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我が国の食料自給率は40%と主要国の中でも大変低い数字となっています。
フードマイレージ(食料の輸入量×輸送距離)という尺度でみると、逆に、世界一の高い数字となります。
食育を考えるうえでも、これらの数字の意味をしっかりと捉えておく必要があるのではないでしょうか。
今月でシリーズ最終回、フードマイレージの研究に携わってこられた農林水産省の中田哲也氏のお考えを紹介します。

“フード・マイレージ”から私たちの食を考える
  その3-フード・マイレージと地球環境問題  2004.12.1
農林水産省関東農政局消費・安全部消費生活課長 中田哲也
 (前 農林水産政策研究所政策研究調整官)

現在、地球温暖化問題への対応が焦眉の急となっているが、わが国の食料供給のあり方を地球環境問題と結びつけて考えることは、これまでほとんど行われてこなかった。

わが国が行っているような大量の食料輸入は、輸出国の土地・水等の資源に大きな負荷を与えているだけではなく、長距離輸送の過程で大量の二酸化炭素(CO2)を発生させている。

わが国が輸入している食料が輸送される過程で排出されるCO2の量を、フード・マイレージに船舶のCO2排出係数(1tの荷物を1km運ぶのに排出するCO2の量)を掛け合わせる等により試算したところ、約17百万tとなった。

比較のため国内における食料輸送(輸入品の国内輸送分を含む。)に伴うCO2排出量を試算すると約9百万tとなった。

すなわち、
わが国の輸入食料の国際輸送の過程で排出されるCO2の量は、国内における食料輸送に伴う排出量の倍近い水準に相当するのである。

もとより実際のCO2排出量は船舶等の大きさ、速度、積載率等により大きく異なるため、本試算は概ねの傾向を把握できたに過ぎないが、本試算の前提が輸入食料の全てを環境負荷の小さな船舶により輸送していると仮定していること等を考え合わせると、わが国が行っている大量かつ長距離の食料輸入は、その輸送の過程で地球環境に対し相当程度の負荷を与えている事実が伺えるのである。

以上、筆者が農林水産政策研究所在籍中に携わった研究の概要について紹介してきたが、この研究は問題点を指摘したに留まっている。解決策は現在も模索中であるが、近年、各地で盛んとなっている
「地産地消」の取組みは、一つの方向を示していると考えられる。

現在筆者は、学校給食のフード・マイレージと地産地消の取組みの効果について、埼玉県下のある中学校の協力を得て事例的な計測を行っている。

いずれ成果がまとまれば公表したいと考えているが、現時点までで、
地場産品を積極的に導入している米と野菜のフード・マイレージについては、仮に通常の市場流通に委ねて調達した場合と比べ、約4分の1の水準にまで削減されていることが明らかとなった。

その分、CO2の排出抑制につながっていると言うことであり、
地球環境問題といった大きな課題に対し、このような身近な取組みを積み重ねていくことは大きな意義を有すると考える。

さて、現在、WTO等の場において国際交渉が進められるとともに、国内では来春に向けて国の食料政策の指針である「食料・農業・農村基本計画」の見直し作業が進められている。審議会における議論の内容等は農林水産省のホームページで読むことができるほか、広くパブリックコメントも受付中である(http://www.maff.go.jp/keikaku/index.html)。

また、国会には「食育基本法案」が提出されている。食育とは、国民一人ひとりが自ら食について考え判断する能力を養成することを目的とするものであり、国際交渉や国の政策というレベルだけではなく、私たち自身の課題としても、自らの食のあり方について考え実践していくことの重要性が共通認識となりつつある。

「フード・マイレージ」という指標は、私たちに最も身近な食について、地球環境問題という人類的な課題と結びつけて考える際のヒントになるのではないかと考える。様々な場における食育の材料としても活用頂ければ幸いである。

最後に、本稿における意見等に関わる部分については筆者の個人的な見解であることをお断りするとともに、このような意見を発表する場を提供頂いたWebmastar・大村直己さんに感謝申し上げます。

注:詳細及びグラフ等については、以下を参照されたい。
 「食料の総輸入量・距離(フード・マイレージ)とその環境に及ぼす負荷に関する考察」
 (農林水産政策研究所『農林水産政策研究』No.5、2003.12)
 (http://www.primaff.affrc.go.jp/seika/kankou/seisaku/5/seisakukenkyu2003-5-2.pdf
中田 哲也のプロフィール
なかた てつや

1960年徳島県生まれ。82年岡山大学農学部卒業後、農林水産省に入省。大臣官房調査課、生産局食肉鶏卵課等を経て、2001年から農林水産政策研究所において「フード・マイレージ」に関する研究等に従事。2003年7月から関東農政局消費生活課長(現職)として「食育」等を担当。
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