ヤンソン Mさんと会うことはできますか。一昨日その妻のFさんに会
い、夫が会ってほしい、とのことなのだが。
田中保安課長 事前に、「刑場は見られない、死刑囚には会えない」、ということを保
坂展人議員とのやりとりで条件にしていたはず。
ヤンソン こちらに来て、ぶしつけなことをしようとはまったくしていない。囚人と話
したいというのは、通常の申し入れというか、手続きとしてしたいだけ。
九重拘置所長 それはわかりましたが、お国の事情であって、今回それができないとい
うことは、保坂氏との事前の了承を得ているはず。
ヤンソン 所長の言っていることはよくわかるが、中にいる人が会いたい、と言っているから、会いたいだけなのだが。
所長 ヤンソンさんが危害を与えるとは思わぬが、死刑囚の心情の安定を乱しては
いけない、という我々の責務もわかってほしい。
ヤンソン 欧州監獄法は、囚人の最低限の処遇を決めている。お持ちかもしれない
が、一部置いておきます。
いまの日本の監獄法は1908年にできたというのは事実か。改正はしないのか。
所長 事実だ。改正に向け3回上程したが、まだ実現に至っていない。役人も改正に向けて動いてきている。
ヤンソン 国会議員が改正を止めている、ということですね。覚えておきます。ど
ういった方向に改正するのですか。
保安課の人 被収容者の権利義務の明確化をはかりたい。
所長 すでに受刑者の権利は尊重しているが、さらに法に明文化したい、ということ
です。
保安課の人 改正は多岐にわたるが、主に居住の向上・リハビリのことについて、法
に明文化をはかりたい。
ヤンソン 内部規則はあるか。あるとしたら、一般にも公開しているか。
保安課長 たくさんの中での決まりがあるので、どこまで、というのは、一概に言
うのは難しい。中には、受刑者の人権や名誉、また安全のため見せられないものも
ある。
ヤンソン 今日、死刑囚は何人いるのか。
所長 28人です。
ヤンソン 先ほど、こちらの受刑者は処遇はみな同じ、というようなことを聞いた
が、処遇の違いはあるのか。
所長 既決者520名中28名が死刑囚、未決者が1688名。未決
の人は最小限の制限で、また、既決者は作業をしながら社会復帰のための教育
を受けている。死刑囚は作業がない。それぞれの置かれる立場、収容の目的が違う
。未決者は、裁判を待ち、既決者は社会復帰を目指し、死刑囚は心情の安定をはかり
ながらすごす、ということ。
ヤンソン 心情の安定をよりよくするための処遇は?
所長 教誨師の教えを聞く、希望により作業をする、趣味や余暇活動の指導、ま
たビデオの視聴など。
ヤンソン 欧州評議会では、外の人間が刑務所を視察したり、また、事前のアポな
しで訪れることもできるが、日本ではどうか。
所長 学術的に意味がある、というような例外のことがあれば考えられることもあ
るのかもしれないが、通常ない。
--ここまで約1時間。その後、死刑囚の空房ひとつと、建設途上の新庁舎を見る。約40分。--
死刑囚舎房(空房) 5階建ての4階部分 75号室
・ 部屋は畳3枚敷き。窓は鉄板が半分かぶっている。
・ エアコンはない。
・ 明かりは9時に暗くする。ドアの外側にスイッチがあり、外から管理する。
・ カメラのついている部屋もある(見た部屋にはついていなかった)。
・ 絵を描いたりするのは別の部屋でやる。
・ ドアの外の上部にドアのストッパーのようなものがついており、健康の不具合
など
なにか不都合があれば倒すと看守が気づいて訪ねてくることになっている。
・ 拘置所のすべての収容人員は1700名、死刑囚は現在28名。
ヤンソン 今日はありがとう。私もデンマークとフィンランドの間の地域の検
事総長をしたことがある。そのとき、拘置所を訪ねたエピソードを紹介したい。
そのときは、収容者はイギリス人一人だった。訪ねたとき、だれもおらず、英語を使
う人が出てきたので、「所長はどこですか」と聞いたところ、「彼は釣りに行った
よ」と、そのイギリス人が出てきて応対した。彼に「あなたは誰か」と聞いたところ、
「僕は囚人です」と答えた。
東京拘置所は、もちろんものすごく大きく、その分責任もものすご
く大きいものだろうから、一概に比較はできませんが、こういう話もあります。今
日はどうもありがとうございました。
(所長より、「新庁舎の総建設費は580億円、維持のための諸経費は年間70億円です」とのこと。)
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