アムネスティ死刑廃止学習会
「死刑と誤判」 報告
10、すべての死刑判決の見直しが急務〜執行されてしまう前に
ライアン知事のスピーチに触発され、日本の確定死刑囚について調べてみま
した。先程もいいましたが、日本の確定死刑囚は現在、57人です(2004年6月12日現在)。その人た
ちの内容を見てみましょう。
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再審請求中の人が、少なくとも37人(部分冤罪の人を含めて)いま
す。この中には、完全冤罪の人が少なくとも7人います。名張毒ぶどう酒事件
の奥西さんは、1審が「無罪判決」です。部分冤罪の事件もかなりいます。例
えば、渡辺清さんは4件中2件が、諸橋昭江さんは2件中1件が、石田富蔵さ
んは2件中1件が、石橋栄治さんは2件中1件が無実であると主張していま
す。石橋さんの場合、1審の裁判官は、タクシー運転手殺害については無罪と
し、無期懲役判決を言い渡しています。渡辺清さんも、1審は無期懲役でし
た。
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再審準備中の人が、少なくとも5人います。これは、私の知っている事
件のみの数字なので、実際にはもっと多いと思いはずです。
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「再審請求中」「再審準備中」の中には、裁判において、「重大な事実
誤認」が行われている事件もたくさんあります。例えば、「尾田事件」は、日
弁連が全面的に支援をして再審請求している事件です。福岡市のマルヨ無線川
端店に2人組強盗が押し入り、宿直店員1人が焼死し、1人が自力で逃れたと
いう事件です。尾田さんは、強盗は認めていますが、ストーブを蹴り倒して放
火したことについては否認しています。第5次再審請求審で、裁判所は、蹴り
倒せないことを認めました。しかし手で倒すことは可能とされてしまった。
藤
井政安さんの場合は、事件が3つに分かれているのですが、1つの事件に関し
ては主犯が逮捕も起訴もされていない。別の事件に関しては、殺害するつもり
は全くなく、事件現場から立ち去っている。共犯者の1人が暴走して殺害行為
が起きたものもあるという主張をしています。
山野静二郎さんの場合は、バッ
トで2人が殺されている事件ですが、口論の成り行きで、相手が殴りかかって
きたために反撃したものであり、正当防衛的な面があると主張しています。
中
元勝義さんの事件は、宝石商が殺された事件ですが、殺された後に現場に行っ
て金銭と宝石類を盗んでしまったのです。盗んだだけなのに、殺人もやったこ
とにされたという主張です。
大道寺将司と益永利明さんの事件は、爆発力の威
力について認識の誤りはあったが、殺傷する意思は毛頭なかったということで
再審請求を行っています。
坂口弘さんと永田洋子さんも、殺意を否定し、再審
請求を行っています。
再審請求が出来るという事件は、少なくとも、確定判決
に重大な事実誤認があることを意味しています。これら事件は、こういった事
実誤認がなければ、死刑の選択がなかったはずの事件といえます。死刑囚権利
保護規定には、「死刑は、罪に問われている者の有罪が、事実について別の説
明の余地がないほど明白かつ説得力のある証拠に基づいている場合にのみ科す
ことができる」となっています。
日本の裁判は、ラフな証拠で有罪認定をする
くせに、再審請求になると、弁護側に厳密な証拠(無罪を明らかにする新証
拠)を要求するわけで、およそ納得できるものではありません。
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「控訴せず」あるいは「控訴取下げ」をした人が6人います。死刑囚権
利保護規定では、「死刑の判決を受けた者は、上級の裁判権を有する裁判所へ
上訴する権利を有し、また、そのような上訴が義務的となることを確保するた
めの措置がとられなければならない」とされています。牧野正さんの事件で
は、1審判決後に弁護人が行った控訴手続きを被告自ら取り下げたのは、相談
すべき弁護人がいない状態だったためで、死刑確定は無効」として、控訴審開
始を求めましたが、裁判所は認めませんでした。
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「上告せず」あるいは「上告取下げ」をした人が4人います。この場合
も同様の問題が指摘できます。「控訴」もあわせると、確定死刑囚57人中
10人もの人が、「上訴権」が保障されないままに死刑が確定していることに
なります。
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1審が「無罪」だった人がいます。奥西勝さんです。
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1審が「無期懲役」だった人が6人もいます。渡辺清さん、金川一さ
ん、池本登さん、嶋崎末男さん、石橋栄治さん、横田謙二さんです。1997
年8月1日に死刑が執行された永山則夫さんの裁判では、無期懲役判決を出し
た裁判官が、「かような劣悪な環境にある被告人に対し、はやい機会に救助の
手をさしのべる事は、国家社会の義務であって、その福祉政策の貧困も本件犯
行の一端というべく…」と述べました。
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犯行時19歳で、未成年だった人が2人います。渡辺清さんと関光彦さ
んです。
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外国人の死刑囚が3人います。いずれの事件も、通訳の不備が、重大な
問題として指摘できます。黄さんの事件では、公判を傍聴していた取調べ段階
の通訳者(日本人)が、法廷通訳者(中国人)の誤訳に驚き、傍聴席から声を
あげるということが起きています。
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裁判で「責任能力」が争われた事件が6件以上あります。精神鑑定が争
われた事件です。覚醒剤などの薬物中毒、アルコール中毒などの問題が背景に
あって、「心神喪失」もしくは「耗弱」状態にあったかどうかが問題にされま
した。脳に器質障害があると思われる事件もあります。本来ならば精神鑑定が
行われるべきものが行われていない事件もあります。
大石国勝さんは2000年に死刑が執行されました。この事件は大石さん
が、「精神分裂病」なので罰するべきではないとする鑑定人の意見と、精神状
態は正常とはいえないが精神分裂病ではないとする鑑定人の意見が真っ二つに
分かれた事件です。法廷で弁護側の鑑定人は「被告人が犯した罪ではない。病
気を罰してはいけない」と証言しました。
刑法では、心身喪失者は責任無能力者ということで罰しないこととなってい
ますし、心神耗弱の場合は限定責任能力として刑を軽減することになっていま
す。これらの人の中には、現在も病状を抱えているいる人がいます。死刑囚権
利保護規定では、死刑は、「妊娠している女子若しくは新生児の母又は精神病
になった者に対して執行してはならない」ということになっており、人身が保
護される必要があります。
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高齢者の死刑囚が多く、生年月日がわかっている人の中で、80歳以上
が2人、70歳以上が7人、60歳以上が8人います。最高齢は、石田富蔵さ
んで、82歳です。石田さんは、2件の殺人事件で死刑判決が確定しました
が、1件は無実、1件は傷害致死という主張です。
冤罪事件では、平沢貞通さん(帝銀事件)が1987年に95歳で、佐藤誠
さん(牟礼事件)が1989年に81歳で、富山常喜さん(波崎事件)が
2003年に86歳で、晴山広元さん(晴山事件)が2004年に70歳で獄
死しています。現在の冤罪死刑囚をみてみると、奥西勝さんが80歳、袴田巌
さんが68歳、荒井政男さんが77歳です。
しかし、「高齢」の問題は、冤罪死刑囚の問題としてだけではなく、全ての死
刑囚の問題として考えるべきだと思います。諸外国では、高齢者に対する死刑
の執行について除外規定をもうけている国もあります。
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重大な病気を抱えている死刑囚も多いと思われます。永田洋子さんは、
脳腫瘍で重大な病状です。石田富蔵さん、荒井政男さんは、糖尿病が悪化し、
ほぼ失明状態ということです。
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精神病あるいは重大な拘禁症状を抱えている死刑囚も多いと思われま
す。袴田巌さんは、家族の面会も拒絶しており、重大な拘禁症状にあると思わ
れます。自分の安全を確認できる環境が保障されなければ、再審請求の権利も
行使できません。
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知的障害があると思われる人が1人います。取調べ、裁判の全てで、防
御権の行使ができていません。
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主犯が自殺している事件が1件あります。
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主犯が逃亡している事件が1件(2人)あります。
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共犯者が国外に逃亡している事件が2件(4人)あります。
死刑確定囚の内容をみると、日本の死刑確定者の現状も、ライアン知事の全
員減刑の基準に当てはまると思えます。「死刑を選択する以外…途はない」犯
罪というのが、果たして存在するといえるでしょうか。個々の死刑確定事件を
詳しくみていくと、「死刑に値する犯罪」など、そもそも存在しないのだと確
信できます。
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