死刑廃止ニュース
死刑に関する事件と世界的な廃止への動きの概要
2002年12月
AI Index: ACT 53/001/2003
死刑廃止への動き
死刑廃止の都市――「死刑廃止のイルミネーション」
ローマを本拠地とするセント・エディジオと、フランスの組織「共に死刑廃止を」によって行われた11月30日のイベントのなかで、世界中の都市の公共の建物にイルミネーションが施された
「いのちの都市──死刑廃止の都市」と題する活動のなかで、フランスからチリまでの死刑廃止団体が、84カ国で国家による殺人という制裁が続いていることに抗議して、ローマのコロッセオ、ブリュッセルのアトミウム、バルセロナの大聖堂などの歴史的なまたは現代的なモニュメントにイルミネーションを施すことを計画した。
死刑廃止団体は、世界中に死刑の執行停止の要請を広めている。世論も、死刑囚の法的弁護のための国際基金に寄与することが求められている。世界的な死刑の執行停止を訴える署名は、最初は新しいミレニアムへの期待から2000年にアナン国連事務総長に提出されたが、今や、400万人以上にのぼっている。公開セミナーやフィルムショーのようなイベントも催された。
「第1回死刑反対の日」に11月30日が選ばれたのは、1786年にトスカナで死刑が廃止されたのを記念してである。
ブリュッセルのアトミウムの中心には、セント・エディジオのシンボルの鳩のイルミネーションが施された。11月30日のイベントの間中、「死刑反対」のメッセージが、アトミウムに様々な国の言葉で映し出された。
タークス・カイコス――死刑廃止
カリブ海の島タークス・カイコスは、連合王国政府が1962年西インド諸島法で死刑を廃止する11月までは、反逆罪および海賊行為に死刑を存置している最後の英領であった。
タークス・カイコスにおいて、殺人に対する死刑は、連合王国が死刑を廃止した26年後の1991年に廃止された。
サウジアラビア――減刑
12月4日に、サウジアラビアの内務大臣のナイフ・イブン・アブドル・アジズ王子は、ファハド・イブン・アブドル・アジズ国王が、イスラム教イスマイル派の17人の男性の死刑判決を減刑した。彼らは、サウジアラビアの保安軍による彼らのモスク閉鎖に抵抗して、2000年4月に逮捕された数百人のなかに含まれていた。
サウジアラビアにおいては、暴力的な犯罪に加えて、呪術、一定の性犯罪、薬物関連犯罪、背教など、広範囲の犯罪に死刑が適用される。
コンゴ民主共和国――死刑の執行停止の中止
コンゴ民主共和国政府は、9月23日に、過去3年にわたって行った死刑の執行停止を中止すると発表した。10月に、2001年1月のカビラ前大統領暗殺に関与したとされる115人に対して、検察側が死刑を求刑した。
キルギスタン――死刑の執行停止の継続
アカエフ大統領は、2003年1月の初めに、キルギスタンにおいて1998年から行っている死刑の執行停止を新たな年も継続すると宣言した。12月に、国家の最初の人権オンブズマンのTursunbai Bakir-Uuluは、死刑に対する異議を唱えた書簡をアカエフ大統領に送った。彼は、「犯罪は(死刑の運用によって)減少することはない。国家にも市民にも殺す権利はないというのが結論である」と述べた。
韓国――死刑の減刑を国会議員が要請
11月に、56人の韓国の国会議員が、金大中大統領に、すべての死刑を終身刑に減刑するように要請した。彼らは、1998年2月から行われている非公式な死刑の執行停止を正式なものとし、死刑廃止法案の立法化を促進するよう主張した。273人の国会議員のうち155人が支持を表明したその法案は、2001年11月に法制司法委員会に承認を求めて付託されたが、それ以後そこでの進展はみられない。
韓国において、最後に処刑が行われたのは1997年12月30日のことであり、国中の刑務所で23人が処刑された。1998年2月に金大中が大統領に就任してからは処刑は行われていない。金大中は、かつては良心の囚人であり、彼自身も1980年に死刑判決を受けた。
アメリカ合衆国――死刑に関する連邦上訴裁判所の判決
12月10日に、ニューヨーク州第二巡回連邦上訴裁判所は、死刑を違憲であるとした下級裁判所の判決に対する連邦政府の上訴を支持した。マンハッタン地区判事のJed Rakoffが7月1日に出した先の判決(死刑廃止ニュース2002年9月号参照)は、最近、DNA鑑定に基づいて死刑囚が無実を罪を晴らしていることから、死刑は法の適正手続の憲法上の保障に反するものであり、無実の者を処刑するおそれがあるということから、死刑を適用することは「国家が殺人を支持しているのと同じであるとみることができる」としていた。上訴裁判所の3人の裁判官は、全員一致でその判決を破棄した。Jose Cabranes判事による法廷のための選択書面によると、「拘束力のある最高裁判所の先例は、われわれが、拘束される被告人が無実であるかもしれないという統計的なまたは理論的な可能性だけに基づいて、死刑が憲法違反であるとすることを妨げる」としている。
短 報
日本――11月22日に、日本弁護士連合会は、死刑の執行を停止し、問題に関する公的な議論をなし、密行主義をやめることを求めて、政府に提出する公式文書「死刑制度問題に関する提言」を作成した。
アメリカ合衆国・連邦――10月に、9人の連邦最高裁判所判事のうち4人が、17歳の時に犯した犯罪に対して死刑判決を受けたケンタッキー州のKevin Stanfordを代理してなされた上訴の棄却について、犯行時18歳未満の者を処刑することは、「過去の遺物であり、発展する文明社会の道徳的基準に矛盾する。われわれは、この恥ずべき行為に終止符を打つべきである」として、異議を唱えた。
アメリカ合衆国――12月に、アラバマ州、ミシシッピー州、ノースカロライナ州、オクラホマ州、テキサス州およびフロリダ州で10人が処刑され、2002年の処刑された者の総数は71人となった。
新刊紹介
“The Death Penalty−A Worldwide Perspective”, by Roger Hood, Oxford University Press, third edition, Oxford, UK, 2002, ISBN 0 19 925128 2.
1988年の国連犯罪予防統制委員会のために作成された報告書の第3版で、Hood教授は、旧版に刑事法学の観点から新しい内容を加えている。本書には、第2版が発行された1996年以降の死刑問題に対する多くの国や社会の態度の変化が述べられている。死刑の範囲および実際、無防備な者の保護、無実の者の保護、公平さおよび公正さの問題に関する章である。
旧版において、Hood教授は、最新の研究に基づいて、「より軽い刑罰とされる終身刑の威嚇および適用よりも、死刑は少しばかり殺人を抑止するという仮説を容認することは、賢明ではない」として、死刑独自の犯罪抑止効果の証明についての不十分さを指摘している。
“The Abolition of the Death Penalty in International Law”, by William A Schabas, Cambridge University Press, third edition, Cambridge, UK, 2002, ISBN 0 512 89344 5.
このWilliam A Schabasの書籍の第3版は、第2版が発行された1997年以降のこの分野での進展を考慮して、広範囲にわたって改められている。アフリカの人権法および国際刑事法における死刑について、新しい章が設けられている。
国際条約
2002年11月5日にジプチが、3月27日にリトアニアが、8月28日に南アフリカが、死刑廃止に向けての市民的及び政治的権利に関する国際規約の第二選択議定書を批准し、当事国は49か国となった。署名のみで未批准の国は 7か国である。2002年8月1日にボスニア・ヘルツェゴビナが、死刑廃止に関する欧州人権条約第六議定書を批准し、当事国は41か国となった。署名のみで未批准の国は3か国である。2002年11月28日にデンマークが、12月5日にリヒテンシュタインが、死刑廃止に関する欧州人権条約第十三議定書を批准し、当事国は5か国となった。署名国は34か国である。
2002年度 死刑廃止ニュース索引
| 欧州評議会 | 2002年 3月 | 新しい死刑廃止議定書 |
| ナイジェリア | 2002年 3月 | 性的犯罪に対する死刑 イスラム法の下での最初の処刑 |
| サウジアラビア | 2002年 3月 | 性的犯罪に対する死刑 |
| カリブ海地域 | 2002年 3月 | 絶対的死刑に対する違憲判決 |
| 台湾 | 2002年 3月 | 絶対的死刑の範囲を縮小 |
| キリギスタン | 2002年 3月 | 死刑の執行停止の延長 |
| アメリカ合衆国 | 2002年 3月 | 死刑に関する総合的な研究 同時多発テロ関与者に死刑求刑 軍事委員会による裁判手続を公表 |
| ジョージア州 | 2002年 3月 | 精神障害者の死刑を減刑 英国国籍の者の処刑 |
| アリゾナ州 | 2002年 3月 | 陪審員の評決後の裁判官による死刑の適用 |
| フロリダ州 | 2002年 3月 | 英国国籍で約15年死刑囚である者への再判決 |
| インディアナ州 | 2002年 3月 | 少年犯罪者の処刑の禁止 |
| バージニア州 | 2002年 3月 | 合衆国連邦裁判所が知的障害者の事件を審理 |
| 国際条約 | 2002年 3月 | |
| 2001年の死刑判決・処刑 | 2002年 3月 | |
| 死刑廃止国リスト | 2002年 3月 | |
| 死刑廃止世界連合 | 2002年 6月 | ローマで連合が正式に発足 |
| 国連 | 2002年 6月 | 性的行為に対する死刑に反対 特別報告者の最新の報告書 |
| アムネスティ・インターナショナル | 2002年 6月 | 代表団がジャマイカ、トリニダード・トバゴを訪問 |
| 日本 | 2002年 6月 | 欧州評議会がセミナーを開催 |
| タジキスタン | 2002年 6月 | 検討され始めた死刑 |
| 欧州評議会 | 2002年 6月 | 新しい死刑廃止議定書に36か国が署名 |
| メキシコ | 2002年 6月 | 大統領が欧州評議会での講演 |
| パキスタン | 2002年 6月 | 姦通罪で起訴された者の釈放 |
| タンザニア | 2002年 6月 | 大統領が100人の死刑を終身刑に減刑 |
| アメリカ合衆国 | 2002年 6月 | 2人の無実の者の釈放 |
| ミズーリ州 | 2002年 6月 | 少年死刑囚の執行延期 |
| テキサス州 | 2002年 6月 | 少年死刑囚の処刑 |
| メリーランド州 | 2002年 6月 | 知事が執行停止を発表 |
| 国際条約 | 2002年 6月 | |
| トルコ | 2002年 9月 | 通常犯罪につき死刑廃止 オジャラン議長の死刑を終身刑に減刑 |
| ユーゴスラビア | 2002年 9月 | 全面的死刑廃止 |
| キプロス | 2002年 9月 | 全面的死刑廃止 |
| フィリピン | 2002年 9月 | 処刑の延期 |
| グアテマラ | 2002年 9月 | 死刑の執行停止 |
| バルバドス | 2002年 9月 | 上訴制限への動き |
| ベリーズ | 2002年 9月 | 上訴制限への動き |
| スーダン | 2002年 9月 | 多数の死刑判決 |
| パキスタン | 2002年 9月 | 集団強姦と「部族裁判」 |
| タジキスタン | 2002年 9月 | 2人の兄弟が秘密裏に処刑 |
| フィジー | 2002年 9月 | 軍法を除く死刑の廃止 |
| 日本 | 2002年 9月 | 通告なしに2人を処刑 |
| イラン | 2002年 9月 | 公開で5人を絞首刑 石打による処刑への懸念 |
| ジャマイカ | 2002年 9月 | 政府が憲法改正を公約 |
| トーゴ | 2002年 9月 | 死刑判決 |
| アメリカ合衆国 | 2002年 9月 | 連合最高裁判所の指標となる決定 連邦の死刑は憲法違反であるとした2人の裁判官 |
| テキサス州 | 2002年 9月 | 2人の少年死刑囚の処刑 |
| 国際条約 | 2002年 9月 | |
| 死刑廃止連合 | 2002年12月 | 死刑廃止の都市 |
| タークス・カイコス | 2002年12月 | 死刑廃止 |
| サウジアラビア | 2002年12月 | 減刑 |
| コンゴ民主共和国 | 2002年12月 | 死刑の執行停止の中止 |
| キルギスタン | 2002年12月 | 死刑の執行停止の継続 |
| 韓国 | 2002年12月 | 死刑の減刑を国会議員が要請 |
| アメリカ合衆国 | 2002年12月 | 連邦上訴裁判所の死刑に関する判決 犯行時17歳の少年死刑囚の上訴の棄却 10人の処刑 |
| 日本 | 2002年12月 | 日本弁護士連合会の死刑に関する提言 |
| 新刊紹介 | 2002年12月 | The Death Penalty−A Worldwide Perspective” “The Abolition of the Death Penalty in International Law” |
| 国際条約 | 2002年12月 | |
| 2002年度死刑廃止ニュース索引 | 2002年12月 | |