SPECIAL
『感動の経営―想いを贈る企業をめざして』(原邦生著)は企業における「経営」と「教育」の書ですが、かつて、
教師になりたい…という夢をもっていた原邦生氏のメッセージには、子どもの教育にも通ずる素敵なエッセンスがいっぱいです。
              今月はその中から「感性を磨く教育」についてのメッセージを紹介します。
    2001.7.1
感性を磨く「ゆとり」と「指導力」
(株)メリーチョコレートカムパニー代表取締役社長
原 邦生
 何年も前のことになるが、ある北国の小学校で理科のテストを行った時のこと。「氷がとけると、何になりますか」という問題に、ほとんどの生徒は「水になる」と答えたが、一人だけ「春になる」と答えた生徒がいたという。教科書どおりなら当然「水になる」という答が正解であるが、はたしてそれでいいのだろうか、という話が新聞に掲載された。

 子供らしい奔放な発想が人々の胸を打ち、記事を読んだ読者から多くの投書が寄せられ、投書欄で特集が組まれたりしたので、記憶している方も多いと思う。

 あれから何年かの時が流れ、改めて考えてみると、国語のテストであれば「氷がとけて春になる」という情緒的な発想は貴重であり、「水になる」という常識的な解答よりむしろ高く評価されることがあっても、理科という論理に重きを置く科目では正解にしにくかったのは、やむを得ないのではないかと思われる。まして、これを材料に教育の形骸化を批判した一部の論評は、感情的であり過ぎたのではなかろうか。

 今日のように情報のあふれる時代には、何ごとによらず一時の感情にとらわれることなく、ひと呼吸おいて考え、意見をまとめる「ゆとり」がたいせつであろう。

 成功したリーダーには、次の5つの資質が備わっていると言われる。

(1)ハングリー精神
(2)大局を見失うことのない確かな観察力
(3)信念と旺盛な使命感
(4)失敗を恐れないチャレンジ精神
(5)敏速な決断と変化への柔軟な対応力

 5つの資質のどれをとっても、個性を無視した押しつけ教育や、子供におもねるような生ぬるい環境から育つものでは決してないことは、誰の目にも明らかであろう。

 ある大学教授は、「80年代以降、学生の『生徒化』が急速に進んで、卒論のテーマも就職先も、自分では決められない。大人扱いすると逃げ、責任を取りたがらない」と、最近の学生を評している。最近は大学生ばかりでなく、企業の中にまで幼児化と責任回避の傾向が広がり始めているのではなかろうか。

 企業においては、知能よりも気構え、「才覚」よりも「器量」を評価するシステムの確立と、部下それぞれの「感性」を引き出して磨いてやれるリーダーを育てることこそ急務であろう。

1997年8月3日
秘書記――

 (中略)
 それでも新しい季節の到来、とくに暗く寒い冬からすべてが輝いて見える春への変化には、心躍らされるものがあります。
 「氷がとけると何になりますか?」という理科のテストで、「春になる」と答えた生徒の話は有名ですが、このような素直な発想は、人間にとってはとても大切な感性のように思います。

 最近では偏差値を重視した教育の見直しが図られ、個性を尊重した教育へとシフトしつつあるようですが、これは企業の採用活動においても同様で、出身校や成績ばかりを見るのではなく、学生そのものを見つめようという方向に進んできています。

 メリーにおいても、「企業は人なり」という考えのもと、個性豊かな人材を求め、筆記試験と面接だけのありきたりな採用方法を廃止しました。
 ここ数年は、出身校名はいっさい伏せて、いろいろと趣向をこらした面接を何段階にも分けて実施し、学生のものの考え方や感性を重視した採用を行なうようになっています。

 その採用試験の1つに、通称「感性テスト」と呼んでいる項目があります。これは社長も含めた最終面接の際に、参考程度に行っているもので、決して学生を振り落とす目的のものではありません。
 スクリーンに映し出された写真や絵を見て、その人が何を感じたか、その人が何を思ったかを率直に述べてもらったり、ストーリーを考えてもらったりするだけです。

 たとえば子猫が二匹ならんで街角を歩いている写真があります。ただ猫が歩いている、としか感じない人もいれば、首輪もない野良猫が、餌を求めてさまよっていると見る人、一匹の猫の鋭い眼光から、この猫の方がお兄さんで、もう何日も餌を食べていない妹のために必死に餌を探している、とまで空想をはたらかせる人もいます。

 感じ方は人それぞれ、決まった答えはありませんし、その良し悪しを私たちが判断することもできません。
 しかし、少なくともメリーという会社は、やわらかい考え方のできる人、いろいろな見方のできる人、「氷がとけたら春になるんだよ」と言える人材を必要としており、またそれぞれの「感性」を大切にした教育を行なっていかなければならないと考えています。
出典:原邦生『感動の経営―想いを贈る企業をめざして』PHP研究所

原 邦生 氏のプロフィール
はらくにお
1935年、東京都生まれ。58年、青山学院大学文学部卒。同年、株式会社メリーチョコレートカムパニー入社。86年、代表取締役社長。
教師になる夢を捨て、亡父・堅太郎が50年に創業したメリーチョコレートに入社。58年には日本で初めてバレンタインセールを企画、展開した。現在の巨大なバレンタイン市場の「生みの親」であり、また、その後もさまざまなアイディアで市場の隆盛を築き上げた「育ての親」でもある。また営業畑を歩いたにも拘わらず、独自の社内情報システムを構築するなど、その発想力と行動力で「リーディングカンパニー」として積極的に事業拡大を推し進めている。
著書に『今週の提言』『朝礼でちょっと考えてみたい52の話』シリーズ多数(以上ストアーズ社)、『この商いで会社を伸ばせ!』(かんき出版)、『感動の経営』(PHP研究所)など多数。


*秘書記――
伏木基子(ふしきもとこ)
 東京都生まれ。1992年、法政大学文学部卒。同年、株式会社メリーチョコレートカムパニー入社。
 社長秘書。文書管理業務、庶務業務兼務。
末次朝子(すえつぐあさこ)
 愛知県生まれ。1995年、早稲田大学第一文学部卒。同年、株式会社メリーチョコレートカムパニー入
 社。社長秘書。マーケティング業務、研修業務兼務。


メリーチョコレートカムパニーのホームページはこちらへ
このページは原邦生氏のご了解をいただいて掲載しています。
Special  トップへ
menu
Top-page
サイトの趣旨
食の専門家から
環境と食育
農林漁業と食
教育の現場から
家庭・地域から
スポーツの目から
食育の視点と
総合学習
心の視点から
ほねぶとメニュー
海外の食・子育て
若き研究者から
Special
編集後記
食育へのひとこと
FAQ
Webmaster
プロフィール
ほねぶとネット
サポーター紹介
リンク
<食・育>情報
いろいろ
気まぐれ Diary
  トップページへもどる Please comment to : naora@nifty.com
Copyright(C)2001 ほねぶとネット All right reserved.