土へと旅立った。しかし、現世でやり残したことが多すぎる…。椿山は現世特別逆送措置、つまり期間限定で現世へ復帰する特例措置の審査にパスし、妻や父、息子、そして結婚前に十八年つきあっていた佐伯和子のもとへ舞い戻る。

 プロットは徹頭徹尾、潔いまでに御都合主義的であり、まずそこを割り切って読めるかどうかで好き嫌いが分かれると思う。また、そこここにちりばめられた筆者お得意のお涙頂戴的な展開が多少鼻につくかなぁという感じもした。ただ、その向こう側には筆者の明確なメッセージが一本の柱としてきちんと据えられていて安心感があり、それが読後に心に残る。


半落ち 横山秀夫 講談社 2002.10.29 ★★★★★
 重病の妻に請われ扼殺した梶警部。身内の自首という事態に、県警捜査第一課強行犯指導官の志木は急遽取調べを命ぜられた。犯行状況も動機もはっきりしており「完落ち」状態とふんでいた。しかし事件から自首までの空白の2日間について頑として口を開こうとしない。殺人という最大級の犯行を認めながらなぜ梶は事件後を語ろうとしないのか…。

 スキのない、完成度の高い作品。まず人物描写が秀逸。警察・司法・報道という異なる立場の人物が登場し、組織間、ときに組織内部の軋轢にも翻弄されながら真実を追う姿はリアリティーに溢れている。また構成も巧い。異なる六人の視点から各章が綴られていて、それぞれの人物がお互いに絡み合いながら梶の謎に迫っていく雰囲気を感じることができる。そして、この作品の一番の醍醐味は何といっても梶にまつわる謎の真相そのものだが、これは実際に読んで堪能して頂きたい。お薦めです。


パーク・ライフ 吉田修一 文芸春秋 2002.10.22 ★★ 
 会社の近くの日比谷公園に、「ぼく」はよく足を運ぶ。ふとしたきっかけで出会った女性とその日比谷公園で再会して…。(パーク・ライフ 他一編)

 日比谷公園を中心に起こる出来事が、終始「ぼく」の一人称で語られる。ただ羅列しただけでは決しておもしろいとは思えない出来事ばかりだし、瀟洒な日本語を使っているわけでもない。それでも読んでいて惹きつけられるのは、きっと場面の切り取り方が絶妙なんだろう。広い日本、何千何万という人と人との出会いには、ここで描かれているようなものもきっとあるだろう、と思わせる説得力がある。


滅びのモノクローム 三浦明博 講談社 2002.10.5 ★★ 
 広告代理店勤務の日下は、とある骨董市でフライフィッシング用の古いリールと柳行李を破格で手に入れる。一方、売り主の月森花は祖父にそのことを話すが、予想外の反応にただの骨董品ではないことを悟る。しかし、日下の持つリールを取り戻そうとするのは月森花だけではなかった。

 長さの割りに中身が盛りだくさんではあるが、描写不足があるわけではなく読みやすい。しかし逆に言うとストーリーに沿ってさらさらと進んでしまうので人物像の掘り下げなどもなく読後の印象は薄い。それも、主題を浮かび上がらせるという意味において著者の作戦なのかもしれないが。冒頭の長崎原爆投下の場面が当然リールの謎にからんでくるのだが 社会派寄りの結末は好みの別れるところかもしれない。


サイト開設以前のベスト30
1位竜馬がゆく司馬遼太郎
2位永遠の仔天童荒太
3位潮騒三島由紀夫
4位魍魎の匣京極夏彦
5位閉鎖病棟帚木蓬生
6位錦繍宮本輝
7位国盗り物語司馬遼太郎
8位アクロイド殺しA.クリスティー
9位愛をください辻仁成
10位秋の花北村薫
11位深夜特急沢木耕太郎
12位カラフル森絵都
13位不夜城馳星周
14位姑獲鳥の夏京極夏彦
15位ホワイトアウト真保裕一
16位すべてがFになる森博嗣
17位柔らかな頬桐野夏生
18位坂の上の雲司馬遼太郎
19位少年時代R.R.マキャモン
20位ハサミ男殊能将之
21位動機横山秀夫
22位OUT桐野夏生
23位哀愁の街に霧が降るのだ椎名誠
24位バトル・ロワイアル高見広春
25位レディ・ジョーカー高村薫
26位夏への扉R.A.ハインライン
27位白夜行東野圭吾
28位初ものがたり宮部みゆき
29位リング鈴木光司
30位十角館の殺人綾辻行人

 
著者名順索引
▼フィクション
あ】 浅倉卓弥 . ★★★★★ 四日間の奇蹟
浅田次郎 . ★★★★★ 椿山課長の七日間
★★★★★ 五郎治殿御始末
★★★★ 壬生義士伝
伊坂幸太郎 . ★★★★ 陽気なギャングが地球を回す
☆★★★ 重力ピエロ
井上尚登 ★★★★ リスク
歌野晶午. ★★★★ 葉桜の季節に君を想うということ
奥田英朗 ★★★★ 最悪
★★★★ 邪魔
☆★★★★ イン・ザ・プール
★★★★ 空中ブランコ
【か】 垣根涼介 ★★★★★ ワイルド・ソウル
金城一紀 ★★★★★ GO
貴志祐介 ★★★★★ 硝子のハンマー
★★★★ 黒い家
【さ】 雫井脩介 ☆★★★ 火の粉
☆★★★★ 犯人に告ぐ
た】 高野和明 ★★★★★ 13階段
は】 馳星周 ★★★★★ マンゴー・レイン
東野圭吾 ★★★★★ ゲームの名は誘拐
★★★★ 幻夜
福井晴敏 ★★★★ 亡国のイージス
船戸与一 ★★☆★★ 山猫の夏
ま】 三浦明博 ★★★★★ 滅びのモノクローム
宮部みゆき ★★☆★★ ぼんくら
や】 柳原慧 ★★★★★ パーフェクト・プラン
山田悠介 ★★★★★ リアル鬼ごっこ
夢枕獏 ★★★★★ 神々の山嶺
横山秀夫 ★★★★★ 半落ち
★★★★★ 深追い
★★★★ クライマーズ・ハイ
☆★★★★ 第三の時効
☆★★★★ 臨場
吉田修一 ★★★★★ パーク・ライフ
海外】 W.ランディ ★★★★★ ボストン、沈黙の街


▼ノンフィクション
あ】 稲盛和夫 ★★★★★ 生き方
大前研一 ☆★★★★ 考える技術
太田光 ★★★★★ ヒレハレ草
か】 梶井厚志 ★★★★ 戦略的思考の技術
さ】 齋藤孝 ★★★★★ 三色ボールペン情報活用術
佐々木千賀子 ★★★★★ 立花隆秘書日記
【た】 橘玲 ★★★★ お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方
筑紫哲也 ★★★★★ このくにの行方
な】 中島らも ★★★★ 僕に踏まれた町と僕が踏まれた町
野田知佑 ★★★★ のんびり行こうぜ
★★★★★ 小ブネ漕ぎしこの川
は】 樋口裕一 ★★★★ 頭がいい人、悪い人の話し方
堀江貴文 ★★★★★ 100億稼ぐ仕事術
【や】 養老孟司 ★★★★ バカの壁
★★★★ 死の壁
わ】 和田秀樹 ★★★★ お金を3倍稼ぐ人の習慣術
★★★★ <疑う力>の習慣術
海外】



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 日頃読み散らかした本についての雑感を書きとめたものです。 文体などお見苦しい点は多々あるかと思いますがご容赦下さい。 読後の印象度を五段階でをつけて表わしています。 といってもごく個人的な評価であって、その内容を保証するものではありませんので、参考程度にお考えください。 タイトル横の日付は、読了日を表します。本文は、雑感を通常の大きさの文字で、 本からの引用、要約、あらすじ等を小さな文字(SIZE=2)で表記しています。 特に、引用には――(ダッシュ)を付しています。 雑感の最後に、登場人物やキーワードを記しているものがありますが、これは私個人の備忘のためのものです。 こういったものを後で見返すだけで、割と内容を思い出すんですよね。  なお、本のタイトルをクリックすると、 Amazon.co.jp の対応するサイトへジャンプします。そのままお買い物ができますのでご利用ください。 本サイトへのリンクは自由に張って頂いて構いませんが、その際には御一報頂けますと幸いです。

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