死刑廃止フォーラム主催シンポジウム
「終身刑導入は死刑廃止への近道か」 報告


11月23日(土)、東京・早稲田奉仕園で、死刑廃止フォーラム主催の連続シンポジウム第1回、『終身刑導入は死刑廃止への近道か』が開催された。パネリストは獄中者組合・大山武氏、明治大学教授・菊田幸一氏、龍谷大学教授・石塚伸一氏。

ほか、安田好弘弁護士から日弁連および死刑廃止議員連盟の動向についての報告を受けた。

死刑廃止への道筋として、終身刑という重い刑罰を導入することが果たして近道なのか。
賛成と反対との両意見がぶつかり合い、白熱した討論に3時間があっという間に過ぎた、大変充実したシンポジウムだった。

以下に各氏の話の要旨を報告する。



終身刑導入には反対【獄中者組合・大山武氏】

もともと終身刑の導入には絶対反対の立場。たとえ死刑廃止と引き換えでも、終身刑の導入は極力避けるべきだと考えている。

死刑を存置したまま終身刑を導入することは、過剰拘禁が進行している日本の現状ではアメリカ型の厳罰化社会が到来するということ。

また、「死刑を存置したまま導入するにせよ死刑と引き換えにするにせよ、終身刑は所詮無理な制度だから、いずれなくなる」という議論があるが、いったん導入されれば終身刑はそんなに簡単に廃止はできないのではないか。

いま、死刑廃止を言うと「そんなひどいことをしたヤツは殺してしまえ」という応報論からの反応が返ってくる。それと同じように、いったん導入された終身刑を廃止しようという主張に対しては「そんな危険な人間は一生閉じこめて何もできないようにしろ」という犯罪抑止論・無害化論の立場から、「(終身刑廃止は)保安処分と引き換えにしろ」というような要求が必ず出てくると思う。

死刑と終身刑との関係について、米国の実例。
1972年に連邦最高裁判所で、現にある死刑制度は残虐で違憲であるとしたいわゆるファーマン判決が出た。ファーマン判決後、多数の州が終身刑を導入。

その後、多くの州が死刑法を修正し復活させたため、死刑と終身刑が並存する状況となったが、終身刑の導入により死刑判決が減ったかと言えばそのようなことはない。逆に過去最高の水準である毎年200人から300人の死刑判決がずっと出ている。

それにともなって死刑確定者の数はどんどん増えているし、死刑執行も増えている。これは殺人事件の件数が増えているためではなく、殺人事件の件数は横這いもしくは減少といってもよい状態である。

終身刑自体について見てみると、終身刑は、最初は死刑相当犯罪を処罰するために導入されたが、その後、薬物犯罪者や常習犯罪者への適用ということが前面に出てくるようになった。象徴が1994年の連邦「三振法」(3回重罪を犯したら無条件で終身刑という法律)。終身刑が拡大していった。

日本では無期刑の仮釈放は年々減っており、2000年は、20年以上服役した人がたった6人仮釈放されたのみである。日本で死刑を存置したまま終身刑を導入した場合どうなるかといえば、米国の例でわかるように、無期刑の人の数も増えるだろうし、現在もすすんでいる無期刑の事実上の終身刑化も促進されるだろう。アメリカ型厳罰化が一挙にすすむのではないか。



終身刑を導入してこそ死刑廃止は実現する【菊田幸一・明治大学教授】

終身刑導入は死刑廃止への近道ではない。急がば回れ、ということ。なぜ近道でもないものを主張するかというと、一歩でも前進したいから。

死刑廃止論者はその代替刑を提案するのを避けてきた。代替刑を主張するのは死刑そのものが何らかの存在価値を持っていると認めることになってしまうと。理論としてはそれは正しい。が、今は実践の時。

米国における終身刑が死刑廃止とどう関わってきたかについては、各州によって事情が違うので、個別の州ごとに見る必要がある。

終身刑が残虐だと唱えたら、世論からそっぽを向かれると思う。日弁連、死刑廃止議員連盟の動きを千載一遇のチャンスとして、なんらかの動きを具体化したい。 



今こそ個別の廃止運動に力を【石塚伸一・龍谷大学教授】

「仮釈放のない終身刑をつくって死刑廃止」というのが成功する条件は、死刑を廃止することが先に決まっていること。

その雰囲気をつくるのに欧州評議会は非常に大きいと思う。「2002年末までに執行停止に向けてなんらかの努力を見せないとオブザーバー資格を外す」と言われれば官僚は動くと思うが、その官僚が動く力を本当に廃止のほうにつなげようとするなら、「死刑を廃止しようと言っている人がたくさんいるのだ」ということを議員や官僚に見せなければいけない。

「その運動をどう展開するか」ということなしに国会だけの議論にしてしまうと、いままでやってきた死刑廃止の運動が根絶やしになってしまわないか危惧する。

浜四津議員の案は、死刑と無期刑の間に「特別無期刑」を創設して、死刑の適用範囲を少なくしていく、これの積み重ねによって最後にゼロにしようという、現実的な施策のひとつだろうとは思うが、いまの無期懲役の多くは実質的に終身刑化してしまっている。いま終身刑の制度を入れたからといって次へのインパクトとはなるとは思えない。

どうなるかというと、いままで無期だったなかからある部分が切り取られて、「最初から出られる見込みのない人たち」が出てくる。無期の人はいつか出られるかもしれないから社会復帰の準備をするが、出られない人たちは社会復帰のための努力をしない。働く必要もないし、まじめに生活する必要もない。

それではこの刑罰制度は維持できないから、ここにも釈放の望みが必要ということで、恩赦を検討しようとなっている。

恩赦の拡充によってこれまで死刑廃止をやってきた人を納得させ、一方、存置の人に対しては「廃止ではない。執行停止にするだけ」と言って説得することになる。両極の議論の真ん中で、どちらに行くのかのせめぎあいが出てくるだろう。それを廃止の側から応援するのに何が必要かといえば、

この運動をやっていかない限り、廃止の方向へは行かない。

日弁連の提言については、個別の弁護士さんたちが、死刑確定者の人権を救済するための活動、死刑を出さないような公判廷での努力などを、日常的な活動のなかできちんとやっていくことが前提。

「死刑廃止は立法の問題である」と言われてしまうと、そこで手抜きが出てくることが結構多い。最近、最高裁まで行かないで死刑が確定してしまうケースが増えている。

日弁連は、「少なくとも最高裁まで闘え、弁護士は手弁当でもやれ、そのためのお金は出す」ということを政策的に決定した上でこの話をしないと、ただ法律をつくれば問題解決できるという議論になってしまうので、そちらのほうをきちんとやっていただきたい。

終身刑については、もう少しちゃんと考えないといけないと思う。



日弁連・死刑廃止議員連盟の動きについて【安田好弘弁護士の報告】




昨日(11月22日)の日弁連理事会で「死刑制度問題に関する提言」が全会一致で採択され、この提言が日弁連の意思ということで正式に決定された。中身は、

1) 死刑執行停止法の制定を提言する

死刑制度について国民的議論が尽くされるまで、また、死刑制度欠陥について抜本的に改正されるまでの間、死刑執行を停止する。
同時にその間、政府・議会は次のことをやる。議会に特別委員会を設置し、行政部内に臨時調査会を設置して死刑関係に関する事実を調査し、公聴会を設定し、諸外国の事情を調査するなどして合意形成をはかる。

2) 日弁連として行うこと ただし、この「執行停止」は、「死刑廃止に向けた執行停止である」とは謳っていない。死刑について根本的に見直しをする、あるいは死刑制度の是非について合意形成する、それまでの間の執行停止であって、いわゆる「無色」である。しかし「現在の死刑制度のもとでは死刑執行は許されない」という点では明確な意思表示となっている。

死刑廃止議員連盟の動きについて。
いわゆる「浜四津案」(仮釈放制限期間を20年ないし30年とする「特別無期刑」の新設、附則に2年間の執行停止を盛り込む)、浜四津案を補強するかたちでの「死刑臨調設置法案」(結論が出るまでの間、執行は停止)の提出の動き。さらに、犯罪被害者支援法もミックスしてひとつの法案にできないだろうか、という案も浮上している。




このシンポジウムの詳しい報告は、死刑廃止フォーラム発行の「フォーラムニュース」に掲載される予定。

死刑廃止フォーラムの連絡先は、
東京都港区赤坂2-14-13 港合同法律事務所気付


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