名作鑑賞
 第22話 春を呼ぶ愛の歌 (昭和49年3月4日放送)

脚本:安藤豊弘/原画:木暮輝夫、福山映二/動画:中山晴夫、今川よしみ/美術:土田勇/作画監督:木暮輝夫/演出:山口康男


 

 
<リミット>
  いよいよあたしの番だわ。レントゲンであたしがサイボーグとわかったらどうしよう……

<乙姫先生>
  つぎ、西山さん
<リミット>
   はい!
<リミット>
   ああ……もうだめ……
<医師>
  ごらんなさい、サイボーグです
<乙姫先生>
  リミットちゃんがサイボーグ?
<一同>
 
サイボーグ!
 
<リミット>
  夢でよかったわ……
<光子>
  小さい子がお金を落として困っているのに、知らん顔で通りすぎるなんて
<リミット>
  気がつかなかったのよ……考えごとをしてたもんだから
<光子>
  本当は、あなたにはハートがないんじゃない?
<リミット>
  ハート?
<光子>
  やさしい心、人間らしい心が欠けているのよ、あなたには――つまり、これよ
<リミット>
  人形……
 
<ブー子>
 
まだ気にしているの? 光子さんが言ったこと。もう忘れちゃいなさいってば
<リミット>
  心のない人形……人形!
<パパ>
  なにを言うんだ、リミット、おまえにはちゃんと女の子らしい心はある。パパが保証してあげるよ
<リミット>
  でも……あたしには、そうは思えないの
<リミット>
  あたしには普通の人間にはない超能力があるわ
  でも……それはあたしの誇りではないの。超能力なんていらない……普通の、みんなと同じ、ただの人間になりたい!
<パパ>
  いいかね、リミット、いつも言うように、サイボーグはロボットではなくて――
 
<リミット>
 
人間でもないわ!
<パパ>
 
しかし、人間より優れた面だって多いんだよ
<リミット>
 
ええ、パパが作った模型人間ですものね
<パパ>
  人間は限りある生命だ。その生命を、一日でも長く生きられるようにと始めたのが、パパのやっているサイボーグの研究だ…… ご覧、この写真を
<パパ>
  子どもの頃の、お前とママだ
<リミット>
 
あたしとよく似ているわ……
<パパ>
 
うりふたつさ
<リミット>
  でも、あたしはママのような、優しい心をもった人間にはなれないんですもん!
<パパ> 待ちなさい、リミット
<リミット> ほっといてちょうだい!

<パパ>
  リミットの悩みは、サイボーグの悩みではなくて、むしろ人間そのものの悩みだ……とすれば、それはリミット自身で乗り越えるしかない  
<リミット> あら?  
<リミット>
  どうしたんですか、おじいちゃん? どこかケガでも?
<老人>
  神経痛での……それに、ちょいと買い物がすぎたようじゃ
<リミット>
  まあ……おじいちゃん、お家はどこ?
<老人>
  この山の向こうの、北沢湖じゃ
<リミット>
  ずいぶん遠いわね……どうしようかしら、いまのあたしの気分じゃ、とても、これ以上の親切なんてする気には……「親切」?
<リミット>
  あたし、送っていくわ、おじいちゃん
<老人>
  ご覧、あれがわしの家じゃ。ありがとう、おかげで助かった……本当にありがとう
<リミット>
  わあ、すてきな湖……あら、白鳥がいるわ
<老人>
  以前はもう、数えきれねえほどやってきたものじゃが、ここ2、3年、ずいぶんと減ってしもうた
<リミット>
 
やっぱり、空気や水が汚れてしまったからなのかしら
<老人>

  それもあるが……心ない人間がいての
<リミット>
  あら、白鳥が……ケガしてるわ!
<老人>
  猟銃で撃たれたんじゃよ
<老人>
  あれはこれの母鳥じゃよ……ああして、一日中ピー子を呼んでいる姿が不憫でなんねェ。早く直してやらねえと、北の国に帰れなくなるんじゃ
<リミット>
  北の国?
<老人>
  春が来るとの、シベリアへ帰るんじゃ。いまでも、一羽二羽と旅立っていっておる
<リミット>
  じゃあ、ピー子のお母さんも、まもなく……
<老人>
  ピー子は、置き去りになるかもしれん
<リミット>
  で、獣医さんは、なんて言っているの?
<老人>
  散弾銃でやられて、大事な翼の骨が折れとる……ま、母親と一緒に北の国に帰るのは、無理じゃろう
<乙女先生>
  このように、この文章は、自然の美しさ、偉大さを描いているわけです。わかりますね?
<リミット>
  そうだ、パパに頼んでみよう。パパならピー子を直せるかもしれない
<乙姫先生>
 
西山さん! いまのところ、読んでごらんなさい
<リミット>
  おじいちゃん、こんにちわ!……どうしたの?
<老人>
  急に、容体が悪うなっての、先生に来てもろたんじゃ
<リミット>
  かわいそうなピー子……
 
<神村>
  だいぶ弱っている。おそらく、きょう一日の生命でしょう
<リミット>
 手術をしても助からないんですか?
<神村>
  内臓器官がやられている……とても手術には耐えられないでしょうな
<リミット>
  パパ、急患よ。ピー子の生命が危ないわ。すぐ手術してほしいの……お願い、大至急研究所へ戻って――さ、マジックベレー、超スピードでね!
 
<パパ>
  なに、白鳥だって?
<助手A>
  先生からピー子とうかがったので、人間かと思いましたが……
<助手B>
 
輸血用の血液もありませんし、だいいち、動物の手術なんかを先生に……断わったんですが、お嬢さまがどうしてもと
<リミット>
  パパ、お願い、ピー子を助けてください
<リミット>
  パパ、あたしは、動物の生命だからって粗末にしていいとは思いません。パパなら出来るじゃありませんか
<みどり>
  西山先生……
<パパ>
  かりに手術をしても、助かるとはかぎらない……まず、五分五分だ
<パパ>
  ……しかし、リミットにとって、これは、人間として生きる自信がもてるかどうかが、かかっているんだ
<パパ>
  外で待っていなさい
<リミット>
  まあ! あれ、ピー子のお母さんじゃないの
<老人>
  どうしてこの場所が…
<リミット>
  あのお母さんの気持ちが、どうかピー子に通じてほしいわ
 
<パパ>
  ……人工肺に換える
<リミット>
  お母さん白鳥がいない! ひとりで北の国に帰っちゃったんだわ……
<パパ> おわったよ
<リミット> うまくいったの?
<パパ> あとは今夜さえ、どうにか持ちこたえてくれればね
<リミット> よかった!
<みどり>  リミットちゃん……
 
<パパ>
  ほう、食欲がでてきたね
<神村>
  もう、これからは、どんどん慣らしたほうがいいでしょう

<リミット>

  ほら、水のなかに入ってごらん、ピー子
<老人>
 
ピー子の母親だ!
 
<リミット>
  ピー子、お母さんよ! 忘れたの、ピー子? お母さんなのよぉ
<リミット>
  わあ、わかったのよ、パパ
 
<リミット>
  飛んだ……ピー子が飛んだわ!
 
<リミット>
  ピー子、また来年も来てねー! きっとよぉ!
<老人>
  先生……お嬢さんの優しい心が、ついにピー子を飛ばしたんですよ
<リミット>
  さようならー、元気でねーっ

 

 

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