死刑廃止ニュース
死刑に関する事件と世界的な廃止への動きの概要
2001年 9月
AI Index: ACT 53/004/2001
死刑廃止への動き
中国――劇的な処刑の増加
中国政府は、犯罪に対してまた「厳打」キャンペーンを開始した。 4月から 7月の間に少なくとも 1,781人が処刑された。これは、中国を除いて世界で過去 3年間に処刑されたとされる総数以上である。暴力犯罪はもちろんのこと、贈収賄、売春周旋、横領、詐欺、有害食品の販売、「株式相場の混乱」などの様々な犯罪で全部で 2,960人が死刑判決を受けた。
成果を示すように迫られて、河南省の警察は 4月の 2日間に 3,000の事件を解決したと公言した。四川省においては 6日間に19,000人以上を逮捕したと警察が報告した。検察は、「迅速な逮捕、迅速な裁判そして迅速な結果」を成し遂げるように、「もつれた細部に留意しない」と強調した。裁判所も、迅速さとキャンペーン期間中の「特別な訴訟手続」を誇った。
このような状況においては、誤判はより起こりやすくなっている。安徽省の工科大学の助教授liu Mingheは、この最近の「厳打」キャンペーン中に逮捕された。彼は、暴力的な尋問と拷問によって、犯してもいない殺人罪を自白させられたと主張したが、伝えられるところでは、彼の不十分な証拠に基づく有罪判決が破棄されたのは、彼が共産党員であることや、彼の家族の資産および社会的地位によるところが大きいということである。
多くの死刑囚は、自白を引き出すために拷問を受けたということである。処刑された死体からの同意なしの臓器提供も相変わらず行われている。
ほとんどの処刑は、公共の広場や2008年のオリンピックでサッカー競技が開催される予定の北京工人体育場のような競技場に大勢の群衆を集めて行われる公判大会の後で行われている。 4月と 5月に山西省で行われた公判大会には 180万人が参加したということである。死刑囚は、銃殺刑執行隊または頭部への銃撃によって処刑される前に、公然と引き回すことで儀式的な辱めを受けている。
ロシア――大統領が死刑執行停止を支持
テレビ放送された 7月 9日にクレムリンで行われた世界銀行総裁との会議での所見のなかで、ロシアのプーチン大統領は、「国家は神だけが与えることのできる権利、すなわち人権を奪ってはならない。それで、私は、ロシアが死刑を復活するのに反対すると確固として言うことができるのである」と述べた。
プーチン大統領は、国家が残酷なことを保障するということは、犯罪と闘うのには意味がなく、新しい暴力を生むだけであると思うという言葉も引用した。彼は、広く世論が処刑の復活を支持しているにもかかわらず、ロシアで 5年間行われている死刑の執行停止を続けるべきであると述べた。
しかし、ロシアは、平時における死刑の廃止を規定し、欧州審議会への加盟要件となっている欧州人権条約第六議定書をまだ批准していない。ロシアは、1996年 2月に欧州審議会に加盟した (死刑廃止ニュース1996年 3月号、1999年 6月号参照) 。ロシアは、国内法において死刑を廃止しておらず、現在のところ、そのような計画もみられない。
ナイジェリア――イスラム法廷が石打による死刑判決を下す
9月に、北部のケッビ州のビルニンケッビの高等イスラム法廷は、35歳の Attahiru Umar
に対して石打による死刑判決を下した。 7歳の少年に対する同性愛行為を犯して、隣人に告発された Attahiru Umarは、法廷で読み上げられた陳述書のなかで、犯罪を自白したとされる。伝えられるところでは、法廷は、医学的な確認を求めなかったし、ジャーナリストがAttahiru Umar に接見することは、刑務所当局によって拒否されたということである。
10月に、姦通罪を認めたと申し立てられ離婚した30歳の女性Safiya Tungar-Tuduに対して、ソコト州のグワダバワの高等イスラム法廷は、石打による死刑判決を下したということである。双方の事件とも、州知事が死刑を執行する承認をしなければならない。
過去 2年の間に、ナイジェリアの北部のいくつかの州は、イスラム法の原則に基づいて、イスラム教徒のための刑事法を導入した。石打による死刑は、以前はより軽い刑罰を適用されていたいくつかの犯罪にまで拡大された。イスラム法の法的慣習においては、証拠原則、上訴権、法定代理権、適用できる刑罰が、イスラム教徒ではない市民に適用される法とは異なっている。
パキスタン――神への冒涜に対する死刑
8月18日に、イスラマバードの刑事裁判所は、神への冒涜の罪で、医学校教授の Younis
Shaikh博士に死刑判決を下した。申し立てられたところによると、彼は、講義中に預言者マホメットは、イスラム教が彼に啓示する40歳まではイスラム教徒ではなかったと述べた。彼の発言は、イスラム教組織のMajlis Tahaffuz Khatm-i-Nabuwat(預言者の言行を擁護する委員会) によって取り上げられ、警察に告発された。Shaikh博士は、2000年10月から拘禁されており、上訴を申し立てている。
パキスタンにおいては、神への冒涜に対する死刑は絶対的なものであり、通常は高等裁判所で減刑される。しかし、今年の初めに、キリスト教徒で、神への冒涜の罪で死刑を言い渡されたAyub Masihの判決は、高等裁判所でも支持された。1996年10月に逮捕されて以来拘禁されており、現在はラホールの 200マイル南西にあるムルタンで独居拘禁されているAyub Masihは、終局裁判所であるパキスタンの最高裁判所に、減刑を求める上訴をしている。
中国――被告人の臓器提供
8月 3日の台湾の台北時報によると、中国南部の南昌のMetropolitan Consumpution News
に、処刑された死刑囚の臓器を移植用に売買しているという記事があるという。その記事は、2000年 5月に処刑されたFu Xinrongは、萍郷の裁判所によって、彼の腎臓を患者に移植するために病院に売られたとしている。伝えられるところでは、Fu Xinrongの家族は、まだ彼の死体または遺骨を返すという裁判所からの通知を受け取っていない。
6月に、アメリカ合衆国に亡命した中国人医師が、中国で処刑された死刑囚から移植用の臓器を摘出したと合衆国議会で証言した。Wang Guoqiは、 100体以上の死体から角膜および皮膚を摘出したと述べた。彼は、臓器を保護するために処刑直後の心臓がまだ動いている間に、臓器は摘出されたとも述べた。
中国当局は、臓器売買または承諾なしの臓器提供について、繰り返し否定している。伝えられるところでは、Metropolitan Consumpution Newsの記者は、その職を失ったということである。
イラン――公開で絞首刑
8月にイランで28人以上が処刑され、そのなかには公開処刑もあった。 8月16日に、セムナーンで、武装強盗を犯した 3人の男性が公開で絞首刑に処せられた。マシャッドでは Reza Nadiと Kazem Alayemiが公開で絞首刑に処せられ、テヘランでは 3人が公開処刑された。イスラム共和国通信(IRNA)によると、テヘランでの処刑に抗議した大衆に対して、警察が催涙弾を発射したということである。その抗議によって、大統領および他の改革者は、公開処刑はイランの国外からの評判を悪くするとの懸念を表明するにいたった。
実数ははるかに多いと思われるが、イランにおいては、今年の 9月末までに 120の処刑を記録している。80人以上が死刑判決を受けたが、経済的な妨害のような死に至らない犯罪による者も含まれている。
短 報
アフガニスタン――8月 8日に、首都カブールの大統領公邸近くで、クレーン車から吊るされて 4人の男性が公開処刑された。彼らは、2000年11月にその町で爆弾を爆発させた容疑で有罪判決を受けていた。
アゼルバイジャン――5月15日に、アリエフ大統領は、アゼルバイジャンが、引渡請求の理由となる犯罪に対して請求国で死刑が適用される可能性のある事件を犯した犯罪者を引き渡すことを禁ずる法律に署名した。
アゼルバイジャンは、 5年間の死刑執行停止の後、1998年 2月に死刑を廃止した。最後の処刑が行われたとされるのは1993年である。アゼルバイジャンは、欧州人権条約第六議定書に署名し、市民的および政治的権利に関する国際規約第二選択議定書の当事国である。
アイルランド――9月21、22日にゴルウェーで、国際法および死刑廃止に関する二カ国語協議会が開催された。それは、アイルランド国立大学のアイルランド人権センターによって計画された。 4つのセッションで扱われた論題は、国際規範、重大事件(LaGrandと国際司法裁判所、Ocalanと欧州人権裁判所、 Burnsとカナダ最高裁判所) 、外交関係の最前線と他の国際的なイニシアティブ、世界的な廃止への動きである。フランスの上院議員 Robert Badinterが結びの演説を行った。
トルコ――トルコ議会は、10月 3日に、「戦時、戦争の差し迫った脅威およびテロリズムを除いて、死刑を科すことできない」とする憲法改正案を可決した。
上訴裁判所で支持され、議会の承認があればすぐに処刑することができる 117人の死刑囚のうち72人が、反テロ法によって判決を受けたものである。最後の処刑は1984年に行われた。
アメリカ合衆国・連邦――7月 2日のミネソタ女性弁護士グループの演説のなかで、処刑の再開を認めた最高裁判所判決 (1976年・グレッグ対ジョージア州) の25周年を記念して、合衆国連邦最高裁判所のオコナー判事は、「20年後の高等裁判所において、この国の死刑が公正に執行されているかどうかについて重大な疑問が呈されることを認識しなければならない」と述べた。彼女は、近年容疑が晴れて釈放された死刑囚の数に注目して、「統計が暗示しているとすれば、その制度は無実の被告人の処刑を認めていることになるであろう」と述べた。ミネソタ州が死刑を廃止していることを示して、オコナー判事は、「あなたがたは、毎日、ほっと一息をついているにちがいない」と聴衆に語った。2000年および2001年に、12人の死刑囚または元死刑囚が容疑が晴れて釈放されたが、合衆国において1973年以降このような事件は98に達する。
アメリカ合衆国――9月15日に、合衆国連邦最高裁判所は、ノースカロライナ州の要請により、1987年に殺人罪で死刑判決を受けた Ernest McCarverの事件について、争訟性がないとして却下した。合衆国連邦最高裁判所は、精神遅滞者の処刑は合衆国憲法に違反するとして Ernest McCarverが提起した問題を検討しなくてはならなかった。合衆国連邦最高裁判所がこの事件の再審理を決定した後、ノースカロライナ州では、精神遅滞者に対する死刑の適用を禁ずる法律を可決した。新しい法律は遡及して適用されるが、確定した死刑判決は自動的には減刑されない。
現在、合衆国連邦最高裁判所は、バージニア州で犯した殺人罪で1996年に死刑判決を受けたDaryl Atkinsの事件について検討している。伝えられるところによると、Daryl Atkins
はIQが57であり、彼の弁護士は精神遅滞を理由に上訴したということである。
今のところ、連邦と合衆国の18の州が、精神遅滞者に対する死刑の適用を禁ずる法を有している。今年だけでも、ノースカロライナ州、フロリダ州、コネチカット州、サウスダコタ州、ミズーリ州およびアリゾナ州の 6つの州で、このような法律が導入された。1977年以降合衆国の処刑数の 3分の 1を記録しているテキサス州においては、精神遅滞者の処刑を禁ずる法案が州議会を通過したが、Rick Perry知事によって拒否された。
オクラホマ州――9月10日に、オクラホマ州の刑事上訴裁判所は、1990年に殺人ので死刑判決を受けたメキシコ人 Gerardo Valdez Maltosの処刑の無期限の停止を認めた。弁護人は、領事権の違反に関する国際司法裁判所の最近の拘束力のある判例 (死刑廃止ニュース2001年 6月号参照) は、合衆国の裁判所においても適用されるべきであり、 Gerardo Valdez Maltosの新しい審理でも保障されなくてはなららいと主張して、裁判所に申し立てた。
6月 6日に、オクラホマ州の恩赦および仮釈放委員会は、メキシコ領事の援助によって発見された軽減事由となる新しい証拠を審理して、 Gerardo Valdez Maltosの減刑を勧告した。しかし、 7月20日に、 Keating知事は、領事関係に関するウィーン条約違反ではあるが、「無害の誤り」の結果にすぎないとして、恩赦および仮釈放委員会の減刑の勧告を拒否した。
テキサス州――8月15日に、Napoleon Beazleyは、処刑される予定のわずか 4時間前に、テキサス州刑事上訴裁判所によって処刑の緊急停止が認められた。Napoleon Beazleyは、彼が17歳の時に犯した殺人で、1995年に有罪判決を受けた。彼は、この 1年に合衆国において処刑に直面している 3人目の少年犯罪者である。
目下のところ、17歳であった1985年に殺人を犯したGerald Mitchell という別の少年犯罪者の処刑が、テキサス州で10月22日に予定されている。
1997年以降、世界で12人の少年犯罪者の処刑が知られているが、そのうちの 8人が合衆国で処刑されている。