SPECIAL
子育てに不安を感じたり、イライラしたり、諸外国に比べ日本では子育てを楽しめない若いお母さんが多いようです。
育児情報の氾濫が、そのことに輪をかけているようです。子どもの育て方に、いつの時代も常に同じ確固たるものはない。
大人となった自分が、もう一度、子どもになってみる。それによって子育てをおおらかに楽しむ余裕が生まれるのでは
ないだろうか―。長年小児科医として子どもや母親と接して来られた、山口修一先生のお話を紹介します。
もう一度 自分も子どもになってみよう
       その4−文明病と Sedentary life     2007.3.1
やまぐち小児科院長
元埼玉県立小児医療センター保健発達部長 山口修一
埼玉小児医療センター医学誌 別冊 vol.21 No.1 2004(20周年記念講演)より
IT革命といわれます。そこに見え隠れするものは人間離れ、自然離れです。家畜のような子どもたちともいわれます。幼児期の刷り込みも大切です。自動販売機、スーパーのレジでは会話が不要となりました。

文明が進むということは、技術が高度になる、エネルギーが必要、スピードがもとめられる、映像の要素がありその結果会話がへり、時間に支配され、私的空間の快感が増すのです。

それはテレビ、電子ゲーム、インターネット、携帯電話、コンビニエンスストア、通信販売などが原因でもあり結果でもあることから容易にうなずけます。

文明病という概念があります。文明が進むことにより、得るものと失うものがあります。成人病、小児成人病、そして生活習慣病と名前は変わってきましたが、根底にあるものは文明に甘んじて引き起こされた結果の事柄です。

リモコンを持ってテレビやビデオのオン・オフ、エアコンもリモコン、そして回転椅子に坐る、オットマンに足を乗せてと、身体はほとんど動かさない。この状態を Sedentary life と称し(私は「両肘のついた回転椅子に坐った静かな楽な生活」と訳しています)、西欧諸国での論文には多くの記載があります。

テレビ・ビデオ育児症候群という概念があります。幼児期に長時間テレビやビデオを見ることにより言葉の遅れ、感情表現や共感が乏しくなるなどの結果となります。

子どもから本来のヒトという動物性の遊びを奪った結果がこのような症候群になるのでしょう。メディアとの関わり方、使い方に一考をとの警告と思えます。

3歳の児が言葉が出ないと受診されました。その児の姉が、外来に一緒についてきて、「家って静かなのよね」と言いました。姉がビデオを見終えて電源を切ったらしーんとしていた、と言うのです。

お父さんは新聞を読んで、お母さんは台所で、その言葉のない男児は、一人で部屋の隅でおもちゃで遊んでいた。

テレビやビデオだけでなく、家族での会話が減っていたことが原因でした。家族内での会話を増やす指導をしてから、その児は、話せるようになりました。

空港に爆弾を仕掛けたと電話でおどしたために、ドイツのDusseldorf空港は64,000人が避難しました(2003年)。電話一本でこの騒ぎです。どうしたのでしょう。小さな誰でも持てる器械で、恐ろしい事件を引き起こせるという状況を、文明の利器として開発した人たちは予想できたでしょうか。楽しい生活をどのように自分たちは維持できるのでしょうか。
2007.5月に続きます。
このシリーズは山口修一先生のご了解を頂き掲載しています。
山口修一先生の紹介
やまぐち しゅういち

東京慈恵会医科大学小児科に10年間、その後、埼玉県立小児医療センターに開設準備から20年間勤務。同センター保健発達部長を経て、2002年10月、調布市に「やまぐち小児科」を開設。

山口先生のメッセージ〜会話、それは字のまま、会って話すことです。(中略)小さなクリニックです。でも、僕なりにできるだけ、お母さん、お父さん、おばあちゃん、おじいちゃん、子どもさんで悩んでおられる方と、より良い子育てに役立つよう、力いっぱいお話してまいります〜やまぐち小児科ホームページより

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