SPECIAL
都市部、農村部に関わらず、子どもの肥満が増えています。多くの人がその重要さに気付きながらも、
実際に実行できる手が打たれないまま、時が流れてしまうことが多いようです。
今月から3回に分けて、家族が実行できることを基本理念として幼児・学童の肥満の治療に携わってこられた
埼玉県小児医療センターの山口修一先生(現在はやまぐち小児科院長)、望月弘先生のお話を紹介します。
子どもの肥満
       その1−肥満の怖さと子どもにとって困ること   2006.4.1
      元埼玉県立小児医療センター保健発達部長
                   現やまぐち小児科院長 山口修一

      埼玉県立小児医療センター代謝内分泌科 科長 望月弘
Q1 子どもの肥満が増えています。どのような状況でしょうか?

厚生労働省の国民栄養調査によると、子どもの肥満(標準体重の20%以上)は年々、増加傾向にあります。

中でも小学生の9〜11歳が顕著で、男児の肥満割合は昭和51〜55年(平均)の8.4%から、20年後の平成8〜12年には15.0%へと大幅に増加しています。

女児は思春期の12〜14歳で鈍化傾向にありますが、9〜11歳では7.5%から12.2%に増えています。(望月)

Q2 その原因は何でしょうか?

原因はいろいろ考えられますが、大きくは食生活の欧米化や運動不足、ストレスなどがあげられます。

実は大人の肥満の増加も顕著です。あるデータでは、20年前に比べて、各年齢で肥満の人が1.5倍に増え、中でも30〜60代の男性は3人に1人が肥満です。

小児肥満の患者さんの中には、お母さん、またはご両親ともに太っている方も多く、家庭での食生活が、大人だけでなく、子どもにも確実に影響していると感じています。(望月)

Q3 肥満はなぜ怖いのですか?

太ることで病気を誘発する(病気を併発した場合を肥満症という)可能性が高くなります。例えば高脂血症、脂肪肝、糖尿病、高血圧など。

小児肥満でも、こういう病気にかかっている子どもは年々増えています。7歳以下から肥満の場合は、成人肥満になる確率は40%、肥満とわかったときにすぐ対策をとらなければ、さまざまな病気にかかるリスクが高くなるのです。

日本人は肥満に弱い体質です。欧米人に比べて倹約遺伝子が多く、エネルギーをためこみやすく消費しにくい上、インスリン(ブドウ糖をエネルギーに換えたり貯蔵するホルモン)の分泌能力も欧米人の半分ほどしかありません。

そのため、日本人は太ってくるとインスリンが効きにくくなり、血糖値が上がりやすくなります。アメリカ人より日本人のほうが、人口比でも2倍も糖尿病患者が多いのもそのためです。

肥満の治療では、子どもへの動機づけがたいへん難しいのですが、太っていることが、将来の健康にどう影響するかを、大人がていねいに根気強く伝えていくしかないと思います。そして、親は決して子どもを責め立てるのではなく、「一緒に頑張ろうね」という姿勢が大事です。(望月)
 
Q4 こどもの側からみて、太って困ることは何でしょうか?

親たちは、はじめから、成人病を困ることとしてとらえていますが、学童期の子どもたちは、成人病なるものを知らないわけです。彼らにとって困ることは、むしろ、格好のよい服が着られない、太っていると目立つ、スポーツができないなど、体型が気になったり、みんなと一緒に運動できないことなのです。

子どもの困ること、親が心配すること、それぞれに異なるのは当然ですが、子どもの悩みについて、保護者だけでなく、子どもの健康に関わる専門職の人々も耳を貸すべきだと思います。

太った子が悩んでいるのは、今の自分の体型が嫌なこと、運動能力が劣っていること。それが自信のなさにつながったり、いじめの対象となったり、そのことがきっかけで不登校へと進む例もあります。

単に食べ過ぎや運動不足が原因で、不登校になり、友だちもできずに寂しい思春期に向かうのは避けたいものだと思います。(山口)

Q5 肥満児の治療のむずかしさはどんな点でしょうか?

まず、家族にとって病識が乏しいこと。血液、尿、血圧などの検査で異常がなければそのままにしてしまう親が少なくありません。

次に、外来通院が続かないこと。短期で改善しないと来院しなくなるケースが多く、夏休みに入院させてほしいと安易に考える家族もあります。

最後に、医療費が安いこと。これは医師のわがままかもしれませんが、診療に会話が多く時間がかかる割に医療収入が少ないので、肥満児外来を続けることはむずかしいと考える医師が少なくないのでは…と感じます。(山口)
2006年5月に続きます。

参考文献:山口修一「こどもの肥満対策」小児科診療・第63巻・6号:837-843,2000
山口修一先生、望月弘先生の紹介
やまぐち しゅういち

東京慈恵会医科大学小児科に10年間、その後、埼玉県立小児医療センターに開設準備から20年間勤務。同センター保健発達部長を経て、2002年10月、調布市に「やまぐち小児科」を開設。

山口先生のメッセージ〜会話、それは字のまま、会って話すことです。(中略)小さなクリニックです。でも、僕なりにできるだけ、お母さん、お父さん、おばあちゃん、おじいちゃん、子どもさんで悩んでおられる方と、より良い子育てに役立つよう、力いっぱいお話してまいります〜やまぐち小児科ホームページより

やまぐち小児科ホームページはこちらへ。

もちづき ひろし

1981年 東京慈恵会医科大学卒。同大学にて研修し、関連病院を経て、1993年より埼玉県立小児医療センターに勤務。現在に至る。
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