隠されたヤマトの真実 僕が子供の頃、宇宙戦艦ヤマトというアニメ作品があった。
TV放映、TV特別番組、劇場版と全てあわせて8作品も作られ、その大ヒットは当時、社会現象とまで呼ばれたのは今となっては懐かしい。さてこの宇宙戦艦ヤマト、第一作目にあたるTV放映はこんな話だった。
「今から200年ほど未来。人類は繁栄を極めていた。だがある時突然、異星人の侵略を受けた。「遊星爆弾」と呼ばれる隕石型爆弾を多数落とされ、地上は放射能に汚染された。人類は地下に潜って細々と生きながらえていた。そんなとき、外宇宙からもたらされたメッセージに従い、放射能を除去できるという「コスモクリーナー」を求めて、人類の希望を託した一隻の宇宙戦艦が旅だった…」
TV版の一番最初では、攻めてくる異星人――ガミラス星人は「放射線の中でしか生きられない」という設定だった。そのために「遊星爆弾」を地球上に落とし、地上を放射能で汚染した、という説明が作中にてなされた。ところが、続編、続々編と作られるうちにその設定はどこかへ消え失せてしまったのである。いつのまにか地球人と同じ場所でテーブルを囲んで飯を食っていたりするシーンまで登場し、第1作目からのファンを混乱させる事態となった。
物語の進行に伴う設定の変更。そのころのアニメには良くある話だった。故に、多くのファンは「まぁ、良くあることだから」とたいして気にとめることもなく設定の違いを忘れていった。
また別の多くのヤマト・ファンは、この設定の矛盾を逆に、自分たちの楽しみに使った。一見矛盾しているように見える事象に整合性を持たせるために、自分なりにいろいろな理屈付けをして楽しむ、という一種の知的ゲームの題材として使うというのが一つの流行となった。さて、ちょっと話は変わる。時代はぐっと下り、しかし僕にとってはそろそろ懐かしさを伴う思い出になりつつある大学時代、人並みに就職活動なんてものを始めようとしていた頃の話だ。
僕の父親は当時こそは「キリスト教の牧師」なんてヤクザな商売に就いていたが、その前はいちおうは誰でも知っている大企業に勤める人間だった。当然、息子の就職には社会人大先輩としての口をいろいろと出してくる。
彼が自信をもって口にするアドバイスの一つにこんなのがあった。
「原子力関係の仕事に就けば、生涯食いっぱぐれはないぞ。あれは最高技術の集合体だし将来性だってバッチリだ」
僕はそれには反発したものだった。原子力事業は根本的なところでウソと虚構に塗り固められた体質がある、とかなんとか反論を試みたことを覚えている。だが、なにせ社会人としてのキャリアが僕の人生そのものの倍はある人間の言う言葉である。太刀打ちできるはずもなかった。
それから数年後、動燃が解体されるハメになるなんて、当時の彼には想像も付かなかっただろう。他の色々なアドバイスはともかく、「原子力関係の仕事は将来性ばっちり」というアドバイスに限って言えば、僕の主張の方が正しかったというわけだ。動燃の解体の直接な原因となったもんじゅの事故では、徹底した隠蔽工作、情報操作が表沙汰になり、連日大勢の人間の目と耳を疑わせたものだったが、この動燃の度重なる事故およびその情報隠蔽をみているうちに、昔夢中になった「宇宙戦艦ヤマト」を思い出した。例の、ガミラス星人の体質に関する設定の矛盾だ。
その矛盾(設定の変化)を説明する手段はそれまでにもいろいろ考えられてきたが、僕の考えたそれはその中でも傑作なんじゃないかと思う。
動燃の報道を見ている時に思いついた、それを説明する説とは、一言で説明すると……。
「『ガミラス星人は放射線の中でしか生きられない』というのは、地球防衛軍本部が流布した情報操作の一環であり、真っ赤なウソである」というものだ。詳しく説明するとこうだ。
ある時、地球上で大規模な原子力発電所の事故があった。地上は広範囲にわたって放射能に汚染され、もちろん、大勢の犠牲者もでた。
「原発は絶対安全」と言い張って原子力を強力に推進してきた行政は、なんとかその事故を隠蔽しようとした。その時、ちょうどやってきたのがガミラス星人だ。
彼らは地球侵略の手段の一環として、爆弾を多数地上に投下した。実はその遊星爆弾には、単なる爆弾としての機能しかなかったのだが、地球防衛軍本部(なのか連邦政府なのかは知らないけれど)はそれを、「地球を放射能に汚染する爆弾」であると発表した。その理由は勿論、原発の事故を隠蔽するためである。
そう、本当はガミラス星人は体表色以外は全く地球人と同様、放射線の中でなど生きられない生物だった。最初っからそうだったのだ。彼らが、「放射能の中でしか生きられない生命体」であるという当初の情報は、地球連邦政府による全くのウソ情報だったのである。
では、その後、幾多の戦いを経るうちにガミラス人(というよりはデスラー個人)との友好関係を結ぶにあたって、一度流したその「ウソ情報」は果たして足かせにはならなかったのだろうか? その点は心配ない。多くの無知蒙昧な群衆達は、ちょっとまえの報道などきれいさっぱりと忘れているに違いない。改めて、「一緒のテーブルで食事をする」とかそういう映像を流せば、何の疑いもなく「ああ、ガミラス人はトモダチなんだね」と納得してくれるだろう。以上、全くの冗談であることは言うまでもない。言うまでもないのだが、次々と暴露される恥も外聞もない隠蔽工作を見るにつれ、少しずつ笑えなくなってきている。
皆さん。ある日突然異星人が地上に放射能をまき散らす爆弾を投下し始めたら。そういう報道があったら。それは、実は巨大な原発事故を隠蔽する工作の一つかもしれない……。そんなばかな。