|
⇒ビオトープ管理士資格受験講座へ
ビオトープ管理士試験は06年から試験の形式が大幅に変わりました。
ビオトープ管理士試験の改正に伴なう変更はこちら
試験の目的と趣旨
ビオトープ管理士制度は、「ビオトープ事業に携わる技術者の育成と質の向上を図ることにより、地域の生態系を守り取り戻すビオトープ事業の効果的な推進を図ること」が目的となっている。そこでビオトープ事業とは何かを理解しておくことが必要になるが、最近はビオトープという言葉が一種の流行となり誤解も多いので、その意味を正しく理解しておきたい。一般的には、「庭や公園の一角に土木工事をして池を作り、昆虫などを呼び寄せる」といったイメージがあるが、こういった印象は間違いではないものの、ビオトープのごく一側面のみを強調するものに過ぎず、誤解を与える原因となっている。本来のビオトープとは、「生き物のすむ空間」のことで、生態系の成り立つ環境のことであり、森林や河川、干潟、草原、砂漠にいたるまで、全てビオトープである。従って池だけの話ではないし、ましてや土木工事は生態系を整える単なる手段の一つに過ぎず中心的なことではない。良好な自然環境が存在する場所では「手を入れない」ことが原則であって、自然な生態系を保護することの方が、工事をすることよりもよほど重要なのである。つまりビオトープ管理とは「良好な生態系の維持管理」をすることであると言ってよい。言い換えるなら、ビオトープ管理士とは「自然保護」の知識や技能を証明する資格である、と考えるのが的を射た理解であると言える。
部門(施工と計画)
この試験の2つの部門に関しては、かなり誤解がある様子である。漠然としたイメージで試験を受けようとしても正確な知識は身につかないので、その内容についてはしっかりと認識しておいて頂きたい。一言で言おうとするならば、行政の政策や法律に関心がある人は計画部門、自然や生き物が好きな人は施工部門、と考えると良い。
計画部門の内容は、国土を生態系重視の環境にしていく為の抽象的な方針や法律的手続き、政策的側面を扱うものである。社会に於ける自然環境の位置づけや、行政との関連、法律、政府の政策といった内容が主になる。生態系協会が政策提言型の団体であることを反映しており、これは環境行政に関わる人の為の部門と言ってよい。
施工部門では、自然環境保全の現場での生き物とその生育・生息地、それらの管理方法の具体的知識が扱われる。生態系と動植物のマネージメントが主な内容であり、一般的なビオトープ管理のイメージに近い。生態系や動植物、自然保全の現場に関心がある人は、迷わず施工部門を受けることがお薦めである。扱われる内容は、植生や動植物の生態、生き物の判別、整備や管理の方法など、生き物と生態系の管理技術が主となっている。さてこの部門に「施工」「造園・土木」という題がつけられているが、従来園芸や土木技術に関しての出題は少なく、部門の名称と実際の出題内容があまり一致しなかった。これが平成15年より傾向に変化が生じ、土木や造園技術に関する出題が増加した。平成16年に於いても管理や技術に関する設問は数問見受けられ、この分野の出題は定着したと考えられる。また管理技術の出題が増加したことは、学習内容の難易度を上げる要因となっている。自然環境保全の現場での動植物と生態系を扱うのは「施工部門」であることに変わりはない。また若い世代の受験者で、自然環境問題の抽象論はよく知っていても、現場の動植物の知識が疎い、というケースが多いが、動植物の具体的知識を欠いていると、この部門では歯が立たない。従って対策の勉強も、具体的生き物の名前、生息する生態系の種類、判別のポイントなどを具体的に覚えていくことが大切となる。
1級と2級
一般論として言えば1級の方が2級より難しい。しかしながら、このところ2級(特に施工部門)のレベルが急速に上がってきており、特に専門科目である「造園・土木」では、2級の出題も相当高いレベルである。事実両方の級を受験した人からは、レベルの差はあまり感じられない、という声も上がっている。最大の違いはむしろ専門科目(造園・土木)に於ける形式上の違いであると言ってもよいかもしれない。これにより試験対策の勉強に若干違いが出てくる。2級では択一問題ばかりで25問となるが、設問の数が多いことが原因で、より出題が広範囲になっているとも言える。1級では専門科目でも記述式問題が含まれるので、「文章をまとめる力」をつけることが大変重要となる。さらに最後に小論文の試験まであり、文章を書く作業が午前も午後も連続する。1級では卓越した文章力の養成が必須であるといえる。
受験資格に関してだが、1級を受験するには数年間の資格に関連した実務経験が必要な為、知識とやる気があっても一級を受けられずに2級であまんじなければならないケースが多くある。実力があるのに実務経験がない人に対する対処をどうするかは今後の課題だろう。逆に実務経験があり受験資格があるというだけで1級を受けることが可能だが、全く実力がないのに1級を受けるケースも多い。現場経験の有無は、実力とは関係が薄いということは様々なケースから察せられる。1級合格で試されるのは自然保護に関する専門知識であり、造園業や土木業での経験は大きな役には立たないと考えた方が無難である。初年度は受験資格があるからというだけで1級を受けるケースが多かったが、最近はこのような無謀な受験は減ってきている。
形式
試験の全体的枠組みは大きく共通科目と専門科目の2部に分かれる。共通科目は生態学、ビオトープ論、環境関連法の3つからなる。専門分野とは施工と計画のそれぞれの分野のことで、施工部門は「造園・土木」、計画部門は「土地利用計画」という題で呼ばれる。質問形式には択一問題(全部で50題)と記述問題の2通りがある。2級は択一問題のみで記述問題はない。記述問題は全て400字以内で記述するという形式に統一されている。記述式問題ではテーマが1つに決まっていることが多いが、2〜3のトピックの中から好みのものを1つ選んで400字で書け、ということもある。
午前
選択問題が出題される。共通科目が3科目と専門科目1科目の4科目、計50題。1級と2級で同じ形式。内容が異なる部分がある可能性がある。2級では小論文(400字)も含まれる。
午後
1級のみ。記述問題(科目区分なし)が4問。小論文(1200字)。
時間的には、選択式はどの科目も余裕があると言える。共通科目では、択一問題は1問につき2〜3分もあれば十分で、一通り終わった後で全問見直しをする時間の余裕がある。記述式問題は1問につき20分ほどかかるが、問題によってはさらにかかる。こちらは時間に余り余裕はない。
尚、試験の実施は毎年9月下旬、合否の発表は1級が11月下旬、2級が12月中旬である。
記述式問題
06年より2級に記述題がなくなり、1級と2級の差は記述題のあるなしが最大の差となった。記述式問題は多くの受験者が苦手とするところであり、しっかりとした対策が必要である。400字の文章を完成させるには、文章構成をしっかり組み立てて整理しなければいけないが、大抵の人はこれができておらず、トレーニングが必要である。記述問題を苦手とする受験者層は特に2つあり、20代の若い層と、50代以上の年配の層がこの問題に弱い。若い層の受験者は、書くという作業そのものに慣れておらず、何をどう書いたらよいか、途方にくれる人が多い。字数も不足していて最小限の内容を不十分な説明でしか書けない、という傾向が強い。年配の層の受験者は、書く量は多いものの、論理性に欠け全体の整理ができていないケースが目立つ。また設問の要求に対して正面から答えずに、的が外れがちである傾向もこの年代の特徴である。この2つの年代の受験者は、記述式の問題演習をこなすことが相当必要と考えた方が良い。
合格率
ビオトープ管理士試験に合格する為には、各科目それぞれで一定の水準に達していなければならず、1科目でもその基準に満たないと他の科目の出来の良し悪しに関わらず不合格となる。全体的には手応えのある出来だと思っても、合格を逃すことがあるのは、こういったことが原因となっている。
受験者数だが、04年までは受験者数は毎年1〜3割の伸びを示していたが、04年からは伸びは止まり、毎年2000〜2500人程度で安定している。部門別では、施工部門の方が計画部門より1〜2割程度受験者数が上回っている。(07年は2級は計画部門の方が多かった)。
05年までの旧制度の下では、2級の合格率はどちらの部門も20〜25%、1級では7〜13%で、施工部門の方がやや難関という傾向であった。特に1級施工部門は5〜9%で、自然環境系の資格としては最難関であった。
06年から新制度による試験が開始された。1級に関しては、06年の合格率は7〜13%で施工の方が難解という、これまでの傾向に変化はなかったが、07年は両部門とも18%となり、1級の難易度がやや緩んだ印象がある。2級の合格率は大きく様変わりした。これまで17〜20%であったものが、06年は一気に45%に上昇した。07年は、その反動から、2級の合格率は32%と、難易度には多少の揺り戻しがあった。内訳は、2級計画が27%、施工は38%と、珍しく計画部門の合格率が低かった。07年は環境関連法が特に難しかったことが原因と見られる。
難易度
問題の問い方は明確、素直で理解しやすく、不必要に入り組んだ問題やうがった問題はない。実力がそのまま試される内容となっている。但し択一問題の中には穴埋め問題があり、これは正解の記号の組み合わせを問うものが多く、順番や記号を間違えやすいケースがあるので注意。
問題の平易さに比べると、出題範囲は非常に広く、生態系に関する様々な知識に通じていることが必要である。問題形式の平易さがこの試験の難度を誤解させているようだが、学習範囲の広さに対応するための勉強は相当な量が必要である。独学では試験範囲の全体像を捉えるのには困難をきたす。
全体的な難度は、毎年少しずつ上がってきていて、1級ではこの傾向が継続している。2級に関しては、06年の制度改正により事態が大きく変化した。初期の頃こそ独学でも通用したが、年を追うごとに難問化してきていた。ところが06年の改正で、合格率は一挙に45%にアップし、だいぶ易しくなった印象がある。但し、設問そのものがそれほど易しくなっているわけではない。06年の場合、受験者の準備レベルが高かったところへ、記述問題がなくなった分だけ、負担が楽になったことの恩恵が大きかったと推測される。
出題範囲
設問の形式が簡潔なのに比べて、出題される範囲はきわめて広い。出題傾向は少しずつ変化しているが、毎年少しずつ、より専門的な出題が増えつつある傾向にある。1級と2級では出題範囲にほぼ差はない。
出題範囲の詳細はこちら
出題傾向
出題範囲の傾向は、平成14年までは大きな変化はなかったが、平成15年に多少の変化が見られる。施工部門では、専門科目である「造園・土木」に於いては、これまで生き物関連の設問が主要な位置を占め、造園技術や土木構造物のトピックは稀にしか見られなかった。ところが平成15年問題では、園芸技術や土木構造物に関する設問がそれまでより多く出題されるようになった。また生態系の具体的状況や、ビオトープの整備方法についての設問もより目立つようになり、変化している。これまで「造園・土木」という題が内容とあまり一致していなかったのであるが、これでその内容がタイトルにより近づくことになった。平成16年でもこの傾向は続き、管理技術に関する出題は定着したと言える。また16年からは、計画部門の専門科目の出題にも、造園・土木の問題が含まれるようになり、試験全般として、ますます現場の管理技術の知識が問われるようになってきた(計画部門は施工部門に近づくことで、その部門の性格がわかりにくくなってきたともいえる)。平成20年(08年)には、海に関する問題が現れた。これまで、海岸も含め、海に関わる設問は殆んど出題されなかったのだが、この傾向が打ち破られ、海の生態系に関わる出題も範囲に入ったといえる。毎年新たな出題範囲が広がっており、対応する学習量は徐々に増加している。
参考図書
過去問題は、これまで、日本生態系協会の機関紙『エコシステム』で公表されてきたものだけで、過去問題を集めるのは困難であった。しかし2010年から、生態系協会のウェブサイトで、直近3年分の過去問題が公表されるようになった。これにより、受験者が実際の問題を目にすることができるようになり、一段と学習がしやすくなった。
過去問題集や、ビオトープ管理士資格の概要の解説書は若干出版されるようになってきているものの、受験用の参考書は一般の書店では揃えることは難しい。生態系協会ではビオトープ試験の為の参考書籍のリストを作っていて、かなりの数の参考書がリストアップされているが、試験に役に立つという意味からは、全部が参考になるわけではない。リストに推薦されているこれら書籍は、各論的な内容が多く、総論的なものが少ない。また中には易しすぎたり、翻訳が悪かったり、専門の論文の寄せ集めであったりで、残念ながら参考にならないものも多い。しかし新しい参考書が毎年出版されてきているので、この参考書不足の状態は徐々に解消されつつある。新しく出版される本ほど充実していて参考になるという傾向があるので、新しい参考書籍一覧に常に注目しておきたい。日本生態系協会が推薦する参考図書のリストの中にあるもの、またリストに載っていないもので参考になるものを含めて、試験向けとしてよくまとまっており特に参考になるものは別ページにリストアップしておく。
試験に役立つお薦め参考書はこちら
また次に挙げる著者はビオトープ関連の大御所であるので、これら著者による書籍は内容が充実している。
沼田真(生態系、生態学)
三島次郎(生態学)
亀山章(エコパーク、施工、造園)
杉山恵一(自然環境復元)
守山弘(農村環境)
鷲谷いづみ(保全生物学)
勉強方法
ビオトープ管理士試験の試験範囲は非常に広く、詳細で広い範囲の知識を身に付けるように、相当な量の勉強をすることが肝要である。選択式問題は形式的に単純なので、侮られがちであるが、見かけに反して勉強の量は大変多い。勉強方法に関しての詳細は以下のページを参考にされたい。
ビオトープ管理士試験の勉強についてはこちら
講習会など
生態系協会の主催でビオトープ管理士セミナーというものが毎年5月に2日間行われる。参考図書を執筆している著名な講師の講義を直接聞けることがセールスポイントとなっている。これ以外にでも、最近はビオトープ管理士試験対策と名うって、専門家を招いての短期間のセミナーなどが催される機会が増えてきた。これらの講習は、勉強を始める初期の段階で、学習範囲の概要を知るのに利用するには都合がよい。しかしながら、こういった短期間のセミナーで触れることができる内容は非常に限られている。この試験に合格するには、半年以上にわたる勉強を必要とする。2日や3日、専門家の話を聞いたからといって、実力を養うには程遠い、ということを念頭に置き、過剰な期待をしないようにうまく利用したい。
模擬問題
問題にはその形式の上で主によく使われるタイプは3つある。次にその3つの典型的な問題形式を使った模擬問題を挙げておく。
選択式正誤問題
生態系に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 生態系に於いて物質は、生産者、流通者、消費者の順に循環する。
2 生態系に於いて物質は、草食者、肉食者、腐敗者の順に循環する。
3 生態系に於いて物質は、生産者、一次消費者、二次消費者、分解者の順に循環する。
4 生態系に於いて物質は、生産者、一次流通者、二次流通者、消費者の順に循環する。
5 生態系に於いて物質は、生産者、草食者、肉食者、分解者の順に循環する。
選択式穴埋め問題
次の文章のA〜Eに最もよく当てはまる言葉の組み合わせはどれか選びなさい。
日本は国土の(A)%が森林であるが、そのうち(B)%以上が杉やヒノキの人工林である。これらの多くが単一樹種しか生えていない(C)であり、その生態的な(D)は乏しい。現在では自然林や自然の草地は小面積しか残っておらず、しかもそのその6割が(E)にある。
1 (A)67 (B)40 (C)単純林 (D)多様性 (E)北海道
2 (A)47 (B)20 (C)単純林 (D)多様性 (E)過疎地
3 (A)47 (B)40 (C)複層林 (D)安定性 (E)過疎地
4 (A)47 (B)20 (C)複層林 (D)安定性 (E)北海道
5 (A)67 (B)70 (C)単純林 (D)多様性 (E)過疎地
記述式問題
都市近郊に於いて、長期的にビオトープのネットワークを作り上げていく構想がある。公園、河川、民有の緑地など種類も規模も様々な自然環境を配置していく上で、国際自然保護連合が提唱している6つの原則を基礎に計画を策定していきたい。この6つの原則について、400字でその概要を論じなさい。
|