『張飛と諸葛亮の無言問答』

張飛にまつわる民間伝説を紹介します。
劉備や関羽の伝説に比べて張飛モノは
笑い話のようなものが多いですね。


劉備・関羽・張飛の三人は
懇意に諸葛亮を三度も訪ねたので
彼は三人の誠意に答えて下山しました。
しかし諸葛亮は一言も喋らず
かくかくしかじかと手まねでずっと過ごすので
劉備はその様子を不思議に思ったのですが
いくら考えても理由がわかりませんでした。
そんな時にちょうど関羽が向こうからやって来ました。
関羽は『春秋』を熟読しており
文学や歴史には精通していたので
彼なら何かわかるだろうと思い
劉備は理由を尋ねてみたのですが
さすがの関羽にも原因がわかりませんでした。
するとそれを聞いた張飛は自信ありげに言うのでした。

『それのどこが難しいと言うのだ。この俺サマに任せておけ!』

呼び出された諸葛亮は張飛をじーっと眺めると
手を伸ばして空を指差した。
すると張飛も慌てて手を出し地面を指差した。
次に諸葛亮は指を1本突き立てると
張飛は指を3本突き出した。
今度は諸葛亮は指を3本伸ばして小さい円を描くと
張飛は両手を広げて指を9本突き出した。
最後に諸葛亮は手の平を裏返し
胸の前で大きな円を描いた。
すると張飛は頭を左右に振り、袖の中を指差しました。
それを見た諸葛亮は「よくできました」とにっこり笑うと
張飛は呵呵大笑しながら母屋へ戻って行った。

二人の問答を始終見ていた劉備と関羽ですが
さっぱりわからなかったので諸葛亮に訳を請いますと
諸葛亮は次のように話しました。

『私が空を指差したのは、すなわち“天文”
彼が地面を指差し、答えは“地理”。
私が指を1本立てたのは“天下統一”
彼は3本指を立て“三国鼎立”。
私が指3本で小さい円を描いたのは
“別れたものが一つに成す”
彼が指を9本伸ばしたのは
“バラバラになったモノが源に帰す”。
私が手を翻し胸の前で円を描くは
“私の腹中には陰陽八卦がある”
彼が袖口を指差しその答えは
“密かに袖の中に日月乾坤を隠している”
なんと理にかなった答えではないでしょうか』

それでも何かが気になる劉備と関羽は
張飛にあの時の対話のことを尋ねに行きました。

『ああ、あれは簡単だったぞ。
孔明が空を指差し、今日の天気のことで“空から雪が降る”
俺が地面を指差し“地面は滑りやすい”
次に指を一本伸ばし“一番寒かったのは”と尋ねたので
俺は慌てて三本指を出し“三顧茅盧”
そして三本指を伸ばし小円を描いて
“小餅(シャオピン)を三つあげよう”と俺に言うので
すかさず九本指を出し
“いや、少なくとも九個は欲しい”と。
するとやつは怒ったようで、胸の前で大円を描き
“私の小餅は大きいんだ。そんなに食べたらお腹を壊してしまう”
だから俺は言ってやったのさ
“心配御無用、食べ切れなかった分は袖に入れて持って帰るから”』

自信満々に話す張飛でしたが
劉備と関羽は唖然とし、深いため息をついたのでした。


この話の元ネタは『劉関張伝奇』ですが
著者はその土地の人々から直接取材をし、纏め上げているようです。
別資料には今回紹介した民間伝説と
よく似た話が掲載されておりました。
曹操と張飛が無言問答をし、同様に張飛は勘違いしながらも
曹操はそれに気付かず、自分の解釈で勝手に思い込み
その問答の負けを認めてしまう内容です。
同じような逸話が多少違った内容であちこちに存在するのは
日本の昔話のように軸筋は一緒の話でも
その土地柄や風土によって異なって伝えられてきたのと
同じような解釈が出来るかもしれません。
ファン心理か、都合よく変えられて
伝わっている伝説も少なくないですしね。。。

ま、そのことは置いておいて
張飛がお笑い担当(おいおい)という位置にされていたのは
昨今のことではなかったんだなぁと思う次第。
「三國演義」の前進ともいえる「三国志平話」では
張飛にスポットがあったてると聞いたことがありますが
張飛人気はその当時からあったということでしょうか。
でもこの短い逸話だけでも四人のそれぞれの人となりが
見えてくるのも面白いですね。
ちなみに「小餅」とは小麦粉を練って焼いたモノ。
中国の街中でよく売られています<好吃!

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