記憶 : 救急車

周りの車がどんどん端へ寄っていく  真ん中を走っているのはこの車だけ。 

その車に乗っているのは自分一人  みんなが不思議そうに  横目で覗いていた。


いつも通るこの道を  何も知らずにわからずに走っていた。やっと気がついた

そんな自分が情けなく  思わず切ったハンドルを  握り拳でたたいていた。

脇へ避けたその後に ライトを灯けた白いくるまが  すごい速度で走り去る。

青い煙が渦を巻き 自分の車の後で焦らされた  そんな様子が見て取れた。


今は何も伝えないこの耳が  以前には幾度も聞いたはずなのに・・・

救急車のサイレンさえも  今ではどんな音なのか  はっきり残っていたはずの

その音が  思い出しても出てこない

 

<わずかでも、窓が開いていれば、真横を通る時、救急車の音のような振動が、ほんの一瞬、耳に激しく反応する>

shimuro