SPECIAL
昨年11月フェリス女学院大学のフェリスフェスティバルで開催された「消費者であるために」という講演会(*)
〜企業と対立する消費者から対等な消費者へ〜という春木良且先生のお話をうかがい大変感銘を受けました。
数回シリーズで春木先生のこれからの時代の消費者についてのお考えを紹介します。

*主催は“消費者について考える会”
『社会運動としての消費者運動を考える』
〜技術と消費者との関わりについて〜
        その6-消費者政策の概要   2004.7.15
フェリス女学院大学国際交流学部国際交流学科助教授 春木 良且
消費者の知識と意識はどのように扱われているのか、ここでは特に政策的な観点から見てみることにする。

各国の消費者行政に大きな影響を与えたのは、1962年3月15日のケネディ米国大統領の「消費者の利益保護に関する大統領教書」であるといわれている。

1961年1月20日に、ケネディは「国家に何をして欲しいかではなく、あなたが国家に対して何ができるかを考えよ」で知られる大統領就任演説をしているが、その1年余り後の議会演説でそれが明らかにされた。

このケネディ教書は、端的に言えば、いわゆる「消費者主権」とそのための原則が明らかにされている。そこに言う原則とは「安全が守られる権利」「選択の権利」「知る権利」「知らされる権利」であり、後年になって、「不満の声が記録される権利」(1969年 ニクソン大統領)、「消費者教育を受ける権利」(1975年 フォード大統領)が追加された。

例えば「安全が守られる権利」は、PL法として実現され、他にも様々な形で現在の消費者に関わってきている。米国経済が現在の隆盛に至った原点がこのケネディによる「消費者主権宣言」であったという意見もある[12]。

世界的な動きとしては、1960年(昭和35年)にアメリカ消費者同盟、イギリス消費者協会、オランダ消費者協会、ベルギー消費者協会、オーストラリア消費者協会の5団体を理事として、IOCU(国際消費者機構・International Organization of Consumers Unions)が、非営利、非政府系の消費者団体の国際連絡組織として創設されている。

IOCUは1995 年1月よりCI(Consumers International)と名称変更し現在でも活動が継続している。加盟団体数は、2000年3月現在、110か国245団体に及んでおり、我が国においても7団体が加盟している[13]。

IOCUでは消費者の権利と責任を、次のように定めている。消費者の権利として、「基本的ニーズが保障される権利」、「安全が保証される権利」、「情報=説明が与えられる権利( The Right to be Informed )」、「選択=自己決定する権利」、「意見が聞き届けられる権利」、「救済=補償を受ける権利」「消費者教育を受ける権利」、「健全な環境で生きる権利」の8項目がある。

また消費者の責任として、「批判的意識をもつ責任」、「参加して行動する責任」、「社会に配慮する責任」、「環境に配慮する責任」、「団結=連帯する責任」の5項目があがっている[13]。

ここで注意したいのは、これらは消費者の権利宣言という形式を取っているが、実は経済政策的な意味があるという点である。

現代の社会は産業に対して資本が投資され、さらに産業がその資本を生み出すという経済の仕組みを持っている。それを産業資本主義と呼ぶが、その原動力になっているものは、技術革新である。

産業資本主義経済においては、技術革新が新しい製品を生み、その製品が新しく資本を生むという連鎖が無限に継続して行かねばならない。産業資本主義の最大の特徴は、市場競争を原則とした「技術革新」の無限の継続にある。

市場競争が円滑に機能するためには、端的に言えば「優れた製品」が「売れる製品」となって行かねばならない。そうした経済活動を円滑にするために、こうした消費者の保護や教育等の消費者政策が必要であるといった観点から、これらの宣言がなされていると見ることができる。

すなわち消費者政策は、企業を含めた経済政策でもあったわけであり、前述のケネディの一般教書が以降のアメリカの産業の隆盛の源にあるという見方も納得できる。そしてそこに、現代の企業、消費者の多層性を見ることもできる。

このように、消費者に関しては欧米を中心に、様々な施策が行われており、日本でも消費者教育が始まっている。それらについて個々に取り上げて考察する余裕は無いが、特に日本の消費者行政、特に教育においては、企業と消費者という非対称性を単なる強者と弱者の対立として捉えているように思われる点が多々ある。

参考文献
[12] 築地達郎,政治家と政府は「消費者主権宣言」を,「電子商取引が切り開くネットワーク経済」,世界情報通信サミット1999,http://www.nikkei.co.jp/summit/99summit/index.html
[13] http://www.consumersinternational.org/
2004年9月に続きます。
春木 良且助教授のプロフィール
はるき よしかつ

1956年11月生まれ。フェリス女学院大学国際交流学部助教授。
東京大学工学系研究科博士課程先端学際工学専攻 単位取得期間満了退学。
民間企業でソフトウェア開発、コンサルティング、教育などに携わった後、現職。
主な著書に『情報って何だろう』岩波ジュニア新書,『見えないメッセージ〜情報と人間の関係をさぐる〜』フェリス女学院大学など。
最近卒業生達とバンドを結成し、学園祭でデビューしました。(haruki@ferris.ac.jp)
Special  トップへ
menu
Top-page
サイトの趣旨
食の専門家から
環境と食育
農林漁業と食
教育の現場から
家庭・地域から
スポーツの目から
食育の視点と
総合学習
心の視点から
ほねぶとメニュー
海外の食・子育て
若き研究者から
Special
編集後記
食育へのひとこと
FAQ
Webmaster
プロフィール
ほねぶとネット
サポーター紹介
リンク
気まぐれ Diary
  トップページへもどる Please comment to : naora@nifty.com
Copyright(C) ほねぶとネット All right reserved.