死刑廃止ニュース

死刑に関する事件と世界的な廃止への動きの概要
       2003年 6月
AI Index: ACT 53/003/2003




死刑廃止への動き


国連――人権委員会
 国連人権委員会は、初めて、死刑存置国は「現在死刑を適用していない犯罪について死刑の適用を拡大しないように」との勧告をした。
 その勧告がなされたのは、1997年以降採択されてきたこのような決議の7番目にあたる「死刑問題」に関する人権委員会の決議のなかでである。決議2003/67は、ジュネーブで行われた定例会期の委員会で、賛成24、反対18、棄権10で4月24日に採択された。その決議は、2002年よりも7カ国多い、75カ国によって共同提案された。しかし、2002年よりも1カ国多い63カ国がその決議を否認する文書に署名し、多くの国による強い反対が示された。
 今年の決議には、多く他の新しい特色がある。  その決議は、「すべての死刑存置国」に「18歳未満の者が犯した犯罪」に死刑を科さないようにも求めている。昨年の決議にも同様の条項があったが、それは、18歳未満の犯罪者に対する死刑の適用を禁ずる市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)と児童の権利に関する条約(CRC)の下で義務を負う国家という文脈においてであった。新しい文言は、児童の権利に関する条約(CRC)を批准しておらず、1992年に市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)を批准した際に少年犯罪者を処刑する権利を留保したので、先の決議の文言の影響を受けないと主張しえたアメリカ合衆国に対しても、明らかに適用されることになる。
 同様に、今年の決議においては、国家が「最も重大な犯罪」にだけ死刑を適用し、死刑に関する公正な裁判の国際準則を遵守するように促す文言は、市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)と児童の権利に関する条約(CRC)の下での国家の義務と関連付けられていない。
 その決議は、国連事務総局によって作成される5年毎の報告書の毎年の補遺(UN document E/CN.4/2003/106)のなかでも歓迎された。その報告書は、「趨勢は死刑廃止国に向かって」おり、「死刑廃止を規定している国際条約を批准する国家の数が増加」していることに注目している。
報告書および決議は、国連人権高等弁務官のウェブサイト(www.unhchr.ch) を参照のこと。


タジキスタン――死刑の適用範囲の縮小
 26月に、タジキスタン議会は、ラフモノフ大統領が提案した刑法改正案を承認した。その改正案は、女性、犯行時18歳未満の未成年者および60歳以上の男性に対する死刑を廃止し、死刑を適用することができる刑法の条文を10から5に縮小した。1998年に新しい刑法が採択される前は、死刑の適用を規定する刑法の条文は44であった。この改正案は、ラフモノフ大統領が署名をすれば、法的効力を発する。
今年の現時点までに、少なくとも1人が処刑され、10人が死刑判決を受けている。2002年には、少なくとも5人が処刑された。


欧州評議会――新しい議定書の発効
  7月1日に、あらゆる状況下において死刑を廃止する人権及び基本的自由の保護に関する条約(欧州人権条約)第十三議定書が発効し、それによって、欧州評議会に、完全に死刑のない地域になるのに近づく一歩がもたらされた。15カ国が批准している。
欧州人権条約第十三議定書は、その義務を負うことに同意した国において、戦時または急迫した戦争の脅威がある場合を除いて、死刑を廃止すること規定した第六議定書の欠陥を補うものである。このように、第十三議定書は、死刑がいかなる時も全く受け入れることができないという公的な宣言を明確に伝える重要な国際的な法律文書である(死刑廃止ニュース2002年3月号、6月号)。
 欧州評議会加盟国のうち、アルメニア、アゼルバイジャン、ロシア連邦、トルコの4カ国だけが第十三議定書に署名も批准もしていない。アルメニア、ロシア連邦およびトルコは、第六議定書の批准もしておらず、死刑に関する議定書のどちらにも関わろうとしていないのである。4月に欧州評議会に加盟したセルビアおよびモンテネグロが、第六議定書および第十三議定書に署名したが、双方ともまだ批准はしていない。




短  報

アルメニア――6月に、ロベルト・コチャリャン大統領は、すべての未執行の死刑判決を終身刑に減刑した。5月に、議会は、平時の死刑を廃止する新しい刑法を採択したが、現在アルメニアの裁判所に係属中の事件については死刑を適用する余地がある。1999年の議会への武装攻撃で8人が死亡した事件が懸念される。


コンゴ民主共和国――4月24日に、議会は、公正な裁判に関する国際準則に抵触する軍事法廷を廃止した。2000年には、14歳の少年兵士が軍事法廷での30分にも満たない裁判の後に処刑され、今年の初めには、別の軍事法廷での死刑判決による処刑が密行されたという報告がある(死刑廃止ニュース2000年6月号、2003年3月号参照)。


ウガンダ――7月に、元獣医師のJohnson Byabashaijaは、議会任命委員会で国家刑務所委員会の副委員長に承認された。任命の際に、彼は、死刑は非人間的であるので反対であると述べた。


アメリカ合衆国・連邦――7月に、議会は、ジョージ・W・ブッシュ大統領に第一容疑者として名指しされ、軍事法廷で裁判を受けるために合衆国海軍グアンタナモ基地に拘留中の6人のうちの3人、イギリス人のFeroz Ali AbbasiとMoazzam Begg、オーストラリア人のDavid Hicksに死刑が科せられることはないとした。名前が公表されていない他の3人については、上訴権の認められない死刑判決を受ける可能性がある。


ミズーリ州――7月に、Joseph Amrineが17年ぶりに死刑囚監房から釈放された。彼は、1973年以降、アメリカ合衆国において死刑囚監房から釈放された111番目の者である。合衆国死刑情報センター(www.deathpenaltyinfo.org)のプレス・リリースによると、Joseph Amrineの事件は、主として拘置所の密告者からの不正確な目撃証言によるものであったが、それらの話の多くは後に撤回された。


イリノイ州───7月24日に、Rod Blagojevich知事は、医師および看護師が州の処刑に関与することを禁ずる法案に署名した。その法案は、「矯正局は、医師および看護師に限らず、イリノイ州で免許を受けた医療従事者に対して、処刑に関与するように要求したり、関与することを許可したりしてはならない」としている。


国際条約

欧州人権条約第13議定書を、ベルギー、ボスニア・ヘルツェゴビナ、グルジア、ハンガリーが批准し、当事国は17カ国になった。   
( 辻本 衣佐 訳 )



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