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一 貸金業者である]は、昭和五八年三月七日、Yに対し、三〇万円を、昭和五八年四月から昭和五九年九月までの分割支払い、元利金の支払を一回でも怠ったときは、期限の利益を喪失し、残金を一時に支払う旨の約定で、貸し付けた。Yは、昭和五八年四月五日の支払期日に、分割金の支払をしなかったため、]は、貸金元金三〇万円と利息制限法所定の範囲内の利率による遅延損害金の支払を求めた。これに対し、Yは、平成四年二月一日以降、]に対して毎月分割金を支払い、]がこれを受領しながら、平成一六年になって初めて、期限の利益の喪失を主張して賃金元金と遅延損害金の一括支払を求めることは、権利濫用あるいは信義則違反があるなどと主張した。原審は、本件貸付けにおいては、元利金の支払を一回でも怠ったときは、期限の利益を喪失し、残金を一時に支払うものとされていること、Yは、昭和五八年四月五日、分割金の支払を怠ったのであるから、前同日の経過をもって期限の利益を喪失したこと、債権者が、債務者が期限の利益を喪失した後であっても、叫括請求することなく、一部弁済を受領することが許されない訳ではないことなどからすれば、]において期限の利益の喪失を主張して一括請求することが権利の濫用あるいは信義則違反に該当するとはいえない、などと判断し、]の本訴請求を認容すべきものであるとした。そこで、Yは上告し、「仮に、]が、Yからの支払いを受領する都度、Yに対し、計算書を交付していなかったり、残債権額を告げていなかったとしても、]がYの期限の利益喪失を主張することが権利濫用又は信義則違反に該当するとはいえない」とする原判決の判断には、理由不備の違法があるなどと主張した。
ニ 本判決は、(一)本件貸付けの約定利息の利率は年七三%、遅延損害金の利率は年一〇二.二%であって、利息制限法所定の範囲の利率を大きく上回るものである、(二)本件貸付けについては期限の利益喪失の特約があるが、右期限の利益喪失特約は、法律上は、制限超過部分の利息の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとする部分は、利息制限法一条一項の趣旨に反し無効である、(三) この特約は、通常債務者に対し、支払期日に約定の元本及び利息を支払わない限り、期限の利益を喪失し、残金と約定の遅延損害金を直ちに一括して支払うことになるとの誤解を与える、(四)平成四年二月から]の求めに応じて、Yは、分割弁済しているのであるから、期限の利益を再度付与されているとの誤解をしていたともみられる、(五)したがって、Yにおいて、分割支払をすることによって期限の利益を再度付与されていると誤解していたか否かなどを確定することなく、Yの抗弁を排斥した原審の判断には審理不尽の違法がある、などと判断し、原判決を破棄し、事件を原審に差し戻した。
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