連載小説『女教師強制妊娠』 |
美人教師山根康子は教え子たちの罠にはまり、 集団レイプの危機に晒される。
陵辱のすえに教え子の三田浩一の子を身ごもった康子は、敬虔なクリスチャンだった。 彼女は出産を決意するが、学園と市の政財界をゆるがす陰謀が待ち受けていた……。 ※この作品は最新掲載分のみの公開です。 過去の連載分をご希望の方は、「非公開分を希望」と明記したメール(ブログのPF欄)をお送りください。TXT版(無料)で送ります。 |
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| 闖入者 |
ようやく自由の身になった靖子は、迷ったすえに会議室のあるフロアでエレベーターを 降りていた。 身体が自由になってみると、浩一たちの企みや三田浩蔵の政界進出計画に興味が湧いて きたのである。その計画に学園が無関係でないのだとしたら、自分にも知る権利があると 思った。このまま尻尾を巻いて逃げだすのも不愉快だった。 客室のないフロアはひっそりとしていた。いちばん奥の部屋に、三田浩蔵後援会と書か れたプレートを見つけて、靖子は中をうかがった。防音されているのだろうか、もの音ひ とつ聞こえてこない。入るわけにもいかない靖子は、そこで冒険をあきらめた。 靖子がエレベーターのあるスペースに戻った時、廊下のむこうの部屋のドアが開いて、 人影が見えた。靖子は反射的に壁のくぼみに隠れた。 身をひそめた靖子の前を通ったのは、あの奈緒美という少女だった。靖子は息が荒くな るのを抑えた。追いかけて平手打ちをしてやりたかったが、靖子はちょうどドアの開いた エレベーターに駆け込んでいた。少女の腕力を思い出したのだった。 それにしても、どうして選挙権もない小娘が後援会の会合に出る必要があるのか、靖子 は自分の常識が通用しない世界を見た思いだった。 ホテルからの帰路は思ったよりも遠かった。バスを乗り継いで、靖子は自分の部屋の前 にたどりつくと、ようやく安堵した。三田建設とその系列のゼネコンが、土地と利権を奪 うために殺人以外なら何でもやったという古い噂を思い出して、彼女は本気で怖くなって いた。 ところが、彼女の安堵は数分も続かなかった。自分の部屋に明かりがついているのであ る。だっ、誰……? 靖子はあわてて携帯電話を取り出した。一一〇番……? いや、大げさになるのはかえ って困る。彼女はこの後におよんでも、浩一との関係がおおやけになるのをおそれた。 「もしもし、や、山根です。いまっ、私の部屋に誰かいるの! 帰ってきたら、誰か人が いるのよ」 「わかった、すぐに車で行くから、身を隠して何もしないで」 電話はつながった。彼女が連絡した相手は、春山俊之だった。 春山が来てくれる心強さから、靖子は強気になった。さいわい隣の部屋の夫婦とは懇意 にしてある。夫人はしっかり者だし、ご主人のほうは有名な柔道家だという。見ると、明 かりがついている。 だが、ベルを鳴らすことはできなかった。一瞬早く、靖子の部屋のドアが開いたのだっ た。 エレベーターの中に隠れたまま、靖子は様子をうかがってみた。 「いるんでしょ、靖子ちゃん」 聞こえてきたのは、女の声である。 「……?」 顔を見せたのは、あの少女だった。なぜか奈緒美は靖子のブラウスを羽織っている。靖 子は、彼女の素足が美しいと思った。 「あなた……、どうして?」 「もう帰るだろうと思って、待ってたのよ。靖子ちゃん」 靖子は先に立って部屋に入った。他には誰もいない。 「勝手に帰っちゃうんだもん。フロントから帰ったって連絡があったから、急いで会議を 抜けてきたのよ」 「どうして私の部屋に無断で入ったの?」 どうして入れたのかを聞くべきだと、靖子は思いなおした。 「だって、勝手に帰っちゃうんだもん」 「勝手なのはそっちでしょ。住居不法侵入で逮捕するわよ」 春山が救援にやって来るという思いが、靖子を高飛車にした。 「さあっ、私を閉じ込めた理由を言いなさい。ここに勝手に入り込んだ理由もはっきり言 うのよ、黙秘するんだったら、弁護士を選任しなさい」 「そんなに興奮しないでよ。このマンションのオーナーは私なのよ。勝手に入ったのは悪 いけど、どうしてそんなにつれなくするの? 愛し合った仲じゃないの」 靖子は何も言えなくなった。 「これから楽しもうって時になって、勝手にいなくなっちゃうんだもん」 と、少女はわけのわからないことを言う 「悪いけど、私は無理やりあんなことされて、不愉快なの。もう遅いわ、早く帰りなさい 。早く帰らないと、私の恋人が車で無断侵入者を逮捕しにくるわよ」 一瞬、奈緒美の顔色が変わった。 「すぐに帰れば許してあげるわ。さあっ、自分の服に着替えて」 靖子の高飛車な言葉に、奈緒美が不敵な笑みをうかべた。 「いいわよ、誰が来ても」 と、奈緒美がブラウスを脱いだ。 靖子はびっくりした。奈緒美は陰毛の透けて見えるショーツ以外、何も着けていなかっ たのである。濡れたように勃起した乳首を見て、靖子はうろたえた。 「靖子ちゃんも服を脱いで、裸になって」 奈緒美がお尻をまるめて、ショーツを脱ごうとしている。 「何するの! バカなことしないの」 下着を投げ捨てて、濃密な陰毛を部屋の光にさらしたまま、奈緒美が媚態をつくって靖 子にせまった。靖子は本能的に身がまえた。 「靖子ちゃんの恋人ってどんな人? その人が来たら三人でセックスしましょうよ」 「バカなこと言わないで」 だがこれで、わざわざ来てくれる春山には申し訳ないが、来たらすぐに帰ってもらうよ り方法がなくなったのである。自分の部屋で少女が全裸になっているのを見せるわけには いかない。浩一とのことも、奈緒美とのことも春山には知られたくなかった。 「困った人ね」 と、靖子は携帯電話を手にした。 「春山先生ですか? はい、山根です。申し訳ないんですけど、救援の必要はなくなった わ。親戚の子が来るのを忘れてたの。私ったら慌ててしまって、本当にすみませんでした 。ええ、姪なの。……はい、だいじょうぶです」 その会話を聞いていた奈緒美がニッコリとわらった。 |
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| おんな同士の悦び |
「浩一さんは今夜は呼ばないわ。あたしと朝までセックスしましよう、靖子ちゃん」 靖子はあきれてものが言えなかった。 「それから、靖子ちゃんの知りたがってること、教えてあげる」 「どうでもいいけど、靖子ちゃんはやめて。あたしはあなたより年上なのよ」 靖子は浩一が来ないと聞いて、安心したような残念なような妙な気分だった。 「じゃ、お姉様って呼んだほうがいいかしら」 「どうとでもなさい」 靖子は本当に、もうどうでもいいような気分だった。 「お姉様、会議室を覗きに来てたでしょ? 刈谷にそそのかされたの?」 「し、知らないわよ。でも、どうして選挙権のないあなたが、後援会の会議に出たりする の? あなたのお家はいったいどうなってるの、それから浩一くんも」 靖子は自分の疑問をうっかり口にして、覗き見を認めてしまったのだった。 「あたしは隅田観光グループの役員なのよ。このマンションだってあたしの名義だし、あ たしの学校では、あたししだいで二千人からの父兄の票が動くのよ」 「学校で選挙活動をするのは……、教育基本法の理念にはずれる不法行為だわね。西高は どうか知らないけど、私の学園では絶対にそんなことはさせないって、浩一くんと三田浩 蔵さんに言っておいて」 「やっぱり先生は、英語よりも法律が専門みたいね。だったら都合がいいわ、浩一さんも 見る目があるわね」 「……」 「先生、あたしたちがどうして先生を仲間にしたか、知りたいでしょ?」 「べつに、あなたたちの仲間になったつもりはないわ。選挙だって、勝手にやればいいの よ。そのせいで学園の教職員が分裂するのは迷惑だけど」 「お姉様を三田浩蔵の政策秘書に推薦したのはね、あたしなのよ」 「……政策秘書に?」 何を勝手なことをと思ったが、靖子はあまりの意外さに何も言えなかった。 「三田先生は建設行政と教育分野はお手のものだけど、やっぱり政治家の華は外交でしょ 。このまま自由化と規制緩和が進めば、国内の需要だけ作っててもダメなのよ。国際市場 を睨んだ政策が必要になっているはずでしょ。そこでね、三田先生が外務委員会に入ると したら、留学経験のある英語が堪能な秘書が必要なのよ」 奈緒美の話の大きさに、靖子はしばらく反応できなかった。 「政策秘書は年棒も処遇も、キャリア組と同じレベルなのよ」 「だって、まだ当選したわけじゃないでしょ」 「お姉様が協力してくれれば、もう通ったようなものよ。さっきの電話の相手、春山俊之 ね?」 「……」 「彼を少しだけ抑えてほしいの。あの男はお姉様にぞっこんなんでしょ? タダでとは言 わないわ、工作費はたっぷり出すから、春山俊之を丸め込んでほしいの」 「えっ……?」 「選挙を妨害してるのは、あいつなのよ。理事会は何とか力で抑えられても、教職員組合 が分裂しちゃうと困るのよ。悪い噂がマスコミに流されちゃうしね」 「悪い噂?」 教会の懺悔室でのことが靖子の頭によみがえってきた。あれは誰だったのか……。あの ニセ神父の言ったとおりのことが……。 「べつにあの人、恋人ってわけじゃないんでしょ。あたしはね、お姉様のことなら何でも 知ってるのよ」 「ど、どうしろと言うの?」 「お姉様が寝るそぶりを見せただけで、あいつは言うことをきくんじゃない?」 「……」 靖子は本当に怖くなった。刈谷といい、この少女といい、あまりにも大人の政治に深入 りしている。生々しい部分にタッチしすぎているのはともかく、自分のことを知り尽くし ているのが不気味だった。 「刈谷くんと、あなたたちは……、仲間じゃないの?」 と、靖子はさぐりを入れてみた。しかし、これも藪蛇だった。 「やっぱりお姉様は刈谷純一に言い含められたのね? 彼とはもう寝たの? 抱かれて気 持ちよかった? 彼はアナルが好きだって話ね」 「やめて……」 「お姉様だって、片田舎の学校で英語の先生なんかしてるような人じゃないでしょ。あた しも大学に行ったら、語学と国際政治学を勉強するつもり。あたしと一緒に派手な舞台で 活躍してほしいのよ」 と、奈緒美がやさしい顔にもどった。 靖子は、代議士の秘書に推薦されていると聞かされて、困惑とときめきを感じていた。 このあたしが、政治家の秘書に? そうすると、三田浩蔵が会釈をよこしてきたのも、す べて知ってのこと……? 靖子は混乱した。彼女にはあまりにも話が大きすぎた。 奈緒美が腕をからめてきた。首筋に接吻をくり返しながら、靖子の服を脱がそうとして いる。靖子はされるままに服を脱いだ。 靖子の首から、奈緒美がロザリオをゆっくりとはずした。靖子は自分からブラジャーを とった。乳首のまわりには、奈緒美がつけたはずのキスマークが残っている。 奈緒美がたいせつなものを扱うように、靖子の乳房を両手でささえた。肉の重みをいと おしむように揉みながら、少女が細い首をあげると、おんな同士の唇がかさなった。硬く なっているお互いの乳首をピッタリとあわせたまま、唇の中を舐めるように舌がからみ合 う。 対等に悦びを分かち合う愛の儀式がおわると、奈緒美が身体を入れかえた。 深い草むらの中にある欲望の中心をむさぼるように、互いに舌で舐めあった。あふれ出 る樹液は、自分が分泌したように感じられる。肌を濡らす汗にもかかわらず、心地よい愉 悦がやってきた。靖子はたまらずに喘ぎ声をもらした。 「ああっ、気持ちいいわ」 「お姉様……。浩一さんとは寝てもいいけど、本当に気持ちがいいのはあたしとよ。約束 して」 「ええ、わかってるわ……」 「男と女は支配したり、されたり。でも、おんな同士のセックスは対等なの」 と、やわらかい肌を奈緒美がすり合わせた。 「ええ……」 靖子は少女のやわらかい肌に幸福を感じた。 「お姉様っ」 奈緒美が秘肉を合わせてきた。真っ赤に充血したふたつの性器がかさなって、淫蕩な音 をたてた。 二人はどちらからともなく両脚を交差させて、膨らんだ陰唇と敏感な肉芽をあわせた。 何度も擦るように重ね合うと、すすり泣くような喘ぎが二人をひとつにした。欲望を解き 放つ大胆さで、ふたりの女が睦み合う。 「ああっ、あっ、あ」 「素敵よ、素敵……」 いつ絶頂が来たのかわからなかった。肉をうねらせる快感の津波が何度も押しよせて、 引いたかと思うと愉悦がやって来る。ふたりは喉が渇くまで抱き合っていた。 肉の欲望をさまよった末に、夏の朝が明けていた。 「ねえ、お姉様。奈緒美のあそこ、良かった?」 「えっ、ええ……」 「三田先生が晴れて東京に進出したら、いっしょに暮らしましょうね。あたしも来年は東 京の大学だし、浩一さんと三人で暮らすのよ。秘書のお仕事がうまくいったら、永田町の 議員宿舎で暮らしてもいいのよ」 「……」 「お姉様のこと、三田先生も楽しみにしてらっしゃるのよ」 秘書というのは、下半身をふくめてのことだろう。と、靖子は思った。三田浩一が前に 言った「何不自由ない生活」という意味がわかったような気がした。 靖子は軽いときめきと不安を感じた。この運に乗ってしまえばと思ったが、不運な自分 がかかわってしまった以上、そんなに簡単に計画が達せられるとは思えないのである。奈 緒美の肉体のぬくもりに心地よさを感じながら、そんなことがうまく行くはずがないと思 った。 「どうしたの? お姉様」 「ええ、ちょっとね……」 「ねえっ、もっと気持ち良くなりましょう。ね、お姉様。あたしのあそこを気持ち良くさ せて」 考えあぐねた靖子は、いまは心地よい肉の契りさえあればいい、と思った。どうせ、あ たしは神を裏切ってしまった女なんだ……。と、答えの見いだせない自分の考えに、よう やく結論を得たように思った。 |
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| 暴かれた犯罪 |
夏休みが佳境に入ったころ、靖子は午前中までの補習授業が終わると、すぐに自分の部 屋にもどった。 昨夜は三田浩一と隅田奈緒美に呼び出されて、3Pのセックスで一晩じゅう肉の睦み合 いをくり返したのである。ベッドに入ると、重たい疲れがドッと押し寄せてきた。靖子は いったん深い眠りに落ちてから、身体の火照りで目をさました。 これじゃ、刈谷純一が言ったように、あたしは性の奴隷だわ……。めくるめく快楽だけ をともにする、そんな性関係は、彼女はこれまでに経験がなかったのである。いまは確か な快楽だけが幸福だと思えた。朝まで触れ合っていた浩一と奈緒美の肉体を、恋しいと思 った。 火照った身体を冷たいシャワーで静めていると、電話が鳴った。 三田浩一か隅田奈緒美からの電話かもしれない、と靖子は胸をときめかせた。受話器を とると、濡れたままの身体が熱い。 「もしもし、山根先生ですか?」 男の声だったが、三田浩一ではなかった。 「どなた……?」 「とうとう捕まえましたよ、先生を狙っていたストーカーを。いま警察署にいるんですが 、これから出て来られますか?」 「えっ……。どういうこと?」 「もうだいじょうぶですよ、先生」 電話は春山俊之からだったのである。 奈緒美との約束を思い出して、靖子は憂鬱になった。何ごとにつけ動じやすい自分が、 たくましい意志を持っている春山を籠絡できるとは思えなかった。 「犯人は捕らえました。犯罪の種類が、その、あれですから……、先生の証言が必要なん ですよ。いまのところ、田口の事件を扱ったあの刑事が担当してますから、すぐに来て証 言をしてください。本人を取り調べるにも被害者の調書が必要なんです」 「あたしの証言って? 春山先生がどうして警察なんかに? もしかして……、田口くん の事件で、真犯人がわかったとか?」 「ちがいますよ、田口弘は処分が決まりましたよ。鑑別所行きですよ。その話とは別です 。先生が被害者なんでしょう?」 よく相手の話がわからない靖子は、まだ自分の目がさめていないのだろうと思った。 「早くおねがいします。三田浩一のことですよ」 「えっ? ちゃんと説明して、どうして三田君が?」 予想していた事態に、靖子は落ち着いて考え直した。現行犯でもなければ、未成年が逮 捕されるはずがない。しかし、春山のほうが性急だった。 「山根先生、どうして隠そうとするんです? 三田浩一の父親が大会社の社長だからです か? 代議士候補だからなんですか?」 「よくわからないのよ、わかるように話して」 靖子はとぼけてみせた。 「強姦されたのは先生でしょう。私は知ってるんですよ」 「……」 春山の言いたいことはわかったが、やはり靖子は応じることができなかった。 「三田浩蔵が、ヤツが理事長にとどまっていられるのも今日までです。勇気を出してくだ さい、山根先生っ」 「で、ですから、説明をしてもらわないと……」 「ええと、六月の十四日ですね、三田の家で、何があったんですか? あいつらの勉強会 の日に何があったのか、すべて話してもらえますね。田口弘の事件の時に話してくれれば 、こんな面倒はなかったんですよ」 電話口の春山の確信めいた口調が、しばらく靖子の言葉をとぎらせた。 「山根先生……、あいつらに写真を撮られたでしょう? 三田浩一に強姦された時に写真 を撮られませんでしたか」 ああっ……。あの写真が、どうして? 「証拠がやっと手に入ったんです。苦労しましたよ、先生が告白をしないから」 そう言うと、春山は声色を変えた。 「あなたの姦淫の相手は、写真のとおり三田浩一にまちがいありませんね? それも強要 されて、六人もの男子生徒に脅されて、姦淫を犯した。いや、強姦された。そうなのです ね? シスタージョシュア」 「……!」 「勉強会には女子店員強姦事件の田口弘も参加していた。そうですね? 洗礼を受けた信 徒の名にかけて、主にすべてを告白しなさい」 靖子の顔にカッと赤みがさした。それは懺悔室の神父の声だったのである。 「わかりましたね? とにかく来てください、話はそれからです。はやく僕に相談してく れればよかったのに。こうなる前に、何とでもできたはずですよ」 「待って……」 「早く来てください、先生。三田の父親が動きだすと面倒なことになる。いいですか先生 、これは刑事事件ですよ。れっきとした犯罪なんです」 「ちょ、ちょっと待って。あたしは……、被害届けは出さないわ。私の知らないことです もの。三田君を釈放するように、警察の方に先生から言ってください。とにかく警察沙汰 は困るのよ」 「だって、これだけの証拠があるのに……。わかりました、先生のほうの話は内密に、あ の刑事に任意で事情聴取するように言っておきますから。お身体は、だいじょうぶなんで すか?」 「えっ、ええ……。ピンピンしてるわ」 「生徒をかばうのもわかるけど、それは教育のきびしさとは違うんじゃないですかね。よ く考えてください。また連絡します」 そこまでで、春山の電話は怒ったように切れた。 靖子は暗澹たる気分だった。 やはり春山はすべてを知っていた。靖子の告白のあるなしにかかわらず、周到に三田浩 一をマークしたのに違いない。それにしても、どうしてあの写真が……。 しばらくしてから、自分のいい加減さに腹が立ってきた。 自分のために身を挺した春山の律儀さを思うと、自分が悲劇のヒロインのように思えて くる。そのヒロインは覚悟もなく、迷うばかりでまったくの脳なしなのだ。出口のない自 分のありさまに、とめどなく涙が落ちた。 律儀に約束を果たした春山への済まない思いと、逮捕されてしまった三田浩一の思いが 交錯して、靖子はわけもわからず涙を落とした。おしまいには、自分が愛したのが誰なの かわからなくなる始末だった。 けっきょく事件がおおやけになることはなかったが、三田浩一は略式起訴で鑑別所に送 られた。春山俊之の奔走で三田の自宅が警察に捜索された結果、浩一の部屋から少量なが ら大麻が押収されたのである。 春山が警察に告発した靖子に対する強姦は立件されなかったが、あの写真が証拠調べに 提出されたことで家庭裁判所の心証を悪くしたのはまちがいない。そして、ついに噂にな ることもなく、あの事件は時間の中に埋もれていったのである。 |
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| 女教師の覚悟 |
すでに事件が隠蔽されてから、一カ月が経っていた。 新学期に入ると同時に、春山は系列の大学に講師として転出した。三田浩一の退学処分 によって、春山俊之も学園を去らなければならなかったのである。私立の学校法人であれ ば、ことの評価は別として波風をたてる教師の立場はあやうい。 様々に噂は立ちのぼったが、けっきょく、三田建設の総帥である三田浩蔵が噂されてい た衆議院選挙への出馬をとりやめたことと、春山の突然の転出が結びつけられることはな かった。靖子にはそれが心残りだった。 夏の暑さが残っている秋の午後、靖子は初めての悪阻(ツワリ)に襲われた。すでに彼 女の生理はなくなっていた。激しい吐き気に耐えながら、靖子はいよいよ来るべきものを 覚悟した。人けのない体育館の裏の林の中に逃れて、靖子は自分の置かれた立場の困難を 噛みしめた。 汗をぬぐって眺めているグラウンドに、荒涼とした砂ぼこりが巻き上がるのが見えた。 誰もいないグラウンドに熱気がたちこめるのが不思議だった。 「山根先生っ、もう午後の補習が始まりますよ」 突然うしろから声をかけられて、靖子はうろたえた。 「どうして浩一を告訴しなかったんですか? あいつもけっこう偉くてさ、オレたちのこ とを喋らなかったんですけどね」 「……あなたなの」 声の主は刈谷純一だった。 「もっとも、談合の件を喋られちゃ困るってんで、父親が法務省を通じて検察に圧力をか けたんだけど」 夏場は父親の建設現場を手伝うこともあるという刈谷は、日焼けして逞しい風貌になっ ていた。 「そろそろお腹が膨らんできましたね。おっぱいもデカくなってるし、乳首はもう真っ黒 なんでしょ? やっぱり先生は三田浩一を愛してた、か」 「ほおっておいてよ……」 靖子は、あきらかに変調をきたしている自分の身体をかばった。 「顔色が悪いや、堕せなくなったらどうするんです? それとも予定どおり妊娠して、こ のまま浩一との愛の結晶を生みますか?」 「やめてっ、からかわないで!」 靖子は木陰にのがれた。 「心配してるだけなんだから、そんなに気を悪くしないでくださいよ。肉体が求めるんだ ったら、きっと、つまらない恋に苦しむよりはいいはずだ。ところで、こいつは先生には 関係ないけど、知っておいてもいいかもしれない」 と、刈谷は靖子に缶ジュースを手渡した。 冷たい感触が靖子のほてった皮膚を潤した。 「先生にはどうでもいいかもしれないけど、オレの親父はね、もともと三田の大社長とい っしょに会社を興したんですよ。三田建設の株の一割はいまだに親父が持ってる。つまり 共同経営者なんですよ。分社して別々の会社にみえるけど、経営は同じなんだ。オレが二 年も浪人してこの学校に編入したのは、まあ、グレてたこともあるけど、あいつと同じ学 年になる必要があったからなんです」 「ねえ……、何のお話なの?」 怪訝な顔で、靖子は刈谷の顔を見た。不快な気分と乾ききった喉に、刈谷のくれた冷た い缶ジュースはありがたかった。 「オレには、あいつを蹴落とす必要があったんだな」 靖子は驚きよりもさきに、反射的に言った。 「あなたが仕組んだのね、あの写真も」 そう言ってから、三田に対する刈谷の感情の秘密を知ったように思った。彼に抱かれて しまった記憶がうとましくよみがえった。 「彼を憎んでたのね。あたしと浩一くんをどうするつもり?」 「そうじゃないんですよ」 と、刈谷は靖子の心配を鼻でわらった。 「じゃあ、あなたは浩一くんの弱みを握ろうとして?」 「いや、オレが三田建設の次の経営者になろうなんて、そういう話じゃなくてですね、あ いつの親父の政界出馬を断念させるのが目的だったんです。もう五億円も政治につぎ込ん でるんだから、困ったことだ。経営上、これは大問題でしたね、政治ってのは金を使うば かりで実入りは少ないんです」 「でも、談合が問題だったんでしょ?」 「そうですね、裏のことはうまく行ってましたけどね。功名心で政治家になってしまえば 、談合が明らかになってしまうんですよ。代議士候補ともなれば噂だけでもおもしろおか しく書かれる。俺の親父と三田社長、それに隅田観光の社長が週刊誌に『談合三兄弟』っ て書かれたのは、そういうわけなんです。団子三兄弟が流行ったころの話だけど。出馬で きなくなったのも、同じ理由です」 「そうなの……。知らなかったわね」 靖子は、ようやく二人の関係が理解できた。そして、あの恥ずかしい写真を現像して流 出させた人物の正体を、靖子は目の前にたしかめていた。 もとはといえば、彼女を生贄として三田浩一に抱かせて、それを種に彼を陥れたのもこ の男の陰謀だと、ようやくにしてわかった。 「野心はいいけど、会社を潰されちゃ、元も子もないってわけさ。まったくこの言葉は、 頼りにならない親父を持ったオレに当てはまるよなあ。ああ、でもね、浩一はいいヤツで すよ。それはこの一年間でよくわかった。本当は、オレはあいつをぶっ殺すつもりでここ に編入してきたんですよ」 そう言うと、刈谷は自分を嘲(あざけ)るような笑みを見せた。 「でも、あなたのせいで、春山先生は辞めなければならなかったのよ。あなたが諸悪の根 源だったってわけね」 「諸悪の根源だなんて……。まあ、春山先生には悪いことをした。そりゃそうかもしれな いけど、もともと春山は反三田派だから、なるようになったわけなんです。今回のことで は傷ついた人が多すぎますけどね。田口は俺たちに勝手に、強姦犯になっちゃうし」 陰謀にはあきれたが、忌憚のない刈谷の告白は靖子の心をなごませた。 「あなたのお父さんと三田君のお父さんに、何があったのかは知らないけど……。あなた 、自分で言ったこと覚えてる? ひとりで生きることがどうだとか、ジプシーがどうだと か、そんなことを言ってたわよね」 「そうでしたっけ……」 「あなたが言ったのよ。立場に拘束された人間は自分の意志を離れてしまうって、あなた は言ったわよ」 靖子の言葉に、刈谷はめんどうくさそうに笑った。 「……。ひとりで生きていくってのは、楽しいけど大変ですよ。オレは親父の本当の子じ ゃないんですよ、どうでもいいことだけど。でもこのままじゃ、先生もひとりで生きてい くことになるんじゃない? 春山も袖にしたことだし……。あっ、あのピアスはどうしま した? 乳首に入れたやつ」 「耳につけてるわよ」 靖子は髪をゆすって耳のうしろにそれを確かめた。悲しさと同時に、寂しさを埋め合わ せるような幸福を感じた。 「なるほど……、よく似合ってますよ。鑑別所に浩一の面会に行ってやってください。も う二カ月もすれば、あいつも出てこられるはずだから。そういえば、田口のヤツも保護観 察がとれるらしいし。ヤツらがいろいろ面倒をかけたことを考えると、先生ってのは女神 だなあ」 刈谷の言葉に、靖子はうつむいて微笑んだ。 「そうだ、隅田観光の令嬢も先生によろしくと言ってましたよ。今回の件で、浩一との婚 約は解消したみたいだけど」 「あの子が……?」 靖子の胸が熱くなった。何でも許せるような気分には、おんな同士の睦みあいも恋しか った。 「奈緒美って言ったかな。やな女ですけどね、また山根先生に会いたいんだって言ってま したよ。何かあったんですか?」 「べつに……、何もないわよ。会ったらよろしくと伝えて」 奈緒美とのことも、刈谷は知っているにちがいないと靖子は思った。もうこれ以上、傷 つけ合うのはやめにさせたいと、痛切に思った。 「先生っ、授業に遅れますよ」 そう言うと、刈谷は硬く膨らみかけている靖子のお腹を無遠慮にさすった。 そして、そのまま林の中を小走りに行ってしまった。靖子はなぜかすがすがしい気分で 、彼のうしろ姿を見送った。 どんな母親もそうするように、靖子はすでに脈を打ちはじめた自分の子供がたくましく 育つことを夢見た。そのためには、どんな屈辱にも耐えられるだろうと思えた。 靖子は、ようやく自分にも愛するべきものが生まれたと思った。そう考えると、自分の 中に愛がよみがえるのを感じた。こんどは自分の悩みだけではない。 いとしい三田浩一も生意気で頭のよすぎる奈緒美も、恰好よさだけが完璧な理論派の刈 谷純一にも、今は遠くなってしまった誠実な春山俊之にも。そして、お腹のなかの息づく 幼い生命にも……。胸のロザリオを指先にたしかめながら、彼女には、あまねく世界まで 自分の愛がとどくように思えた。 空を見上げると、秋の陽射しはすっかり乾いているのに、残酷な誘惑の夏のさかりが熱 をおびて、いましがた惨劇が始まったばかりのように重苦しく感じられる。そこまで考え てから、彼女は愕然とした。 ここはいったい、破戒の民が身を灼く地獄なのか、それとも自由な民が踊ることのでき る天国なのだろうか……、と。 (了) |
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リンク集 |
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