千葉県 千葉市花見川区 幕張本郷駅 八重寿ビル1階 しんせん司法事務所
当事務所は,司法書士法第3条第2項の認定司法書士所属の事務所です。
債務整理(総論)
はじめに
多重債務に陥った相談者の多くは,精神的に追い詰められており,過酷な取り立てや執拗な電話での催促,社会的な偏見にさられながら,頭の片隅で夜逃げや自殺といったことも考えた末に最後の望みとして相談に訪れることを忘れてはならない。
相談者には,解決する方法が選択的にあること,将来の希望を持ってもらうことなど単に整理をする方法を提供するだけではなく,精神的サポートも必要不可欠の要素である(資料1)。
改正貸金業法等の完全施行
・既存貸付先のうち,約5割の利用者が総量規制の影響を受ける。
・この1年間で,60%程度の貸金業者が既に審査を厳しくしたと回答。
・貸付残高規模5000億円を超える大規模貸金業者では約90%が審査を既に厳しくした。
・消費者向け無担保貸付の成約率は4件に3件は融資を断っている。
総量規制に導入により「大手貸金業者(貸付残高5000億円超)では既存貸付先の約半数以上に対し,与信見直しが行われる見込みである。
・過払い金請求者の請求時点における取引の状況は,原債務の支払いが滞っている延滞中の顧客からの請求が45%,正常な取引中の顧客からの請求が33%,既に取引が終了している完済・残高なしの従前の顧客からの請求が22%であり,半数以上が「延滞者」以外からの請求である。
第1章
1 選択できる手続き
@時効援用
債務者が支払いを何らかの理由で中止し,その数年後に多額の遅延損害金を付加して請求される場合がある。
その請求書の中では,「連絡をくれれば,金○万円まで減額します。」という暗に和解を迫る。
相談者に確認する事項
a 最終取引日
b 判決等,債務名義の有無
c 個人で営業している業者による貸付か
○a個人で営業している業者について判例は,商行為性が否定されて時効期間は10年とされている
(学説では貸金業を行っている以上5年とする説もあるが確立していない。)。
○b信用金庫,信用協同組合は,商法上の商人に該当しない。
d 支払停止後に支払いをしたか。
※東京地判平7.7.26
「債務者が,消滅時効完成後に欺瞞的方法を用いて債務者に一部弁済をすれば,
もはや残債務はないものと誤信を生じせしめ,その結果債務者がその債務の一部弁済をした場合,
債務者は,その債務について消滅時効の援用権を喪失しない。」
A相続放棄
ア 生命保険金
生命保険金は,生命保険契約に基づき,被保険者の死亡という保険事故の発生を条件として支払われる金銭であり,相続との関係において,この生命保険金請求権が相続財産に含まれるのか,それとも,保険金の受取人として指定された者の固有財産となるのかが問題となる。
・保険契約者が自己を被保険者とし,受取人を特定の相続人を指定している場合
この場合は指定されている者の固有の財産に属する。
・受取人が相続人とのみ指定されている場合(特定の氏名の表示なき場合)
最判昭和40.2.2民集19巻1号1項(判タ175号103頁)
養老保険契約において被保険者死亡の場合の保険金受取人が単に「被保険者死亡の場合はその相続人」と指定されていたときは,特段の事情のない限り,右契約は,被保険者死亡の時における相続人たるべき者を受取人として特に指定したいわゆる「他人のための保険契」と解するのが相当であり,当該保険金請求者は,保険契約の効力発生と同時に,右相続人たるべき者の固有財産となり,被保険者の遺産より離脱しているものと解すべきである。
イ 死亡退職金
・受給権者が法令で定まっている場合
国家公務員退職手当法は,死亡退職金の受給権者は「遺族」とされ,その範囲及び順位は,@配偶者(内縁も含む),A子,父母,孫,祖父母及び兄弟姉妹で,職員の死亡時主としてその収入により生計を維持していた者,Bその職員の死亡当時主としてその収入により生計を維持していた親族などと定められている。国家公務員共済組合法及び地方公務員についても同様の定めがある。
この場合,民法に定める規定と異なり,生計を同一にしていた遺族の生活を保障する趣旨であることから,受給権者である遺族の固有の権利であると解している。
・受給権者が法人の内部規程で定められている場合
社内規程には,@労働基準法施行規則42条ないし45条(国家公務員退職手当法と同様な規定)を準用する旨の定めをするもの,A遺族に支給すると定めているもの,B相続人に支給すると定めているものがあるが,いずれも,受給権者たる固有の財産となる(ただし,相続人に支給するとの定めの場合は,学説では,受給権者たる相続人の固有の権利であるとする説,相続財産に属し,受給権者とされた相続人はただ相続人の代表者として受領するに過ぎないとする説がある。)。
・受給権者が法人の社内規程で定まっていない場合
最近の傾向として,死亡退職金を受給権者固有の権利であるとする範囲を拡大しつつあるところ,現在明確には定まっていないが,受給権者固有の権利であると解すべきであると思われる。
ウ 遺族給付金
遺族給付とは,社会保障制度の特別法によって,死者と一定の関係にある親族に対してなされる給付を総称し,損失補償,遺族年金,弔慰金,葬祭料等が含まれる。
これについても,遺族固有の権利と解すべきとされている。
エ 3か月の熟慮期間
最判昭59.4.27
第1審で貸金の連帯保証債務の敗訴判決を受けた債務者が死亡。
この相続人が,被相続人の死亡の事実自体は死亡日ないしはその後間もなく知りえたが,被相続人と没交渉であったことから第1審判決も知らず,また,被相続人の資産は全くないと誤信して相続についての手続きをとらずに放置。
被相続人死亡から1年経過後に第1審判決の送達を受けた事案。
→ 相続するべき財産が存在しないと信じ,かつ,そう信じるについて相続人側に相当な理由があった場合には,相続放棄をするかどうかの必要性すら思い至らないこともあるから,このような場合には,3か月の熟慮期間が進行するのは,相続財産の全部または一部の存在を認識したときまたはこれを認識しうべき時から起算する。
※次順位の相続人にも連絡
※団体信用生命保険
B和解交渉(任意整理)
C特定調停
D過払請求(訴訟)
E破産
F民事再生
2 相談のポイント
@負債の状況
A収入の見込み額
B財産の状況
C債務者の置かれた状況
D債務者の希望
E家計の状況
3 相談者から聴取すべき事項
@負債の状況
各債権者ごとに,「最初の借入年月日」「支払状況」「残債務額」「保証人または担保の有無」を確認する。
(契約書,支払伝票,利用明細書等)
サラ金,信販会社,商工ローン,ヤミ金,銀行の区別
A相談者の収入の状況
手取り収入,同居家族の収入,児童手当,児童扶養手当,年金,生活保護などの公的扶助があるかも確認する。
将来の収入の見込みについても確認しておく。
(給与明細書,源泉徴収票,課税証明書等)
B財産の状況
預貯金通帳,退職金見込み額の証明書,生命保険(解約返戻金),社内積立預金,車検証,不動産評価額証明書,登記事項証明書等により確認。
また給与明細書の控除科目において,会社からの借入や財形貯蓄,社内保険等が判明する場合あり。
C債務者の置かれた状況
借入原因を尋ね,生活費のための借入れかギャンブルか,その他(無理な住宅ローンの返済や事業の失敗か,あるいは名義貸しか等),借金原因の根本原因を探求する。
D債務者の希望
債務者が,各手続きのメリット・デメリットを説明したうえで,どの手続きを選択をするかの自由を与える。
E家計の状況
毎月可能な可処分所得を算出する。家計の状況はできるだけ領収書等に基づいて記載させ,領収書のない出費にも注意を図る。
家計支出で,家族内で借金をしている者がいればその弁済額についても支出として計上し,この者にも整理を検討してもらう。
Fその他
借金以外の滞納税金や滞納家賃の把握。
サラ金業者ではない,個人(知人や親類等から)の借入状況と負債総額。
本人の債務を整理するための親族等の協力者の有無(しかし例え親族等の余力がある者がいたとしてもその強要はできない)。
4 相談者に注意してもらう点
@破産,民事再生を選択した場合には,官報に公告されるためヤミ金業者等がDM等によって融資の勧誘があることを説明する(名簿屋の存在)。総量規制問題。
A新たな借金の禁止
B債権者からの法的な請求がなされている場合の対処
支払督促に対する異議の申立て,答弁書の提出,上訴,請求異議の訴え,差押禁止債権の範囲の変更申立て,調停前の措置命令の申立て,破産・再生開始決定後の強制執行中断等(破産法249条1項,再生法39条1項)の手続きが必要となる。
C実務家か整理を行う場合,本人が特定調停を行う場合,信用情報機関に登録されることも伝える必要がある。
D自動引落し口座の解約等
債権者平等の原則により,整理後一部債権者のみに対する弁済は控えるべきであるため,引落しの中止依頼,口座の解約等を行っておく(破産の場合には偏頗弁済となり得る。)。
E給与・年金振込口座の開設銀行等からの借入れがある場合
銀行側は預金債務との相殺規定により相殺の対象となってしまう可能性があるため,勤務先に給与振込口座の変更等を依頼する。
ただし,裁判所への申立てまたは支払停止を債権者が知った後に,給与・年金等が口座に振り込みまれた場合には,相殺制限の規定により,振り込まれた給与・年金等の払戻しを受けることは可能と思われる(破産法71条,再生法93条2項,札幌地判平成6.7.18消費者法ニュース22号31頁)。しかし,この場合には額の確定のため口座が凍結される可能性がある。
クレジット等の引き落としが給与振込口座と同一の場合には,意に反して給与が振り込まれた段階でクレジット等の引き落としがかかる場合があるのでこれにも注意を要する。
F保証人,物的担保,公正証書,所有権留保物件がある場合の対処
G家族への影響
5 相談者の今後の将来設計 ・ 自動車の車検 ・アパートの更新料 ・子供の進学 ・病気 ・冠婚葬祭 ・ 出産 ・友人,知人への返済 ・滞納家賃 ・公租公課 など
第2章 手続き振り分けの前提問題として
第1 破産手続き
1 千葉地方裁判所の運用等
(1)千葉地裁本庁の統計
| 平成14 | 平成15 | 平成16 | 平成17 | 平成18 | 平成19 (6月まで) |
|
| 破産事件 | 4097 | 4709 | 3842 | 2327 | 1766 | 717 |
| 管財事件 | 286 | 479 | 594 | 523 | 395 | 208 |
| 管財率 | 6.98 | 10.17 | 15.46 | 22.48 | 22.37 | 29.01 |
(2)千葉地裁の運用基準
管財事件への振分基準
・法人破産
・法人代表者
・個人事業者(ただし,事業の規模,負債額等によっては同廃も可能)
・負債総額が5000万円以上の場合(ただし,保証債務,住宅ローン債務を除く)
・偏頗弁済がある場合(否認権行使の見込まれる場合)
・財産清算の必要性がある場合(不動産を所有している場合,預貯金や生命保険解約返戻金,株式,退職金見込額の8分の1などの換価可能財産が20万円を超える場合=これら金員から予納金を納める)
※生命保険について,解約を強制されるわけではない(高齢者の場合等)。
解約しない場合には積立てを行い,配当等に回す。
・不当利得返還請求権の行使が可能な場合
・免責調査型(2度目の破産も含む)
・差押解除型(給与等の差押の場合)
2 破産選択の考察
(1)資格制限
(2)保有財産の有無
(3)免責不許可事由の存在
(4)自宅保有の必要性
3 免責が認められても支払義務の残るもの
(1)租税等の請求権
(2)破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
判例として,「月収額から生活費等を控除すると既に負担している借入金債務を返済できない状況にもかかわらず,それを秘して発行を受けたクレジットカードを利用して破産申立て前に商品等を購入し,その後破産宣告及び免責決定を受けた債務者について,商品等の購入の際に立替金債務の支払いが滞ることを十分に認識していたと推認し,旧破産法366条ノ12第2号の悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求が認められた。」(最判平成12.1.28金商1093号15頁)。
(3)破産者が故意または重大な過失により他人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
(4)夫婦間の協力及び扶助義務(民752条),婚姻から生ずる費用の分担の義務(民760条),子の監護に関する義務(民766条・749条・771条・788条),親族間の扶養義務(民877条から880条)
(5)雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
給与債権や退職金債権などをいう。
(6)破産者が知りながら債権者名簿の記載をしなった請求権(破産手続開始決定があったことを知っていた債権者を除く)
免責に関する意見陳述の機会を奪われたため
(7)罰金等の請求権
制裁的側面を重視して
4 免責不許可事由
(1)債権者を害する目的で破産財団に属し,または属すべき財産の隠匿,破壊,債権者に不利益な処分その他破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと
(2)破産手続の開始決定を遅延させる目的で,著しく不利益な条件で債務を負担し,または信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと(クレジットを利用した換金等)
(3)特定の債権者に対する債務について,当該債権者に特別の利益を与える目的または他の債権者を害する目的で,担保の供与または債務の消滅に関する行為であって,債務者の義務に属せず,またはその方法もしくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと(偏頗弁済等)
破産原因たる事実を債務者が知っていたことを要しない。そのため客観的に支払不能であれば該当する。また,これらの行為を他の債権者を害する目的で行った場合には,「特定の債権者に対する担保の供与等の罪」となる(破産法266条)。
(4)浪費または賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ,または過大な債務を負担したこと
(5)破産手続開始の申立てがあった日の1年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に,破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら,当該事実がないと信じさせるため,詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと
(詐術の解釈として,「破産者が単に支払不能等の破産原因事実があることを黙秘して相手方に進んで告知しなかったことのみでは「詐術ヲ用ヒ」(旧破産法366条ノ9第2項)に該当しないとする裁判例あり(大阪高決平成2.6.1判時1370号70頁)。」
(6)業務及び財産の状況に関する帳簿,書類その他の物件を隠匿し,偽造し,または変造したこと
なお,これらの行為を債権者を害する目的で行った場合,「業務及び財産の状況に関する物件の隠滅等の罪」(破産法270条)に該当する。
(7)虚偽の債権者名簿を提出したこと
(8)破産手続きにおいて裁判所が行う調査において,説明を拒み,または虚偽の説明をしたこと
(9)不正の手段により,破産管財人,保全管理人,破産管財人代理または保全管理代理の職務を妨害したこと
(10)次の事由の何れかがある場合において,それぞれ定める日から7年以内に免責許可の申立てがあったこと
@免責許可の決定が確定したこと・当該免責許可決定の確定の日
A給与所得者等再生が遂行されたこと・当該再生計画認可決定の確定の日
Bハードシップ免責が確定したこと・当該免責決定に係る再生計画認可決定確定の日
(11)破産法40条1項1号(説明義務),41条(重要財産開示義務),250条2項(免責についての調査協力義務)に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと
※ただし,以上いずれに該当しても裁量免責決定はあり得る(破産法252条2項)。
第2 個人民事再生手続き
要件として,継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあり,再生債権の総額(住宅資金貸付債権,別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額等は除く)が5000万円以下の者が利用可能。
(給与所得者等再生の場合においては,さらに,給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって,かつ,その額の変動の幅が小さいと見込まれる者)
※現在無職でも,将来,継続的に収入を得る見込みがあれば可能
(1)小規模個人再生の利用者
利用者
将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあることが必要です。
具体的には
(ア)給与収入を得ている人(サラリーマン)
(イ)自営業者
(a)小売業,喫茶店,美容院,クリーニング店等の個人商店で日銭収入がある者
(b)農業・漁業者など
農業者は,収入が一定時期に限られていたりしますが,農業者は,少なくとも1年に1回以上は収入が見込まれ,この1回の収入から弁済原資を貯めておくことによって3か月に1回以上の弁済をすることが可能ですから要件に該当します。
漁業者についても,例えば遠洋業業者も上記と同様に一時弁済原資をプールしておき,これを3か月に1回以上の割合で弁済することは可能と考えられます。
(c)不動産業者
安定した収入があるとはいえませんが,一定期間を均せば安定しており,再生計画の履行が可能と見込まれれば要件を満たします。
(ウ)不動産賃貸業者
不動産を有しており,家賃収入で生計を立てている者も,労働の対価といえませんが,要件を満たします。
しかし,不動産を有しているということにより,清算価値の問題が発生するので,実際には難しいと考えられます。
(エ)年金生活者
(オ)アルバイトやパートタイマー
(カ)会社役員
エ 利用できない者
(ア)生活保護受給者
生活保護とは,国が最低限の生活を保障する制度であることを考えると,再生手続による救済は予定していないと考えられます。
(イ)無職
ただし,就職が決まっており,再生手続開始決定までには収入を得ている見込みがあれば可能です。
(ウ)失業保険受給者
3年間は弁済が継続するため,失業保険での弁済はできないと考えられます。
(エ)専業主婦
個人再生手続では,夫の収入で弁済をしたりなどはできません。これは,債務者以外の者が債務を引き受けたり,保証人になったりする規定が適用除外となっており,また,対人主義を採っているため,申立人である個人債務者自身が,継続的に反復して収入がなければならないのです。
(オ)養育費受領者
養育費は,子供の養育のために支払われる性質のものであるため,個人再生債務者に帰属することはないためであります。
(2)給与所得者等再生の利用者
(ア)サラリーマン
(イ)アルバイトやパートタイマー
継続的に勤務している場合は,年収を基準とした場合に,変動幅が少なければ利用することができます。
(ウ)歩合給のタクシー運転手
固定給部分と歩合給部分が併存している業務であっても,変動の幅が少なければ可。
(エ)生命保険外交員
これも(ウ)と同様に可。
(オ)使用者兼取締役
変動の幅が少なければ可。
(カ)現在無職
給与所得者等再生を行うことを求める時点では,「定期的な収入を得る見込みがある者」(239条1項)で足り,再生計画の認可・不認可の判断の時点までに「定期的な収入を得ている者」(241条2項4号)に該当していればよいため,現在内定等があり将来の安定した収入が確保できそうであれば申立てが可能。
(キ)兼業農家
農業収入が収入全体のうち20パーセントを超えることがあり得なければ利用ができる。
(ク)年金や恩給受給者
(ケ)不動産賃貸業者
賃料収入は,給与に類するとはいえず,一般的には認められていない。
| 平成14 | 平成15 | 平成16 | 平成17 | 平成18 | 平成18 (6月まで) |
平成19 (6月まで) |
|
| 給与所得者等再生 | 104 | 82 | 62 | 50 | 32 | 18 | 8 |
| 小規模個人再生 | 119 | 259 | 259 | 403 | 426 | 206 | 222 |
1 小規模個人再生と給与所得者等再生の対比
| 小規模個人再生 | 給与所得者等再生 | |
| 対象者(原則) | 個人事業主等 | サラリーマン等(年金や恩給受給者・パート含む) |
| 債権者の異議 | 頭数の半数,かつ,議決権総数の過半数の積極的な異議がなければ可決 | 債権者の消極的同意不要(裁判所の認可のみ) |
| 住宅資金貸付債権 | 特則可(※セカンドハウスは不可) | 特則可(※セカンドハウスは不可) |
| 返済総額 | 債権の額の5分の1か清算価値の額の大きい方の額を原則3年で弁済(注1) | 左に加え,可処分所得(注2)の2年分と比較して一番大きい方の額を原則3年で弁済 |
| ハードシップ免責 | あり | あり |
| 再度の申立て | 何度でも事実上可能 | 認可確定後7年間は同手続きは不可 |
| その後の破産 | 不認可事由とならない | 認可確定から7年間は免責不許可事由に該当 |
| 過去に破産免責を得ている場合 | 不認可事由とならない | 免責確定から7年間は不可 |
| 資格制限 | なし | なし |
| 破産法上の免責不許可事由 | 利用可 | 利用可 |
(注1)
再生債権額が100万円未満=その額
再生債権額の5分の1が100万円以下=100万円
再生債権額が500万円を超え1500万円以下=5分の1
再生債権額が1500万円を超え3000万円以下の場合=300万円
再生債権額が3000万円を超える場合=10分の1の額
(注2)
@再生計画案提出前2年間の定期的収入の合計額
A再生計画案提出前2年間の所得税,県税,住民税,社会保険料の額
B最低限度の生活費で政令で定める額
可処分所得の下限=((@−A)÷2−B)×2
2 住宅資金特別条項
住宅資金貸付債権とは,住宅の取得のため(土地の取得も含む)の抵当権である。
後順位に住宅資金貸付債権以外の担保権の設定があれば利用不可。
保証会社から代位弁済を受けている場合でも6か月以内であれば可能。
金融機関との事前協議が重要である。
住宅資金貸付債権に関する特則(法第10章)
住宅資金貸付債権手続は,住宅ローンの支払対処の制度であり,小規模個人再生,給与所得者等再生だけでなく,通常の民事再生手続を選択した個人も利用できる制度であります。
今までの通常民事再生手続では,前述のとおり,抵当権等の担保権には別除権が与えられ,手続の開始後も自由に担保権を実行することができること(53条)とされており,また,再生計画案が認可されても,その効力は抵当権等の担保権には及ばないこととされております(177条2項)。このため,住宅ローンを抱えた債務者は,再生手続外で住宅ローン債権者の個別の同意を得ない限り担保権の実行を回避することができませんでした。
そこで,住宅資金貸付債権に関する特則において,個人債務者が,生活の基盤である自宅を手放さずに経済的再生を果たすことを可能にするため,特別な扱いをする必要性からこの制度が誕生したのです。
この制度は,再生計画の中に既に弁済期が到来している住宅ローン債権の弁済期について新たに条項を盛り込むことができるようになり,@期限の利益回復型(199条1項(原則型)),すなわち債務不履行部分を再生計画期間内に支払って約定返済に戻るようにするものと,Aリスケジュール型(同条2項(最終弁済期延長型)),すなわち@の原則型で遂行できる見込みがない場合には10年以内で債務者が70歳以内の期限まで弁済期を延長することができる,B(同条3項(元本据置型)),一定期間(一般再生債権の弁済期間)元金の一部を据え置くものやC同意型のものが予定されております。
住宅資金特別条項を設けた再生計画案の決議においては,住宅ローン債権者や保証会社は議決権を有しないものとされており(201条1項),その代わり,裁判所は,住宅ローン債権者の意見を聴取しなければならないとされております(同条2項)。
そして,住宅資金特別条項を定めた再生計画案が無事認可されたときは,その効力は自宅に設定された抵当権等にも及び(203条1項),再生債務者が再生計画に基づく弁済を継続していく限りにおいては自宅に設定されている抵当権等の実行を回避することができるのです。
※保証人等への影響
特別条項による権利変更は保証人や物上保証人に対しても効力を及ぼすこととされております。
第3 任意整理と特定調停の対比
| 任意整理 | 給与所得者等再生 | |
| 手続き追行者 | 実務家 | 本人(または実務家) |
| 費用 | 着手金と報酬金が必要 | 本人が行えば低廉(収入印紙500円と予納郵券代) |
| 取立の中止 | 実務家の受任通知 | 本人が事件番号を債権者に連絡 |
| 実施場所 | 実務家の事務所 |
簡易裁判所(相手方の本店・営業所を管轄する) 申立書を提出する日もカウントすれば最低でも4回程度以上は裁判所に出頭しなければならない |
| 債務名義化 | しない | する |
| 将来利息 | 免除 | 免除(一部強硬な債権者には付加する場合あり) |
| 遅延損害金 | 免除 | 約定支払日の翌日から調停成立日までの損害金が付加される |
| 過払い金の回収 | 債務整理と同時に可能 | 特定調停の中では不可 |
| 元本カット | 本人の生活状況により可能 | 稀に可能 |
| 信用情報機関への登録 | あり | あり |
| 履行の管理 | 実務家事務所において可能 | 本人の自己管理 |
特定調停
1 特定調停法2条1項
特定債務者とは・・・@金銭債務を負っている者,A支払不能に陥るおそれのあるもの若しくは事業の継続に支障を来たすことなく弁済期にある債務を弁済することが困難であるもの,Bまたは債務超過に陥るおそれのある法人をいう。
※個人,法人を問わず要件に合致すれば申立て資格があるが,債権者申立てはない。
※借入先が1社であっても,上記に該当すれば可能。
※相手方が一部の債権者だけの申立ても認められる。
しかし,この場合に,一部債権者を除くことにより,公正・平等な解決が図られるか問題点が残ります。
2 多数債権者がいる場合の処理
民事調停法3条によれば,調停申立ての管轄は,「相手方の住所,居所,営業所若しくは事務所の所在地を管轄する簡易裁判所又は当事者が合意で定める地方裁判所若しくは簡易裁判所の管轄とする。」との規定があるが,特定調停法4条により一括処理が可能です。
3 民事執行手続の停止(特定調停法7条)
特定調停が係属した裁判所(特定調停の申立後)が,特定債務者の財産に対して実行されている執行手続きの停止を求める制度です。実務上は,特定調停の申立てと同時にこの民事執行停止の申立てを行う(特定調停の申立てに先行して執行停止の申立てはできない)。
《立担保》
@判断基準
民事調停規則では,執行停止を命ずる場合,必ず債務者に対して担保を立てさせますが(民事調停規則6条1項),特定調停では担保提供の資力のない債務者にも経済的再生の途が広く開かれるように,裁判所は裁量により担保不要で執行停止を命ずることができる建前となっています。
A実務の運用
ア 無担保で命じられた例は極めて少ないですが,以下の例が報告されています。
a 他の債権者を出し抜いて債権回収を図ろうとして,債務者からの債務整理の通知を受けた直後に,公正証書に基づき給与債権を差押えた事例
b ほとんどの債権者が任意整理や特定調停に応じる旨の意向を示しているのに,事前交渉を強硬に拒絶し,公正証書による給与債権の差押の申立てをした事例
イ 執行停止の効果
執行命令を得た後,停止命令正本を執行機関に提出すれば,当該執行手続は特定調停終了までの間,一時的にその進行を停止します。
なお,この停止命令は,執行手続が当然に停止されるものでないことに注意しなければなりません。
4 調停前の措置命令
現状の変更または物の処分の禁止その他調停の内容たる事項の実現を不能にしまたは著しく困難ならしめる行為の排除であり,措置命令の対象者は事件の相手方並びに利害関係人です。
《実務》
実務では,特定の商工ローン業者と超高金利業者を対象者とする約束手形金・小切手の取立等の禁止を求めるものがほとんどです。
5 調停に代わる決定(民事調停法17条)
調停が成立する見込みのないときに,裁判所の職権で決定される。
≪意義≫
本条は,調停が成立する見込みがない場合において,事案により,調停裁判所に,調停の解決のために必要な決定をなし得る権限を認めた規定である。
立法趣旨は,「当事者の一方の頑固な恣意により,または僅かな意見の相違によって,調停が不成立に終わるならば,それまでの手続きは徒労に帰し,調停制度の実効を収められないことになる。このような場合に,裁判所が調停条項に代わるものとして事件の解決のために必要な裁判をなし得る制度は,旧法から採用されており(鉱害調停を除き),この裁判が抗告をもってのみ不服を申し立て得る強制解決の手段であることから,いわゆる調停制度における「伝家の宝刀」として運用されていた。裁判所が従来の調停に経過に照らし,当事者双方のために衡平にかない,紛争解決のために適切妥当と考えるところを,このような裁判の形で明示することは,事実上当事者に反省の機会を与え,これを機縁として紛争が終局的に解決される場合も多いと考えられるので,本法においてもこの制度を維持することとなったのである。」(最高裁民事局・逐条解説80頁)
≪要件≫
ア 裁判所が相当と認めるとき
イ 調停委員会の意見を聴いて
ウ 当事者双方の衡平を考慮し
エ 一切の事情を見て
オ 当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で決定される。
6 調停不成立
調停申立ての「取下げ」ではなく,「調停不調」にしてもらう。=弁済のための努力の結果を残す。
業者の中には,自分たちの都合のよい弁済案を押し付け,「調停が不調になると元に戻るぞ。」と強引な和解案を飲ませようと脅迫まがいの言動をする業者も一部あるようですが,次の対処を行う。
@ 不調後の不当な取立てには何度でも行政処分を求める。
A 業者から出た計算書を謄写請求して,残がなければ支払いを拒絶。
B 再度の特定調停の申立て(その間にお金を貯める)。
無理な合意は絶対に避ける(弁済計画案以上の支出を強要される場合には,合意をするより不調の方がよいし,そもそも1回目より返済が困難である。さらに強制執行をうける虞がでてくる)。
第7 特定調停申立ての選択基準と問題点
1 メリット
@ 簡易裁判所で調停委員を介して業者と返済計画について交渉できる。
A 取引履歴開示義務が明文で認められている。
B 強制執行の停止手続の特則がある。
C 調停前の措置命令を利用できる。
D 本人でもできる(請求停止の効力が本人でも得られる)。
E 費用が低廉である。
F 期日管理と資料管理を裁判所が行うため管理が容易である。
G 保証人がいる場合,主債務者と同一の申立書で申立てが可能である。
2 デメリット
@申立書の作成と提出に時間と労力を要する。
A任意整理と比較して和解内容が有利とはいえない。
ア 将来利息について
特定調停の実務では,将来利息は原則としてつけないものの,銀行系金融機関における長期ローンや企業対企業の案件,担保付ローン,公正証書等がある場合では将来利息を付して調停が成立する場合もある。
イ 遅延損害金について
未払いを想定すると,約定期日の翌日を起算日として合意成立までの遅延損害金が付加される。
B支払期間が3ないし5年間の長期間に及ぶため,その間に失業や病気などで支払いが停止すると強制執行を受ける可能性がある。
C支払い不能に陥った場合,再生や破産の手続に変更せざるを得ないため2重の手間がかかる。
D利息制限法に基づく再計算
※取引当初からの計算をしたか?
E相手業者の不開示
※資料を見せない調停委員が多いため,不開示であったのかどうか不明。
民事調停規則23条により調停記録の謄写をして,精査する必要がある。
調停委員会に対して,文書提出命令の発令を促す。
F返済回数の制限
G保証人の強制
H債務名義化
I過払金が発生している場合,特定調停手続内では難しいのが現状。
3 一般基準
@借りてからの期間が長期間である。
A借金総額がそう多くはない。
B債権者数が概ね5〜10社程度である。
C債務者が,比較的収入が多く,仕事も安定している。
Dまとまった返済原資が用意できる。
E自営業者が営業を継続しながら借金を整理する。
F債務者が不動産等の財産を所有している。
G免責不許可事由が著しく大きく破産の選択が困難である。
H本人がある程度,過去の取引を把握している。
4 全国での特定調停の問題点
(1) 裁判所によっては,引き直し計算を行わないことや,そもそも支払義務のない第三者や家族を保証人にさせられる例も報告されています。
(2) 業者に言われるがままに一括返済を半強制する調停委員もいる。
(3) 申立人の夫の同意書を調停委員が要請した。
(4) 原則36回払いだから,それ以上の分割弁済の話は自分で交渉してみは・・・。
第8 実際の主な流れ(資料2)
調停の申立て→約1か月移行先に特定債務者本人と調停委員との面談(負債状況,支払原資の確認作業等)→さらに約1か月後以降に債権者を交えた調停期日(債権者は出頭せず,上申書また意見書などで言い分を書面で提出することも多く,債権者の全員が参加するとは限らない。また17条の決定を求める旨の上申書を出す債権者もいる)→調整がつかない場合にはもう1期日→合意・調停成立・不成立・17条決定で終結
第3章 不当利得返還請求
1 最高裁判決
(1)平成15年7月18日最高裁第二小法廷判決(民集57巻7号895頁)
「同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付とその返済が繰り返される金銭消費貸借取引においては,借主は,借入総額の減少を望み,複数の権利関係が発生するような事態が生じることは望まないのが通常と考えられることから,弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果当該借入金債務が完済され,これに対する弁済の指定が無意味となる場合には,特段の事情のない限り,弁済当時存在する他の借入金債務に対する弁済を指定したものと推認することができる。・・・また,法1条1項及び2項の規定は,金銭消費貸借上の貸主には,借主が実際に利用可能な貸付額とその利用期間とを基礎とする法所定の制限内の利息の取得のみを認め,上記各規定が適用される限りにおいては,民法136条2項ただし書の規定の適用を排除する趣旨と解すべきであるから,過払金が充当される他の借入金債務についての貸主の期限の利益は保護されるものではなく,充当されるべき元本に対する期限までの利息の発生を認めることはできないというべきである。・・・したがって,同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付とその返済が繰り返される金銭消費貸借取引において,借主がそのうちの一つの借入金債務につき法所定の制限を超える利息を任意に支払い,この制限超過部分を元本に充当してもなおも過払金が存する場合,この過払金は,当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り,民法489条及び491条の規定に従って,弁済当時存在する他の借入金債務に充当され,当該他の借入金債務の利率が法所定の制限を超える場合には,貸主は充当されるべき元本に対する約定の期限までの利息を取得することができないと解するのが相当である。」
※なお,上記と同様の判断は,平成15年9月11日最高裁第一小法廷,同月16日最高裁第三小法廷に引き継がれ,最高裁裁判官の一致した考えが明らかにされた。
(2)平成17年7月19日最高裁第三小法廷(民集59巻6号1783頁)
「一般に債務者は,債務内容を正確に把握できない場合には,弁済計画を立てることが困難となったり,過払金があるのにその返還を請求できないばかりか,更に弁済を求められてこれに応ずることを余儀なくされるなど,大きな不利益を被る可能性があるのに対して,貸金業者が保存している業務帳簿に基づいて債務内容を開示することは容易であり,貸金業者に特段の負担は生じないことにかんがみると,貸金業者は,債務者から取引履歴の開示を求められた場合には,その開示要求が濫用にわたると認められるなど特段の事情のない限り,貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借の附随義務として,信義則上,保存している業務帳簿(保存期間を経過しているものを含む)に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負うものと解すべきである。そして,貸金業者がこの義務に違反して取引履歴の開示を拒絶したときは,その行為は,違法性を有し,不法行為を構成するものというべきである。」
(3)平成18年1月13日最高裁第二小法廷(民集60巻1号1頁)
「そして,本件期限の利益喪失特約は,法律上は,上記のように一部無効であって,制限超過部分の支払を怠ったとしても期限の利益を喪失することはないけれども,この特約の存在は,通常,債務者に対し,支払期日に約定の元本と共に制限超過部分を含む約定利息を支払わない限り,期限の利益を喪失し,残元本全額を直ちに一括して支払い,これに対する遅延損害金を支払うべき義務を負うことになるとの誤解を与え,その結果,このような不利益を回避するために,制限超過部分を支払うことを債務者に事実上強制することになるものというべきである。 したがって,本件期限の利益喪失特約の下で,債務者が,利息として,利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には,上記のような誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り,債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできないと解するのが相当である。」
(4)平成19年2月13日最高裁第三小法廷(民集61巻1号182頁)
「貸主と借主との間で基本契約が締結されていない場合において,第1の貸付けに係る債務の各弁済金のうち利息の制限額を越えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生し(以下,この過払金を「第1貸付け過払金」という。),その後,同一の貸主と借主との間で,基本契約が締結されているのと同様の貸付が繰り返されており,第1の貸付けの際にも第2の貸付けが想定されていたとか,・・・上記特段の事情のない限り,本件第1貸付けに係る債務の各弁済金のうち過払金となる部分は,本件第2貸付けに係る債務に充当されないというべきである。」
≪補足≫
特段の事情とは
ア 同一貸主・借主間で,同種の基本契約が締結されているのと同様の貸付けが繰り返されており,第1貸付けの際にも第2の貸付けが想定されていた場合
イ 同一の貸主と借主の間に,第1貸付けの過払金の充当に関する特約が存在する場合
ウ 上記アまたはイと同視し得るような事情が存在する場合
(5)平成19年6月7日最高裁第一小法廷(民集61巻4号1537頁)
「弁済によって過払い金が発生しても、その当時他の借入金債務が存在しなかった場合には、上記過払い金は、その後に発生した新たな借入金債務に当然に充当されるものということはできない。(略)そうすると、本件各基本契約は、同契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果、過払い金が発生した場合には、上記過払い金を、弁済当時存在する他の借入金債務に充当することはもとより、弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。」
(6)平成19年7月13日(同日に対エイワに対し同主旨の判決あり)いずれも最高裁第二小法廷
「利息制限法の制限超過利息を受領した貸金業者が判例の正しい理解に反して貸金業法18条1項に規定する書面の交付がなくても同法43条1項の適用があるとの認識を有していたとしても,民法704条の「悪意の受益者」の推定を覆す特段の事情があるとはいえないとされた事例」
(7)平成19年7月17日最高裁第三小法廷
貸金業者が利息制限法の制限超過利息を受領したがその受領につき貸金業法43条1項の適用が認められない場合と民法704条の「悪意の受益者」であることの推定
「貸金業者が,制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが,その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められないときは,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識をするに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである。」
(8)平成19年7月19日最高裁第一小法廷
「・・・従前の貸付けの切替え及び貸増しとして,長年にわたり同様の方法で反復継続して行われたものであり,・・・前回の返済から期間的に接着し,前後の貸付けと同様の方法と貸付条件で行われたものであるというから・・・本件各貸付けが1個の連続した貸付取引である以上,本件各貸付けに係る金銭消費貸借契約も,本件各貸付けに基づく借入金債務について制限超過部分を元本に充当し過払金が発生した場合には,当該過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。」
(9)平成20年1月18日最高裁第二小法廷(民集62巻1号28頁)
「1 同一の貸主と借主との間で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務について利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが,その後に改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合には,第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り,第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は,第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されない。
2 同一の貸主と借主との間で継続的に金銭の貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務について利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが,その後に改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合において,下記の事情を考慮して,第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず,第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができるときには,第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を第2の基本契約に基づく取引により生じた新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するものと解するのが相当である。 」
≪補足≫
事実上1個の連続した貸付取引の考慮される事情
ア 第1取引期間の長さ
イ 空白期間の長さ(アとの比較考量)
ウ 契約書返還の有無
エ カードの失効手続きの有無
オ 空白期間における貸主と借主の接触状況
カ 第2の基本契約が締結された経緯
キ 利率の異同等
を総合考慮して判断
(10)平成21年1月22日最高裁第一小法廷
「継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,借入金債務につき利息制限法1条1項所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生したときには,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合は,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効は,特段の事情がない限り,上記取引が終了した時から進行する。」
※空白期間1226日
(11)平成21年3月3日最高裁第三小法廷
ア 遅くとも昭和54年1月18日以前から控訴人(原告)と被控訴人(プロミス)とは、基本契約に基づく継続的金銭消費貸借取引が継続していた。その基本契約には、自動更新条項が含まれていた。
イ 昭和57年1月18日以前からの取引は平成7年12月10日に一旦完済し取引が一旦中断した。
ウ 第1取引により一旦完済した取引が約3年3ヶ月後の平成11年3月26日に再開した。その第1取引にかかる過払い金が,平成11年3月26日に再開した第2取引にかかる貸付金に充当できる,と判断した。
エ 第2取引開始にあたり第1取引と異なる会員番号が付されていた。
オ 第2取引開始にあたりプロミスの与信調査は,本人確認資料の提示のみに終わり,収入資料の提出などは求められなかった。与信調査は緩やかであった。
カ 第1取引と第2取引において,@自動更新条項の存在,Aカードの継続的使用,Bプロミスからの貸付の勧誘,C与信調査の状況などから、特段の事情がない限りは当事者間に充当の合意が存在すると判断した。
≪判決要旨≫
「継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合には,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効は,特段の事情がない限り,上記取引が終了した時から進行する。」
つまり,
「過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引継続中は過払金充当合意が法律上の障害となるというべきであり,過払金返還請求権の行使を妨げるものと解するのが相当である。」
※原審(名古屋高裁)では,「過払金に係る不当利得返還請求権は,個々の弁済により過払金が生じる都度発生し,かつ,発生と同時に行使することができるから,その消滅時効は,個々の弁済の時点から進行するというべきである。」個別に時効が進行するため10年以上前の分は時効にかかると判示した。
(12)平成21年3月6日最高裁第二小法廷
「過払金充当合意においては,新たな借入金債務の発生が見込まれる限り,過払金を同債務に充当することとし,借主が過払金返還請求権を行使することは通常想定されていないというべきである。・・・借主は基本契約に基づく借入れを継続する義務を負うものではないので,一方的に基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引を終了させ,その時点において存在する過払金を請求することができるが,それをもって過払金を発生時からその返還請求権の消滅時効が進行すると解することは,借主に対し,過払金が発生すればその返還請求権の消滅時効期間経過前に貸主との間の継続的な金銭消費貸借取引を終了させることを求めるのに等しく,過払金充当合意を含む基本契約の趣旨に反することとなるから,そのように解することはできない。したがって,過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は,過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り,同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である。」
(13)平成21年4月14日最高裁第三小法廷
「記録によれば,上告人は,上記期限の利益の喪失後は,本件貸付けに係る債務の弁済を受けるたびに,受領した金員を「利息」ではなく「損害金」へ充当した旨記載した領収書兼利用明細書を交付していたから,上告人に期限の利益の喪失を宥恕し,再度期限の利益を付与する意思はなかったと主張していること(以下,この主張を「上告人の反対主張」という。),上告人は,これに沿う証拠として,上記期限の利益の喪失後に受領した金員の充当内容が記載された領収書兼利用明細書と題する書面を多数提出していること,これらの書面のうち,平成13年1月9日付けの書面及び受領金額が2737円と記載された同年2月6日付けの書面には,受領した金員を上記期限の利益を喪失した日までに発生した利息に充当した旨の記載がされているが,受領金額が8万6883円と記載された同日付けの書面及びこれより後の日付の各書面には,受領した金員を上記期限の利益を喪失した日の翌日以降に発生した損害金又は残元本に充当した旨の記載がされていること,この記載は,残元本全額に対する遅延損害金が発生していることを前提としたものであることが明らかである。上告人が,上記期限の利益の喪失後は,被上告人Y1に対し,上記のような,期限の利益を喪失したことを前提とする記載がされた書面を交付していたとすれば,上告人が別途同書面の記載内容とは異なる内容の請求をしていたなどの特段の事情のない限り,上告人が同書面の記載内容と矛盾する宥恕や期限の利益の再度付与の意思表示をしたとは認められないというべきである。そして,上告人が残元利金の一括支払を請求していないなどの原審が指摘する上記4(3)の事情は,上記特段の事情に当たるものではない。」→原審に差し戻し
2 過払い請求の現在の未確定の問題点
@ 取引の分断
A 債権譲渡(借り換え)
B 悪意の受益者
C 貸金業者の資力状況
D 取引履歴の10年分のみの開示
第4章 具体的事例に沿った手続きの選択
事例1
相談者A(63歳)
自営(請負大工)月額平均8万円の収入
(その他に自宅の1部屋を賃貸しており,賃料収入月額6万円)
負債状況(資料3)
同居親族:妻(55歳)(内職で月額1万円の収入)(妻自身484万円あまりの借金あり(資料4))
別居親族:子2名(長男:派遣社員・月額20万円(大学の奨学金の返済中)
長女:アルバイト・月額14万円(自動車ローンあり))
資産:自宅テラスハウス(9,226,902円の抵当権,不動産評価額は7,886,896円)
オーバーローン率: 残 債 務 額 ÷ 評 価 額
9,226,902円 ÷ 7,886,896円
= 約1.17倍
住宅ローンの支払は10ヶ月停止中
債権:請負代金45万円が未回収(ただし,相手受注元は行方不明)
借金の原因:日給の減少と子の学費からの借入
生活状況:(資料5)
対応:生活保護(資料6),破産申立,不動産売却
事例2
相談者B(55歳)
職業:会社員
月額収入:26万円
退職金(予定):320万円(40万円)
同居親族:妻(50歳)と子(25歳)の3人暮らし
(妻の借金・300万円(8社)・持病(肝臓病)・死産経験による精神障害)
(子の借金・230万円(6社)・母親から生活費が不足するということで懇請されて借金を開始。信販系で15万円を最初に借りたが,翌月に利息込みの一括返済のため,さらに借金。パートの仕事を見つけては働き始めるが,勤務先の倒産,解雇により収入が安定せず。)
住居:アパート(賃料6万5000円)
借金の総額:約480万円(11社)
借金の発端:本人の突然の入院(脳血栓)による月給の減少(22万→12万円)
生活費の状況:別添のとおり(資料7)
対応:一家で破産
問題点:本人に退職金の将来債権があり,これが20万円を超えるため少額管財事件となる(本人のみ)。そのため,裁判所の指示で20万円の予納金を支払うよう要請されるが,見込みなく,本人の申立てのみ一旦取り下げ,お金を貯めて再度の申立て。法律扶助を検討したが,立替等の制度はもう利用したくない。貯めてから申立てを行うとの強い意欲あり。)
再びBの入院等で生活が困窮する事態に遭遇した場合には,生活保護の方法を教え,子もこれまでは借金のことで頭がいっぱいで働くことが二の次であったが,支払義務を免除されたことにより,不測の事態に備えるべく再就職を果たしている。
事例3
相談者C
パート収入月額 8万円
家族構成 夫と子の3人暮らし(夫:収入28万円,子:小学2年生)
借入の状況と残債務
| 債権者 | 当初借入年 | 和解前の債務額 | 和解後の支払額 | ||
| 請求金額 | 月額 | 支払額 | 月額 | ||
| A社 | 平成12年 | 50万円 | 2.2万円 | 5万円 | 一括弁済 |
| B社 | 平成15年 | 30万円 | 1.8万円 | 10万円 | 3000円 |
| C社 | 平成16年 | 50万円 | 2万円 | 15万円 | 5000円 |
| D社 | 平成17年 | 47万円 | 2万円 | 30万円 | 8000円 |
| E社 | クレジット | 39万円 | 1.5万円 | 39万円 | 9000円 |
| F社 | 平成18年 | 30万円 | 1.5万円 | 20万円 | 5000円 |
| 合計 | 246万円 | 11万円 | 119万円 | 3万円 | |
事例4
相談者D
年齢32歳(会社員)
家族構成(両親の居宅で同居(独身))
給与:18万円
債権者数:9社
整理前の負債総額:約720万円
整理前の約定返済額:約25万円
整理後は下表のとおり:
| 債権者名 | 和解による返済額 | 毎月の返済額 | 返済回数 |
| A社 | 1,499,304 | 30,231 | 50 |
| B社 | 186,784 | 3,766 | 50 |
| Cファイナンス | 325,506 | 6,563 | 50 |
| D社 | 299,626 | 6,041 | 50 |
| E信販 | 312,861 | 6,308 | 50 |
| Fクレジット | 223,251 | 4,501 | 50 |
| G保証 | 353,189 | 7,121 | 50 |
| H社 | 364,474 | 7,349 | 50 |
| I信販 | 402,597 | 8,118 | 50 |
| 合計 | 3,967,592 | 80,000 |
※按分弁済の考え方
支払可能原資額÷支払総額×個別の支払額
本件で考えれば,
支払予定原資(8万円)÷396万7592円(これが返済率となる)
≒0.020163
I信販の場合
0.020163×40万2597円≒8117.5633円(これが月額按分返済額となる)
事例5
相談者E
年齢:51歳(パート)(働き始めたのは1年前でそれまでは体調不良により長期間働くことができない状況にあった)
給与:8万円
状況:夫と別居中で夫から生活費として月額20万円の仕送りあり(成人した子2名いる)
債権者数:11社
負債総額:900万円
借入れの原因:精神的ストレスによる買い物依存症
利息制限法に基づく計算後の負債総額:700万円
手続きの検討:
任意整理または特定調停の場合
700万円の元本を3年で支払う≒19万4444円
700万円の元本を4年で支払う≒14万5833円
700万円の元本を5年で支払う≒11万6666円
破産の場合
免責不許可事由
管財人の予納金
買い物依存症の問題
本人の希望
個人再生の検討
700万円を基準に考えると,再生計画認可決定が出た場合の支払総額は140万円で,これを原則3年で支払うとすると月額約3万8888円となる。
事例6
相談者 甲野太郎
年齢:40歳
家族構成:妻 甲野陽子(35歳)専業主婦(現在妊娠)
年収:600万円
退職金見込み額:300万円
生命保険の解約返戻金:30万円
過去に完済した貸金業者からの過払い金:30万円
預金:1万円
給料天引財形貯蓄:30万円
保有自動車あり:初年度登録平成12年の日産ラルゴ
自宅マンション:評価額証明書による額は1300万円
住宅ローンあり:残債2200万円で月額8万3333円の返済(住宅ローンを組む際,銀行よりキャッシングもできるカードも一緒に申し込むよう依頼があり,その後,このカードを利用して銀行から無担保キャッシングも別途30万円あり)
利息制限法による引き直し計算後の負債額:1500万円
(この内,保有する自動車のクレジット残債務あり)
債権者数:7社
本人の希望:自宅と自動車だけは手放したくない
手続きの検討
自宅と自動車を手放さない方法は,任意整理または特定調停を行う必要がある。
そこで,検討するに,
元本1500万円を
3年で支払う場合≒41万6666円
5年で支払う場合=25万円
1か月の返済額は25万円+8万3333円=33万3333円
生活を考えると,食費7万円・光熱費3万円・通信費2万円・保険料1万5000円・マンション管理費3万5000円・医療費2万円・駐車場代5000円・ガソリン代8000円・被服費3000円・日用雑貨費5000円・交際費6000円としても合計21万7000円が最低生活費として必要となる。
負債1500万円を5年で返済し,住宅ローンは約定どおりに支払って1か月の生活費を月給から控除すると既に赤字の家計になってしまい現実的ではない。
また,出産費用の積立て,5年以内には誕生した子の幼稚園等の出費に備えなければならないし,自動車を保有するには車検費用・駐車場代・自動車保険等の出費も想定して積立てを行わなければならず,任意整理または特定調停では相当な困難が予想される。
仮に,住宅ローンについてのみリスケジュールして住宅ローン月額が半減したとしても,それでも生活は相当圧迫されることになり,不測の事態が生じた場合には再度借金等をしなければならなくなってしまう。
そこで,相談者には自宅か自動車の何れかを手放してもらう必要が生じてくる。
本件においては,自宅を優先することにして,個人再生を検討する。
まずは,本人の保有財産の額を算出する。
1 退職金見込額 37万5000円
2 生命保険の解約返戻金 30万円
3 過去に完済した貸金業者からの過払い金 30万円
4 預金 1万円
5 財形貯蓄 30万円
以上合計128万5000円が現存する財産の額となる。
※保有自動車については,信販会社からの引き上げがあり,マンションについてはオーバーローンの状態であることから財産的価値はない。
小規模個人再生を選択した場合の返済額について検討する。
負債額1500万円を基準にすれば,最低300万円の返済を要する。
この額と財産の額の何れか大きい方を最低支払うため,本件では,
300万円>128万5000円 ということになる。
次に給与所得者等再生を検討する。
可処分所得額は別紙のとおり(資料8),366万0936円を上記に加えて考えると,
366万0936円>300万円>128万5000円ということになる。
さらに,給与所得者等再生のメリットを考察すると,債権者の数も7社あるため,このうちの半数以上が積極的に反対してくるとは現状のところ考えられないため,小規模個人再生で進めることにした。
したがって,最低弁済額は300万円でこれを原則3年間で弁済していくと月額8万3333円程であるため,住宅ローンと加算しても16万6666円の返済となりこれに最低生活費を加えても毎月お金を貯めることが可能になっていく。
事例7
相談者F(年齢65歳)女性
年金生活者(夫も年金生活者で2人合計の月額年金収入は18万円程度)
借入状況:
A社 80万円
B社 60万円
C社 70万円
D社 40万円
合計 250万円で以上何れも布団,湿気取りマット,浄水器の訪問販売による割賦債務
割賦契約をした時の状況
ある日,見知らぬ男が,F宅に突然来て,布団の無料診断をしてくれることになった。Fが拒絶するものの,昔のFの知り合いの名前を出してきて,その話にFも乗ってしまい,話し込んでしまった。
その日は帰ったが,翌日にも来訪して,F宅へ上がり込むようになり,布団を見てもらうと,「この布団を使い続けると病気になる」などの甘言を用いて,月額5000円程度のクレジットで健康によい新しい布団が買えるからという勧誘が始まった。
Fは,それでも「そんな高額な布団は必要がない。いらない。」と拒否するものの,また昔の知人の話を持ちかけてきて,その人もこの布団を購入して毎日ぐっすり眠れると言っているし,呼吸もなんだか楽になってきた等の感想を話され,半ば強引に布団購入に関するクレジットを組まされた。
その後,上記訪問販売員とは異なる男性2名が,この先に来た訪問販売員の名前を挙げて「○○さんから紹介された」ということで,これまた突然F宅に現れ,今度は,布団をしまっておく押入れが湿気がひどくて,これではせっかくの布団も台無しになってしまうなどの話をし始め,Fは,やはり必要ないと断るものの,結局長時間居座られた揚句に湿気取りマットをクレジットで購入する羽目になった。
さらに,後日,この男性2名が再びF宅を訪れ,今度は来客用の布団を強引に契約させられてしまった。
対処方法
1 任意整理OR特定調停?
2 個人再生?
3 破産?
考えうる対処方法
割賦販売法38条(支払能力を超える購入の防止)に違反するとともに,到底正常な経済活動とはいえないため,公序良俗に違反し無効(民法90条)。
1 クーリングオフ(法定書面の不交付・不備)
特定商取引法9条・割賦販売法30条の
6・30条の4
2 消費者契約法に基づく取消
不実告知 消費者契約法4条1項1号
不利益事実不告知 消費者契約法4条
2項
不退去 消費者契約法4条3項1号
退去妨害 消費者契約法4条3項2号
クレジット契約の取消 消費者契約法
4条の上記各規定
を各該当理由により5条1項で準用
3 詐欺取消
民法96条1項
4 錯誤
民法95条
5 公序良俗違反
民法90条
6 抗弁対抗
割賦販売法30条の4
事例8
相談者 夫G(75歳)と妻H(73歳)
夫G 年金(月額8万円)とアルバイト(月額3万円)
負債状況
A社 100万円
B銀行 30万円
C金融 33万円
Dカード 20万円(妻Hの連帯保証債務)
E社 25万円(妻Hの連帯保証債務)
国民健康保険 80万円(月額1万円の分割返済中)
雇用保険償還分 90万円(月額1万円の分割返済中)
以上合計333万円(保証債務除く)
妻H 年金(月額9万円)
負債状況
A社 20万円
B社 40万円
C銀行 120万円
Dカード 20万円(夫Gの保証あり)
E社 25万円(夫Gの保証あり)
F社 21万円
以上合計276万円
夫婦の月額生活費 15万円
事情聴取:
妻に借金の原因を尋ねたところ,はっきりとした記憶がないようであった。
次に,昨日の出来事や今朝食べた食事の内容を聴いたところ,これも曖昧な回答しかもらえなかった。
整理方針:
夫Gの協力も得ながら,取引履歴の開示請求を行い,計算結果によって対処する方法を結論付ける方針をとることとし,妻Hについては,神経内科医の診察を受けるように指示をする。
実際の整理:
夫Gについて
A社 120万円の過払い
B銀行 30万円の残債
C金融 100万円の過払い
Dカード(妻Hの方で対処)
E社 (妻Hの方で対処)
国民健康保険と雇用保険償還分
妻Hについて
事情聴取及び診断書の結果から,成年後見制度を利用しなければ委任契約もできないため家庭裁判所に後見開始の申立てを行う。
A社 130万円の過払い
B社 80万円の過払い
C銀行 100万円の一括(20万円の免除)
Dカード 0円(診断書と事情報告書を提出して免除)
E社 30万円の過払い(夫Gの保証債務も附従性)
F社 10万円の過払い
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