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波照間の泡波
後編

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島桟橋に立って、まだどこに行こうか迷っている。いろいろ考えるところがあって、なかなか行き先が決まらない。

こ石垣島は八重山諸島の交通の拠点になっていて、どの島に行っても、もう一度この島に戻ってこなければ、次の島に行けない仕組みになっているかに見える。ところがいくらかの例外もあって、例えば1日に1回、波照間と西表を直接結ぶ高速船が運行されている。西表と竹富を結ぶフェリーもある。これらを効率的に使わないテはないのであって、いろいろ考えるからなおさら分からなくなる。結局いちばん最初に出る船に乗ることにして、船会社に聞いてみたところ、西表島大原行きであった。

西表には主に2つの港があって、どちらにも1日約10回の船便があって便利だが、今日は台風の影響で波が高く、大原行きしか出ないらしい。その大原行きに乗り、船会社のマイクロバスに乗り換えて、ユースホステルに近いもうひとつの港、船浦に向かう。

だお昼前で、ユースに荷物を置いてよく考えてみれば、ヒマである。

んだかしばらく船の上でだらだら時間を消費していたので癖がついてしまったらしい。どこに行くのも億劫である。空には黒雲が立ちこめていて、今にも何か降りだしそうだ。

あしかし、このまま夕方までユースホステルでじっとしているわけにもいかないだろう。近くに浦内川という川が流れて、そこになかなか凄い滝があると本に書いてある。

スの時間が近いから、あわてて準備をして、バス停まで出てバスを待つ。待っていると猫が寄ってきて、2メートルぐらい離れたところで立ち止まってこちらを観察している。そんなに珍しいかい。このカメラはニューマミヤシックスといって、6センチ幅のフイルムを使って、一辺6センチの真四角の写真が撮れる凄いカメラで、どれどれ、ちょっと写してやろう。

づいていって、レンズを向けようとすると、逃げられてしまった。道端の車の向こうに隠れてしまって、にゃおにゃお言ってみるが返答はない。沖縄のある島では、猫のことを「まやー」と言うそうだ。にゃおにゃおでは通じないのかもしれない。だいいち、そう言えば沖縄方言に「お」という発音はない。

ス停といってもバス停のポールがない。近くのお店で尋ねたら、ここらで待ってればいいと言われたからこんなところで待っているのだが、なんにも標識のないところでバスを待つというのは非常に心許ない。エンジンの音が近づいて来るたびに気になる。

くの横道から、なんだか怪しげな足の太いお姉さんが出てきて、こちらににじり寄ってきた。バスに乗るのかと思いきや、ぼくの目の前で立ち止まってカバンをごそごそしている。中から色刷りのきれいなパンフレットが出てきた。

「あのー、旅行の方ですか」
「はあ」
「このあいだ、火事がありましたよねえ。山火事が」
「はあ、知りませんが」
「あったんですよ。山火事というのも、もとはちょっとした些細な火の不始末から起こりますでしょう」
「‥‥‥‥」
「私たちは聖書を勉強しているものなんですが。聖書に興味お持ちですよね」
「‥‥‥‥」
「そうですか。しかし、シタっていうのも山火事と同じでしてね」
「シタ‥‥ですか」
「はい、シタです。口の中の」
口を開けて、自分の舌を指さして、
「コレですが」

ンジンの音が近づいてくるたびにそちらを見るのだが、あいにくバスはまだ現れない。「このパンフレットを見てください」
「‥‥‥‥」
「これは我々の勉強会の会報でして、このことが詳しく載っていますが、要りますか」
「いや」
「ほらここにも書いてあります」

火事について考える、という大きな題字が踊っていて、その文章のあちこちに「舌」という文字が見える。
「舌も使い方を誤ると大ごとになって、困りますよね。そういう経験、ないですか」
「‥‥‥‥」
「山火事と同じでしょう。ちょっとしたことでたくさんの木々が燃えてしまいます」
「‥‥‥‥」
「舌の使い方をちょっと間違えるだけで、山が燃えてしまうわけなんですよ。舌の使い方は重要なんです」
「‥‥‥‥」
「私たちは聖書のお言葉を勉強して、その結果、舌こそが、世の中を動かす最も重要なところだということを説いて回っているものです。舌でいろいろなことができますよね。その使い方こそが‥‥」

の猫はどこに行ったのだろう。あそこの車の下にまだいるのかなあ。
「‥‥言ってみれば舌というのは世界なんですよ。言い換えれば宇宙なんですよ。ほらこの間の火事、ありましたでしょう。山火事というのも、もとはちょっとした些細な火の不始末から起こります。しかし、舌っていうのも山火事と同じでしてね。口の中の」
口を開けて、自分の舌を指さして、
「コレですが」

ンジンの音が近づいて、やっと、ついに、とうとうバスがやってきた。
「このパンフレットを見てください」
「ぼくは失礼しますよ。バスが」
「これは我々の勉強会の会報でして、このことが詳しく載っていますが」

***

を見て帰ってくると、夕方が近い。雨も降りだした。ユースホステルの部屋に横になって、文庫本なんか読む。雨足はどんどん強くなってゆく。

、食堂の方で大きな音がして、人が走り回っている。強風で食堂の窓ガラスが割れたらしい。少し騒ぎが静まってから行ってみると、ガラスの破片がいっぱい散らばっている。危ないから、と
言って追い返された。

団を敷いて、オリオンビールを飲んで、とにかく明日には明日の風が吹く。あんまり吹いてもらっちゃ困るけれど、どうも雲行きが、非常に、怪しい。


 

**

い建物が向こうのほうに見えていて、そこに行きたいのだけれど、なかなか距離が縮まらない。右にはマングローブのジャングルが広がり、左は海らしいが、風は強く、時おり波しぶきで目の前が真っ白になる。その向こうに白いさんごのかけらの海岸が、長々と延びているようでもある。歩いても歩いても白い建物のところにたどり着かない。

わかに波が高くなってきて、ぼくはマングローブのジャングルに避難する。中は薄暗い。実験台があって、会社の同じ職場の人が一人、黙々と実験をしている。

験室を出て、エレベーターで下に降りて、自動販売機でジュースを買う。シークヮーサードリンクである。沖縄ではどこでも売っている。これがなかなかうまい。すだちとみかんの合の子のようなものだ。

くの浜で星砂を拾うことにして、扉を開けて外に出る。そこに上司がいた。
「どこに行くんだ」
「は、いえ、星砂を‥‥」
「そうか。気をつけてな」

んだか寒い。くしゃみが出た拍子に目を覚ます。冷房を切る。朝7時。起床時間である。

***

風はおさまっているけれど、雲は相変わらず多く、山にはガスがかかって上のほうが見えない。海にも白波が立っていて、灰色の空との区別が明瞭でない。昨夜の風であっちこっちに散ら
ばった植木鉢を、ユースホステルのヘルパーが並べ直している。

食を食べ、今日は忙しくて、波照間まで行く予定だから、ゆっくりしていられない。ザックに防水のザックカバーを取り付け、宮古で購入した傘をいつでも取り出せるようにその脇に固定した。カメラは密封構造の一眼レフ、ペンタックスLXに50ミリを取り付け、さらにウエストバッグにコニカの広角28ミリ付き防水コンパクトカメラを入れた。準備万端整えて、ユースホステルの車でバス待合所まで送ってもらい、待つほどもなくバスがやって来て乗り込むと、とうとう雨が降りだした。乗物に乗っているときに雨が降るのは全然構わないけれど、雨男ここにあり、嬉しいかと言えば、もちろんちっとも嬉しくない。バスを降りるまでには頼むから止んでくれないか。このままじゃ、西表の印象は雨一色だよと、誰にお願いしたらいちばん効き目があるんだろう。

に濡れた窓ガラスの向こうに緑の山々がかすんでいる。その緑の色が、本土よりちょっと濃いような気もしないではない。 

照間行きは大原港から出る。港には石垣島からの船が今日も出入りしていたから、波照間行きも出るだろうとは思ったが、いちおう船会社に電話を入れた。聞いてみれば、石垣発の西表経由波照間行きは、波が高いせいか客が少ないせいか、とにかく西表には寄らずに波照間に行く予定だと言う。

「時刻表では西表に寄ると書いてあるのに、どうして来ないんですか」
「いや、今日は波が高いのでそちらには寄れないんですよ」
「でも石垣西表の便はちゃんと出てますよ。だから西表に寄れないと言うことはないはずでしょう」
「いや、しかしですね」
「今日は海が荒れてるから、波照間行きは出ないと言うのなら納得できますがね。出るのにこちらに来ないというのは‥‥」
「あのう、では乗るのは一人ですか。あ、いや、何人で御乗船ですか」
「はあ、一人ですがね。お一人では儲かりませんかね」

んなわけで、仕方がない。船で石垣まで戻ってきた。波照間行きの最終便にようやく乗り込む。いちばん前の席に座ると、船員がやって来て、そこは危ないから後ろのほうへ移れと言う。ずいぶん揺れるらしい。

垣港のまわりは珊瑚礁の浅い海が広がっている。そこに波はほとんどなかったが、外海に出ると船は強烈に揺れ出した。高速艇だから、波の上に飛び出して、それから次の波の中腹に着水する。そのたびに凄い衝撃と音が響く。

は高くなりスカイダイビングの高度が増していって、とうとう船は速度を落とした。戦法を切り替えて、波をひとつひとつ登って降りることにしたらしい。船内の振動はなくなったが、船の何倍も
の高さがある波の谷間に来ると、黒部峡谷の底からまわりの山々を眺めるようではある。

照間の港の入り口に、ひときわ波が高く泡立っているところがあって、船は一旦停止してその高みに登る。ジグザグに登ったその頂から、ゆっくりと波の動きに合わせて斜面を斜めに滑り降りる。右舷に空が広がり、左舷に波の壁がある。そうして船は突然揺れなくなった。珊瑚礁が天然の防波堤になって、波がここまで来ないのだろう。エンジン音が快調に響きだし、と言ってもすぐに港内に入るが、やっと生きた心地がした。

***

宿に荷物を置いて、オンボロ自転車を借りて、まわりをめくら滅法に漕ぎ回る。日本国国土地理院発行の地図は持っているのだけれど、車で宿に来たときにどこをどう通ったかが分からないから、したがって今現在自分の所在位置が不明である。

にかくまっすぐ行くと、だんだん下り坂となり、海に出た。引き返して、逆にまっすぐ走ると、上り坂が終わってさとうきび畑を抜けるとすぐ下り坂となり、また海に出た。

るほど、そういうことか。ぼくは納得して、地図を折り畳んで、ウエストバッグに突っ込んだ。

には低く雲が垂れて、渡ってくる風は強い。南国という感じではない。ああここはさい果ての島なんだなあ、と思う。

てるま、というのは、琉球の言葉で、さい果ての珊瑚礁の島という意味だ。

縄本島のほうでは、今でも、子供を脅すとき、そんなことをしていると波照間にやってしまうぞ、と言う人がいるそうだ。


 

**

重山諸島で初めに人が住み着いたのは西表島であるが、次は波照間だという説がある。西表はジャングルと山の島でマラリヤの有病地だったが、波照間にマラリヤはない。耕作にもある程度適していた。

らに、波照間は重罪人の流人の島だった。やってきた文化人たちは、島の知識レベルの向上に寄与した。

かし、時代の荒波は容赦なく島を洗う。

球王朝は島津への貢租に充てるため、1637年宮古、八重山に重税人頭税を導入し、各島の島民を苦しめた。

照間でも何十人もの島民が夢も希望もない暮らしに見切りをつけ、税の取り立てのない幻の楽土、南波照間(ぱぃぱてぃろー)を目指して、船を出して、戻らなかった。

かされるのは、人頭税が廃止されたのが、本土に文明開化の槌音が響いてから30年以上も経過した明治36年1月であることだ。実に300年近い長い年月の間、人々の人格は無視され続けたのである。

縄戦も波照間に深い傷をもたらした。

重山各村の民衆は、石垣島の山奥や西表島など、外から目のつきにくい場所に疎開することを軍から強要された。それらはほとんどがマラリヤの有病地であった。軍はマラリヤの薬を軍用にはたくさん持っていたにもかかわらず、それらを隠し、住民の手元にそれが渡ることはほとんどなかった。さらに、疎開したあとの家畜を皆殺しにすることを命じ、軍用の食糧として用いた。戦争の
終結とともに帰島した島民たちは、ソテツなどを食べるしかなかった。

時の波照間の全人口1275人、そのうち罹病者が、1259人(98.7%)、死亡者が、461人(36.2%)。

照間島民の疎開先であった西表島南風見海岸の石に、
「忘勿石・ハテルマ・シキナ」
という文字が彫り込まれている。シキナは、当時波照間の国民学校の校長であった識名信升氏。波照間島民よ、この石(のあるこの場所で死んだ人々や、ここでの苦しい生活)を忘れる勿れ、という意味だろう。

後波照間はまた、ゼロからの出発となって、現在に至る。


 

**

の島では夜間、水道が止まる。だからお風呂を済ませてから晩ご飯となる。

宿の庭にご主人の手作りらしい大きな木のテーブルとベンチが出してあって、まずそこに猫が集まってくる。十匹以上いる。ラジカセが現れて、沖縄の音楽が鳴り出す。

が暮れてきて、フクギの枝のあいだにぶら下がった裸電球に明かりが点る。

日のこの民宿の宿泊者は3人。ぼくのほかに、ぼくと同じぐらいの年の女の子が1人。四十ぐらいの男性が1人。3人が揃うと、テーブルの真ん中に「泡波」が置かれる。「泡波」は波照間酒造の泡盛。この島でしか手に入らない幻の銘酒だ。水割りで飲む。

飯と大量の煮物が現れて、3人分かと思ったけれど、同じものが3つも現れたのでびっくりした。凄いご馳走である。全部食べられるだろうか。パクついていると、お刺身、炒め物、まだまだ出てくる。とても食べきれない。

が集まって来て、しきりに食い物をねだる。どうせ食べきれないから喜んでお裾分けする。ニンジン、豆腐、キュウリ、調子に乗って、大根にからしをいっぱいつけたのをやったら、ちょっと匂いを嗅いで、向こうに行ってしまった。どうもこの兄さんはろくなものをくれないらしいと悟られたか、ぼくよりも向かいの女の子のほうが人気が高い。

女はもうこの島に5、6日いる。島でぼんやり海を見ているのが趣味だ。髪はショートカットでさすがに肌は黒い。はじめ沖縄の子かと思ったが、家は東京で、東急ハンズに勤める社会人である。今年の新入社員。年休を取って来ている。学生のころはよく小笠原に行って、2週間ぐらいぼーっとして帰って来ると、東京でもついつい道の真ん中を歩いて、車にクラクション鳴らされたり、友達に引き戻されたりする。

「だって、道の真ん中歩くのキモチいいでしょう」
「それはいいことやな。道の端っこを歩くほうが不自然や」
「しかしそれは危ないなあ。東京で生きていくための基本がなってへん」
「東京に向いてないな。波照間に移住したらどうや」
「モンパの木のおじさんみたいにですか」

ンパの木のおじさんというのはこの島に移り住んで来て、モンパの木を使った民芸品などを作っている。同宿の四十おじさんと親しいらしい。

十おじさんは芸術家で、からくりんという名の金属細工のからくりおもちゃを作っている。この民宿の常連だ。年に何回か、この南の島にやって来て、もっぱらモンパのおじさんやこの民宿の主人と泡波を飲んでウクレレをかき鳴らし、大いに夢を語って息抜きをする。

***

「あれえ、噂をすれば何とやらだな」
モンパおじさんがやって来た。髭面のいかにも芸術家然とした顔立ちだ。からくりんおじさんのとなりに座る。すぐに泡波が注がれる。
「いやあ、どうも」
「どうしてた」
「どうってことはないさ。まじめに、おとなしく、だな」
「ああそうか。今日はこんなとこ、来て飲んでていいの」
「内緒だ、ないしょ」
「いやあね、この人、奥さん凄い美人なんだけどね、アタマ上がんないんやね」
「へー、そうなんですか」
「そんなこともないけど」
「そうかな。連れてこようか」
「止めとこ止めとこ。連れてきたらいかん」
「まあまあ、もう一杯どうですか」

「ご主人、おおい、泡波もう無いよ」
「しかし久しぶりだな。忙しかったんか」
「ま、そうでもないけど」
「三線はどう。少しは上手くなったんか」
三線は沖縄三味線。さんしん、と発音する。
「いやいやぼくにはウクレレがあるし、ああそうそう、三線持ってきたか」
「いや、持ってきてない」
「この人ね、非常識のかたまりやけど、三線はなかなかでね」
「いやいや、この人のウクレレもいいよ。オレ以上に非常識な人だけど」
「いや、ぼくのは非常識やない。無常識、ちゅうて、常識の殻にとらわれてないだけや。君らも、常識に逆らってばかりいるのは良くないけど、常識にとらわれることはないで。そういう生き方を無常識、ってぼくは呼んでるんやけど」
「ああまた始まった。こいつこの話、始めると止まらんから」
「ぼくは非常識やなくて」
「しかしよく飲むなあ」
「私ですか。まあ、飲めないほうじゃないです」
「やっぱり無常識に生きてゆくことが」
「じゃ、どうぞ」
「どういたしまして。いや、あ、気付かなくて」
「ああ、ぼくは水で割らなくていい。ロックがいいな」

「ご主人、歌、歌おうや」
「ああ、あと、泡波もう1本」
「ウクレレ弾くから、ねーねーず行こうか。ウサガンナなんか分かるか」
「分かる」
「じゃ」
「あんすかウサガンナヨゥ、どうぬるすんどーやぁ、どぅぬどぅやどぅくるぅ、考えみそうらんでー」
「‥‥‥‥」
「君たちは知らんか。ねーねーずの歌」
「いやあ」
「事情ぬぁいどぅんせー、言ちど晴りみせるぅ、酒飲でィうりがん、晴りィゃびんなぁ、あんすかウサガンナヨゥ、考えみそうらんでー」
「何ですか、その歌は」
「ご主人は歌わんからなあ。これは、お酒なんか飲んでどうするんや、どんな事情があっても自分の体は自分で考えろ、という、まさに我々向きの歌や」
「いやあ」

「ご主人の歌える歌、無いかな」
「無いよ、オペラなら歌うけど」
「何か歌ってくださいよ」
「ウヮー、ウヮー、ウィ、ウォーー」
「何ですかそれは」
「まずは発声練習です。ホォヮーー、ホォヮーー」
「ああ、困ったな」
「ホォヮーー、フォーーッ」
「もう泡波無いの」
「無いよ、もう。これで5本目だ。ウヮーーー」
「ヤッサホイ、ヤッサホイ、ヤッサホーイ、ホーイホイホイナー」
「ウヮーーー」
「ホーイホイ、島ぬあがりぬあぎ浜にぃ、あがい太陽ん拝まってぃ」

***

朝、ちゃんと、宿の部屋の蒲団の上で目を覚ました。

ぶしい。こんなに明るいと、寝ていられない。外は晴れ。抜けるような青空である。

に出てみる。東京の道の真ん中を歩く、例の女の子が、ベンチに腰掛けていた。

「おはよう」
「おはよう、いい天気やね」
「うん、わたし今日帰るのに」
「へえ、そうなんか、昨日までの雨はぼくのせいかと思ったけど、雨女が原因だったのかなあ」
「いや、雨男のせいだと思うわ」
「そうかなあ。ま、しかし、こうも晴れてまうと、なんか雨男としては恥ずかしいね。面目ない」
「なんだ、自分で分かってるじゃない」
「そうでもないけど、ホント晴れるの、久しぶりやから」

***

はそれこそ抜けるような快晴。3人でモンパのおじさんの家の庭にお邪魔して、朝から泡波を飲んで三線をかき鳴らす。雨男としては、まったく恥ずかしい天気だけれど、考えるに、波照間はかくも素晴らしい南の島である。


泡波・・・いいお酒ですよ

[完]


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