坂上香さん講演会 
    MVFR第1回全国大会に参加して 
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1.はじめに / 2.セレモニー / 3.全体会 / 4.分科会 / 5.まとめ / 6.質疑応答




1.はじめに


テレビを中心にドキュメンタリーを作ってきた坂上と申します。
つい最近フリーになって、映像やりながら書くほうも同時にやり始めています。


大会の開催されたボストン大学キャンパス

きょうは、6月にボストンでおこなわれた「和解のための殺人事件被害者遺族の会」(Murder Victims Families for Reconciliation 以下MVFR)の第1回全国大会に参加した報告をいたします。

MVFRというのは25年前にマリー・ディーンズさんという一人の被害者遺族の方が始められた団体です。現在は全米に会員が4000人くらいいます。

この団体は、会の目的を次のように掲げています。

「MVFRというのは、殺人事件および国家による殺人被害者遺族の全米組織です。どんな場合でも死刑に反対します。私たちの目的は死刑を廃止することです。また、殺人率の低下・犯罪予防そして暴力に代わるオルターナティブなものを促進するためのプログラムや政策を応援します。また、被害者が癒され人生を再び築きなおすことができるように、あらゆる暴力の被害者が必要とするプログラムを支援します」。

会の目的に「死刑廃止」をうたっているんですね。アメリカには被害者のための団体は1万以上あると言われていますが、「死刑廃止」を目的にして入るのはMVFRだけです。

創設者のマリー・ディーンズさんは義理のお母さんを殺された遺族ですが、事件直後に警察官から「犯人を捕まえて死刑にしてやるから」と言われてショックを受けたといいます。

それまではクリスチャンとして「死刑っていうのは残酷よね」というレベルでしか考えたことがなかったのですが、自分自身が犯罪の被害者になってみて、警察官から「死刑にしてやるからね」と言われ、近所の人などからも「犯人が死刑になれば、あなたはなんとか乗り越えられるわよ」みたいなことを言われ、そういう態度に非常に違和感を覚えて、一人で立ち上がって、「私は死刑に反対です。遺族だけど、いやです」と、そういうことを言い始めるんですね。

そうすると、家の周りに物は投げられるわ、車に汚物はつけられるわ、いやがらせの電話や手紙は来るわでほんとにひどい目にあう。
それで、「ああ、被害者でありながら、死刑に反対だと言うのはこんなに大変なことなんだ」と、そのとき初めて気づくわけです。
「これだからといって黙ってちゃいけないんだ。被害者の人がちゃんと自分の意見を言えるような、そういう状況をつくっていくべきだ」とマリーさんは考えた。

そのときに彼女が思ったのは、死刑という制度は被害者を「良い被害者」と「悪い被害者」に二分化してしまっている、ということ。
被害者は被害者なのに、「死刑に反対だ」と言ったとたんにその悲しみや哀しみをもう受けとめてもらえない。「それでも被害者か」というふうに言われてしまう。
「良い被害者」と「悪い被害者」のその垣根を取るためにも、死刑に反対する団体をつくるべきだと思ったと、そういうふうに彼女は言っています。


私自身のMVFRとの関わりは、5年前にMVFRの主催する「ジャーニー・オブ・ホープ(希望への旅)」というイベントを追ったドキュメンタリーを撮ったことがきっかけです。
ジャーニー・オブ・ホープ:
93年からMVFRの有志の人たちによっておこなわれている。死刑制度のある州に赴き、ライオンズクラブや大学や高校、教会などで、被害者遺族・死刑囚の家族が自分たちの体験を語り、死刑制度の廃止を訴えかけて行く旅。
詳しくは坂上香著・「癒しと和解への旅」(岩波書店 1999年)
それまでも自分の中で、被害者と死刑というのは必ずしも対立する概念ではないと思っていましたが、被害者でありながら死刑に反対するという、その運動が成り立ち得るのか、という驚きで5年前は取材をしたわけです。

その後5年間、いろいろな人たちとの交流を経て、確実にあり得るんだ、という、自分の中で確信みたいなものを持っています。
もちろん、それは人によるし、絶対に強制してはいけないということが前提です。
実際アメリカではたくさんの人が、マリーさんをはじめとするMVFRの人々のようになりつつあるんだ、ということを私自身が学んできたわけです。


そして今年、初めて、このMVFRが全米レベルでの大会を開き、私もそこに参加してきました。MVFRというのは、とにかく殺人はすべて殺人だと捉えている。だから死刑だって国家による殺人であって、「死刑は制度だから殺人じゃない」という考え方は成り立ち得ないと。
ですから、死刑を執行されてしまった死刑囚の家族もイコール遺族である、というふうに考えているんですね。

大会のタイトルが「殺人の傷から癒されるために」ということで、死刑に反対する遺族と死刑囚の家族が全米から初めて大集合しました。
参加者は約350人で、そのうち3分の2くらいが当事者だというふうに私は聞きました。その他の人たちはいろいろな分野の専門家であったり、私のようなジャーナリストであったり、学生であったり、という顔ぶれでした。

会場となったのは、ボストンにある「ボストン・カレッジ」というクリスチャンの学校です。このボストン・カレッジの創設者の方は、マサチューセッツ州の死刑制度廃止でかなり活発に動いた方らしいのですが、そのボストン・カレッジとMVFRが共催で今回の大会を開きました。

とてもいいなと思ったのは、大学のキャンパスを使っているので広々としていて、深刻でしんどい話を聞いて疲れても、ゆっくりできるような場所が至るところにあるんです。緑に囲まれているし。

キャンパスを歩いていると、しんどそうな、ぼーっと宙を見つめている人がいたり、何人かで集まってハグ(抱き合う)して語り合っていたりとか、密閉されていない広い空間で、みんながそれぞれ自分の居場所を見つけられるような空間が設定されていたと思います。

それから、深刻なトラウマを抱えた方も参加しているので、キャンパスの中にお医者さんと看護婦さんがいて、お医者さんはいつでも駆けつけられるような仕組みになっていました。看護婦さんがある部屋にずっと待機していて、遺族の方がしんどくなったらそこに行って休めるという、ヒーリングルームみたいなものも用意されていて、結構そういうところもみなさん利用されていたようです。


それでは、今回の大会の中で、私自身が参加して体験したものについて、いくつかお話ししていきたいと思います。 基本的にシンポジウム形式でおこなわれる全体会・分科会、各種セレモニー、展示会、それからコンサートやバーベキューなどのエンタテイメント……と、さまざまなプログラムが用意されていました。
→ 2.セレモニーへ
エンタテイメントのバーベキューの様子  




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