四年目の決着
おジャ魔女どれみドッカーン!
(日曜・テレビ朝日系 朝8:30〜)
魔法が使える仲良し小学生5人組。かつて魔女界に頼まれて育てていた赤ちゃんが、自らの魔法で彼女たちと同じ年齢にまで成長して人間界にやってきた。体は育ってもメンタリティは幼稚園児のままの彼女が引き起こす色々なトラブルに見舞われながらも、魔女界から頼まれた仕事をこなしていく様子を通して、少女達の成長を生き生きと描いていく。
●番組改編の波を3度も乗り越えた長寿番組TVアニメは原則として1作品が1年で終了するように作られている (※1) が、1年を過ぎても終了せず、2年目3年目と続く作品も中には存在する。人気があり、かつキャラクター商品などの売り上げが極めて良いといった幾つかの条件を満たしている場合だ。最近ではミニ四駆を題材にした「レッツ&ゴー」、ベイブレードを題材にした「ベイブレード」などがこれに当てはまる。だがこの場合、同じ作品がそのまま継続するのではなく、名前を変えて装いを新たにし、同じキャラクターが登場する別作品として生まれ変わることになる(キャラクターごと入れ替わる場合もある)。
番組改編におけるリニューアルの方法はいくつかあるが、「おジャ魔女どれみ」の場合は新しいキャラクターを1人増やすという方法を取っているようだ。もちろん、1年を通して与えられた使命のようなものは1年の終了時に無事果たし、新たな1年を迎えるにあたって新しい使命が与えられるというストーリー上のリニューアルもあるが、ビジュアル的に一番大きいのは1人増えるキャラクターと、それにともなうコスチュームや魔法などの変更だろう。
当初は3人だったおジャ魔女も、今作品では6人となっている。ということはつまり、4年目に突入したということだ。1年目から2年目に移るときに増えたキャラクターは、1年目で敵側として登場したキャラクターであった。3年目では、今まで登場したことのなかった全くの新しいキャラクターが加わった。そして4年目となった今回は、今までも登場していた赤ちゃんがいきなり成長して現れる、という少し強引な展開となった。
さすがにもうこれ以上キャラクターを増やすのは難しいだろう。実際4年目ともなるとキャラクターグッズの売れ行きも息切れ感があるらしく、近年珍しい長寿アニメ番組となった「おジャ魔女」も、今回をもって終了となるということだ。少し残念な気もするが、長く続けすぎたゆえに引き際を誤り、スッキリしない終わり方をしてしまった作品も数多いことを考えれば、ここらで一区切り付けるのは良い事かも知れない。
●彼女たちを演じる声優さん達
この作品さすがに長く続いているだけあって、作画もストーリー展開も毎回安定している。3年にわたるエピソードの積み重ねは大きく、膨大なキャラクターとそれぞれの関係といった、大きな大きな貯金が確固たる世界観を確立してくれている。
そこで今回は視点を変えて、メインキャラクターたちを主に声優にスポットを当てながら紹介してみようと思う。
まず第1回目の今回は、初期メンバーの3人から。この3人の声を当てている声優さんは、「おジャ魔女」以前は主役や主役級のキャラクターを当てた事もない、どちらかと言えば無名な声優だった。いや、声優というよりは、大変失礼な書き方になるが「売れないアイドル」という形容が最も当てはまる立場だったかも知れない。察するに、「あまりメジャーではなく、かつ歌が歌える声優さん」という選考基準があったのではないかと思われる。
だが今では、それぞれ「おジャ魔女の誰々の声」と言えばアニメファンなら誰もが「ああ、あの声」と思い出せる人気声優の仲間入りを果たしている。主役級の声をいくつも受け持つトップ声優の座をひた走っているメンバーもおり、まさに声優界のシンデレラストーリーを見る思いである。
春風どれみ/千葉千恵巳
「おジャ魔女」の、一応ヒロインに当たる彼女を演じているのが千葉さん。近年ではシスプリの「雛子」など重要な位置付けにあるキャラクターを演じることも多くなってきている。彼女は声優以外にも、インディーズバンド活動(ボーカル)、デザインブランド、ラジオのパーソナリティーといった活動をも積極的にこなしているという。
キャラクター的にも相当にユニークなお方のようで、パーソナリティーを努めたラジオ番組の視聴者などを中心に、声優としてではなく「純粋に本人のファン」という人も多いようだ。元気で勢いがよく、あまり極端なクセのない声質が特徴的。良い意味で「子供っぽい」声と言えるだろう。「どれみ」というキャラクターの物語内での位置付けは、リーダー的な存在であると同時にマスコット的な役割も果たしているというイメージがあった。「赤ちゃんを育てる」というミッションが加わった2作目以降はマスコット役はその赤ちゃんに託されたが、「ドジでおっちょこちょいだけれどいつも一生懸命で憎めない」というキャラクターは変わっていない。
ステーキが大好きという設定なのだが、「どれみ」はいまだかつて1度も作中ではステーキを口に入れる事に成功した事がない。皿に乗ったステーキを目の前にして、ナイフで切りフォークで突き刺し口を開けて唇に触るかというところまで運ぶところまで行ったのが、いまのところの一番のニアミスだろうか。果たして放映終了後まで彼女はステーキを食べる事が出来るのかどうか、これは注目に値するイベントとなろう。
逆に言えば彼女がステーキを食べる事が出来た時、それは「おジャ魔女」シリーズの終わりを意味する……とか書いてしまうと大上段に構え過ぎか?藤原はづき/秋谷智子
秋谷智子のプロフィールはいくら探してみても、この「おジャ魔女のはづき」以外の仕事が見つからない。他にはCM出演が何件かあるくらいで、どうやら本当に、アニメ声優活動としてはほぼ「おジャ魔女」専門にやっている人らしい。
その声は一度聞いたら忘れられない。完全に裏声で喋っていて、抑揚が少なめの聞いているだけで全身が脱力していくかのような、独特の魔力を持った声である。彼女が演じている他の役を聞いた事は無いが、さすがにこの声が彼女の持ち味であり他のやり方は出来ないということはないだろうから、この声は「はづき」専用に作ったものだとは思うのだが……。「はづき」というキャラクターの物語内における位置付けは、他のキャラクターに比べても最も移り変わりが激しい部類に入るだろう。最初は、「清楚な大人しめの気弱な女の子」という位置付けだった。いわゆる美人系である。だが新キャラである「おんぷ」が登場すると、美人系キャラの役は完全にそちらに持って行かれてしまうことになる。また、一般的には眼鏡っ娘というと、委員長系というか参謀役みたいな役柄が割り当てられることが多いが、おジャ魔女の場合は「あいこ」がその豊富な人生経験から仕切り屋の役を一手に引き受けていた感がある。綺麗所は持っていかれ、参謀役もこなせないとなると、「はづき」はそのままでは何の役にも立たない足引っ張りキャラになってしまいかねないとなったのだろう、キャラ付けの方向性に変化が生まれることになった。
「ささいなギャグや、下品系のギャグでも笑ってしまう」、つまりセンスがちょっとズレているという新たな設定。そして、クラスのちょっと不良系の男子と、幼なじみかつちょっと微妙な関係という設定。思いこんだら一直線、突っ走ってる彼女は誰にも止められないというような描写も追加された。
以上のテコ入れにより、バランスが悪い4人体制だった時期も無事に乗り越え、今でもおジャ魔女には無くてはならないキャラの一人として立派に存在をアピールし続けている。妹尾あいこ/松岡由貴
この人も、あいちゃん以前はあまり印象に残るような役が無い、あえて分類するなら無名な方に入ってしまう声優だった。だが今では、「あずまんが大王」の大阪(春日 歩)、「アベノ橋魔法商店街」のあるみ等、主役級のキャラクターの声をいくつも当てている売れっ子声優となった。「大阪弁ヒロインといえばこのひと」という印象があり、もはや大御所の仲間入りである。一部ではキングオブ大阪弁とも呼ばれていると聞く (※2) 。
自然で勢いのある大阪弁は、本人がネイティブ大阪人だからこそのもの。はきはきちゃっちゃっと物事を片付けていくあいちゃんの魅力が、彼女の演技でいっそう引き立っている。思い起こせば、劇中で「気合いの入っていない漫才にキレる」というシーンがあったが、その時の怒鳴りつける様子などは演技というよりも半分以上「素」でやっているんやないやろかとか思われるほどの自然さがあった。キャラクター的には、「早くに両親が離婚し、父子家庭を長くやっている。炊事洗濯掃除といった家事全般は彼女が担当している」というような設定があり、そのためか「ちょっとオバサンくさい大人っぽさ」がある。小学生らしからぬ、世間を知った大人っぽさとでも言おうか。そんな普段の彼女と、両親がヨリを戻しそうになったりならなかったりという状況での、おろおろしたり泣きそうになったりという、いかにも「頼りなさげな子供」という様子とのギャップがまた良い。あいちゃん主演話には人情系の良作が多く、それゆえなのか「あいこ」ファンは他キャラクターのファンとは少し客層が違うような気がする。
メンバーの中で唯一の常識人としての役割を果たす事が多い。とはいってもリーダー格というわけではなく、いわば「トラブルのまとめ係」といった位置づけだ。
ファンイベントの映像などを見ると、おジャ魔女声優5人組のなかでも松岡由貴はリーダー格というかまとめ役的な役割にいるように見える。関西人らしい勢いのあるノリの良さがイベント向きなのかもしれないが。
残りのメンバー、「瀬川おんぷ/宍戸留美」「飛鳥ももこ/宮原永海」「巻機山ハナ/大谷育江」は9月17日公開の第2回にて。震えて待て。
※1:もっとも、タテマエとしては半年毎の契約となっており半年で終了しても「番組半ばで打ち切り」ではなく契約通りのスケジュールということになるらしい。とはいえ多くの作品が1年毎のサイクルで回っている中、半年で終了してしまう番組があればそれは打ち切られたと見なすのが普通だろう。実際、半年あるいは1年半などの単位で終了する作品は、中途半端な印象のまま無理矢理最終回にしてしまったような終わり方をする。それならまだいいが事情があって半年だけ延ばされた場合などは悲惨で、場合によっては脚本も演出も絵もまったくやる気のないダラダラとした展開が半年だけ続いていつの間にか終わっている……なんてこともある。
※2:ちなみにクイーンは久川綾なんだそうだ。※写真のフィギュアは、BANDAIのガシャポン「おジャ魔女DX」です。