四年目の決着(後編)
おジャ魔女どれみドッカーン!
(日曜・テレビ朝日系 朝8:30〜)
魔法が使える仲良し小学生5人組。かつて魔女界に頼まれて育てていた赤ちゃんが、自らの魔法で彼女たちと同じ年齢にまで成長して人間界にやってきた。体は育ってもメンタリティは幼稚園児のままの彼女が引き起こす色々なトラブルに見舞われながらも、魔女界から頼まれた仕事をこなしていく様子を通して、少女達の成長を生き生きと描いていく。
●番組改編の際、新キャラとして追加された3人初期メンバーの3名に引き続き、今回はそれ以外の3人について彼女たちを演じている声優さんを主体に紹介していこう。
番組改編期を超えて、番組名や歌、衣装や道具などを一新し、さらに新しいメンバーが追加になる。後から追加された彼女たちを仮に「後期メンバー」と呼ぶ事にしよう。
それまでのエピソードの積み重ねがある初期メンバーに対し、新登場するキャラクターはメンバーの中でしっかりとキャラを確立させなければならないため、比較的極端なキャラ付けがされることが多い。だがそれも行き過ぎると既存キャラを食ってしまうという逆効果をもたらしかねない。
既存キャラを活かしつつ、新キャラをきちんとストーリー内で目立たせる。難しい作業だが、「おジャ魔女」シリーズではそれはかなり上手くいった部類に入るといって構わないだろう。「おジャ魔女」シリーズでは、物語の主題は「悪いヤツと戦う」というような単純なものではなく、むしろ日常の学園生活や親子関係などのほうがメインを占めている。新キャラが既存キャラと馴染んでいく過程では、そういった「日常のなんてことないひとコマ」の一つ一つが非常に重要な役割を果たしていた。瀬川おんぷ/宍戸留美
「20世紀最後のアイドル」と呼ばれた事もある、超本格派のほんまもんのアイドル、それが宍戸留美である。「地球の危機」「恋はマケテラレネーション」などの名曲(迷曲?)を数多く残し、今なおコアなファンは数多い。声優としてもアイドルとしても、このキャラを当てる以前から有名だったという点は初期メンバー3名の声優と大きく異なるところである。
実は声優活動歴もそれなりに長い。今までの代表作というと思い浮かぶのが、矢沢あい原作の「ご近所物語」のヒロイン役である実果子だろう。いわゆる声優っぽいキャピキャピした媚び系の声ではなく、本当の女子高生のそれに近いアニメっぽくないしゃべり方だったので拒否反応を示す人も少なくなかったようだが、素直に聞けば役柄的にもビジュアル的にもまさにハマり役で、まさに彼女のために存在したキャラクターとしか言いようがなかった。「ご近所」以降、「声優としての宍戸留美は実果子で最後」との言葉が本人談として発表された。それほどまでに実果子を思い入れたっぷりに演じていたということらしい。しかしその後いくつかの番組で声優として名を連ね、後番組である「おジャ魔女どれみ」にも敵側のキャラクター「瀬川おんぷ」として登場することになる。人気があったために口説き落とされたということなのだろう。確かに、他の声優はそれっぽい代役はいくらでも見つかるだろうが、彼女はどうだろうか。三石風の、林原風の、西原風の声を出す声優は簡単に思いつくが、宍戸留美風の声を出せる声優なんてちょっと思いつかない。
売れっ子チャイドル(子役アイドル)で、少し大人びたところのある女の子という設定で登場した「おんぷ」。本来は番組後半にだけ登場するゲスト的なキャラクターとして設定されたと思われる彼女だが、これまた宍戸留美のハマり役となり、主役3人組を押しのけて一番人気のキャラクターとなってしまった。アイドルがアイドルの声をアテるのだからハマって当然かもしれないが……。
人気に後押しされる形で続編である「#しゃーぷっ」以降はレギュラーキャラクターに昇格する。小学生ながらアイドルとしての仕事を誇りを持ってこなしている「おんぷ」は他のキャラクターとは少し距離を置いたような位置づけにいる。ビジュアル的に「美人」として描かれているのが基本的には彼女だけだというのも一番人気の理由の一つだろうが、最も大きいのはなんといっても声だろう。諭すような優しい声はキャラクターにとてもよくマッチしている。飛鳥ももこ/宮原永海
3年目となる前作「もーっと!」から登場した新キャラクター。とくに前フリも何もなく、突然登場したという感のあるキャラだったが、それゆえに強烈なパーソナリティを与えられており、一気に従来のメンバーになじんでしまった。進級によるクラス替えで、一応ヒロインである「どれみ」と唯一同じクラスになるという展開により、比較的登場機会が多く設定されたということもあるのだろう。キャラクターが増えた場合に、居る意味のない捨てキャラクターを作らず全員にスポットがあたるようにするための涙ぐましい努力が見える。
アメリカからの帰国子女であり、日本語をほとんど話す事が出来ない……という設定だったため、当初は普段話すセリフのほとんどが英語だった。じきに日本語も覚えて日常会話も普通にかわすようになるのだが、未だにとっさの一言では英語が口をついて出てくる。声を当てている宮原永海さんは、小さい頃はアメリカンスクールに通い、14才よりオーストリアに4年間留学したというインターナショナルな経歴の持ち主。英語の発音が非常に自然なのも当然といったところなのだろう。英語だけでなく日本語をしゃべるようになっても、その話す日本語がいかにも「覚え立ての日本語を話す外人」っぽい喋り方になっている。宮原さんは他にも声優の仕事をこなしており、そちらでは普通の日本語を喋っているのだから、まさか素ではないと思うのだが……。
後から登場したこともあり、位置付けは微妙なところがある。前作「もーっと!」では「トラブルメーカー」という確固たる役割があったが、最新作「どっかーん!」では「体は小学生だけれども中身は赤ちゃん」という新キャラクターが登場したため、トラブルメーカー役は完全にそちらに持って行かれてしまった。今では、「男女分け隔て無く接する」とか、「おかしいと思った事はおかしいとはっきり言う」とかいうパーソナリティによって、息詰まった状況を打破するきっかけとして重要な役を果たす事が多いようだ。
甘えるような感じのする声質が特徴的で、へそ出しルックと相俟ってコアなファンも多いらしい。巻機山ハナ/大谷育江
前作では赤ちゃん役だったのに、新キャラとして登場するためいきなり成長してしまい小学生役となるという大変化があったにもかかわらず、特に違和感も感じさせずに普通に「体は成長したけれども心の中は基本的には幼稚園児なキャラ」を演ずるという離れ業を見せてくれたのは、メンバーの中では最も大御所声優と言える大谷育江さんである。
「姫ちゃんのリボン」でのヒロインで人気を博したことを覚えている人は今ではもう少なくなっているかもしれない。同作品において、いわゆる「憧れの先輩」に当たるキャラクターの声を、当時はまだ駆け出しのアイドルグループだったSMAPの草なぎ剛が演じていたことも知る人は少ないだろう。一方ヒロインである姫ちゃんを演じていた大谷さんは、今ではSMAP人気なんか足元にも及ばない大人気キャラクター、ほとんど世界的な大スターと言っても過言ではない「ポケモン」のピカチュウの声を当てている。時の移り変わりを感じずにはいられない。
少し鼻にかかった、力を込めて絞り出すような雰囲気をもった声が特徴。というかピカチュウの鳴き声を想像していただければ全てOKだ。弟系の少年キャラクターや、元気系の女の子の声を当てることが多い。一方でシリアス系の表現にも定評があり、普段はお気楽で騒々しいキャラクターが、物語のターニングポイントでしんみりしたり必死になったりするシーンでの泣きの演技は見物である。4年続いた番組が最終回に向かって突き進んでいく中、最重要人物にして最も中心にあるキャラクターである「ハナ」の役割はどんどん大きくなっていくはずである。ということは同時にその声を当てている大谷さんの力量が試される場でもあるということだ。1年ごとに番組がどんどん改編されていく中、4年も続く長寿番組となった「おジャ魔女」シリーズを終わらせるという、重い、重い役目が彼女の演技にかかっているといっても過言ではない。 ※写真のフィギュアは、BANDAIのガシャポン「おジャ魔女DX」です。