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辻泰弘〔消費法ニュース66 26項〕(平成21年2月27日更新)
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最高裁 三洋信販43条請求認諾の意味 弁護士 辻泰弘〔消費法ニュース66 26項〕(平成21年2月27日更新)


ポケットバンク」の三洋信販株式会社(本社・福岡市)については、その「みなし弁済」の主張が認められていた高裁判決について、最高裁はいずれも口頭弁論期日の指定をした。三洋信販が最高裁においていずれも請求の認諾等をしたため、判決には至らなかったが、自由弁済ないしリボルビング方式の取引に関する最高裁の考え方が明確となった。以下、事案の概要と最高裁の期日指定の意義等を検証する。

1、事案の概要
 全国の弁護士約二〇〇名が代理人となった最高裁第一小法廷平成十七年(オ)第四一二号事件及び同年(受)第四七一号事件(以下「本件」という)の概要は以下のとおりである。三洋信販の借主であった佐賀県内に住むパー卜労働者の三〇歳代の女性が、当初貸付からの取引経過を開示しなかった三洋信販に対して、二〇〇三年三月一七日、佐賀地裁に不当利得返還請求等を求めて提訴したが、三洋信販は貸金業規制法四三条一項のみなし弁済の主張をして、貸金返還請求の反訴を提起した。一番の佐賀地裁判決(二〇〇四年四月一三日)は、リボルビング方式(自由弁済方式)による本件の貸付は、法一七条一項六号「返済期間及び返済回数」の記載がないとして「みなし弁済」の成立を否定し、借主側の本訴請求を認容して、三洋信販の反訴請求を棄却した。ところが、控訴審の福岡高裁判決(二〇〇四年一一月一八日は)、リボルビング方式による貸付には「返済期間及び返済回数」の記載は必要ないとして、三洋信販のみなし弁済の成立を認め、三洋信販の反訴請求を認容して、借主側の本訴を棄却した。そこで、借主側が上告及び上告受理申立を行った。二〇〇五年一月二三日に提出した上告受理申立理由書はいずれも一〇〇頁を超えるものとなったが、その後も追加の書証とその証拠説明書、上告受理申立理由補充書等を提出した。

2.最高裁の「判断」
 本件において、最高裁第一小法廷は、数多くの上告受理申立理由のうち、「返済期間及び返済回数」の不記載の点だけを受理し、上告事件(四三条違憲論)とともに、口頭弁論期日を二〇〇五年一〇月一七日と指定をした。つまり、慣例からすれば、最高裁が口頭弁論期日の指定をした場合には、原判決を見直す公算が極めて大きいのであり、本件においても、みなし弁済の成立を認めた原判決が「返済期間及び返済回数」の点を理由に見直されるはずであった。なお、三洋信販は、口頭弁論期日において、借主側の本訴請求を認諾し、自らの反訴請求は放棄すると陳述した。同じ三洋信販を当事者とする同種事件として、平成一六年(受)第一六五六事件(原審広島高裁松江支部)も、同様に期日指定がなされていたが、三洋信販はこれについても、借主側の請求を認諾している。その結果、三洋信販のみなし弁済主張に対する最高裁の判決が下されることなく、訴訟が終了してしまったが、「返済期間及び返済回数」の点を受理して口頭弁論期日が指定された事実をもって、この論点に関する最高裁の考え方は明らかになったものといえる。

3、期日指定の意義
 この最高裁の期日指定により、三洋信販の貸付には「みなし弁済」が適用されないことが明らかとなった。つまり、受理された論点は「返済期間及び返済回数」であり、この問題は特定の事案における特殊な書面不備ではなく、三洋信販のリボルビング方式の貸付全体に共通する問題であり、三洋信販の全ての取引に「みなし弁済」が成立しないことが明らかとなったといえるのである。なお、そもそもリボルビング方式の貸付は「返済期間及び返済回数」の約定がないのが最大の特徴であり、もともと契約書面には「返済期間及び返済回数」を書けない契約である。リボルビング方式の契約の場合、「契約の有効期間」や「最低弁済額」等は定めがあっても、各貸付毎の返済期間や返済回数の具体的な合意はなされず、各回の返済額についても具体的な額についての合意はない。
 このように、リボルビング方式の契約は、もともと貸金業規制法が予定していなかった契約形態であることは、業界側の論文等でも明確にされているところである(「月刊消費者信用」二〇〇五年九月号六三頁、同二〇〇五年一〇月号一六頁等)。つまり、リボルビング方式の取引は、貸金業規制法一七条書面が作れない、すなわち貸金業規制法の適用がない契約であるのである。したがって、三洋信販に限らず、多くの貸金業者が採用している「リボルビング方式」については、全てみなし弁済の適用がないと考えることができることが、あらためて明確になったと思われる。なお、三洋信販の場合には、最低弁済額で支払った場合の償還表すらなかったので、みなし弁済が成立する余地は全くないのであるが、この理を推し進めれば、仮に最低弁済額で支払った場合の償還表などがある場合であったとしても、その償還表の内容は「合意内容」ではなくて、あくまでも「日安」にすぎず、「具体的な返済期間及び返済回数の合意がない」こと、及び「各回の具体的な返済金額の合意がない」こと、及び「各回の具体的な返済金額の合意がない」ことには変わりがないのであるから、やはりみなし弁済は成立しないというべきである。

4.「認諾」の問題点
 三洋信販の最高裁での「請求認諾」等は、敗訴を覚悟し、最高裁判決による影響を回避しようとした明らかな「判決逃れ」である。 三洋信販は、各地の下級審において「みなし弁済」の主張を行い、その主張の根拠の一つとして本件の原審である福岡高裁判決を引用するなどしている。その一方で、最高裁において、敗訴判決が確実となると請求の認諾等を行うのは、最高裁での敗訴判決という重大な影響を回避し、過払金返還逃れを今後も可能とするためと思われる。そのような認諾等は不当なものであり、「信義則に違反し権利濫用にあたり無効」等の主張を、本件最高裁の口頭弁論期日においても行い、最高裁も一旦休廷して合議までしたが、認諾等による訴訟の終了を宣言してしまった。今後は、三洋信販のこの「認諾」等の事実を各地の裁判所等を含めて広く周知させ、三洋信販の「みなし弁済」の主張を諦めさせる取組が必要であると思われる。



司法書士 藤村和也 埼玉司法書士会所属 登録番号 第862号 簡易裁判所訴訟代理認定番号 第103029号
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