南洋真珠養殖

シロチョウガイの養殖


真珠養殖用母貝『人工種苗貝』

(PT.BUDAYA MUTIARA in LOMBOK 2001)

 By Masumi KUMETA

南洋真珠養殖の歴史

南洋真珠養殖の前進真珠貝(シロチョウガイ)採取事業が始まったのは今から150年前にもさかのぼることになります。 記録によればこの貝はオーストラリアの北東部 木曜島北部 Torres Strait 近海で1860年頃から小規模な数隻の船ではじめられた、1870年代には真珠貝漁場の発見により真珠貝採取業は飛躍的に発展し1880年頃には100隻ちかい船団となっていったそうです。それ以来貝殻採集を目的とし古く戦前より貝ボタン、手工芸、装飾品の材料として貝殻採取が事業化されました。 また最も古い記録によればフィリピンのSulu 海の漁場で1820年頃から採取がはじまったとされており、さらにこれより数百年も古くから原住民の間で貝殻、真珠、肉等が利用されていたといわれています。 日本人は貝殻採取の潜水夫として主にオーストラリア 木曜島近辺および北西部Broomに数千人が活躍しました。 第2次世界大戦 開戦前まで続けられ、戦後になって再開されましたが、オーストラリアの漁獲規制強化、プラスチックの発達による貝ボタンの不振などにより1961年に中断。 それ以後はオーストラリア業者が小規模ながら養殖用母貝供給とあわせて操業を続けて今日まで至っています。 当時の様子は 『司馬遼太郎薯 木曜島の夜会 文春文庫』に記載されている。司馬先生は実際にこの小説を書くにあたり木曜島に1週間前後滞在し、現地では当時日本人ダイバーとして有名な藤井富太郎氏から真珠採取の話を聞いています。木曜島のダイバーのほとんどが藤井氏をはじめ和歌山県出身者で、帰国し和歌山に戻った人が多くそれらの人からも話がきけました。

真珠貝採貝船( Rugger)
  (KAKUDA AUSTRALIAN PEARLS PTY.LTD. in Thursday Island 1981)

木曜島 ダイバー慰霊碑
       ( in Thursday Island 1983)

戦前の南洋真珠養殖

シロチョウガイによる真珠養殖は理学士 藤田輔世氏が三菱の岩崎小弥太氏の援助で 1916年よりフィリピンのMindanao 島 Zamboanga において調査をおこなったが、立地、治安法制上の問題で事業化を断念し、新たにインドネシアのButon 島を最適地と判断し1922年政府より漁業権を得て鳳敦真珠養殖研究所を設立 南洋真珠事業を開始した。 その後1932年本社三菱合資会社は従来の本社直営を改め本社出資の下に南洋真珠株式会社 及び同社設立の下に鳳敦真珠株式会社(鳳敦真珠養殖研究所 改め)を設立し 、1935年には当時日本委任統治領のパラオのCoror 島にも養殖場を開設したが、母貝資源がほとんどなかったため遠く インドネシア Maluku州 Aru 諸島より母貝を搬入しなければならなかった。 その後第2次大戦の始る1941年まで続いた。 パラオ養殖場は開戦とともに養殖事業を中断、Buton 養殖場は開戦とともにオランダに接収されたとされている。

天然貝からの養殖真珠
     (Maria PEARL Co,.LTD. 1992)

戦後の南洋真珠養殖

戦後の海外真珠養殖事業はサウスシーパール(株)が1954年(昭29)にビルマ(現ミャンマー) Mergui 諸島 Jeymarukom島において真珠養殖業を開始 この海域は近くにシロチョウガイ採集漁場もあり古くから良質の天然真珠が多く産出されていた。1958年(昭33)には早くも真円真珠の生産に成功、事業も軌道に乗っていたが、1962年(昭37)ビルマ軍事クーデターによる政変で社会主義国家に移行、養殖場は没収 国営化され止む得ず撤退、その後同社はフィリピン Zamboanga に養殖事業を展開した。

翌年 (昭和30年)には海外真珠養殖の三原則が確立された。 オーストラリアでは1956年に日宝真珠がBroome 北東部オーガスタス島にて真珠養殖業を開始したが調査の結果大陸側近くにさらに好条件のブレックノック湾を見つけ移動した、その後この湾は社長 栗林氏の栗をとってクリベイと名付けけられた。

日系企業による海外真珠養殖の足跡

1954年(昭29)サウスシーパール(株) Jeymarukom Is., Mergui, ビルマ  にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1956年(昭31)日宝真珠(株)Kri bay, WestenAustralia, オーストラリア にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1960年(昭35)真珠貝採取(株)Friday Is.,North Queensland, オーストラリア にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1960年(昭35)覺田真珠(株)(Escape river)Turtle Head Is.,North Queensland,オーストラリア にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1961年(昭36)ユニオン真珠(株)Goody Is.,North Queensland,オーストラリア にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1961年(昭36)大洋漁業(株) Horn Is.,North Queensland,オーストラリア にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1962年(昭37)(株)日本真珠社 Kanchanaburi,タイ にて事業開始(天然母貝: イケチョウガイ)

1962年(昭37)ボルネオ真珠(株)Bohaidoronngu dabelu Bay Sabah マレーシア にて事業開始 (天然母貝: クロチョウガイ、マベ)

1963年(昭38)アラフラ真珠(株) Porteshinton bay,Northenterritory, オーストラリア にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1963年(昭38)南宝(株) Maripano bay,mindanao Is./dabao bay,samaru Is. フィリピン にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1963年(昭38)日信パール(株)[日信貿易 前身] Albany Is.,North Queensland,オーストラリア にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1965年(昭40)サウスシーパール(株)Zamboanga, Mindanao, フィリピン にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1966年(昭41)亜細亜真珠(株)Bichirefu Is manarai フィジー にて事業開始(天然母貝:マベ)

1966年(昭41)三洋開発(株) Pankerrai Is.,タイ にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1967年(昭42)日宝真珠(株) Portmoresby パプアニューギニア にて事業開始 (天然母貝: シロチョウガイ)

1968年(昭43)アラフラ真珠(株)Fatujuring Aru Is. Maluku Tenggara インドネシア に養殖場移転(天然母貝: シロチョウガイ)

1968年(昭43)旭光学商事(株)[旭光産業 前身]Dongobuna kassara スーダン にて事業開始(天然母貝: クロチョウガイ)

1970年(昭45)覺田真珠(株)(Escape river)Turtle Head Is.,Queensland,オーストラリアー(株)覺田濠洲真珠 に引継

1971年(昭46)真珠貝採取(株)Friday Is.,North Queensland, オーストラリア ー(株)日宝真珠(株) に引継

1972年(昭47) ボルネオ真珠(株)Bohaidoronngu dabelu Bay Sabah マレーシア ー光元貿易(株)に引継

1975年(昭50)兼井物産(株)Tabarfane Aru Is. Maluku Tenggara にて事業開始インドネシア にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1979年(昭54)サウスシーパール(株) Ko Nakha Noi, Phuket ,タイ にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1981年(昭56)光元貿易(株)Kendari Slawesi インドネシア にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1981年(昭56)ハルマヘラパール(株)Sorong Irianjayaインドネシア にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1981年(昭56)インドネシアパール(株)Telukbetung Lampung Tanjunkarang インドネシア にて事業開始(天然母貝/種苗母貝: シロチョウガイ)

1981年(昭56)日宝真珠(株)Friday Is.,North Queensland, オーストラリア ーカズパール に引継

1982年(昭57)旭光産業(株)Packey Is. Queensland オーストラリア にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1982年(昭57)浜口真珠(株)Port Darwin NT. オーストラリアにて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1982年(昭57)日信貿易(株) Banngai Luwk Slawesi Nusa Tengara インドネシア にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1984年(昭59)日濠パール(株)Sumbawa NTB.インドネシア にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1984年(昭59)浜口真珠(株)GourdonBay West オーストラリアにて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1985年(昭60)覺田濠洲真珠(株)(Escape river)Turtle Head Is North Queenslandオーストラリア ー九州真珠(有)に引継

1986年(昭61)日宝真珠(株)Mangarai Flores NTT.インドネシア にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1987年(昭62)旭光産業(株)Tangungkalang Lampung インドネシア にて事業開始(種苗母貝: シロチョウガイ)

1988年(昭63)古屋海外真珠(株)Lembada Flores NTT.T インドネシア にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1988年(昭63)光洋真珠(有)Beagale bay West オーストラリア にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1988年(昭63)(株)珠産 Penambulai Is. Aru Is. Maluku Tenggaraインドネシア にて事業開始(天然母貝:: シロチョウガイ)

1988年(昭63)ハルマヘラパール(株)Sorong Irianjayaインドネシア ー(株)覺田海外真珠に引継

1988年(昭63)日信貿易(株) Banngai Luwk Slawesi Nusa Tengara インドネシア ー(有)志摩商会に引継

1988年(昭63)田崎真珠(株) Papette Tahiti にて事業開始(母貝: クロチョウガイ)

1988年(昭63)旭光産業(株)Lombok NTB インドネシア にて事業開始(種苗母貝: シロチョウガイ)

1990年(平2)堀口真珠(有)Talisei Is. Sulawesi インドネシア にて事業開始(種苗母貝: シロチョウガイ)

1990年(平2)ケーアンドエス(株) Bitung Slawesi Utara インドネシア にて種苗生産事業開始(種苗母貝: シロチョウガイ)

1990年(平2)光元貿易(株)Kolono Slawesi Nusa Tengara インドネシア にて事業開始(種苗母貝: シロチョウガイ)

1990年(平2)日信貿易(株)Luwk Slawesi Slawesi Nusa Tengarインドネシア ー(有)志摩商会に引継

1991年(平3)日信貿易 (株)Badu Is. Queensland オーストラリア にて事業開始(天然母貝: シロチョウガイ)

1991年(平3)カラミアンパール(株)Bo. Bintuan Coron Palawanフィリピン にて事業開始(種苗母貝: シロチョウガイ)

1992年(平4)(有)志摩商会 Dobo Aru Is. Maluku インドネシア にて事業開始(種苗母貝: シロチョウガイ)

1992年(平4)堀口真珠(有)Pasokan (Togian) Is. Sulawesiインドネシア にて事業開始(種苗母貝: シロチョウガイ)

1993年(平5)金子真珠(有)Selam Is Malkuインドネシア にて事業開始(種苗母貝: シロチョウガイ)

1993年(平5)大月真珠(株)Kupang N.T.T.インドネシア にて事業開始(種苗母貝: シロチョウガイ)

1993年(平5)アラフラ真珠(株)Fatujuring Aru Is. Maluku Tenggara インドネシア ー金子真珠(株)に引継

1994年(平6)古屋海外真珠(株)Lembada Flores NTT.インドネシア ーマリアパール(株)に引継  同年 旭光産業(株)に引継 養殖場を Konga  Flores NTT へ移転 

1994年(平6)九州真珠(有)(Escape river)Turtle Head Is North Queensland オーストラリア ーマリアパール(株)に引継

1994年(平6)堀口真珠(有)Bangka Is. Sulawesiインドネシア にて事業開始(種苗母貝: シロチョウガイ)

1994年(平6)堀口真珠(有)Banack Is. (Pelen) Sulawesiインドネシア にて事業開始(種苗母貝: シロチョウガイ)

1995年(平7)堀口真珠(有)Talatako Is./Shiatsu Is. Sulawesiインドネシア にて事業開始(種苗母貝: シロチョウガイ)

1995年(平7)日信貿易 (株)Crocker Is. Darwin N.T.,オーストラリア にて事業開始(天然母貝/種苗母貝 シロチョウガイ)

1996年(平8)マリアパール(株)Lemito Gorontaro Sulawesi インドネシア にて事業開始(種苗母貝: シロチョウガイ)

1996年(平8)日信貿易 Crocker Is. Darwin N.T.,オーストラリア にて事業開始(天然母貝/種苗母貝 シロチョウガイ)

1996年(平8)海外真珠輸出水産業組合解散

1997年(平9)マリアパール(株)(Escape river)Turtle Head Is North Queenslandオーストラリア ー日信貿易(株)に引継

1998年(平10)旭光産業(株)MAGEPANDA Flores NTT.インドネシア にて事業開始(種苗母貝: シロチョウガイ)

事業開始年数は、実際の年代にあわせたので海外真珠組合に報告のあった年代とはややずれるものもあります。

事業撤退年数に関しては今回割愛させていただきました。

日本と海外との真珠養殖業は当初は役務契約というかたちで、その後は合弁会社を設立し 技術、資材等を提供し生産物を全量日本に輸入する方式をとった。 60年代80年代が最も盛んにおこなわれ、80年代後半からシロチョウガイも種苗生産が成功すると共に90年前半まで急速に発展した。生産量も10倍近くになりその後日本のバブル経済が崩壊するとほぼ同じに92年以降 徐々に低迷し完全現地企業化が進み製品のコストダウンが加速化、2000年まで達し現在までにいたっている。 また海外での事業はリスクが高いうえここ10年の間に南洋真珠自体の価格が下落したため海外での養殖事業を断念する企業が増加した。 著者が知る限りで現在の日系企業はフィリピンに1社、インドネシアに6社、オーストラリアに2社、ミャンマーに1社のみである。 また日本人技術者(真珠挿核技師)のみを派遣する会社や現地企業が日本人技術者を雇用するかたちで日本との関係を継続しているところもいくらかはある。


真珠養殖用母貝『人工種苗貝』

外縁がピンク色を呈している。シャンペンカラータイプ 稀産

(PT.BUDAYA MUTIARA in LOMBOK 2003)


資料が少ないため間違った箇所がありましたら御一報いただければ幸いです。 お問い合わせご質問はこちらまで、海外業務の際は返事が遅れますので御了承ください。




●真珠/南洋真珠関連の書籍

本屋さんにはほとんどおいてありません、直接出版社の問い合わせするか、ネットで探すか、自然科学誌専門の古本屋へ。

    
タイトル 分類 出版社 コメント
『真珠の神秘』 真珠総論 社団法人 日本真珠振興会 三輪 邦彦 著 1980
真珠に関しての基本的な情報が載っています。
『真珠の事典』 真珠総論 北隆館 松井 佳一 著1965 真珠養殖のバイブル
入手困難
『真珠の科学』 専門書 真珠新聞社 和田 浩爾 著1999 真珠のできる仕組みと見分け方
真珠の科学的分析。
『アラフラ海と私』 専門書 友信 孝 著
戦前戦後の真珠貝採取業の専門的資料、主に木曜等近辺の採貝資料
入手困難
『たくましき男たち 戦後の南洋真珠』 自叙伝 真珠新聞社 室井 忠六 著1994
南洋真珠養殖のパイオニア物語
『新入社員 ボスになる』 体験記 新風舎 岡本 深 著 2006
政変激動のインドネシアで真珠養殖技術者として従事した体験記
『真珠に泣いた真珠に笑った』 自叙伝 心泉社 城 功 著 2000
アコヤ真珠の原点である鳥羽の真珠会社社長物語
『木曜島の夜会』 小説 文春文庫 司馬 遼太郎 著 戦前戦後の真珠貝採集のため
濠洲に渡った潜水夫の物語、ほぼ事実にそってます。
『真珠物語』 入門書 裳華房 町井 昭 著
真珠について非常にわかりやすく説明してあります。
『真珠の博物誌』 入門書 研成社 松月 清郎 著2002 真珠総論
『虹の国のアルカダシ』 旅行記 刊行社 茂木 ふみか 著1990(木曜島に生きる人と眠る人)
80年代 茂木先生の濠洲旅行記
旅行途中に立ち寄った木曜島の様子が描かれています。
『真珠』 写真集 海洋企画社 白井 祥平 著1981  真珠の一般論から真珠貝の種類が網羅されています。写真がほとんど
英語/フランス語/スペイン語に訳してあります。
『淡水真珠』 入門書 八坂書房 山中 茉莉 著2003 淡水真珠専門、真珠資料の中では稀少本
写真が非常にきれいです。





参考文献

written by Singe John The Torres Strait

室井忠六 薯 「たくましき男たち 戦後の南洋真珠」真珠新聞社

「真珠の養殖」 社団法人 日本真珠振興会

「海外真珠輸出水産業組合のあゆみ」 海外真珠輸出水産業組合


     


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写真/資料協力:●旭光産業(株)●日信貿易(株)●マリアパール(株)●室井真珠(株)

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