| 編集後記・食育へのひとこと 2008.3.1 |
中学生の打ち上げに思うこと |
| Webmaster 大村直己 |
| 『日本教育』平成20年1月号(社団法人日本教育会)に掲載されたものです。 |
| ○中学生に広がる“打ち上げ” 講演などで全国に出かけることも多いが、都市部だけでなく地方でも中学生の打ち上げが広まっていることに驚かされる。文化祭が終わった、体育祭が終わった、といっては、ファミレスなどに子どもだけで集まって飲食するというのだ。 中学生の打ち上げについて巷ではどのように評価されているのだろうか。インターネット上のブログをいくつか訪ねてみた。 「中学生の娘が打ち上げといって焼肉屋に夜食べに行きたいというのですが、許すべきでしょうか」という問いかけに対し、「普通の親なら反対する」、「中学生には中学生の楽しみ方がある」、「早いですよ。うちは絶対に行かせません」、「子どもだけで? 店も追い出すんじゃないですか」等々、たくさんのコメントが寄せられていた。 一方、「そんなことをいってると高校生になったとき黙って外出されてしまいますよ」とか「マクドナルドならいいんじゃないの」とか「先生と一緒なら行かせても…」などの意見もあり、打ち上げ反対派、条件付き賛成派、今どき当たり前派と、保護者のなかにも様々なとらえ方があることが伺えた。 ○高校から中学へと低年齢化 我が家でも数年前、息子が中学生(東京の公立中)のときに打ち上げの誘いを受けたことがあった。合唱祭が終わった、ということで、子どもだけで近所のファミレスに集まって打ち上げをするのだという。 びっくりして「先生は認めているの」と尋ねると、「知らないと思う(もしかすると知ってるかもしれないけど…)」とのこと。 なるほど。公式の集まりではないが、クラスに仕掛け人がいて、クラスみなで頑張ってきたことをねぎらい合おうということらしい。他のクラスでも行われているようであったが、我が家では「少し違うのではないか」と思って、参加を認めなかった。 あとで聞くと、集まったのはだいたいクラスの半数。「ちょっとおかしいのでは…」と疑問に思いながらも、自分の子どもが仲間はずれになることを心配して許している家庭も少なくないのではないかと感じたのを覚えている。 このような話は、6歳上の娘の中学時代にはなかったことで、この数年のあいだに高校から中学へと降りてきて広がった現象のようである。 ○“享楽的で文化のない食べ方”から子どもを守る 打ち上げに集まった子どもたちはいったいどんなものを食べているのだろうか。 比較的安価なファミレスが使われることが多いようだが、千円くらい持っていって、“ドリンク飲み放題にピザ”などを食べているのであろうか。 あるいは先のブログのように焼肉屋。二千円くらいで“焼肉食べ放題にドリンク飲み放題”、大人の客がお酒を飲む傍らで飲み食いをしているのであろうか。 いやはや、子どもだけのこのような過ごし方は、食べ方の点からも、お金の持たせ方の点からも、非常に憂うべき問題をはらんでいるのではないか、と感じている。食育の観点からいうと、2つのことが大変気掛かりだ。 まず1点は“生活習慣病一直線の文化のない食べ方”であること。 実は肥満大国のアメリカではジャンクフードに偏った食べ方をしている人に病的な肥満が多い1)。アメリカでもユダヤやインド系などそれぞれの文化を大切にした食卓はそれなりのバランスを保っているが、好きなときに好きなように、という食べ方ではバランスは簡単に崩れてしまう。 鍛えられ生き残ってきた食文化にはそれぞれの民族の暮らしを守る知恵が備わっている(それなりの枠組みが出来ている)ということであろう。 もう1点は“食べ物をおもちゃにしがち”なこと。 中学生のブログをみると「ドリンクバーを全部飲み干しお店に迷惑をかけた」、「8時から1時間半、お肉もジュースもアイスクリームも食べ放題。ジュースに肉を入れたりそれをじゃんけんで負けたら飲んだりした」、「頼みすぎて黒焦げの肉がたくさん残った」などと綴られている。 “頂きます”も“ご馳走様”もない、食べ物(命あるもの)を冒涜した食べ方をこのまま野放しにしておいていいものだろうか。打ち上げは、食の知恵やマナーをしっかり身に付けてからにすべき、と考える。 モノがあふれ情報が氾濫する誘惑の多い消費社会。他国に比べ日本の子どもは結構なお金を持って自由気ままに過ごしている印象が強い。 お金の使い方にルールがある日本の家庭は少数派(30%)。アメリカ(58%)、中国(71%)の半分である2)。そんななかで打ち上げが少しずつ低年齢化し、享楽的で文化のない食べ方が子どもたちに広がっている。 学校からの情報公開や保護者のネットワークづくり、子どもだけの客は受け入れないといった外食店の対応など、学校、家庭、地域が連携して、節度ある子どもの暮らしや食を守っていかなければならない。そんな時期を迎えているのではないだろうか。 1) グレッグ・クライツァー『デブの帝国‐いかにしてアメリカは肥満大国となったのか』バジリコ 2) 『日・米・中三ヶ国の高校生を対象にした意識調査』財)日本青少年研究所2004実施 |
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