死刑廃止ニュース

死刑に関する事件と世界的な廃止への動きの概要
       2002年6月
AI Index: ACT 53/003/2002




死刑廃止への動き


死刑反対連合の設立
2001年 6月にフランスのストラスブールで開催された第 1回死刑廃止世界会議 (死刑廃 止ニュース2001年 6月号参照) での決議によって、世界的な死刑廃止のために活動する連 合体が設立された。
死刑廃止世界連合は、 5月13日にローマで開催された会議で、正式に設立された。その メンバーには、セント・エジディオ共同体、ハンズ・オフ・カイン、国際人権連盟、拷問 に反対する国際キリスト教連盟のほか、全国死刑廃止連合 (アメリカ) 、ジャーニー・オ ブ・ホープ (アメリカ) 、日本の組織であるフォーラム90、死刑に反対する母 (ウズベキ スタン) と、他の国の国家組織が含まれている。
 その連合は、国家や、法曹協会、労働組合、市議会のような地域的または地方の自治体 組織などの世界的な死刑廃止組織にも門戸を開いている。フランスの組織「共に死刑廃止 を」は、ストラスブール会議の主催者で、世界連合の事務局をつとめた。
  5月13日に出された声明のなかで、国連人権高等弁務官のメアリー・ロビンソンは、「 国際法の下で死刑廃止の方向を急速に勢いづけるのを確か」にする「時機を得たイニシア チブ」であると世界連合の主催者を称賛した。彼女は、連合が始動したことは、世界的な 死刑廃止の目標に「今や到達しようとしている」という「新たな希望を私に与える」と述 べた。


国連──「性的行為に対する死刑に反対」
国連人権委員会は、すべての死刑存置国に対して、「同意成人間の同性愛行為のような 非暴力的な行為に死刑を科さないことを保障する」ように求めた。
この求めを含む決議 2002/77は、ジュネーブで行われた定例会期の委員会で 4月25日に 採択された。ナイジェリアにおいて、姦通罪を犯した 5人の子どもの母親で離婚女性が処 刑されるおそれがあったこと (死刑廃止ニュース2002年 3月号参照) について、世界的に 懸念がもたらされたからである。
 これは、委員会が1997年以来毎年採択してきた死刑問題に関する決議の 6番目のもので ある。初めて、委員会は、「民族的または人種的、宗教的および言語的に少数派の者に、 不相応に死刑が科せられている」と言及した。以前の決議と同様に、委員会は、すべての 死刑存置国に、「完全に死刑を廃止するために、死刑の執行の一時停止を行い」、少年犯 罪者に対する死刑の適用を禁ずることも含めて、国際的な保護条項を尊重するように求め た。
 その決議は、2001年よりも 1カ国多い68カ国によって共同提案され、賛成25、反対20、 欠席 8で採択された。採択後、サウジアラビアは、その決議を否認する62カ国を代表して 声明を出した。
決議 2002/77の本文は、国連の人権に関するウェブサイト(www.unhchr.ch) を参照のこ と。


アムネスティ・インターナショナル──代表団がジャマイカ、トリニダード・トバゴを訪問
 「カリブ諸国の皆さん、私は、死刑の支持が、社会における暴力犯罪の増加による怒り から来ていることを知っています。この問題の答えをさがすとき、政治家は死刑を提唱し、 それから、絞首刑を執行するときには「人々の意思」を実行したと主張し始めます。私は、 カリブ諸国での私たちのキャンペーンが、この連鎖を壊す何かの手段になることを望みま す。」
 「デッドマン・ウォーキング」の著者であるシスター・ヘレン・プレジャンは、 4月に ジャマイカおよびトリニダード・トバゴを訪問したアムネスティ・インターナショナルの 代表団の一員として講演を行った。また、代表団のメンバーで、和解を求める殺人被害者 家族の Pat Clarkは、「カリブ諸国の死刑をめぐる議論には、あまり情報が与えられてい ないこと」に気づき、「すべての殺人被害者家族が、処刑によって暴力の連鎖が続くこと を望んでいるのではないという私のメッセージを、特によく受けとめていただきたい」と した。訪問の際に、代表団は、トリニダード・トバゴの首相やジャマイカの閣僚に会った。 最も近いところではジャマイカの司法長官など、政治家のなかには、個人的に死刑反対を 表明した者もいた。
 代表団は、新しいアムネスティ・インターナショナルの報告書 (「英語圏カリブ諸国に おける国家殺人:植民地時代の遺産」AI Index: AMR 05/003/2002)を発表し、英語圏カリ ブ諸国の司法制度は、死刑を科す際に適用される国際準則を充たしていないことを示した。 詳述すると、裁判時、上訴時のいずれも十分に弁護人を依頼できないこと、精神障害者に 死刑を科すこと、強要された自白を使用することなどの問題である。報告書はアムネステ ィ・インターナショナルのウェブサイト(www.amnesty.org) で見ることができる。
英語圏カリブ諸国における最後の処刑は、2000年 1月に、バハマで執行された。


日本──欧州評議会がセミナーを開催
  5月27、28日に、東京の参議院議員会館において、死刑廃止に関するセミナーが開催さ れた。
セミナーは、欧州評議会議員会議法務人権委員会と死刑廃止を推進する議員連盟の共催 により行われた。報告者には、議員連盟会長の亀井静香と、1983年に再審無罪で33年ぶり に死刑囚監房から釈放された元死刑囚の免田栄も含まれていた。
 2001年 6月に、欧州評議会議員会議は、日本およびアメリカに、死刑執行の一時停止と 死刑囚監房の改善を求め、2003年 1月までにその要求の履行に向けて進展がみられないな らば、この 2カ国に対して欧州評議会のオブザーバーの地位の継続に異議を唱えることも 決定した (死刑廃止ニュース2001年 6月号参照) 。セミナーは、この第一歩として開催さ れた。


アメリカ合衆国──少年死刑囚 1人が処刑、 1人が執行延期
 犯行時17歳で死刑判決を受けた 2人の死刑囚の事例は、アメリカにおける死刑の恣意性 を明白にしている。
 ミズーリ州においては、 5月28日に、州の最高裁判所が、合衆国における「相当な基準」 を精神遅滞者を処刑する範囲まで広げることは、残酷で異常な刑罰を構成するか否かを合 衆国連邦最高裁判所が決定する事件の結論が出るまでは、 Christopher Simmonsの死刑の 無期限の執行停止をすることを認めた。 Christopher Simmonsの上訴が論じられた連邦最 高裁判所の決定は有望で、犯行時18際未満の少年死刑囚の処刑を許可することに反対する 国家的な合意を示す判決がもたらされるかもしれない(5頁の最新情報参照) 。
 テキサス州においては、数時間後、Napoleon Beazleyが処刑された。テキサス州の刑事 上訴裁判所は、後に Christopher Simmons事件で申し立てられたのと同じ理由での死刑の 執行の停止を認めず、その後、テキサス州恩赦および仮釈放委員会は、10対 7で恩赦に反 対した。Rick Perry知事も、 Christopher Simmons事件に関するミズーリ州最高裁判所の 決定の情報がもたらされたにもかかわらず、「 (Beazleyの) 処罰を遅らせることは正義 を遅らせることになる」と言って、介入することを拒んだ。
 Napoleon Beazleyは、前科のないアフリカ系アメリカ人で、殺人罪で全員が白人の陪審 で有罪は決を受けた。死刑囚監房に拘禁された 8年の間に、彼は、自動車強盗の際に生じ た殺人に自責の念を繰り返し表明していた。彼の事件には、世界中からかなりの関心が寄 せられた。恩赦を訴えた数万人のなかには、 6人のノーベル賞受賞者が含まれていた。
Napoleon Beazleyは、1993年以降にアメリカ合衆国で処刑された14人目の少年死刑囚と なった。同時期に、残りの世界中の国で、アムネスティ・インターナショナルが記録した 少年死刑囚の処刑は 8人にすぎない。


タジキスタン──検討されはじめた死刑
 タジキスタンの大統領府は、死刑相当犯罪の数と死刑に相当する者の範囲を検討するた めの調査専門委員会を設置した。
 1998年刑法の下では、14の死刑相当犯罪があり、妊婦と65歳以上の男性には死刑を適用 することができない。審議においては、ジェノサイド、バイオサイド、禁制品の栽培を含 む 5つを死刑相当犯罪をから除外し、すべての女性と60歳以上の男性について死刑を免除 することが提案された。
 その提案は、歓迎されるが、タジキスタンの処刑数にそれほど影響を与えることにはな りそうもない。死刑の統計は非公表であるが、2001年に裁判所は少なくとも74の死刑判決 を宣告したことがわかっている。裁判記録によれば、ジェノサイド、バイオサイド、麻薬 の栽培による起訴は含まれていない。調査専門委員会の法律顧問によると、 3人の女性が 同じ時期に死刑判決を受けたという。 1人は処刑され、 1人は恩赦を受け、 3人目は恩赦 請求の結論を待っている。


新しい死刑廃止議定書──36カ国が署名
36カ国が、欧州人権条約第13議定書が署名開放された日に、当事国になる意向を示して 署名した。また、36カ国のうち 3カ国は、その議定書を批准した(5頁参照) 。署名は、 5 月 3日にリトアニアのビリニュスで開催された欧州評議会閣僚委員会で行われた。
 44カ国の加盟国からなる欧州評議会の事務総長ヴァルター・シュヴィマーは、第13議定 書は「世界的な死刑廃止に向けて決め手となる一歩である」と宣言した。「われわれは、 これ達成するために努力を惜しみません」とも付け加えた。
 第13議定書は、例外なくあらゆる状況下において死刑を廃止するための法的拘束力のあ る国際条約としては最初のものである (死刑廃止ニュース2002年 3月号参照) 。欧州人権 条約に加盟するいかなる国も、この議定書の当事国になることができる。





短  報


メキシコ──メキシコのビセンテ・フォックス大統領は、フランス滞在中の 5月15日に 、欧州評議会閣僚委員会に招待され講演した。講演のなかで、大統領は、欧州評議会議員 会議が、死刑判決を宣告された外国に居住するメキシコ人の保護に介入したことに感謝し て、「犯した犯罪が極めて凶悪であったとしても、人間の生命を剥奪することは、基本権 の侵害であり、国家が犯罪者のような暴力的な態度で臨むことになる」と述べた。


パキスタン── 6月 6日に、イスラマバードの連邦シャリーア裁判所は、姦通罪で石打 ちによる死刑を下級裁判所で宣告されていた Zafran Bibiを無罪放免とした。
 ノース・ウェスト・フロンティア州のコハート出身の Zafran Bibiは、2000年に、彼女 の夫が服役中に警察官に強姦され、後に子どもを出産したということである。彼女が被害 者として扱われ、強姦犯人が訴追されるどころか、彼女自身が姦通罪で起訴され、死刑判 決を受けたのである。


タンザニア── 4月に、ベンジャミン・ムカバ大統領は、殺人を犯して死刑判決を受け た 100人を終身刑に減刑した。その減刑を発表した Mohammed Seifkhatib内務大臣は、こ れは、大統領が「人権、とくに生命権に関心があること」を示す一つのやり方であると述 べた。タンザニアにおいては、殺人罪および反逆罪について死刑が存置されており、死刑 判決が宣告され続けている。


アメリカ合衆国──1973年以降、 100番目と 101番目の冤罪事件があった。 Ray Krone は、1992年に死刑判決を受けた殺人について無実を証明するDNA鑑定が出て、アリゾナ 州の刑務所から 4月 8日に釈放された。彼は、1995年に新たな裁判にかけられたが、終身 刑の判決であった。
 Thomas Kimbellは、1998年にペンシルベニア州で死刑判決を受けた犯罪に対する再審で、 5月 3日に無罪放免となった。彼は、一貫して無実を主張していた。
 無実を示す証拠が出てきて死刑囚監房から釈放された囚人の最新のリストは、www.death penaltyinfo.org/innoc.html で見ることができる。


メリーランド州── 5月 9日に、Parris Glendening 知事は、州の死刑の公正さ、とく に人種差別に関するメリーランド大学の研究の結論が出るまでは、死刑の執行を一時停止 すると公言した。同時に、知事は、 5月13日の週に処刑される予定であったWesley Baker の死刑の執行停止も発表した。
 メリーランドは、研究がまとまり、州議会が議決するまで、死刑の執行の一時停止を行 った 2番目の州である (イリノイ州が2000年 1月に同じことをした) 。


国連特別報告者・最新の報告書──超法規的、略式および恣意的な処刑に関する国連特 別報告者の Asma Jahangirは、年報を国連人権委員会に提出した (Document No.E/CN.4/20 02/74 国連の人権のウェブサイト参照) 。それには、アメリカ合衆国、イラン、インドお よび他の国に対する緊急アピールや、各国政府からの回答についての情報が含まれている。 とりわけ、特別報告者は、「死刑に関する保護条項が遵守されているかを細かく調査する ために、各裁判所の死刑判決には遵守する保護条項を記さなければならず、その判決を公 表することが求められる」(149節) と勧告した。



国際条約

欧州人権条約第13議定書が 5月 3日に署名開放された。署名および批准をしたのは 3カ国で、アイルランド、マルタ、スイスである。署名したのは残りの33カ国で、アンドラ、オーストリア、ベルギー、ボスニア・ヘルツェゴビナ、キプロス、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、グルジア、ドイツ、ギリシア、ハンガリー、アイスランド、イタリア、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルグ、モルドバ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、サンマリノ、スロベニア、スペイン、スウェーデン、マケドニア、ウクライナ、イギリスである。


最新情報─── 6月20日に、合衆国連邦最高裁判所は、精神発達遅滞者の処刑は合衆国憲法に 違反するという判決を下した。
( 辻本 衣佐 訳 )



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