司法書士 藤村和也 事務所
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債務整理資料

最高裁 平成19年2月13日小法廷判決と消費者法ニュース71(64項〜99項)(平成19年5月18日更新


平成19年2月13日最高裁判所第三小法廷は、「貸主と借主との間で基本契約が締結されていない場合において、第一の貸付に係る債務の各弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生し(以下、この過払金を「第1貸付け過払金」という。)、その後、同一の貸主と借主との間に第2の貸付に係る債務が発生したときには、その貸主と借主との間で、基本契約が締結されているとの同様の貸付が繰り返されており、第1貸付の祭にも第2貸付が想定されていたとか、その貸主と借主との間に第1貸付け過払金の充当に関する特約が存在するなどの特段の事情のない限り、第1貸付過払金は、第1の貸付に係る債務の各弁済が第2貸付の前にされたものであるか否かにかかわらず、第2貸付に係る債務には充当されないと解するのが相当である」と判決した。

上記判決(以下、本件判決という)は、2月14日メール、最高裁ホームページを通じて、激震として債務整理に係わる司法書士や弁護士の間に広まった。

以下、私見
本件判決は、私が実務に入ってからの最高裁判決の中で最も最悪の判決だ。本件判決の以前、最高裁は、弱者たる債務者保護の判決を近年続けてきた。債権者の取引明細の開示義務、利息制限法違反の支払強制による期限の利益喪失事由の存在による貸金業法43条のみなし弁済の否定などである。これらの最高裁判決は、貸金業法の一連の改正の端緒ともなった。

本件判決以前においては、取引が別であろうと極度貸付であろうと無かろうとすべての取引を貸金業者から開示を受けた取引明細を元に利息制限法に引き直し計算をし、過払い金は、残存元本が存在する限り、残存元本に当然に充当していた。それは、余り前のことであり、実務の趨勢だった。債務者にとっても最も有利な計算方法であった。

例えば、別々の基本契約に基づく契約の場合で、過払い金を当然充当しないで、不当利得返還請求をした場合、通常は、不当利得返還請求金に対する利息は、年5%であり、貸金業者の貸出しを年18%としても、最終的に差し引きするまでに、貸金業者は、年13%の利得を得ることができる。この点で、債務者は著しく不利になる。

では、相殺を考慮してみよう。相殺の効力は、相殺敵状時にさかのぼって生ずる。この点だけ見れば、当然充当と同じ結果になるが、相殺は相手方に対する意思表示であり、相殺敵状が生じた後に相手方に対する弁済等があり相手方に対する債権が消滅した場合、もはや相殺できないというのが判例である。法律関係があまりも複雑になるからである。通常、貸金業者への過払金の請求は相当の取引の経過をもってなされるのであるから、相殺によっては、当然充当と同じ結論はほとんどなし得ない。

本件判決後の債務整理において、以前であれば、一連の連続した取引明細を貸金業者が開示していた業者が、一定の空白期間があった場合、別の用紙で印刷してくるなどあたかも別取引であるようにみせかける(または、実際にそのとおり)ようになった。現実に私も一定期間(6年程度)の空白期間のあるサラ金により取引明細の開示をうけた事案を受任した。バツが悪いことに第一取引の後、10年以上を経過しており、当然充当を前提としていない限り、不当利得返還請求が時効消滅していた。(なお、幸い訴訟外の和解のよって、当然充当を前提とした和解が、成立した)

こうような状況の中、消費者法ニュース71号がポストに入っていた。この雑誌は、3ヶ月に一回発行されるもので、そのボリュームがすごいので、見た瞬間に毎回たじろく。ちなみに、今回は、334項であった。

読めば、読むほど、納得のいくものばかりで、これだ。実務のいく方向はこうあるべきだと感じた。法律の文書で、これほどまで感動を覚えたのは初めてだった。本件判決を違法判決とらえ、当然充当法理を主張していた(原文)今後の実務対応とてしては、まず判例変更を求める方向でいくべきだと強く感じている。実務の中では、充当の推定など様々な主張がされているが、やはり当然充当に比べれば、債務者保護が弱い。本件判決は、原審(高等裁判所)までは、代理人弁護士が訴訟代理をしていたが、最高裁に継続後は、本人訴訟であったようである。弁護士もまさか逆転判決がでるとは思わなかったのだろう。そのため、最高裁において、十分な主張がされたとは考えにくい。本件判決については、おそらく弁護士により差し戻された原審においては、大弁護団により訴訟活動がなされていると思われる。

私の方針としては、訴訟においては、当然充当を主張し、基本的に充当推定などの主張はしない予定である。誤って、充当推定などの判決をもらってしまうと実務上の影響ができしまうからである。本件判決の判例変更については、残念ながら弁護士を中心とする他力本願に頼るしかないだろう。せめて、実務に影響がでないように、実務をこなすだけである。

※不当利得返還請求 利息制限法引き直しの結果の不法な利得を返還するような場合の請求
※(相殺の方法及び効力)
民法第五百六条  (略)  前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。 相殺の効力は、相殺敵状時にさかのぼって生ずる。

※相殺の計算は、相殺適状の生じた時期を標準として、なされるべきである。(最判昭53717判時912-61

※ 転付債権者に転付された債務者の第三債務者に対する甲債権と第三債務者の転付債権者に対する乙債権とが甲債権と第三債務者の債務者に対する丙債権とより後に相殺適状となった場合でも、丙債権を自働債権とし甲債権を受働債権とする第三債務者の相殺の意思表示より先に、甲債権を自働債権とし乙債権を受働債権とする転付債権者の相殺の意思表示がなされていた場合には、第三債務者による右相殺の意思表示は効力を生じない。(最判昭54710民集33-5-533) →相殺の制限

商行為である金銭消費貸借に関して利息制限法の定める制限を超えて支払われた利息損害金の返還請求権の消滅時効期間は、商法五二二条によらず、本条一項により一〇年である。(最判昭55124民集34-1-61


司法書士 藤村和也 埼玉司法書士会所属 登録番号 第862号 簡易裁判所訴訟代理認定番号 第103029号
社団法人成年後見センターリーガルサポート正会員 会員番号 3306419号
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