小さい頃からそっくりだった。
 双子だからそれは当然。
 だけど、オレはオレなんだ。


子供の日常[兄弟の会話]


「そりゃそうやろ」
 家事が全く出来ない母親に代わってやっている兄はあっさりと答える。
「そっくりそのまま同じ奴がいたら気味悪いだけやわ」
「そりゃ、そうだけどさ」
 快斗は軽く頬を膨らませる。
「新一と間違えられたんだぜ、オレ」
「そんなん放っておき、間違えん奴だっておるやろ?」
「……まあ、そうだけど」
 拗ねたような声を快斗は出すと、ソファーに寝転がる。
 そして、それ以上何も話さない。
「もしかしなくても、暇か?」
「うん」
 そのまま寝ていきそうな感じもする快斗に尋ねると、彼は勢いよく頷く。
「テレビもいいのやってないし、パズルもつまんないし、新一はホームズ読んでるし」
「……悪いか」
「相手してくんないじゃん」
 別のソファーで一心に本を読んでいる新一に、快斗はさらに言う。
 平次はその様子に笑いながらため息を漏らす。
 この二人は頭がいい。
 どちらもIQが高いからか、とても普通の子供ではない見方をする。
 新一は憧れがホームズということもあり、とても鋭い見方をし、高木夫婦に発言する。それが事件を解決させる切っ掛けとなることも少なくない。
 快斗が興味を持ったのは手品。テレビで見る手品の番組で、いとも簡単に手品のタネを言う。そして器用さも生かし、自分も手品をする。
「そんなふうに腐っとらんと、これでも食べぇ」
「…何、これ」
 キッチンから快斗がいるソファーを覗き込むと、手に持っている物を口元に持っていく。
「チョコレート。いらへん?」
「食べる」
「新一も食うやろ?」
「…まあ」
 曖昧に頷く。だがそれでも、平次は人懐っこい笑みを浮かべると、机の上にクッキーが乗った皿を置く。
「――あ、美味い」
「これって……大々的に宣伝してた奴だろ」
 確か期間限定とか言う奴で、二種類の味が楽しめて、特殊な作り方をしているものだった。
 確かCMで快斗も新一も少なからず興味を持っていたものだ。
「昨日言うとったやろ」
「うん。新一も興味あっただろ」
「少しな。だけど……思ったより美味い」
 正直言って興味はあったが、味はあまり期待していなかった。
 だが、甘さが丁度良くてとても口当たりもいい。
「そら、よかったわ」
「でも、いつ買いに行ったんだ」
 新一は眉を動かす。
 このチョコレートのCMを見たのは昨日の夜。だが平次は昨日も今日も出かけてはいなかった。
「確かにそうだよな」
「買いに言ってないで」
「じゃあ、父さんか?」
「ちゃうちゃう。オレが作ったんや」

 ………………………………

『え!?』
「……何でそんな顔するん?」
 数秒の沈黙後、快斗は跳ね起き、新一は本を膝に置く。
「だ、だってさ、これって結構作り方開発まで時間がかかるんじゃ……」
「え、結構簡単やったで」
「……もしかして、味も変えた?」
「ああ、あれ甘そうやからな。もう一個の奴のをちょっとな」
 喜んでもらって嬉しそうに笑う平次。
 だが普通、製菓会社が困難だったものを子供がすらすらと作れるなんて有り得ないことで……
「人間?」
「失礼やな」
 平次は少し拗ねたような表情をすると、肩を竦めるが、
「……新一と快斗の好みはちょう違うんや。それと同じように双子やからって何でも似とる訳やない。せやから自分に自身もち、快斗も新一もな」
「何でオレにも言うんだ?」
「何でやろうな」
 平次は笑う。そして快斗のチョコレートを新一に、新一のチョコレートを快斗の口に放り込むと、キッチンへと言ってしまった。
「……甘ったるい」
「結構苦い」
 二人は正反対の感想を口にする。
 そして、顔を見合わせ――笑い合う。
 どうやら好みに合わせてお菓子の味を変えて作ってくれたようだ。
「……平次ってさ」
「ん〜」
 自分に出された方のチョコレートで口直ししていた快斗は新一の声に顔を上げる。
「母さんより『お母さん』だよな」
「あ、言えてる! 細かい気配りは父さん譲りだよな」
「何か言うた?」
『何にも』
「……さよか?」
 平次はまたキッチンに戻る。二人は平次の後姿を見て顔を見合わせると、声には出さずに可笑しそうに笑いあった。



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 兄弟たちの会話。
 密かに、三人の天才がいたり。
 平次だけは頭のよさじゃなくて、料理の、だけど。
 そして平次が完全にお母さんです。快斗と新一が認めてしまうほどに。
2003 11/28掲載