底抜けに明るい悲劇

満月 (フルムーン) をさがして
(土曜・TV東京系 朝7:30〜)

 資産家に引き取られた病弱な少女のもとに男女2人組の「死神」が現れ、彼女の寿命はあと1年だと告げる。彼女はかねてからの「歌手になる」という夢を残り僅かな寿命の中で叶えるため、死神の力を借りて成長した姿に変身、アイドル歌手としてのもう1つの生活を始める事になる。


状況的悲劇→観念的喜劇

 魔法の力で大人に変身、歌手になる……。かつてスタジオぴえろ魔法少女シリーズで何度も描かれた、一種の王道パターンだが、魔法の貸与条件として期限を1年と区切られることはあっても、寿命そのものが残り1年というのはある意味で斬新かもしれない。
 ところが、人生の残りがあと僅かだという悲壮感はヒロインである少女の表情からは一切窺えない。気持ち悪いくらいに前向きなよい子として描かれている。1話を見逃した人、あるいは見たけれど忘れっぽい人はすでに「余命あと1年」なんて設定があったことすら頭にない状態で放映を見ているのではないだろうか。毎回終了後に「余命はあと○日」とか表示されるとかいうこともない。素直に設定を解釈するとどうしても出てきてしまいそうになる重苦しさを、演出により可能な限り排除しようという意図が見える。少女のもとに訪れる死神2人も、一般的なイメージとは全く異なった軽い感じのキャラクターデザインとなっており、少女の良き相談相手かつ友達として楽しく日常を送っているようだ。
 
 

基本はオーソドックスな少女漫画フォーマット

 与えられている材料そのものは実にありふれたものだ。孤児院で過ごしていた頃、優しくしてくれたお兄さんに再び会いたいという行動原理にしろ、いまどき孤児院ネタもなかろうというくらい王道なパターンだ。各話ごとのテーマも、仕事に対する情熱を失い欠けていたベテラン女優と共演し、自らの真摯な態度で相手の心を動かすとか、チャリティーで孤児院を訪れたとき、かつての自分の境遇に似た兄妹を見つけて共感してしまうとか、古典的といっていいほどのネタが続いている。
 あえて相違点を探すとすれば、魔法少女ものにおける「お付きの動物」に当たる「死神」というキャラクターが、お兄さん&お姉さんっぽい人間型のキャラクターとして描かれていることだろうか。彼ら同士の恋愛感情(どうやら女死神→男死神の一方的な片思い状態のようだ)や、男死神のヒロインに対する「ほっとけない」感情の描写などが時折はさまれる。この点で本作品は、ドタバタ劇がメインとなっていた過去のぴえろ魔法少女シリーズと違い、ヒロインである少女の心情描写を軸にして展開するという少女漫画的フォーマットで描かれていることがわかる。
 はてさて、この作品は今後どうなっていくのだろうか。各話ごとの展開という点では当分お約束が続くのだろうが、全体的な進行として……というよりはむしろ「最終回はどうやって決着つけるんだろ」というのが主たる興味だったりする。原作は読んでいないので分からないのだが、期限付きの寿命は延ばされてしまったりするのだろうか。少女漫画の場合はけっこう平気でヒロインが死亡して最終回、なんて展開もアリだったりするから。

※以上は7月26日頃に書いた文章だったのだが、それ以降の回においていろいろと急展開があり、久々に悲壮感漂う展開を見せている。このまま番組改編を乗り切れず打ち切りになってしまうのか、それともまた何事もなかったかのように「のほほん」とした雰囲気に逆戻りしてしまうのか?



[BACK]