民主党群馬県連の現在 4 県連幹事長の犯罪
今も続く民主党群馬県連の混乱の原因は、言うまでもなく、不正経理問題について、迅速かつ適正な対応ができなかったことにある。なぜ、できなかったかというと、これが執行部の中枢にいる県連幹事長に関わるものだったからである。
一連の不正経理について、黒沢前幹事長(県議)は、自分には不正を行う意図はなく、県連事務局長や女性事務員による過失であったと主張してきた。
それが故意なのか過失なのかを証言できる立場にあったのは、県連事務局長と女性事務局員の二人しかいない。ところが、より決定的な証言ができる立場にあった事務局長は、事件が表面化した直後の昨年1月14日に自殺してしまった。
その後、唯一の生き証人となった女性事務局員は、「一連の不正経理は黒沢幹事長の指示に基づくものであり、事務局長一人に責任を押し付けることがなければ、彼は自殺することはなかった」と明言するに至った。
これは私的に発言したものではない。公の場(昨年6月28日の記者会見の席上)において、証拠書類を提示しつつ証言したものであり、職を賭しても不正を糾すという捨て身の覚悟がなければできないことだ。
黒沢氏の諸疑惑については、柿沼3区総支部長からの告発をうけ、私も証拠書類を見せてもらい、この分野に詳しい法律家やジャーナリストにも意見を聞いたが、どう検討して見ても、県連職員が一存でやれる話ではなく、前幹事長の不正行為と判断せざるを得ない。
以下に、疑惑の一つを例に挙げて説明する。
平成16年の参議院選挙に際して、党本部から富岡由紀夫候補の政治資金管理団体に公認料の一部として振り込まれた(平成16年6月10日)400万円のうち、300万円が、供託金として使われた。その返還後、一旦県連の銀行口座に入れられた(16年8月20日)。その後、同年の収支報告書提出直後に引き出され(17年2月28日)、翌日、黒沢県連幹事長の個人口座に200万円、県連事務局長の個人口座に100万円が入金された。
そもそも供託金は直ちに候補に返還されるべき性格のものだ。それを何ヶ月にもわたって県連の口座にプールし、同年の県連の政治資金収支報告書作成作業が終了するのを待って、幹事長・事務局長の個人口座に移動している。この事実関係だけを見ても、きわめて異常な事態であり、法律的に詰めていくと、もしこのカネの流れを富岡候補が知らなければ「黒沢氏らの横領」、知っていれば「黒沢氏らへの事後買収」が成立するということになる。
少なくとも「一部役員の共謀による組織的裏金作り」であったことは否定できない。なぜなら、この300万円の処理経過については、私を含めて当時の県連役員の一切関知しないところで極秘裏に行われたものであり、もし勇気ある内部告発がなければ、今日においても表沙汰になることはなかったからだ。
調査が進む中で、黒沢氏は、二人の個人口座にプールされた金の出所が富岡氏の供託金であった事実、それを自らの意思で個人口座に入金した事実は認めたものの、横領、事後買収等の犯意はなかった、また裏金作りの意図もなかった、「一時的に保管していただけ」と弁解した。
しかしながら、個人口座に移動した時点で、当該300万円の所有権は移転しているのであり、公金を保管するのに他に多くの合法的な方法があったにもかかわらず、黒沢氏はいかなる理由をもって、敢えて同氏自身への所有権の移転を伴う処理を行ったのか。
もし本件がひとたび司法場裏で争われることともなれば、いかなる弁明を以ってしても「公金を個人口座に移動したという厳然たる事実」を否定することは出来ず、この時点で犯罪が成立していると見做されても抗弁できないところだろう。
これに対して、黒沢前幹事長も、富岡前県連会長も、未だに公の場での説明責任を果たしていない。
その上昨年7月に、田辺、角田両社会党系長老による「県連倫理委員会」なるものが、ろくに調査もしないで、黒沢幹事長はシロ、つまり女性事務員がウソを言っているといわんばかりの結論を出した。女性事務局員が弁護士を通じて再三にわたって「証言させてほしい」と申し入れていたにもかかわらず、拒絶されたのである。このこと自体が、内部告発者の人権擁護法(公益通報者保護法)を唱導してきた民主党にあるまじき不祥事といわなければならない。
数少ない旧社会党の跡継ぎを守りたいという老親の執心はわからなくはないが、公平であるべき倫理委員が、こういう不公正を公然と行うようでは、収まるものも収まらない。とうとう角田氏らは、徹底追及を目指すマスコミによって、北朝鮮系団体からの不正献金の事実を暴かれ、倫理委員自身が政治倫理を踏み外していたことを白日の下に晒されて、失脚を余儀なくされたのである。
「政治資金規正法」とか「政党助成法」とか、政治資金の話になると、一般の人には分かりにくく、問題が今ひとつ判然としないかもしれない。しかし、こうした事件は一般の会社にもない話ではない。喩えて言うとこういうことだ。
………
ある小企業で、社長が後を継いだばかりの何もわからないボンボンだったのをいいことに、古手の専務と腹心の経理課長が会社の会計を壟断して、好き勝手なことをやっていた。とうとう会社名義の金300万円を引き降ろして、専務が200万、課長が100万、自分たちの個人名義の口座に移し替えて、自分たちだけの遊興費に当てようとするところまで来た。
巧妙な会計操作だったので、監査役にも、税理士にもわからなかったのだが、あまりの乱脈さに会社の将来を心配した経理課の女性事務員が反専務派の取締役に相談したことで表沙汰になった。
この専務は、「経理課長がやったことで自分は知らなかった」と逃げをうった。気の毒なことに、責任を押し付けられた経理課長は、弁明に窮して自殺に追い込まれた。
側近の部下が自殺したのに、この専務は「たまたま余った金があったので、保管しておいただけだ、着服するつもりはなかった、あとで会社のために使うつもりだった」などと、次々と言い訳を考えて居座りを決め込んでいる・・・。
…………
しかし、実際の世の中では、こういう会社はない。こういう不祥事が起これば、この専務が何と言い訳しようとクビだろう。そうしなければ会社が信用を失い、銀行や株主や取引先に見放されて潰れてしまう。自浄能力を示すことこそが企業が社会的責任を果たす道なのである。民主党群馬県連に問われているのも、この自浄能力の有無だ。
しかも、この不正経理問題では当事者の一人が自殺している。軽々に風化させていい事件ではない。民主党群馬県連として、有権者に説明する社会的責任を負っているのである。具体的には、一連の不正経理問題の真相を究明し、責任の所在を明らかにし、責任者を厳正に処分して、再発防止を党の内外に誓うことである。
昨年12月29日に、党本部組織委員会の主導により作成・公表された不正経理問題調査報告書は、不十分な点も多々あるが、一連の不正経理問題の法的政治的責任の所在を明確にしたものとして、評価に値するものだ。今年初めの県連最高執行委員会では、この報告書によって「責任重大」と指弾された黒沢幹事長の処分問題に決着をつける予定だった。
しかし、角田氏の不正献金疑惑発覚と最高執行役員会開催ボイコットによって、これを実現することができなかった。そのために、有権者のまえにシロ・クロを明らかにして、統一地方選挙に臨むことができず、いたずらに不正隠蔽勢力を利する結果を招いたことは、誠に遺憾なことだった。
故事務局長は、自殺の直前、女性事務局員にたいして「あの人たち(黒沢幹事長ら)は氷より冷たい。氷のほうがまだ暖かい」と、不正の責めを押し付けられた苦渋を吐露していたそうだ。
いまや「不正経理問題イコール前幹事長の犯罪」であったことは、関心ある党員やマスコミにとって自明のこととなっている。一連の不正経理は、閣僚辞任や議員離党を招いている自民党の不正経理問題より、ずっと悪質かつ嫌疑明白なものなのである。
この不正経理問題に決着をつけること、つまり不正をはたらいた前幹事長への処分を厳正に執行できなければ、民主党群馬県連の永続的な正常化も、信頼の回復も望めない。
(平成19年9月5日 記)