17. 初秋のフォッサマグナと秘境大鹿村いのししツアー
「秘境の一件宿で露天風呂につかりながら世知辛い世の中のことを忘れ、ぼーっとしたいなあ・・・」
仕事が忙しく、現実を忘れたい瞬間があった。
そんなときふとこんな感覚が頭に浮かんだ。「そんないい場所なんてそんなにあるわけない・・・」と思いつつ自宅のパソコンに向かう。いままでは佐渡や能登などちょっと(かなり?)遠出をしてきた。今年も海がいいかな・・・とも思うが、今回ひょっとすると妊婦が2人も参加する。あまり遠くにするときついのではないか。それなら近場でいいところを探そう。いつものとおり独断で事は進む。今回はできるだけ近場、それもずっと頭からはなれない「秘境の一件宿」をテーマに探そうと心に決めた。できれば温泉卓球もしたい。インターネットで検索していると、長野県南部になかなか良い露天風呂のあるしかも一件宿の旅館があるではないか。
赤石荘 http://www.akaishisou.com/content.htm 
赤石荘という名の旅館、露天風呂からの眺望がまことに見事らしいではないか。渓谷の景色が独り占め。これはいくしかない。当初、別の候補がいくつかあったが露天風呂の写真を見てからというもの、心はすでに大鹿村であった。
まずはソースカツ丼なのだ
辰野PAで高速バス組、車組、バイク組総勢10名みんなで合流する。PAの中にバス停があるのはとてもいい。合流がしやすいのだ。みんなほぼ予定通りに集まり、中央道を南下。覆面パトカーにつかまっている車をたびたび見かけたのでゆっくりと走る。まあ、いつもの強行軍とは違う。のんびりいけばいいのだ。と考えている間もなく、駒ヶ根インターを降りてしまった。
ほとんどなにも決まっていない今回の行程の中で、「ソースカツ丼」ははずせなかった。駒ヶ根といえば「ソースカツ丼」と「ローメン」。後者は以前屋台で食べたものがあまりにひどく、トラウマとなっている。いつかはおいしいものを食べようと思うが、まだいい。まずはなにをおいてもソースカツ丼なのだ。
バイクと車3台の混成部隊はまだ昼にはちょっと早いインター近くの明治亭へ。明治亭はネット上でかなりいい評価が多数見られたため、もう行くしかないと最初から心に決めていた。本店がどこかにあるらしく、本当はそこに行きたかったのだが、アクセスがいいのでここにした。
明治亭 http://www.shinshu-bussan.ne.jp/meiji/index.html
ついたのは11時半前だったが、我々が到着するとまもなく、ぞくぞくと車が駐車場に入ってくる。いやいや、えらいこっちゃ〜!というわけで、10名もわらわらと先に入る。席はまだすいていたが、注文を待っているうちにあっという間に満席になった。いつも予定通りにいかないこのメンバーであるが、このときは早めに行動してよかったと心から思った。
待つこと数分、巨大なカツがどんぶりの上に「乗り切らなくてごめんなさい」風にはこばれてくる。早速ひとくち。んーーーーー!!!!!ジューシィー!!!んまい!!!!。一見脂っこく見えるカツだがソースと衣が絶妙にいい味を引き出している。次第に無言になり、ソースカツ丼との真剣勝負に突入していったのである。

完食。一心不乱に食べた。また来よう。テヅカンはみんなにそそのかされてソースカツ丼パイを買っている。いきなりのハイテンションで旅は始まった。
日本最秘境のつりぼり 釜沢つりぼり
小雨が降りそうな怪しい天気だったが、一行は天竜川の崖っぷちのような細い道をくねくねと南下する。一瞬「道の選択を間違えたか?」とも思ったが、いのししや猿に会え、さらには竹の通せんぼにあったりとアドベンチャラスな行程であった。小渋川にぶつかると川沿いにのぼる。ダンプの往来の激しい道をこれまたくねくねとのぼる。途中滝を見つけ、急停車。意外と落差のある滝ではないか。「次の旅行は滝めぐりもいいかな」とちょっと思いを巡らす。

大鹿村にはいり、ビガーハウスという道の駅風の場所をすぎると「正しい日本の農村」と呼べるような牧歌的な風景が広がる。道はこれまでにないほど急でくねっている。車のエンジンがえんやこらえんやこらとうなりをあげ、本当にこの先宿があるんだろうかと思いながら時たま見つける怪しげなかかしが指す方向へハンドルを切る。やがて本日の宿、赤石荘が見えてきた。とりあえず宿のひとに声をかけてから釣りにいくことにする。
釜沢つりぼりは日本最秘境のつりぼりらしい。ふつうは秘境へは釣りキチが分け入り、釣りをするのだろうからそんなところには釣り堀なんか作らないのだろう。でもその秘境に釣り堀があるのだ。秘境の上に「最」がついている。どんなところなのだ?行くしかないでしょう。とのことで一行は赤石荘よりさらに奥山へと向かう。キツネにでもばかされたらきっとかえってこれそうにない細い道を行く。ふっとハイジがでてきそうな鮮やかな芝生の場所をすぎると、その先には本当に釣り堀が存在していた。
にこやかなおっちゃんに出迎えられ、早速釣り開始。みんな思い思いに糸を垂らす。「諭吉さんがやってきた」というなんともストレートな表現のおっちゃんとの会話も楽しむ。天気はいつの間にか晴れ、日差しが強かったが渓谷を流れる風が気持ちよい。「大物をねらうにはでっかいえさをつけなくちゃいかん」「こんな大きなえさつけてたらイワナが寄ってこない。これくらいの小さいのじゃないとだめだ。あのおじさんは素人だからね。」というなんとも息の合わないおじさんたちになんどもえさを大きくしたり小さくしたりされながら糸を垂れる。




17匹という大漁に色めき立つ一行。2匹はおっちゃんの手によってさしみにされ、残りは串にさして囲炉裏へ。夕飯も近いのにささやかな宴がはじまる。一匹が大きいので2匹目にいく手がみんな止まる。最後は半ば押し付け合いながら完食。腹がいっぱいになったところで夕飯を食べに(・・・)一行は赤石荘へと向かうのであった。
もう、食えない・・・・
細い道を引き返し、10分ほどで赤石荘へ。部屋はかなり広い部屋2つに2人用の部屋が1つ。この日は満館だったようで、早くから予約していた我々は良い感じで部屋を確保していただいたのだった。到着後、すぐに夕食のアナウンス。岩魚で腹一杯なのでひとっ風呂浴びてから行くことにする。楽しみにしていた露天風呂だ。
湯船に浸かる。すこしぬるっとした感じのやわらかいお湯だ。景色は絶景。眼下に深い渓谷が広がる。夕やけがまぶしい。徐々に色づく空が旅情を誘う。魚釣りでの汗を流したところで夕食に向かう。
食堂にはいるとあるわあるわ。特別料理のいのしし鍋と鹿刺し、それから通常の料理。腹が空いていればガツガツいくのだろうが、箸がいっこうに進まない。それでも会話に花が咲き、遅れて食べ始めたにもかかわらずかなりゆっくりと豪華ディナーを楽しんだのであった。


やっぱり今日もトランプ大会
トランプ・・・このグループに切っても切れないアイテムである。高校のときからヒマさえあればやっていたトランプ。いい年をした30前後のメンバーがいまだに熱気を帯びた真剣勝負を繰り広げる。やはり今宵も例外ではなかった。10人で配ると手元のカードは5〜6枚。しかも大富豪(上から3名)と大貧民(下から3名)はカード交換あり。ビリになるとただでさえ少ないカードを上から順に3枚トップにあげなくてはならない。こうなると筆舌に尽くしがたい悲惨なカードが手元に残ることになる。「パス!」「うわー、切り札だったのにー!!」「うわ〜(言葉にならない)」などの絶叫が絶え間なくこだまし、かなり迷惑な団体であったことは確かだ。まず20回戦、風呂を挟んで(この間もババ抜きやっている連中がいた)、さらに10回戦。絶叫は夜更けまで続いた・・・。

絶景の朝風呂
朝が来た。トランプでくたくたになった重たい体をひきずり、ひとり、またひとりと布団から這い出す。朝焼けを見に露天風呂へ。やわらかい温泉が肌に心地よい。谷を吹き抜ける風がほほをやさしく撫でていく。どこか懐かしさのある風景を湯船からじっと眺める。言葉はいらない。ただ無になって日常の喧噪を忘れる。ストレスという名の固まりが次第に溶けていくのがわかる。また来たい、そう思わせる一瞬だった。


朝食を食べ、赤石荘の名物キャラ、ムササビのムサシくんと戯れ、ゆったりとしたひとときの後、赤石荘を後にする。
中央構造線博物館から北川露頭、分杭峠、南アルプス村 〜 ルート152を北上
赤石荘をあとにすると数分で中央構造線博物館に着く。日本列島を形成しているプレートとプレートについて、とても物知りな館長じきじきに説明をいただく。フォッサマグナと中央構造線を混同していた間違いや、その他新しい発見がぞくぞくとある。地質についてはあまり興味がなかったつもりだが、ついつい話にのめり込んでしまった。
中央構造線博物館をあとにした一行は、国道152号線を北上する。鹿塩川沿いの鮮やかなカラマツ林の街道を行くと、やがて北川露頭という、中央構造線の2つの異なった地盤が露出している場所がある。博物館でのにわか知識を頭に、妙に学者気取りになって川へと降りていく。なるほど、色の違う地盤がはっきりとわかる。川遊びで涼をもとめ、私を含めて数名びしょぬれになった後、ゼロ磁場の分杭峠へと向かうのであった。

分杭峠は1424m、不思議な場所である。「ゼロ磁場」と呼ばれる場所があり、ちょっとしたブームになっている。ゼロ磁場とは地殻変動の巨大なエネルギーがぶつかりあってN極とS極の磁気がお互いに打ち消しあう磁気の低い場所のことだ。この特殊な地層には、古代より、強い「気」が集まり、水以外にもさまざまな影響を与えていると言われている。人を幸せにする力を持つといわれる“気”が集まっている長谷村の「ゼロ磁場地帯」の水を求めて、たくさんの人が訪れていた。難しいことはよくわからないが、森の中にはいっていくと、なるほど癒されるような気がする。
メンバー数人は森の下へと消えていく。涼やかな風が木々の間を吹き抜ける。下の方にはかなりの人がいる。こんな山の中の不便な場所にこれだけの人がいるのだからそれだけ何か惹きつけるものがあるのだろう。しばし気のエネルギーを体に感じた後、分杭峠をあとにする。



分杭峠をくだると、広いドライブロードがつづく。目指すは南アルプス村である。ここではかなりふわふわのうまいパンがあるらしいという情報があり、ちょっと寄ってみたかったのだ。気持ちよい芝生が広がる奥に、その南アルプス村はあった。
中にはいると、いいにおいがしてくる。焼きたてのパンのにおいだ。・・・と、そこへ中からおっちゃんがでてきて「はいー、試食ですー、どうぞー」の声。見るとカゴにクロワッサンが山盛りになっている。まわりのひとの目がキラリと輝く。ひとつ、また一つと瞬く間に試食のクロワッサンはなくなっていき、私の手にもいつしか2つ目のクロワッサンが握られていた。うん、たしかにうまい。昼食をどこでとるか決めていなかったが、ここでとることにする。広い芝生のなかにある木陰にテーブルを置き、パンをほおばる。これはうまい。あとで苦しい目に遭うとも知らず、調子に乗って食べ過ぎた。
かんてんぱぱ
南アルプス村をあとにし、最後の目的地(といっても突然決まったのだが)、伊那食品工業のかんてんぱぱガーデンへと向かう。山道から一変、平らに広がる伊那盆地をかけぬける。天気は最高。気分のいいドライブだ。
かんてんぱぱガーデンにつくと、早速ゼリーの試食。これははずせない。2個食べたいところだったが、パンが胃の中でふくらんでしまい、ちょっと苦しかったのでパス。その後は買い物を楽しむ。おまけをもらって大喜びの人もおり、とても楽しい気分だった。最後にかんてんドリンクで締める。カツ丼やら獣の肉やらパンやらいろいろなものがこの2日間はいっているので、きれいに洗い流してもらおう。レモンスカッシュ風のドリンクを飲んだところでもう時間。帰り支度だ。
中央道にのり、辰野PAへ。新宿行きのバスがやってくる。田中夫妻をみんなで手を振って見送る。バスの中の人が「ナニゴトカ?」という目でこちらを見る。中の2人はかなり恥ずかしかったに違いないが、まあいっか。こうして2日間の大鹿村ツアーは無事終了。つぎは名水をめぐる旅、とか、滝をもとめて、とか、何かまたテーマを決めて行くことにしよう。さて次はどこにしようかな?
− 完 −