循環器病の部屋


今回のテーマ<Brugada(ブルガダ)症候群>


 学生や働き盛りの社会人が、特に持病もないのに突然死んでしまうことがあり、日本人は これを昔から”ポックリ病”と呼んできました。このような突然死の中には心疾患による致死的不整脈のケ ースが多く含まれています。
 近年、東南アジアや日本における致死的不整脈の原因として特に注目されるようになったのがBrugada (ブルガダ)症候群です。Brugadaとはこの病気を最初に報告した人の名前で、その特徴的な心電図所見から 学会でもよく取り上げられようになってきており、多くの研究発表がなされています。

 心電図は、右の図のように心臓の中を走る電気の流れの連絡路である刺激伝導系という細胞群を伝わった 微小な電位を体表面から記録したもので、基本の波形は、その流れの部位を辿って、P波、QRS波、T波と名 づけられています。通常、四肢からその電流を記録する四肢誘導の6つの波形(I,II,III,aVR,aVL,aVF)と胸 部の表面から記録した6つの波形(V1,V2,V3,V4,V5,V6)の計12個の波形からなり、その波形の形や数など から心臓の状態を解析しています(最下図1)。
 

 Brugada症候群は、左図に示すような特徴的な心電図所見(Brugada型心電図)がみつかることで診断されま すが、このような特徴的な所見が、ある年齢になって突然出現したり、時期によって所見がでたりでなかっ たりすることが知られています(通常は右側胸部誘導に典型的な所見がでます)。いくつかの他の病態でも Brugada型心電図が出現することもありますが、特に他の持病がない場合は遺伝性の原因が考えられます。
 Brugada型心電図は、健康診断などで心電図検査をした場合0.1-1.0%にみられるとされています。1000人 集まれば1-10人はこのタイプの心電図ということになります。Brugada症候群の人にBrugada型心電図があっ ても、そのままの状態であれば自覚症状もありませんし、心機能も正常です。ところが、このBrugada型心 電図は、致死的不整脈である心室細動を起こしやすいという特徴をもつことが問題になります。一旦心室 細動を起こすと、一過性の場合意識消失発作などで済みますが、最悪の場合死亡する可能性があります。あ る論文によりますと、Brugada型心電図を呈している人の40%程度が過去に意識消失発作や心室細動を経験し ていますが(有症候者)、60%はまったく自覚症状がありません(無症候者)。有症候者の30%はその後3年 の間に同様の症候を経験し、無症候者の7%がその後3年の間に初めて心室細動を経験することになると報告 されています。

   心臓突然死の70-80%は心室細動が原因といわれています。明らかな器質的基礎疾患のない心室細動は、病 院外における心室細動蘇生例の14%を占めるとされ、早期であれば助けることが可能な心肺停止の中にBrugada 症候群による心室細動も含まれています。もちろん、リスクを予見してハイリスクの場合は除細動器を体内 に装着しておく方法もあるわけですが(植え込み型除細動器)、予見できない場合は、いつ起こるかわからな い心室細動に社会全体が備えておく必要があるわけです。心室細動で倒れてから除細動までの時間が1分遅れ るごとに、除細動の成功率は7-10%減少します。12分以上経過してからの除細動の成功率は2-5%に過ぎません。 突然意識が無くなって倒れた人の中に、心室細動のケースが含まれるわけですから、原因や病態がなんであっ ても、救急車の手配と同時に患者さんの傍にAEDをもってくることが重要になります。人が多く集まる所では AEDが設置されることが多くなっています。一般の方々も心肺蘇生のABCを覚えて、AEDを使用する機会がこれ から増えてくると思います。

 ちなみに、Brugada症候群の中でもハイリスクといわれているものには次のものがあります。
1.男性であること
2.家族の中に急死者や突然死者がいる
3.意識消失発作(失神)、失神の前兆、心室細動などの既往がある
4.心電図が予後不良タイプ(所見の変動、負荷試験陽性など)
5.遺伝子異常がある(SCN5A遺伝子の変異)

(参考HP:岩手医科大学臨床検査医学講座、国立病院大阪医療センター、鹿児島大学保健管理センター、他)