| 穀類食品を見直す ―これ以上ご飯を減らさない― 2002.12.1 |
| 女子栄養大学教授 五明紀春 |
| 一日に必要な食物エネルギーは、たんぱく質、脂肪、炭水化物(でんぷん)のそれぞれから1:2:5の割合でとるのが適当とされる。とすると炭水化物源である穀類食品(ご飯、パン、麺)のウェートはそうとう大きい。 従来、炭水化物は「単なるエネルギー源」として扱われ、栄養所要量も決まっていない。一日の所要エネルギーからたんぱく質と脂肪を差し引いた残りを炭水化物で埋めるというぐあいで、栄養素としての影がいまひとつ薄かった。しかし、最近になって炭水化物、つまり穀類食品を見る目が変わってきたのだ。 一つはスポーツ選手にとっての需要。運動のためにはたん白質からのエネルギーはあまり重要でない。また、脂肪も普通の運動に対しては、無尽蔵といっていい皮下脂肪で賄えるから、食物でとる必要は特にない。 炭水化物は体内で燃えるとき、脂肪に比べて酸素必要量が格段に少なく、それだけ呼吸への負担が軽い。しかも激しい運動ほど炭水化物が脂肪より優先して燃えるため、最も有利なエネルギー源となる。しかしながら炭水化物の体内ストックは脂肪の百分の一程度。だから炭水化物の補給はスポーツ選手にとって切実なのだ。 もう一つ。炭水化物には体内で脂肪を燃えやすくする働きがある。脂肪の体内燃焼をスムーズに進めるために、炭水化物の摂取量は本当はどのくらいが適当なのか。炭水化物の栄養素としての積極的役割をはっきりさせる必要がある。欧米型食事の欠陥は動物性食品による脂肪のとりすぎにあるとされるが、裏返すと炭水化物が少なすぎるための欠陥とみなすこともできる。「穀類をもっと食べよう」はアメリカの食事改善運動のスローガンになっている。 どの国でも所得が高くなると、穀類食の比率が下がってくる。日本でも米の消費量は減って、炭水化物の比率が下がってきている。しかし、まだかろうじて適性範囲にある。当面の食事目標は「これ以上ご飯を減らさないこと」といえそうだ。 |
| *このシリーズは五明紀春先生のご了解をいただき『おからはどこへ行った?―現代人の 食物栄養学68話』(女子栄養大学出版部)から一部を編集して掲載しています。 |
| 五明 紀春 教授のプロフィール |
| ごみょう としはる 1942年生まれ。長野県出身。東京大学大学院農芸化学専攻修了(農学博士)。 現在、女子栄養大学教授。専門分野は食物栄養学。 主な著書に 『アプローチ生体成分』(共著、技報堂出版)、『いも』(共著、女子栄養大学出版部)、『食品加工学』(共著、学文社)、『食品の成分間反応』((共著、講談社)、『食の解釈学―我食べるゆえに我あり』(アドア出版)、『<食>の記号学―ヒトは「言葉」で食べる』(大修館書店)、『おからはどこへ行った?―現代人の食物栄養学68話』(女子栄養大学出版部)など多数。 女子栄養大学のホームページはこちらへ。 |
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| 以前「食の文法」についてお話をおうかがいした女子栄養大学の五明紀春先生に、先月に引き続き 数回シリーズでお話をうかがいます。今月は穀類食品の役割と見直しについて五明先生のお考えを紹介します。 |