化学物質過敏症患者によるシックハウス診断

コラム


こちらでは日頃気になっていることを書いていこうと思っています。用語集と重なる話題も出てくるかもしれませんがご了承ください。

過去のコラムはこちら。
1〜40


NEW51.蛍光増白剤とは何か。(2008/7/24)

 洗濯用洗剤の表示を見ると、蛍光増白剤と書いてあることが多いと思います。どのようなものなのでしょうか。

 蛍光増白剤は染料の一種で、光の中の目に見えない紫外線を吸収し、それを目に見える青色の可視光線に変えて放出します。このため、綿のようにもともと黄色味を帯びたものに使用すると、青い光が加わり、輝くように白く見えます。

 市販の白物衣料の多くのものには、製造段階で蛍光増白剤が使用されています。純白は、可視スペクトル全領域において全反射するものですが、黄ばんだ衣類は黄色の補色である、青系統の反射光が不足しているために人の目には、黄色がかって見えます。この時に青色の染料で染めると、黄色の部分の光を吸収させることにより、黄色を消して、人の目に白く映るようになります。これを青味つけといって昔はこの方法が使われていました。しかし、青味つけの方法では全体的に白さや明るさに欠けて暗く感じる欠点がありました。蛍光増白剤は紫外線を吸収して青色の反射光を発する染料なので、不足していた反射光を補って反射光が全体に広がるようになります。綿、麻、レーヨンなどに使用されている蛍光増白剤は、洗たくのときに脱落するので、これを補うために、多くの洗剤には蛍光増白剤が配合されています。

 代表的な蛍光増白剤としては、ビス(トリアジニルアミノ)スチルベンジスルホン酸誘導体、ビススチリルビフェニル誘導体があります。 これらの蛍光増白剤は、水溶性が高く、環境中で微生物 に代謝分解されにくく、下水処理場でも完全 に除去できないことがわかっています。

 蛍光増白剤は、発ガン性があり危険と警告している団体がありますが、アメリカでは傷口に直接触れるガーゼにも、蛍光剤の使用制限はされていません。しかし、原料であるスチルベンは内分泌攪乱作用があり、日本では、医療用のガーゼ、紙ナプキン、紙コップなどには蛍光剤の使用が制限されています。

 蛍光増白剤は白物衣料を洗濯する時にだけ必要な成分であると考えられます。人体への影響は、現時点では、解らないというのが現状であり、川、湖、海など環境中にも放出されていることがわかっています。できるだけ使われていない洗剤を選択すべきだと思います。



NEW50.シックカーの現状。(2008/7/17)

 シックハウスと並んで、シックカーという言葉を聞いたことがある方は多いと思います。現在の状況はどうなっているのかみてみましょう。

 新しい自動車を購入したことがある方はご存知だと思いますが、新車は独特なつんとする臭いがします。この新車の臭いの正体はホルムアルデヒドやキシレン、トルエンなどの化学物質(VOC)によるものです。

 車に乗ると、目がチカチカして気分が悪くなった、というような症状が出たら、シックカー症候群の恐れがあります。新築住宅などで発症するシックハウス症候群の車版で、車内に放散される化学物質で引き起こされます。車内は狭い密室であり、化学物質の濃度は住宅内より高くなる場合が多いため、化学物質に過敏な人は注意を要します。

 大阪府立公衆衛生研究所では、国産の新車の乗用車1台について実際に使用しながら車内の化学物質濃度を測定した結果を発表しています。その結果によると、厚生労働省がシックハウス対策として定めたTVOC(総揮発性有機化合物)の室内暫定目標値(400μg/m3)に対して、納車翌日で約35倍、1年後で約2.7倍、2年後で約2倍、3年後でも約1.4倍の濃度のVOCが検出されています。(いずれも夏に測定した場合)

 また、高級車ほどシックカー症候群に気を付けた方が良いと言われています。同じく大阪府立公衆衛生研究所は、新車登録から3年未満の国産車101車種にて新車価格帯を3つに分けてVOCの濃度を測定しています。その結果230万円以上に分類された高級車の位置付けの車が、最もVOC濃度が高いという結果が出ました。その理由としては、高級車ほど内装に高級感をもたせる為にウッドパネルや皮シートなどを使用しており、その分接着剤などを多用するためVOCが多く含まれてしまうと説明しています。

 最も簡単で最も効果があるのが換気です。走行中の窓開けやエアコンの外気導入などによる換気を行うことで、車室内のVOC濃度は大幅に低減します。特に夏の炎天下での車内のVOC濃度は高くなっていますので、長時間炎天下の駐車場を利用していた場合などは、窓を開けて換気を充分に行ってから車に乗るようにしましょう。また、新車購入時は密閉した状態で車内温度を高めてVOCを揮発させ、換気をすることで一気にVOCを車外へ放出するようにしてみるのも効果が期待できます。(いわゆるベイクアウト)

 日本自動車工業会(自工会)は2007年度以降の新車では、厚労省が指針を定めた13種類のVOCについて厚労省の指針値以下に抑制する内容の自主基準を決めていて、自動車メーカー各社がすでに取り組みを始めています。しかし、車内で検出されるVOCは約250種類あり、13種類に対応するだけでは不十分であるとの指摘もされています。

 近年の自動車は防音性能を高めるため気密性も高くなっていると思われます。住宅の気密性が高くなったのがシックハウス症候群の原因の一つであったのと同様に、車内の気密性が高い車ほど化学物質の低減に時間がかかると考えられますので、日頃から換気を徹底する必要があるでしょう。



NEW49.漆喰(しっくい)とは何か。(2008/7/10)

 天然の建材として漆喰が注目されています。漆喰とはどのようなものなのか、製法や反応の仕方についてまとめてみましょう。

 漆喰とは、消石灰を主原料とする建材です。消石灰を水で練ったものは粘性に乏しいので、作業性を向上させるためにフノリ・ツノマタなどの糊(のり)が使用されます。また、ひび割れを防ぐために、スサと呼ばれる植物繊維を混ぜることで補強をします。漆喰は硬化とともに収縮するので、それを少なくするために川砂を用いることもあります。

 防火性が高いのが特徴で、古くは財産を守るため土蔵に使われていました。また、調湿機能も持ち、季節の変化に耐え、カビがつきにくいという性質ももっています。このため、今でも押入れの壁などに使われることもあります。そのほか、遮音性や遮光性にも優れています。欠点としては、乾燥後の収縮率が高いためひびが入りやすいことがあげられます。

 漆喰に原料は石灰岩や貝殻などの炭酸カルシウム(CaCO3)です。炭酸カルシウムを焼成すると酸化カルシウム(CaO)になります。これは一般には生石灰(きせっかい、せいせっかい)と呼ばれています。なお石灰岩からできたものを石灰(いしばい)、貝殻からできたものを貝灰(かいばい)と呼びます。

 CaCO3 → CaO + CO2

酸化カルシウムに水を加えると発熱膨張して水酸化カルシウム(Ca(OH)2)になります。これは一般には消石灰と呼ばれています。またこの現象を消化と呼びます。消化には水を加える方法ではなく、湿った空気中で自然消化させる方法もあり、これによる消石灰は可塑性に富み品質が良いとされています。

 CaO + H2O → Ca(OH)2

消石灰に水を加えて練り合わせ、壁に塗ると、乾燥後に空気中の二酸化炭素(CO2)と反応して、もとの石灰石の成分である炭酸カルシウムになり硬化(炭酸化)します。壁の内側まで固化するには長い時間が必要で、1年以上を必要とする場合もあります。

 Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O

 「漆喰は主成分の消石灰が空気中の二酸化炭素を吸着し、地球温暖化防止に貢献します」という記述がよく見られますが、実際には消石灰を製造する時に二酸化炭素を放出していますので、地球温暖化防止に貢献しているとはいえません。(プラスマイナスゼロになっている) また、「主成分の消石灰の作用により、細菌の育成・増殖を抑え、カビやダニの発生を防止する機能を有しています」という記述も問題があり、時間がたつと漆喰の表面は炭酸カルシウムになりますので、効果があるのは最初の頃だけであると思われます。(吸湿性があるので増殖は抑えられるかもしれませんが) 古墳の壁画(漆喰に描かれている)にカビが生えた事件は記憶に新しいところです。

 漆喰の主成分である消石灰は天然物が原料ではありますが、消石灰自体は天然物ではありません。強いアルカリ性の物質であり取り扱いには注意が必要です。決して素手で扱ってはいけません。



48.ふくらし粉はなぜ膨らむのか。(2008/7/3)

 ケーキなどを焼くとき、膨らませるためにふくらし粉を使います。ふくらし粉を入れるとなぜふくらむのでしょうか。ふくらし粉の成分からそのわけを見てみましょう。

 ふくらし粉(ベーキングパウダー)は、パンや焼き菓子に使われる膨張剤です。炭酸ガスを発生する重曹(NaHCO3 、炭酸水素ナトリウム)が基剤となり、硫酸アルミニウムカリウム(焼きミョウバン)、第一リン酸ナトリウム、酒石酸水素カリウムなどの酸性剤が重曹の分解を助ける助剤として加えられています。これに両者が保存中に反応しないように隔てておく遮断剤としてデンプン(コーンスターチなど)が配合されています。

 実際の反応を少し見てみましょう。重曹だけを加熱した場合は以下のように反応し、NaHCO3 2分子からCO2 1分子が発生します。

 2NaHCO3 → Na2CO3 + H2O + CO2

炭酸ナトリウム、水、炭酸ガスが生成しますが、生地を膨らませる元になるのは炭酸ガスです。このときできる炭酸ナトリウムは、アルカリ性で生地を黄色に着色(かんすいと同様)し、また独特の臭気と苦みがあるので、酸性剤で中和することで炭酸ナトリウムが生成しないようにします。酸性剤が添加されている場合は反応が以下のようになります。

 NaHCO3 + HX → NaX + H2O + CO2 ( HX は酸性剤)

炭酸ナトリウムが中和されるのと同時に、NaHCO3 1分子からCO2 1分子が発生し炭酸ガスの発生量が2倍になることから、より膨脹させる力が強くなります。水分が加えられる事で重曹と酸性剤が反応して重曹の分解が始まり、加熱によって分解はさらに進みます。このことからふくらし粉は水に溶いて使用すると焼く前に炭酸ガスの発生が始まり、膨らみ方が不十分になります。また、同様の理由で混ぜた生地を長時間放置することも避けた方が良いでしょう。

 ふくらし粉の成分で問題となるのはアルミニウムを含んでいるミョウバンだと思われます。(アレルギーがある方はコーンスターチにも注意が必要)アルミニウムは過去にパーキンソン病やアルツハイマー病の原因との疑いが指摘(現在では否定的)されており、安全性を重視しているお店では、アルミニウムフリー(アルミニウム成分が入っていないもの)のふくらし粉を使用しているところがあります。重曹と酸とが加熱中に緩慢に反応するようにするため複数の酸性剤が使われていることが多く、ミョウバンが配合されているのもそのためと考えられます。アルミニウムフリーのふくらし粉では主にリン酸塩が使われていますが、酸性剤が一種類だけであることが多く、急激に膨らむことや気泡が大きくなるなど使い方に注意が必要になります。

 アルミニウムは貝類、海藻、お茶、肉類や野菜などにも含まれているありふれた金属ですので、あまり神経質になる必要はないですが、取りすぎないように注意はした方が良いでしょう。



47.ピレスロイドはなぜ防虫剤として使われるのか。(2008/6/26)

 ピレスロイド剤は殺虫剤として開発された化学物質ですが、近年、防虫剤として使われるケースが多くなっています。ピレスロイドとはどのような物質なのでしょうか。

 ピレスロイドとは、もともとはキク科の多年草である除虫菊に含まれるピレトリン等、有効成分の総称でした。除虫菊は、昔から蚊取り線香や農業用殺虫剤などに広く使われてきましたが、近年、除虫菊そのものが利用されることは殆どなくなりました。今日では蚊取り線香であっても合成されたピレトリンやアレトリン等の合成ピレスロイドを原料にして製造されています。

 除虫菊に含まれる、天然ピレスロイドのピレトリンは光、酸素、アルカリに不安定で、環境中に揮発した後は速やかに分解・失活するため、農薬としては使い勝手が悪く、また除虫菊を原料とするのでは大量生産は困難であることから、20世紀前半からピレトリンの誘導体である合成ピレスロイドが研究され、実用化されるようになりました。

 ピレスロイド系殺虫剤の作用については未知の部分もありますが、昆虫類・両生類・爬虫類の神経細胞上の受容体に作用し、ナトリウムイオンチャネルを撹乱させて正常な神経伝達を阻害すると考えられています。ピレスロイドが昆虫の体内に入るとすぐ神経系に作用して、反復興奮による異常興奮および興奮伝導の抑制を起こし、痙攣、麻痺に陥らせます。一方、人など温血動物の体内に入った場合、ピレスロイドは酵素の力で速やかに代謝・分解されます。しかも哺乳類・鳥類の受容体に対する作用は弱いので安全性の高い殺虫剤であるとされています。

 ピレスロイド系の薬剤には忌避(嫌って避ける)効果があり、蚊を殺すだけでなく薬剤濃度の薄い場所では蚊が嫌って近付いて来ないという効果がある(蚊取り線香は主にこの効果を利用している)ことから、衣料用防虫剤などに使用されるようになりました。(他に昆虫が忌避性を示す物質としてはディートがよく知られている)この忌避作用はシロアリ駆除剤としては欠点となっており、シロアリ用殺虫剤は忌避作用を持たないネオニコチノイド系殺虫剤に移行しつつあります。

 除虫菊製剤は天然の産物であるという理由で、ほとんど毒性検定がされていません。しかし、除虫菊に対するアレルギーは良く知られており、有効成分であるピレトリンに対する過敏反応による死亡事故も報告されています。最近では化学物質過敏症の原因物質として家庭内殺虫剤や建材などへの利用が問題視されるようになってきました。家庭用殺虫剤はピレスロイド系の薬剤であることが多く、使用には十分な注意が必要です。



46.医薬品に使われる添加物。(2008/6/12)

 化学物質過敏症の方は医薬品やサプリメントを飲む時には注意が必要です。しかし、医薬品やサプリメントの有効成分についての情報は多くありますが、添加物についてはあまり話題になっていません。よく使われる添加物について考えてみましょう。

 よく使われる添加物としては、結合剤、滑剤、光沢剤があります。

 結合剤は、粉末状の材料に粘り気をもたせて、粒として一つにまとめる役割をします。主な物としては、セルロース、レシチン、ソルビトールなどがあります。

 滑剤は錠剤を成型するときには、鋳型にくっつかずに、きれいに取り出せるようにする為に、材料を滑らかにする為に使われます。脂肪酸、炭酸マグネシウム、二酸化ケイ素などがあります。

 光沢剤はその表面を滑らかにして飲みやすくする為に使います。また、表面をコーティングすることで、錠剤を湿気や酸化から守ります。日本では物質名の表示が免除されているので、「光沢剤」としか表示されていないことがあります。石油を原料としたマイクロクリスタリンワックスやパラフィンワックス、植物や昆虫から取れるカルナウバロウやシェラックなどのがあります。

 化学物質過敏症の人は、医薬品やサプリメントと言えど注意が必要です。これらの中で、特に問題となりそうなのは、石油由来のワックスです。よく使用されているマイクロクリスタリンワックスやパラフィンワックスは石油精製の過程でできます。胃腸で消化吸収されることはないとされていますので、神経質になる必要はないのかもしれませんが注意したほうがいいでしょう。

 他にも甘味料、香料、着色料があります。これらは、錠剤を作る為に必要なわけではなく、味をよくしたり、見た目をよくしたりという目的で使いますので、噛んで食べるチュアブル・タイプのものに使われることが多くなります。添加物をあまり取りたくないという方は、チュアブル・タイプの医薬品やサプリメントは避けましょう。

 錠剤やカプセルの形にするためには必ず添加物が必要です。表示には十分に注意し、添加物として化学合成品を使った物はできるだけ避けた方が良いでしょう。(天然物だから安全とは限りませんが) そして、なるべく添加物の種類が少ない物を選ぶようにしましょう。また、原材料名に添加物の記載がないようであれば、そのような製品は表示が不十分ですので避けた方が無難だと思います。



45.環境中に放出されている VOC 。(2008/6/5)

 シックハウスに関連して住宅室内での VOC に関心が持たれています。しかし、環境中に放出されている VOC のうち住宅から放出される量はごく僅かで、実際には工場などからの放出が大部分を占めます。現状がどうなっているのかまとめてみましょう。

 大気汚染防止法では VOC は「大気中に排出され、又は飛散したときに気体である有機化合物」のこととされています。(光化学スモッグの原因となる非メタン炭化水素を念頭に置いている) 最近になって、自動車公害対策の進展などにより窒素酸化物の濃度は低下してきましたが、非メタン炭化水素の削減がこれに追いついておらず、窒素酸化物の濃度に対する非メタン炭化水素の濃度の比率が上昇しており、このことが近年の高濃度オキシダントの出現の一因となっている考えられています。

 VOC の発生源は、移動発生源(自動車・船舶・飛行機など)、燃焼系固定発生源(発電所・清掃工場・ビルのボイラーなど)、蒸発系固定発生源(工場での生産工程や塗装など)に分類され、その内、蒸発系固定発生源が約8割を占めているとされています。発生量が多いとされている蒸発系固定発生源としては、屋外塗装、工場塗装、印刷、クリーニング、給油、金属表面処理(めっきの前処理など)などがあり、その内訳は地域によって異なりますが、例えば東京都では、塗装が45%、印刷が23%、ガソリンスタンドでの給油が14%、ドライクリーニングが12%、その他6%となっています。

 排出規制に対応するため、印刷工場においては、VOC 含有量の少ない大豆インクなどへの切り替えが進んでいます。自動車メーカーでは自動車の塗装に水系塗装を採用することで VOC 排出量を削減するなどの動きがあります。また、ガソリンスタンドでは、これまで地下タンクから大気中に放出されていた、ガソリンから揮発する炭化水素を回収することで排出量を削減するシステムの導入が進められていますが、給油時に自動車のガソリンタンクから放出される炭化水素については対応策がないのが現状です。大規模工場などでは、放出される VOC を回収して燃焼分解する設備の導入が始まっていますが、数千万円かかることから中小企業への導入が進んでいません。

 VOC は住宅室内空気の汚染物質として注目され規制されてきましたが、大気中への放出に関しては対策が遅れており、大気汚染防止法の改正により VOC の排出規制が始まったのは2006年からです。また、この排出規制は工場や事業所が対象であり、大きな割合を占めている屋外塗装については規制対象となっておらず、水性塗料の開発などの対策が求められています。



44.光化学オキシダントの発生メカニズム。(2008/5/22)

 光化学スモッグの原因物質であるオゾンなどの光化学オキシダントは、窒素酸化物や VOC が太陽光を受けて化学反応を起こすことで発生します。この反応について少し難しくなりますが、詳しく見てみましょう。

 光化学オキシダントとは、オゾン(O)などの酸化性物質、ペルオキシアセチルナイトレート(PAN)、アルデヒド等の総称で、オゾンが全体の約70%をしめています。
 原因物質については、窒素酸化物と VOC の一種である非メタン炭化水素(NMHC)の濃度の比率が大きく関係していることがわかってきました。例えば、オゾンの生成反応は次のようなものです。

  NO2 + O2 → NO + O3

 二酸化窒素(NO2)が太陽光を受けて分解し、空気中の酸素(O2)と反応することでオゾン(O3)が生成します。非メタン炭化水素(NMHC) が存在しなければ次のような反応で、すぐに酸素に戻ります。

  NO + O3 → NO2 + O2 ・・・(1)

 しかし、非メタン炭化水素(NMHC)が多く存在する場合、以下のような反応が起きます。

 NMHC + OH + O2 → RO2・ + H2O(R は炭化水素基)
 RO2・ + NO → RO・ + NO2

 非メタン炭化水素(NMHC)から生成されるRO2・(反応性の高いラジカル)の作用によって、一酸化窒素(NO)が二酸化窒素(NO2)となるため、上記(1)の反応が進まず、オゾンがどんどん生成されていくことになります。
 また、PAN は次のような反応で生成します。

 NMHC + O2 + NO2 → CH3COOONO2(PAN)

 この反応にも太陽光が必要です。PANは毒性と刺激性の両方の性質があり、オゾンよりも水に溶けやすく、十億分の一のような超低濃度でも目を刺激します。また、高濃度になると広範囲の植物に影響を及ぼします。
 オゾンに関しては活性炭で分解除去が可能です。

 C + 2O3 = CO2 + 2O2

 光化学オキシダントの生成過程は他にも、上空(成層圏)にあるオゾン層から下降気流によりオゾンが降りてくるという説や、中国大陸からの流入説等がありますが、すべてが解明されているわけではありません。活性炭マスク等(通常のマスクでは効果がない)である程度は防御できますが、完全ではありませんので、光化学スモッグが発生している時はできるだけ外出は控えた方が良いでしょう。



43.難燃剤について。(2008/5/15)

 家電製品などに使用されている難燃剤について懸念している方が多いようです。主に使用されている難燃剤について整理しておきましょう。

 まず、プラスチックが燃焼する時にどのような反応が起きているのでしょうか。プラスチックのような合成樹脂の場合は、熱によって表面の分子が分解し、エネルギー的に不安定な分子(ラジカル)になります。それが酸素と反応して熱を放出するとともに、より強力なラジカル(*OHなど)を生成します。このラジカルはとても反応性が高いため、近くの分子と次々に連鎖的に反応して、燃焼反応が拡大していきます。

 上記のように家電製品に使われているプラスチックは燃えやすいものが多く、使用時に高温となる電気・電子製品に使う場合など、用途によって難燃化することが必要になります。物質の難燃化は、燃焼の3要素(可燃性物質、酸素、熱)が揃わないようにすることによって実現します。そのために使用されるのが難燃剤です。難燃剤の種類は大きくリン系、ハロゲン系、無機系(金属水酸化物)に分けられます。

 リン系としてはおもにリン酸エステルが使用されます。リン酸エステルは熱により分解してリン酸になり、さらに分解するとポリメタリン酸になります。このリン酸群が樹脂表面に膜を作り、酸素を遮断します。また、リン酸は強い酸のため、樹脂中の分子鎖と脱水反応をします。その結果、水が発生し、高分子鎖は炭素化物となり、比較的熱に安定な構造になります。水は熱の吸収に、炭素化物は皮膜となってリン酸同様、樹脂表面に保護膜を作り、樹脂と酸素との接触を遮断する役目を果たします。

 塩素(Cl)や臭素(Br)をハロゲンといいます。ハロゲン系難燃剤は、熱によって比較的簡単にハロゲン部分が分離する性質を利用しています。分離したハロゲンはハロゲン化水素(HBrやHCl)などの形で気化し、樹脂表面に気体の膜を作り、酸素や熱を遮断する役目を果たします。また、ハロゲン化水素は反応性が高いため、樹脂表面に漂う強力なラジカル(*OHなど)と反応し、ラジカルの連鎖反応を止める働きをします。

 無機系としてはおもに、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどが使用されます。これらの化合物は、吸熱反応により熱を吸収することで難燃化に貢献します。また、単独では難燃性の効果は低いのですが、ハロゲン化合物と共に用いることで、効果を高める作用を示すものもあります。

 リン系難燃剤は有機リン(殺虫剤など)と混同されがちですが、毒性は非常に弱く、食品添加物と同等かそれ以下とされています。(つまり少量であれば口に入っても問題ないレベル) 一方で、ハロゲン系であるPBB(ポリ臭化ビフェニル)は環境ホルモンとして懸念されています。また、臭素系難燃剤は高熱にさらされると臭素化ダイオキシンを発生するとされ、他の難燃剤に切り替える動きがあります。より安全で、難燃効果が高い難燃剤が求められています。



42.観葉植物と化学物質。(2008/5/8)

 シックハウス対策の一つとして、部屋に観葉植物を置いている方もいらっしゃると思います。どの程度の効果があるのか様々な情報が出ていますので、いくつかご紹介します。

 大きく取り上げられるようになったきっかけは、NASA(アメリカ航空宇宙局)が行った研究で、宇宙ステーション内の機械から発生する有害な化学物質を取り除く効果が確認されたと発表したことです。宇宙ステーションのように何年もの間、換気ができない場所での室内空気浄化の方法は以前から問題となっていて、観葉植物にスポットライトがあたることになりました。観葉植物が化学物質を無害化するメカニズムについては未解明な点が多くありますが、空気中の化学物質は葉の気孔から取り入れられ、その多くが根に運ばれます。それを根のまわりに共生する微生物が吸収分解し無毒化するのではないかとする説が有力となっています。

 その後、国内でも観葉植物に化学物質を吸収する働きがあるとの報告がされました。金沢経済大の大藪多可志教授(センターシステム工学)の研究発表がそれです。実験では、300リットルの密閉ガラス容器に高さ20センチ余りのポトスやサンセベリアの鉢植えを入れ、化学物質の濃度を一般的な新築住宅の3〜4倍にあたる50ppmにして変化を見るというものです。その結果、ポトスを入れた容器では、ホルムアルデヒド、アンモニア、たばこの煙が約6時間で検出されなくなり、排ガスは約15時間、アセトン約50時間、トルエン60〜70時間、ベンゼン70時間、キシレン約100時間でそれぞれ検出されなくなったとのことです。サンセベリアでもほぼ同じ結果が得られています。計測数値をもとに算出したところ、ホルムアルデヒド濃度が10〜20ppmの一般的な新築の6畳洋間なら、小ぶりな鉢植えを5個ほど置けば、WHO(世界保健機構)の規制値である0.08ppm以下におおむね保てる計算になったそうです。狭い空間(300リットルと言えば一般的な浴槽ぐらいのサイズ)での実験ですので、部屋の中の空気の動きがなければ実験にあるような高い効果は期待できないと考えられます。

 また、逆に効果があまりないとする研究結果が兵庫県立生活科学研究所から報告されています。観葉植物、人工植物(光触媒を使った商品と推測される)、空気清浄機と組み合わせた商品をそれぞれ、容積約6m3 の測定器に入れ、ホルムアルデヒド、トルエンなどの濃度変化を見るというものです。最も効果があったのは、空気清浄機と組み合わせた商品でしたが、ホルムアルデヒドの減少量は 1.68m3/h の換気をしたのと同程度、トルエンも 0.794m3/h の換気と同程度だったとしています。この実験では閉め切った部屋でも 12m3/h は換気されるため、換気の効果は少ないとしているのですが、この 12m3/h という換気量の数値の根拠が示されていません。

 観葉植物による空気浄化の効果は限定的なものであり、換気ができる場所では、やはり十分な換気を行うことが最も効果的だと考えられます。しかし、化学物質を吸着するだけでなく、分解し無毒化しているとの報告もあることから、部屋に観葉植物を置くことは無駄にはならないと思います。



41.環境ホルモンは今どうなっているのか。(2008/4/24)

 環境ホルモンという言葉を聞いたことがある方は多いと思います。一時期、大きく取り上げられましたが、その後ほとんど報道されなくなりました。現状はどうなっているのでしょうか。

 環境ホルモン(正式には内分泌攪乱物質と呼ばれている)は、環境中に存在する化学物質のうち、生体にホルモン様作用をおこしたり、逆にホルモン作用を阻害するもののことで、 PCB、 DDT、有機スズ、ノニルフェノール、ビスフェノールA、フタル酸エステルなどがこのような作用を持つとされました。

 日本では1998年5月に環境庁(当時)が発表した「環境ホルモン戦略計画 SPEED '98」にて、「内分泌攪乱作用を有すると疑われる化学物質」67物質をリストしましたが、その後に研究が進むに従い、ほとんどの物質は哺乳動物に対する有意の作用を示さないことが報告され、環境省は上記リストを取り下げました。現在では、リストは単に調査研究の対象物質であり、それらを環境ホルモン物質もしくは環境ホルモン疑惑物質と呼ぶことは根拠がなくなったとされています。

 より大きな問題となりつつあるのが、天然物にホルモン様物質が含まれるケースがあることです。植物中には女性ホルモン(エストロゲン)類似の作用を及ぼしうる物質が含まれ、植物エストロゲンと総称されています。オーストラリアでヒツジの不妊が目立つことから研究され、クローバーに含まれる物質として明らかにされたのが最初とされています。人間の食物にもダイズに含まれるダイゼイン、ゲニステインをはじめとしていろいろなものがあり、イソフラボンと称されています。イソフラボンについてはサプリメント等による過剰摂取が懸念されていて、「食事以外の1日の上限摂取量は30ミリグラム」とする方針が示されています。(この上限値については現在論争がある)

 多摩川に生息するコイのオスがメス化しているのではないかとの指摘があり、東京都環境科学研究所が調査をした結果を公表しています。その公表内容によると、オスのコイにメス特有のタンパク前駆物質が検出され、原因となっている物質は天然エストロゲンであり、そのほとんどが下水処理場からの排出だったことがわかりました。下水中には、女性の尿に含まれているエストロゲンがあり、これが川に流れ込んでコイに影響を与えたと結論づけています。川底にいる微生物により分解されているため、川の水に含まれるエストロゲンは下水処理場から離れるほど濃度が低くなっていることも明らかになっています。

 環境ホルモンとしてあげられた個々の物質については、影響が否定されつつあるようです。(もちろん、リストされた物質の多くは毒性がありますので避ける必要はあると思います)今後の課題として複合影響があげられます。これまではそれぞれの物質を一つずつ研究していたのですが、複数の物質が同時に取り込まれた時にどのような影響が出るのかほとんど調べられていません。近年、7種類の物質を同時に摂取させたマウスに影響が現れたとする論文が発表される等、まだまだ、研究は始まったばかりというのが現状のようです。







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