ビオトープ管理士用語集
ビオトープ
生物同士が有機的につながりを持ちながら生育・生息している空間のこと。ドイツ語「biotop」の訳語。bioは生物、topは場所を意味する。一般に、都市内の公園などに造成された小規模な自然環境空間のことを指して使われる場合が多いが、正しい用法ではない。また、池を中心とした環境だけを指すのではなく、森林、草原、さんご礁など、あらゆるタイプの生態系を含めて指す言葉である。
フィジオトープ
生物的要素を除いた無機的な自然環境だけを想定した空間単位。
エコシステム・エコトープ
エコシステムとは生態系のこと。ひとつの単位として成立する生態系の空間単位。システム・系としての側面を強調する用語。ほぼ同じ意味でエコトープという用語があるが、そちらはシステムというより空間・場所としての側面を強調する言い方である。
ビオガーデン・ビオトープガーデン
自然生態系に配慮した庭園のこと。都市公園の一角に作られる自然空間などが代表的なものだが、そのようなものを日本では「ビオトープ」と呼んでしまうことが多い。かわって日本ではビオガーデンというと、住宅の庭を生態系に配慮した作りにしたものを指すことが多い。そのような小面積の庭で、在来の植物種を中心にし、野鳥や昆虫を誘致するために、餌となる木の実や花などを意識的に多く配置するなどの工夫をして楽しむことを目的としている。ビオガーデンというより、ビオトープガーデンという言い方の方が日本ではイメージがはっきりするようである。
ミニビオトープ・ポケットビオトープ
ごく小さなサイズのビオガーデンのこと。都市の住宅のごく小さな庭や、ベランダなどに、生態系の一部としての機能を持たせ、蝶や野鳥が寄ってくるような環境に仕立て上げることを指している。
ビオトープ管理士
財団法人日本生態系協会が主催する資格。地域の自然生態系を取り戻す「ビオトープ事業」を効果的に推進するために必要な、知識、技術、評価・応用能力をもつと認定された人に与えられる。計画部門と施工部門があり、それぞれに1級と2級がある。資格試験が毎年9月に全国数ヶ所の会場で行われる。自然環境系の資格としては最も受験者数が多く、よく知られた資格で、自然環境系の知識を証明する上で、最も基本的な資格となっている。
ビオトープ管理士会
ビオトープ管理士試験に合格した有資格者が登録する会員組織。各地に支部が設立されるようになり、お互いの情報交換や、時に研修などが行われている。
ビオトープ事業
生物の生息空間を保護・保全・復元・創出すること。昆虫、魚、野鳥など小動物の生息環境を改善することを目標とすることが多い。本来、ビオトープ事業とは自然生態系を新たに造成することだけではなく、保護・保全することの方が重要であるのだが、ビオトープ事業というと、造成することばかりをイメージされることが多くなってしまっている。事業の多くは、地方自治体が計画をし、環境コンサルタント会社が具体的に計画を進め、造成が必要な場合は民間の造園業者が引き受ける。近年、都市的な土地利用が急速に進行し、身近な自然が消失していることから、各地にビオトープ整備の事業が導入されている。
ビオトープネットワーク
離れ離れになっているビオトープ同士を、コリドーなど様々な手段で結びつけること。ビオトープを、ネットワーク化して配置することで、生物の生息空間としての質の向上を図る。
コリドー (corridor)
ビオトープをネットワーク化する際に、それらをつなげる細長い自然帯のこと。帯状ビオトープ・ひも状ビオトープ、と表現することもある。日本語では生態的回廊と訳す。河川がこの役割を果たすことが多いが、並木道や高速道路の脇の緑地帯なども、コリドーとして機能する。
飛び石ビオトープ
ビオトープをネットワーク化する際に、規模の大きなビオトープ同士をつなげる役割を果たす、小規模のビオトープのこと。踏み石ビオトープ、点状ビオトープ、と呼ばれることもある。大規模公園の間にある小規模な公園や屋敷林などがこれに当たる。
エコトーン (ecotone)
2つの異なるタイプの生態系の接点となる部分。日本語では移行帯と訳す。2つの生態系のどちらの影響も受け、かつそのどちらでもない独自の性質も備えており、多様性が高い。水辺や林縁などが代表的である。
屋上ビオトープ
屋上緑化の1つの手法。屋上に単に整理した花壇を造成するだけではなく、可能な限り生態系としての機能を備えた環境を創出しようとするもの。屋上緑化はこれからの都市環境整備の大きな課題だが、建造物への荷重の負担、高い位置にあることから生じる安全性、風対策、乾燥対策などを考慮したうえで造成することに多くの技術を要する。その上さらに可能な限り生物多様性に貢献するよう設計することは、多くの工夫が求められる。
学校ビオトープ
学校の敷地を、生態系を重視してビオトープ化すること。従来の学校の敷地にあった植え込みなどは、管理や人工的な美観が優先され、単調で生態系としての機能はなかった。学校ビオトープの整備では、空いている空間を可能な限り生物多様性の向上を重視した利用に変えていく。その役割として、環境学習としての利用、地域のビオトープネットワークの一部としての機能、ビオトープ整備のモデルとしての位置づけ、などが期待されている。
学校ビオトープコンクール
日本生態系協会が主催するコンクール。学校ビオトープの先進事例を紹介し、全国にその取り組みを広めていくことを目的として行われている。1999年から隔年で実施している。主に小中学校の参加が多いが、保育園、大学、地域団体からの参加も受け付けている。
企業ビオトープ
企業がその敷地内に設置するビオトープのこと。特に工場など、広い敷地のある企業において動きが盛んである。近年、企業にとっても環境対策が重要となり、その一環として行われることが多くなった。しかし、企業内ビオトープがしっかりした理解に基づいて本当に機能するものなのか、単なるイメージアップの手段として一時の流行に終わるのか、見極める必要もある。
田んぼビオトープ
田んぼは、単にイネを栽培するだけでなく、トンボ、ホタル、メダカ、カエルなど、身近な生きものを育むビオトープといえ、日本の水辺環境の中核をなす重要な自然環境である。水田稲作の近代化により、以前はごく普通に見られた生き物が絶滅の危惧に瀕している状況の中で、ビオトープとしての田んぼの復元が注目されるようになっている。また、子供たちが親しみやすい環境でもあり、環境教育という観点からおきな役割が期待される。
農村ビオトープ
高度成長の歴史のなかで、農村の自然環境は見過ごされ、気が付けばその生物多様性は著しく劣化してしまった。その反省に立ち、農村をビオトープとして認識し、その環境を保全することが急務となっている。農村の自然環境は、日本の二次自然の中核をなし、「日本の自然そのもの」でもある。また、人間と自然の相互の働きが織りなす文化は、これからの環境管理へ多くの教材を含んでいる。新しい農業基本法では、自然環境の保全など、環境保全型農業の推進への配慮が盛り込まれたこともあり、農村の環境への関心が進み始めている。
パイオニアビオトープ
生態系の撹乱があってまだ間もない状態、生態系遷移の初期段階の状態のビオトープ。自然環境を新たに創出・造成する際には、遷移の初期段階の状態を想定したパイオニアビオトープを整備し、その後、自然の遷移を尊重した管理を行う。
水辺ビオトープ
広くは汽水域や海岸も含むが、通常は、淡水の池や沼を中心としたものを指す。池を中心としたビオトープ整備が圧倒的に多い昨今ではビオトープといえばこのタイプを指すとも言える。
自然再生
過去に損なわれた自然環境を復元、生態系の健全性を回復しようとする試みのこと。たえず変化する生態系を対象とした事業であることから、事前の十分な調査を行い、事業着手後は復元状況をモニタリングし、状況に応じた順応的対応が重要となる。各地で自然再生事業が活発になってきたことを受けて、02年に「自然再生推進法」が成立し、法的な整備がなされた。この法律では、自然の再生を、単位復元することだけに限らず、「保全、再生、創出、維持管理」までを含んだより広い概念として捉えている。
ミチゲーション (mitigation)
mitigationという英語は、「和らげること、緩和」という意味で、自然環境保全に関して使われる場合は、「開発による影響を緩和する措置」を意味する。アメリカの環境政策として広まった考え方で、 回避・最小化・修正・軽減・代償という5段階が、この順番の通り、優先順位として設定されている。
モニタリング (monitoring)
英語で「監視」という意味で、自然生態系の変化(遷移)を、監視、観察し続けること。自然の作用は予測できないことが多く、不測の事態が発生した場合に備えて、常にモニタリングをしていることが大切となる。
生物多様性 (biodiversity)
生態系の豊かさを包括的に表す概念。単に生き物の種類が多いというだけでなく、遺伝子レベル、種レベル、生態系レベル、景相レベル、と4つの階層における多様性を包括的に考慮する。
エコアップ・エコスタック
生物を意図的に増やすことを目的として設置する仕掛け(装置)のこと。和製英語なので日本でしか通用しない言葉だが、語感がわかりやすく広く使われている。エコアップの仕掛けの中でも、積み重ねるタイプのものは、特にエコスタックと呼んでいる。

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