ただの萌えアニメと思いきや
HAPPY☆LESSON
(放映終了、現在キッズステーション等で再放送中)
親はおらず、一人暮らしをしている一軒家から高校に通っている少年。彼に「母の愛」を教えようと、学校の女先生5人が彼の「ママ」になると宣言、彼の家に押し掛け同居することになる。
●「12人の妹の次は5人のママかいっ!」キャラクターショーかなにかで配布された設定資料を見たときは頭を抱えたものだった。もはや萌えアニメの世界では一切のタブーは存在しないのだろうか。妹、母親とくれば次は娘じゃないのか、ということは今度は愛娘が20人ばかり登場するアニメでも作る気だろうか、「お父さん」「ちちうえ」「パパ」「オヤジ」とかいろんな呼び方で呼んでくれたりするんだろうか、そしたら主人公はその娘達にどんなことをするんだろうか、いったいどこまで突き進んでいくのだろうか、果てはあるのか、僕はどこまでついていけるのだろうか――。
とまあ、キワモノを突き詰めた感じの作品になるんだろうと思っていたのだが、全話を通して見るとこれがなかなか綺麗にまとまっていたのが驚きである。まったく非常識としか形容しようもない世界観にもかかわらず、描かれているのは「自分らしくあるとはどういうことか」「果たせなかった約束はどう償えばよいか」「夢を叶えたその先にあるものはなにか」といったごくごく真っ当なテーマが多かった。そういった青春の悩みに苦しむ登場人物を、他のキャラクターが「家族として」暖かく見守っていくという、歪んだ世界観からは想像も付かない、地に足の着いたど真ん中ストレートな物語となっている。
●常軌を逸した世界で真っ当なテーマを扱う
もちろんTVシリーズの常として、外れっぽい話もないわけではない。作画はかなり安定している方だとは思うが、それでも崩れるときはある。例えば、「大きめの制服の、長めの袖口から、指先だけが覗いている」というのは妹系キャラクターの可愛らしさを表現する一つの記号として広く使われているが、最終回近くの作画において、それがアップになったとき袖口から出ている指の長さが第2関節くらいまでしかなかったときは、さすがにちょっと気持ち悪かった……。そもそも日常的に暴力をふるわれたり体に電流を流されたりしている(通常、このような行為は虐待と呼ばれる)赤の他人である女性達を、母親として愛することのできる主人公のメンタリティーは理解しがたいものがある。まあこれはアニメ特有の誇張表現だとして素直に受け入れるとしよう。
この作品、「萌えアニメ」としての体裁は基本的には高いレベルで整っている。各話ごとに5人いる「ママたち」の誰かにスポットが当たり、彼女達の魅力が存分に描き出されている。女性キャラクターはママたち5人のみならず、それに「姉」「妹」「委員長」「隠しキャラ」の4人を加えた計9名となっており、それぞれに明確なキャラ付けがなされている。ファンもひととおりに付いているらしく、商業的な部分、つまりキャラクターグッズを売ったり、声優のコンサートを開いたりという興業面での成功も充分に収めているらしい。
萌えアニメとして完成されていると同時に、キャラ萌えしなくてもストーリーを楽しめる。前回のアニメコラムで書いた、「萌えアニメという制約のなかでクリエイターはいかに表現をするか頑張っている」例のひとつがこの作品だ。ぶっとんだ世界を舞台とした物語で、真っ当なテーマを扱う。これは予想外に離れ業である。萌えアニメだからというだけで視聴の選択肢から外すと、意外な名作を見落としてしまうという好例であると言えよう。