SPECIAL
最近の農産物等価格の上昇は一過性ではなく構造的なもの・・・実効ある食料自給率向上対策が求められる中、
普段の食品の買物はもっぱら女性が担っているのが実態で、男性は自給率向上を叫んではみても、
結局のところは女性任せ、ということになりがち。ところが男性も、酒を飲む際には緑提灯の店を優先する
ことでその向上に具体的に貢献できる―そんな興味深いお話を紹介しましょう。
それぞれの食料自給率向上対策
2007.11.1
農林中金総合研究所特別理事 蔦谷栄一
『農林経済』時事通信社2007.3.26掲載記事より
先日、つくばでの会議があって、会場に比較的近いビジネスホテルに泊まったが、そこでの朝食がご飯と味噌汁に、納豆と生卵、海苔、それに塩鮭の切り身であった。

衛生管理が厳しくなってホテルや旅館で生卵が出されることはめったになくなってしまっただけに、久しぶりの生卵に大いに感激させられたのである。

仕事柄、地方出張も多いが、その折の楽しみの一つが朝食であり、どのような朝食が出てくるか興味津々である。私が観察する限りでは総じてバイキング方式の場合にはパン食にする人が多く、定食方式の場合には和食を選択する人が多いように感じられる。

全国にチェーン展開しているWホテルでは、朝食はすべて定食方式のようであるが、岡山の場合、県産米コシヒカリの和定食、アメリカンブレックファスト、玄米粥の3種類から選ぶことができるようになっている。

若い人は半々の割合であるが、全体では6割から7割が和定食を注文していた。そして和定食では塩鮭かさばのいずれかを選べるようになっているが、これは圧倒的割合で塩鮭であった。

また米子の同じWホテルでは、和定食は宍道湖でとれたシジミの味噌汁に板わかめとあごちくわが出され、ここではほとんどの客が和定食を注文していたのである。

こうした場面にたびたび遭遇して感じるのは、やっぱり日本人は和食が好きであり、特に地場産の一品が1つでも2つでもついていればそれこそほとんどの人は和食を選択する、ということである。

にもかかわらず家庭ではパン食が多いという現実は、朝の食事に手間をかけることをいとわないかどうかが大きなポイントになるように感じるのである。

ところで、中国での食肉需要の増大、アメリカでのエタノール原料としてのトウモロコシ需要の急増、オーストラリアの干ばつによる不作から、穀物需給が逼迫している。一過性ではなく構造的な変化と受け止めるべきであり、いよいよ本気の食料自給率向上への取組が求められる情勢になってきたように思う。

大所高所でのマクロ的な取組も重要であるが、国民一人ひとりが自分なりにできることに取り組んでいくことがきわめて大切である。ちょっとした手間をいとわないことに加えて、“自らの食料自給率向上対策”を展開していくための知恵が求められる。

ここで中央農業総合研究センターの丸山所長等の取組を紹介しておこう。丸山所長等はNPO法人グリーンテクノバンクを発足させ、カロリーベースでの食料自給率が50%を超える店に緑提灯を贈呈する運動を展開している。

緑提灯は50%を超えたら星1つ、10%刻みに星が増え、90%超が星5つとなる。2年前に小樽で“1号店”が登場して以来、徐々に緑提灯の数は増加している。自らの資金で緑提灯を調達、とりあえず百個配布を目標にしている。

その心意気とパフォーマンスやよし。これに大いに続こうではないか。
蔦谷栄一氏の紹介
つたや えいいち

1948年、宮城県出身。71年、農林中央金庫勤務。熊本支店長、農業部副部長を経て、96年7月、(株)農林中金総合研究所へ。基礎研究部長、常務取締役、05年6月より特別理事。主な著書に「日本農業のグランドデザイン」(農文協)ほか。早稲田大学非常勤講師。
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