「萌え」の皮を被った不条理ギャグ

東京ミュウミュウ
(土曜・TV東京系 朝8:00〜)

 「地球を守るため」と称して動物の遺伝子を植え込まれ変身能力を身に付けた女子中学生が、同じく改造人間とされてしまった仲間と共に元の姿に戻るため異星人と戦う。

……今まで、冒頭のストーリー紹介は可能な限り客観的で偏りのないものにしようと努力してきたが、本作品に限っては無理だった。
だってこういう話なんだもん。ウソは言ってないもん。うぐぅ。うぐぅ言うな。


経済的側面から見た「萌え」

 萌え、つまり(主にアニメやマンガの)キャラクターに対して抗いようもない好意を抱いてしまう衝動はどこからくるのか? 単に見映えの美しさというだけなら、文字通り「絵に描いた」それらのキャラクターはどのようにでも美しく可愛らしく描くことができる。性格が良いからだというのなら、まだ性格はおろかストーリーすら明らかになっていない、キャラクター設定が発表されただけの段階で、早くも「萌え」が発生することがあるのはどういった理由か?
 ここで一つの仮説が出てくる。実は、「萌え」を誘発する要素はごく限定された部分部分(=記号)に集中しており、キャラクターの性格などとの関係は希薄なのではないか? その証拠に、あれだけ性格の悪い「デ・ジ・キャラット(でじこ)」が「ネコミミメイド」という記号を備えているというただそれだけで人気キャラクターとなっているではないか。
 この「萌えとは実は記号の集合体である」という説は、この言葉が使われるようになった直後から指摘されてきたことである。
 これは、ある面で正しい。だがそれが確立する過程では、そのように仕向ける風潮をメディアなどが一体となって盛り上げてきたという面が大きいことを忘れてはならない。その理由としては二つが考えられる。キャラクターの魅力を記号化すれば商品展開が楽になるというのが一点。そしてもう一点は、他でもない視聴者自身が楽をするためだ。
 自分がどのような記号に反応するのかを自覚しそれを「属性」と呼び表し、そして自分の属性にマッチするキャラクターが登場すればそれに萌えることに決める。「自分がなぜ(他のキャラクターではなく)そのキャラクターが好きなのか」という理由を深く考える必要など無く、例えば「自分は妹属性があるから」ということならば、ラインナップに妹系キャラがいればそれを自分の萌えキャラと決める。それにより、「自分の贔屓キャラ」を決める意志決定がより素早く簡単に行えるようになる。
 早い段階から「萌え」が発生するため、商品の流通も早くなり利益も上がりやすくなる……と市場全体に対してプラスの効果を与える。市場経済の大原則に従い、本来複雑な人格を持っているはずのキャラクター達は「萌え属性の記号」として分かりやすく類型化され、商品として我々の前に提供される。

制作者が意図したものとは(恐らく)異なる面白さ

 「東京ミュウミュウ」という作品の基本フォーマットは「5人の美少女戦士が地球を守るために悪い異星人と戦う」というもの。大ヒットした「セーラームーン」以降すでに何度かやられているネタであり、目新しさを持たせるためにはよほどのことをしなければならないということは理解出来る。そこで何をやってきたか。「萌え」の要素と言われている記号を、無節操にありったけ詰め込むという方法を取ってきたのである。「ネコミミ」「メイド」「巨乳」「貧乳」「メガネっ娘」「ドジっ娘」「ちびっこ」「無表情系」「お嬢様」etcetc.....。
 1つ2つなら萌えの対象になるかもしれないが、無節操になんでも突っ込むと相互作用で訳の分からないことになる。結果的にこの作品は登場人物の多くが常人からはかけ離れた性格を持ち常軌を逸した行動をする、オモシロ系の作品となりつつある。製作者の意図通り萌えアニメとしてこれを見ることも可能ではあろう。何も考えず、「メガネっ娘萌え〜」「貧乳萌え〜」と叫んでいるのもそれはそれで楽しい生き方には違いない。ただそこから一歩離れて、ちょっとでいい、「冷めた」目でこの作品を見るとき、この作品は「天才バカボン」を彷彿とさせる不条理ギャグマンガと化す。
 人体実験の実験材料として無理矢理「遺伝子を注入」して戦士に仕立て上げてしまった人間の指導のもと、少女達はケーキ屋でメイドの格好をしてバイトをする。少年はヒロインに愛の告白替わりに首輪を付ける。そしてヒロインは首輪を付けられたことを顔を赤らめて喜ぶ。他にもいろいろ……。常人には――少なくても私には理解しがたい世界が作品内では繰り広げられる。
 そう、「東京ミュウミュウ」の魅力は「あっち系」に行ってしまったのではないかと思えるほどに常軌を逸した「日常」にある。微妙にモラルの崩壊した日常描写、それこそがこの作品を楽しむキモである。
 どうか、妙に壮大なテーマを掲げたり、明確な目標のもと全員が一致団結して悪に立ち向かったりせず、このまんまご町内不条理ギャグマンガを貫いていって欲しいと切に願う。



[BACK]