| SPECIAL |
| フランス料理やフランスの地方食文化の振興に長年携わってこられた フランス料理文化センター大沢晴美事務局長に、「フランスの食育とその成果」についてうかがいました。 |
| フランスの食育の成果について |
| 2005.7.15 |
| フランス料理文化センター事務局長 大沢晴美 |
| 文責:株式会社水産タイムズ社 橋本武寿(2005.3.15 取材) |
| この10年ぐらいでフランスの食のトレンドも変わってきました。有機栽培の食品(BIO)を支持する人が増え、マルシェ(市場)でもスーパーでも売られているのが普通の光景になっています。 食育を受けた第一世代が今30歳ぐらいとなり、BIOの消費をリードする層になってきています。これは「量より質」の大切さを学童期に学び、本物が分かるようになった食育の成果のひとつといえるでしょう。もちろん狂牛病などの教訓も大きく影響していると思います。 朝食欠食や肥満児の問題が日本のように、フランスで取り上げられることは、あまりありません。学校給食は「カンティン」という名称で近年普及しました。 これは、働く母親が一般的になったという社会変化によるところが大きくあります。カンティンは便宜的なもので、食育の重点は家庭でいうことがフランスの場合は言えます。その家庭を取り巻く食環境が変化していることから、国ベースで味覚週間を毎年設け、学校という場で子供の味覚教育を実施しています。 フランスの食育を「料理教室」のように誤解している日本人がいますが、決してそうではありません。 例えば、昔ながらのチーズと工場生産の殺菌乳チーズを食べ比べさせ、それぞれどんな味がするか子供に自分の言葉で表現させる。チーズの原料となった乳、牛の種類、飼料の内容、製造工程について教える。あるいはパンについて、割ったときのカリッとした音、匂いも意識させる。食べるということは口の中だけでなく、耳も鼻も使うことだということを教育する。 必要に応じてシェフが学校に赴く。三ツ星レストランといった何万円もする最高級の店を子供に開放し食事を提供する。移民の比率が高い学校、貧しい学校にこそ食育に赴かなければとの使命さえあるようです。 こうした取り組みがフランスの食育です。日本より20年は先行しています。私の知りあいの三ツ星シェフは、2年生から5年生ぐらいになるまで数年間、自分のクラスをもって継続的に「自分の生徒」と交流しています。 子供は本来、鋭い感覚を持っているので、逆に子供に学ぶものもあるという話です。そういう人もいます。シェフ達がこれだけ子供達の食育に取り組んでいるのは未来の客になるからです。舌を鍛えるチャンスをあげなければ料理のよさを評価できないわけです。 昔の野菜に再び脚光をあてるシェフ なぜ食育を行うのか。フランス料理、ひいてはフランスの食文化を守っていくことになる、というのが活動に関わる人達の共通認識です。 従来見向きもしなかった昔の野菜を、有名シェフが料理に使う動きも目立っています。有名シェフがアピールすることで昔の野菜の価値が高まり、国内外からの需要が高まるというようなこともあります。 食育は突然始まったわけではありません。フランスは第二次世界大戦の戦勝国ですが、敗戦国に劣らず国土がひどく傷めつけられました。 その結果、フランス国内の農業は衰退し、自給率が極端に低下。食べるものもないような状況となり、米国から多大な援助を受けざるをえませんでした。米国からブロイラーやトオモロコシなどが大量に輸入されるようになり、また、復興を成し遂げた60年代後半〜70年代には大規模農業が盛んになりました。 ファーストフードが流入してきたのも、70年代の高度成長期です。こうしたトレンドにより、戦前まで栽培が盛んだった、たとえば白インゲン豆、レンズ豆、日本でいうキクイモなど、小規模ながら多様だった品種が大規模栽培品に駆逐され、あるいはリゾート開発などによって途絶えるような事態になったのです。 「これではいけない」という揺り戻しの動きがでてきたのは70年代半ば以降。農家の若手が事態を改善しようと立ち上がったのです。彼らは組合などを組織し、「土壌が大事、場所にこだわりましょう」という考えを反映した原産地呼称認定制度(AOC)を農産物にまで発展させる活動を始めました 。その延長線上で、子供の食育といった取り組みが80年代の半ばぐらいから始まったのだと、私は思います。こうした食品の「生まれ」と「育ち」をキチンと把握し、消費者に認知させるという活動は、大きな意味での「食育」であろうと思います。 |
| 大沢 晴美氏のプロフィール |
| おおさわ はるみ 南仏モンペリエ留学中にフランス料理とワインに出会い、「ミシュランガイド」が座右の書となる。帰国後、ファッション業界をへてフランス料理留学やフランス有名シェフの料理イヴェントなどをコーディネート。1990年フランス料理文化センター開設時より事務局長。フランス料理とサーヴィスのプロ養成教育システムの普及とフランス地方食文化の振興につとめる一方、1994年からサーヴィスの社会的認知を高めるために、初のサーヴィスコンクールを主催。 フランス料理文化センターから「グルメのためのツール・ド・フランス」、「現代フランス料理のエスプリ」を出版。2001年、フランス農事功労賞シュパリエを受賞。フランス農事功労賞受賞者協会事務局長。 フランス料理文化センターのホームページはこちらへ。 |
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