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南 大 東 |
南 大 東 島 へ の 出 発 ─────────────────────── |
| 「船を見に行かないの? 船が出るよ」 「だいとう」の窓口にいたおばさんだった。 「でも、もう、満員なんですよね」 ぼくはとても見に行く気がしないのだと示すために、手の平を自分の顔の前で横に振った。 「あー、満員だけど、行ってみたほうがいいさぁ」 「え、ひょっとして乗れるかも知れないですか」 「わからんねー。だけど、行ってみたほうがいいさぁ」 |
撮影データ/FUJI HD-R 38mm f2.8/オート/Velvia
| ぼくは急いでカバンを持って船まで走った。ちょうどタラップをはずそうとしているところだった。ぼくはタラップの下で船員に向かって叫んだ。 「乗ります。あー、乗っていいですか」 「いいよ」 あっけなかった。ぼくがタラップをわたり終えるとタラップは岸壁に引き上げられた。すぐにロープがはずされ、船は太平洋に向けて動き始めた。 ぼくは船の入り口の横にある自販機の前に座ってさっきのおばさんの言葉を思い出していた。きっとあんまりぼくが落ち込んでいるから、かわいそうに思ったに違いなかった。しかし仮にも乗船券を売っている立場上、そんな乗り方が出来るとは言えなかったのだろう。また、船長の判断でだめだといわれたら乗れないわけではある。 おばさんに礼も言わずに乗り込んでしまった。また会ったらお礼を言おうと思った。しかし、いくら思い出そうと思ってもおばさんの顔を思い出すことが出来なかった。 船は沖縄本島の南を回り込み、太平洋に向かっていた。前にあった夕陽が右舷から後ろにまわって、左舷側を照らし出した。 周りを見回すと、怖い感じのパンチパーマのお兄さんや髪の毛を染めた作業服のおじさんばかりである。ぼくは自分用のベッドも毛布もないので、ござを借りてきて自販機前の通路に敷いた。 船は揺れだしていた。揺れる船の中を島びと達がジュースやビールを買いに来るたびに身体を壁いっぱいに押しつけてよけた。 ─────────────────────── [2枚目へ] |