米国“ワシントン”での暮らしから(その2)
2004.9.1  
東京在住 大石 智子      
5 アメリカでの出産と子育ての様子をお知らせください。
1998年10月に、長女をワシントンで出産しました。

妊娠中はドクターのオフィスに検診に行くのですが、毎回、きちんと予約をとるので待たされることもなく、診察は個室で行われるので安心でした。夫婦同伴で検診に訪れる人も多く、夫も何度か一緒に診察室に入り、検診につきあってくれました。

出産はドクターの提携している病院で行われ、病院では平日の夕方6時ごろから出産講座なども開かれています。夫婦2人での参加者ばかりで、私も夫と一緒に参加しました。

陣痛が起き出産が近いと判断されると、ドクターから病院へ行くように指示されます。病院ではLDRの部屋に入り、陣痛から出産、産後の回復期までをその部屋で過ごします。ホテルの一室のようなくつろげる雰囲気の部屋で、トイレやシャワー、電話なども備え付けられています。

出産には立ち会わないと言っていた夫ですが、夫と一緒に病院に行き、陣痛からそのままその場所で出産になるので、夫もいつの間にか自然と立ち会っていました。

産後はしばらくして病室に移ります。トイレやシャワー、簡単なソファーベッドなども備え付けられた個室で、夫も一緒に泊まることも多いようです。早期離床が徹底しているので、私も産後30時間ほどで、ドクターの検診を受けて退院しました。

日本から母に手伝いに来てもらっていましたが、夫も産後3日は仕事を休んでくれました。頼れる人がいない場合など、一週間ほど休みを取る夫も少なくないと聞きました。

退院後は、看護婦が自宅訪問をして、子供の様子や産後のケアをする病院もあるようです。出産後黄疸が強いときなど、自宅で光線療法をする場合もあると聞きました。

産後は小児科のドクターのオフィスに子供を連れて行くことになります。生後7日から、一か月検診、予防接種、など、急病でない限りは全て次回の予約をし、予約通りにオフィスに行きました。子供のことが全て一か所で把握されているので、とても安心でした。

離乳食は、手作りするより、むしろベビーフードの方が清潔で安全、という声をよく聞きました。ベビーフードは、ほとんどビンに入ったレトルトのもので、スーパーでも沢山の種類が売られていました。

調味料などは当然無添加で、あまり美味しいものではありませんでしたが、外出時に一ビン持って行ったり、ベビーシッターさんに預けるときなど、このビンの半分くらいを食べさせてあげてとお願いしたり、便利なので私もよく利用しました。

アメリカでは、家の中や車の中に子供を一人で置いていくのは法律違反になります。ですから、買い物なども当然赤ちゃんでも連れて行かなければなりません。

ですが、広い駐車場があり、子供を乗せたまま車から外したチャイルドカーシートをショッピングカートにそのままつけられたり、大抵エレベーターやエスカレーターがあって、困ったことはなかったように思います。

また、一人で留守番させることができないためかベビーシッターを頼む人も多く、両親ともが有職者ではなくても子供を保育園に預けることができるなど、子供に縛られずに自分の時間を持つことができるようでした。
Q6 日本での出産と子育てはいかがでしょうか。
1999年7月、長女が8か月の時に帰国し、2001年3月に、長男を東京で出産しました。

帰国後は、夫の帰宅時間が非常に遅くなり、平日の夕食は家で食べなくなりました。普段は母子家庭のような状態で生活しています。

仕事に忙殺されて時間的にも精神的にも余裕がなく、子育てに参加したくてもできない夫も気の毒ですし、私自身も一人で子育ての全責任を背負い込んでいるような感じで気が重いと感じることが多々あります。

長男の出産時は、たまたま日曜の深夜だったため夫も立ち会うことができましたが、翌朝は普段どおりに出勤し、入院中、長女は実家の両親のところで生活しました。

何かの時には夫ではなく実家を頼る、というのは、個人的には違和感があるのですが、今の日本社会では、里帰り出産が多いことを考えても、それが当然という風潮なのでしょうか。

在米中は、子育てを含めて、生活を楽しめていたように思います。異国にいると頼れるのは家族だけという感じになるようには思いますが、夫と過ごす時間も長く、一緒に子育てしているという安心感がありました。

子供がいるからと我慢する必要がなく、時には子供を預けて大人の時間を持つこともできましたし、夫も時間的にも精神的にも体力的にも余裕がありました。言葉が通じないとか他にストレスがないわけではないのですが、家族が一緒に行動する機会が多く、家での食事も外食も、お呼ばれやお招きも、会社のクリスマスパーティなども夫婦もしくは家族同伴でしたし、家庭を大切にするという空気が社会の根底にあったような気がします。

今の日本では、周りの子育て世代を見回しても、平日お父さんと一緒に夕食を食べることのできる家庭はほとんどありません。

妻が仕事を持っていてさえ、家事育児の負担は妻の肩にかかることが多く、子供を保育園に預けられない専業主婦は、自分の体調が悪いときでさえ、長時間待たされる病院に乳幼児を連れて一緒に行かなくてはならないなど、時間的にも精神的にも母親一人が頑張らなくてはいけないことが多いように思います。

夫も仕事や仕事上の付き合いなどで、余裕がないように感じます。なかなか少子化が止まらないのは、夫も妻も自分の時間も持てずに疲れていて、家族で一緒に生活を楽しむゆとりがないからではないでしょうか。
Q7 最後に、日本食について、今どのような印象をもっていますか。
海外で生活しても、やはり日本食が中心の食生活になります。慣れ親しんだ味で、手に入る食材で一汁三菜を基本にすれば、栄養のバランスもそれほど問題なく作れるので、素晴らしいと思います。

シュウマイやハンバーグなど本来は日本食ではなかったようなメニューも、私はメインディッシュとして一汁三菜の中の一菜としたり、あまり難しく考えずに作っています。

ただ、きちんと作ろうと思うと、根菜類などは皮をむいたり刻んだり下処理に手間がかかりますし、調理に時間のかかることが多いのが難点でしょうか。

また、日本での食事は、1時間かけて一人で台所に立って作っても、食べるのはあっという間でお酒もなく終わってしまうようなことが多いように思います。

アメリカで、作るの15分、食べるの1時間、と言うのを聞きました。パスタを茹でて、瓶詰めのトマトソースを温めてかけて、野菜をちぎったサラダに瓶詰めのドレッシングをかける。

でもそれを、みんなでキャンドルをともしてワインを傾けて会話を楽しみながらゆっくりと食べる。

食の栄養的要素から見るとアメリカの食事は問題点大ありなのでしょうけれど、食を楽しむ雰囲気は日本が真似できるといいなと本当に思います。でもそれを実現するには、やはり夫も含めて、生活に時間的精神的余裕が必要だと痛感します。

家族で会話しながら食卓を囲むことは、子供にとって、ある意味で家族という心の風景の原点であり、食べる栄養とともに心の栄養となるとても大切なことだと思うのです。そんな時間をゆっくりたっぷり持つことができるようになるとよいと思います。
大石 智子さんの紹介
おおいしともこ

1965年、東京で生まれ育つ。日本女子大学卒業後、商品科学研究所に入社。
結婚後、オーストラリア(キャンベラ)で1年過ごした後、復職。その後再び夫の転勤に伴い、福岡県(久留米市)で1年、アメリカ合衆国(ワシントン)で3年過ごす。現在東京都在住。
家族は、夫、娘(5歳)、息子(2歳)の4人。今はどっぷり子育てを楽しんでいます。
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ご家族の仕事の関係で数年前にアメリカの首都ワシントンですごされた大石智子さんに、
アメリカでの暮らしぶりや食生活、子育ての様子についてうかがいました。
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