執筆/仙台合同公証人役場

連載の趣旨等について


相談内容
仙台合同公証人役場

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エ266-8398 公証人 木原幹郎

エ222-8105 公証人 田子忠雄

エ221-6031 公証人 小川 修

エ261-0377 公証人 渋谷勇治

仙台市青葉区二日町16-15
武山興産 第2ビル2F


仙台合同公証人役場が入居しているビル


NO.56

若貴に学ぶ遺産争いを避ける方法

執筆者/公証人 田子忠雄

 梅雨時のうっとうしい昼下がり、大工仕事にあぶれた熊公が、半可通の隠居を訪ねた。

熊 若花田と貴花田のことでテレビや週刊誌が大騒ぎしていますが、何故あんな騒ぎになってんですかい。

隠居 亡くなった二子山親方が残した財産を巡ってもめてんだろネ。
熊 しかし、大変な財産だろうから、その一部でも貰えれば御の字じゃあねえのかね。

隠居 それはお前のような貧乏人の言うセリフだ。いくら金持ちでも、金はあればあるだけ良いんだヨ。

熊 そんなら、あっしのような財産が無い家のほうが後で揉めなくて良いと言うことですかい。
隠居 そうはいかねえ。無ければ無いで、その中から少しでも多くの分け前を取ろうというのが人情だ。

熊 そんなもんですかね。しかし、あの兄弟は元は仲が良かったんじゃねえんですか。

隠居 それは分からんが、仲が良くても金を前にすれば人柄が変わるし、それに、それぞれかみさんもいることだし。

熊 そうすると、女房達が後で糸を引いているということですかい。

隠居 そうとは言わないが、そういうこともあり得ると言ってんだ。

熊 なるほど。どうすればこんな騒ぎにならないで済んだんですかね。

隠居 二子山親方が遺言を作っておけば良かったんだよ。

熊 そう言えば録音テープがあるとか言ってますね。

隠居 そんなものは法的に何の効力もないよ。

熊 自分で遺言を書いとけば、良かったのかネ。

隠居 持ち出されたら終わりだろう。現に、年寄株の書類が無くなったそうじゃないか。
熊 じゃあ、どうすれば良かったんですかい。

隠居 公正証書で遺言を作っとけば良かったな。そうすれば、無くならないんだよ。


NO.55

遺言書があっても争いが起きる!?

執筆者/公証人 小川 修

 遺言書を作っておいても、将来、遺産争いの起きることがあると聞きました。遺産争いの起きない遺言の作り方を教えてください。

(60歳 男性) 

 自分の財産は、誰に残しても自由だと考えている人が多くいます。
 そういう人は、たとえば、妻や複数の子がいるのに、「遺産の全部を長男一人に相続させる」というような妻やほかの子を無視した遺言を作る可能性があります。こうした遺言を作っても、妻やほかの子が異議を申し立てなければ、何の争いも起きません。
 ところが、妻やほかの子には、法律上、「遺留分」を請求できるという権利が認められていますので、長男一人が遺産全部を相続した場合、妻やほかの子は、長男に対し「私の遺留分相当の遺産をよこしなさい」と請求できるのです。遺言を公正証書で作ったとしても、この種の争いは避けることができません。
 妻やほかの子が「遺留分」として長男にいくら請求できるかについては、法律で細かく決められていますが、妻と複数の子がいる場合、遺産の二分の一が「遺留分」請求の対象になると考えてください。あなたが、生前、妻や長男以外の子に「将来、遺留分の請求はしない」と約束させたとしても、そのような約束は、法律上無効なので、無意味です。
 したがって、将来、遺産争いの起きる可能性のない遺言を作りたいのであれば、「遺留分」を十分考慮に入れた遺言書を作らなければなりません。
 どのような内容の遺言であれば「遺留分」を十分考慮した遺言となるかは、あなた一人で悩まず、公証人に遠慮なく尋ねてください。


NO.54

長い遺言、短い遺言

執筆者/公証人 木原幹郎

 「私は保有する財産全部を妻A子に相続させる。A子を遺言執行者に指定する。」これで充分と思うのですが、どうして公証人は、ダラダラと長ったらしい遺言を作成するのですか?

(60歳 男性) 

 理論的には貴男のおっしゃるとおりです。もし弁護士が遺言執行者となり、裁判所の法廷において訴訟活動する段には、裁判官は、貴男から提案されている短い内容であっても、遺言として十分に足りていると認めて勝訴判決してくれるでしょう。お互いに法律専門家同士の間で活用される限りにおいては、こと細やかに記述しておかなくとも、遺言者の意図は的確に実現されます。
 けれども、遺言で定める内容を実現するため、いちいち弁護士に委任して訴訟沙汰に及ば
なければならない、というのでは、これまたナンセンスです。
 そもそも「全財産を妻に相続させる」という遺言内容を実現するための仕事に携わる「遺言執行者」に指定される者は、老妻たまには息子娘というのが殆どです。そして、遺言内容が実現されるべき主要な場面としては、先ず「預貯金の払戻」がありますが、遺言書を振りかざして預貯金の支払を求める老妻や息子娘側と、それに対応する側の銀行や郵便局の窓口は、いずれも法律に通じている訳ではありません。そのような関係者の間においては、当該遺
言書に、預金口座の開設されている銀行支店名、さらには銀行預金の口座番号や郵便貯金の記号番号などが具体的に表示され、且つ遺言執行者である老妻や息子娘に対し預貯金を払戻する権限を与えることを記述してある方が、銀行や郵便局の窓口も安心して払戻に応ずることができるはずです。そうすると、払戻手続も円滑に進むでしょうから、老妻や息子娘にとっては、その方が使い勝手が良いはずです。
 次に、土地建物所有権を相続させる場合についてですが、登記事務に関係する司法書士や法務局はいずれも法律専門家ですから、相続の対象である土地建物所有権を具体的に表示しなくとも円滑に手続を進めることができます。
 土地建物所有権を表示する目的は別のところにあります。土地建物所有権は遺産の中で高い価値の評価を受け、法定相続人間における関心も集中します。そこで、遺言者は、土地建物所有権を妻独りに相続させる意思であることを、他の法定相続人に対し確固として明示し、もって相続関係の安定を図ろうというものです。


NO.53

預貯金を子供たち数人に分けてやるときの遺言の書き方は?

執筆者/公証人 小西武彦

 自宅は長男に相続させ、次男と三男には、預貯金の中から少しずつ分けてやるような遺言をしたいと思っていますが、預貯金の分け方はどのように書けばよいのですか?

(73歳 女) お性) 

 預貯金の名義人が死亡したときに、しっかりした遺言が残されていないと、その払戻手続に大変苦労するということは、前号でも説明されていますが、実際に遺言に書く場合には、次のようにいくつかの書き方があります。
1. まず、「預貯金の中から、次男と三男に五百万円ずつ相続させる。」というように金額で書く方法があります。しかし、もしもあなたが亡くなったときに一千万円まで残っていなかったとしたら、かなりややこしくなりますので、それだけの預貯金を残せるというしっかりした自信のないときは、避けた方がよいと思います。
2. 次に、幾つかの銀行に預金の口座を作っておいて、「次男にはこの銀行のこの口座の預金を相続させ、三男にはこの銀行のこの口座の預金を相続させる。」という書き方があります。
 しかし、「ペイオフ解禁」のことなどからすると、遺言をした後で、別の銀行に預け替えすることも考えられ、そうなったら遺言の書き直しが必要となってしまいますので、そのようなことのないように、しっかりした銀行を選んでおく必要があります。
3. それから、金額とか預金口座で分けるのではなく、「将来自分が死亡した時点で預金取引が続いているすべての金融機関に実際に残っている預貯金 (その払戻金)の中から、次男に何割、三男に何割を相続させ、残りは長男に相続させる。」というように、「割合」で配分する書き方があります。これなら、預貯金の金額が減っても、また、預ける銀行が変わっても、遺言の書き直しをせずに済むので安心です。
4. 以上の書き方を適当に組み合わせて書くこともできます。
 もちろん、いずれの場合も、あなたの指定するとおりに分配する責任者、つまり遺言執行者として、しっかりした人(長男でも次男でもよい)を指定し、「その人の印鑑だけで預貯金の払戻し手続ができる。」という意味の文言も書いておくと、後の手続が、簡単に、かつ、確実にできるので安心なのです。


NO.52

故人の預貯金は降ろせなくなる

執筆者/公証人 田子忠雄

 誰かが亡くなって、葬式をしようとしたときに、銀行や郵便局が預・貯金の払戻しに応じなかったため苦労したという話を聞きますが、そんなことが本当にあるのでしょうか?

(73歳 男性) 

 それは、亡くなった人の預金や貯金を相続人が払い戻して葬式の費用に充てようとしたときの話だと思います。相続人だと称する人が、亡くなった人の通帳などを持参してその払戻しを請求した場合に、銀行や郵便局からすれば、直ぐにそれに応じられないのは当然のことだと思います。と言いますのは、本当にその人が相続したのかとか、相続人がその人だけなのかが、銀行などの担当者には分からないからです。うっかり払戻しに応じて、後で本当の相続人が現れたということでは困るわけです。それで、銀行などでは相続人全員の判が必要ですなどと言うのです。
 しかし、相続人間に争いがあったりして、預金を降ろすことに相続人全員の承諾が得られない場合があります。そのような状態では何時までも預金を払戻せず、その結果、緊急に必要な葬式の費用などを捻出するのに苦労することになるのです。このような事態が生じることを防ぐためには、公正証書の遺言で誰に預金債権を相続させるかについて明確にし、預金などの払戻し権限を有する遺言執行者を指定するのが最も良い方法です。
 自筆の遺言でも良いのではないかと思われるかも知れません。しかし、自筆の遺言は、亡くなった人が書いたものであることを証明しなければなりませんが、それは簡単なことではないのです。したがって、万全な方策とは言えません。公正証書であれば、これが本物か否かが問題になることはありません。公正証書で遺言を作成し、その中で預・貯金債券の相続人と遺言執行者を指定することをお勧めします。


NO.51

遺言の書き直し

執筆者/公証人 小川 修

 以前、長男に家屋敷を相続させるとの公正証書遺言を作りましたが、近くこの家屋敷を売却してマンションを購入したいと思っています。その場合、遺言の書き直しが必要ですか?

(70歳 男性) 

 まず、遺言で、長男に家屋敷を相続させると書いても、その家屋敷を長男に相続させなければならない義務はないので、これを他に売却しても構いません。
 次に、家屋敷を売却した場合、以前の遺言書を書き直す必要があるか否かは、その遺言書の内容によって異なります。
 第一に、その遺言が、「家屋敷を含む全財産を長男に相続させる」となっている場合には、あなたの財産がどのように変化(家屋敷が預金に変わる、家屋敷がマンションに変わるなど)しても、遺言の書き直しは不必要です。家屋敷であろうとマンションであろうと預金であろうと、あなたが亡くなったとき、あなた所有の財産は、この遺言によって長男に引き継がれることになります。
 第二に、その遺言が、「家屋敷は長男に、その他の財産はすべて二男に相続させる」となっている場合には、家屋敷を売ってしまえば、長男は何も相続を受けられないということになりますので、長男にも遺産の一部を相続させたいと思っているのであれば、新たな遺言を作る必要があります。
 一応、以上のように考えればよいのですが、実際に作られる遺言は、いろいろな事情や思いを反映させて作るため、内容が複雑になっている場合が多く、独り合点して誤った理解をしていると、せっかく遺言を作っても、あなたの望んだとおりに事が運ばないという結果になりかねません。ですから、遺言に関して心配なこと、気にかかることがあったら、公証人という専門家に、気軽に相談してください。


NO.50

内緒の遺言

執筆者/公証人 木原幹郎

 家屋敷を内妻に遺贈したいのですが、息子が強硬に反対して、実印と印鑑カードを隠してしまいました。入院中の身なので、改印届をすることも困難です。公正証書遺言することはできますか? 

(90歳 男性) 

 実印と印鑑登録証明書がなくとも、公正証書遺言することはできます。
 貴男が、公証人の面前で遺言公正証書に遺言者として書名捺印するためには、先ずもって証書上に「住所、職業、氏名、生年月日」により表示されている遺言者名義の本人であることを証明しなければなりません。
そのために、貴男は、証書に署名した後に実印を押捺し、それが実印であることを証明するために、印鑑登録証明書を提出するのです。したがって、それ以外の方法でもって、自分の身元を証明すれば良いわけです。最も身近な方法は、自動車運転免許証、パスポード、身障者手帳などの写真付の公的証明書です。そのような証明書を呈示すると、確実に遺言することができます。
 それでは、そのような証明書を持っていない人はどうすれば宜しいでしょうか? 健康保険証は、写真が付いておりませんから不十分です。もし書類だけで証明することができないとなれば、公証人の面前に証人を同行して、証書の遺言者欄に「住所○○○、氏名×××、生年月日●●●」と表示されている人物が貴男自身であると証言して貰い、それを公証人に信用してもらう外ありません。
 たとえば、公証人と既に面識のある弁護士や司法書士が貴男につき「××様本人であることに相違ない」と証言する、もしくは貴男の主治医が自動車運転免許証を呈示して主治医自身の身元を証明した後、貴男につき「私の患者の××様であることに相違ない」と証言する、あるいは、貴男の妹が自動車運転免許証を呈示して自分自身の身元を証明した後、貴男につき「私の兄の××様であることに相違ない」と証言するなど、要するに公証人が信用するに値する人に、確実な証言をしてくれるように頼むことです。


NO.49

自宅を夫から妻へ、妻から長男へという順番で
確実に引き継ぐ方法は?

執筆者/公証人 小西武彦

  私は、自宅は最終的には長男に継がせるつもりですが、私亡き後の妻の立場を考えると、やはり一旦は妻に継がせ、長男へは妻が死亡した後に継がせるようにしたいのですが、いい方法がありますか? 

(72歳 男性) 

 まずは、あなたが「自宅は妻に相続させる。」という遺言をしておくとよいのです。その遺言があれば、奥さんの印鑑だけで自宅の名義変更の手続がで きて安心だからです。事故などにより、あなたと奥さんが同時に死亡したり、奥さんがあなたより先に死亡することもないわけではないので、気になるようでし たら、「もしもそのようなことがあったときは、自宅は長男に相続させる。」という意味の予備的な文言も付け加えておけばよいのです。
 次に、右のような遺言をした後で、実際にはあなたが先に亡くなって奥さんが自宅を継いだ場合に、その後奥さんから長男に自宅を確実に継がせる方法ですが、やはり、奥さんも「自宅は長男に相続させる。」という遺言をしておくのが最も確実な方法となります。
 奥さんがそのような遺言をする時期ですが、奥さんは、あなたがお元気で自宅はまだあなたの名義のままの時点でも、例えば、先ほどのあなたの遺言と同時にでも「将来自宅が自分の名義になっていたら、自宅は長男に相続させる。」という趣旨の遺言をすることもできるのです。
 あなたのお元気なうちに奥さんもそのような遺言をしておけば、あなたたち夫婦も長男も安心できるわけですから、その方法をお勧めします。その場合の文章は後で法務局でちゃんと受け付けてもらえるようにしっかり書いておく必要がありますので、やはり専門家である公証人に書いてもらった方が安心です。
 なお、預貯金は使いきるつもりであっても、どうしても多少なりとも残ってしまうのが普通なので、遺言の中に自宅のことしか書かれていない場合には、後 で、残った預貯金の払戻し手続のときに大変面倒なことになってしまいます。ですから、自宅のことだけでなく、預貯金が残った場合の配分のことなども含めた遺言にしておくことも大切なことです。


NO.48

呆けに備える財産管理と相続

執筆者/公証人 田子忠雄

  呆けたときに備えて、どうしておけば良いか教えてください。

(72歳 男性) 

 呆けは、誰にでも来る可能性があります。呆けていては、財産を適切に管理することはできないでしょう。また、家族などに自分の思うとおりに財産を残してやることもできないだろうと思います。折角苦労して蓄えた財産なのに、残念なことです。
 そこで、呆けに備えてどうすれば良いかについて、説明します。
 まず、財産の管理についてですが、任意後見制度というものがあります。これは、呆けに備えて、信頼できる人との間で財産の管理や身上監護などを内容とする後見契約を予め結ぶ制度です。この場合、財産管理などをする人を任意後見人と言います。
 この契約を結んでおきますと、貴方が呆けた場合には、裁判所が任意後見監督人を選任しますので、任意後見人は、その監督を受けながら財産を管理したり、身上監護をしたりします。何より安心なのは、貴方の信頼できる人を後見人にすることができ、しかも後見人が後見監督人の監督を受けながらその職務を行うことです。任意後見契約は、公正証書で結ばなければなりません。手数料は2万4千円ぐらいです。
 ◇  ◇  ◇  ◇
 次に、相続について説明します。自分の財産を、思ったとおりに次の世代に残すには、遺言を書くのが最も良い方法であることは、これまでに何度も説明したとおりです。しかし、呆け状態になってしまうと、そもそも遺言を作る能力があるかが問題です。辛うじてその能力があるとしても、その判断が正しくできるかは更に疑問です。気の強い人の言いなりになったり、考慮しなければならない事情を忘れたりして、不適切な遺言を作ってしまう可能性が多分にあります。元気なときであればその心配はないでしょう。呆ける前の判断力の十分なときに遺言を作るのが、なにより大事なことです。


NO.47

屋敷を嫁に取られない方法は!?

執筆者/公証人 小川 修

 10年前に夫を亡くし、以後、長男夫婦と同居していますが、嫁との折り合いが悪く、悩んでいます。 同居している家は長男名義で、屋敷は私名義なので、私の死後、屋敷を長男に継がせたいのですが、そうすると長男が亡くなった場合、屋敷を嫁に取られてしまうのではないかと心配です。嫁に取られない方法を教えて下さい。

(80歳 女性) 

 公証人は、公正証書遺言の作成を依頼されれば、これを作成しなければならないし、また、その遺言の内容は、依頼者の希望に沿ったものでなければなりません。遺言作成の依頼者は、さまざまな悩みを持っており、公証人は依頼者と面談して、いろいろ助言しながら、その依頼者の望み通りの内容の遺言書を作成するよう心掛けています。
 ご質問のような相談も、度々受けますし、そのほか、いかに嫁が自分をないがしろにするかなどということを、長々と聞かされることも少なくありません。あなたの希望に添う遺言としては、たとえば「屋敷を長男に相続させる。ただし、長男が死亡した際は、これを嫁以外の者に相続させること」という内容が考えられます。
 しかし、このような遺言書を作ってみても、実際のところ、どれだけの効力を持つのか、甚だ疑問です。他人の私からみれば、「なんという意地の悪い遺言だなあ」という印象しか持てません。あなたが嫁の立場だったら、姑が亡くなった後も、きっと姑を恨み続けると思います。遺言は、残された人に対する「愛の伝言」と言われています。決して、恨みを残すようなものであってはならないと思います。自分の死後のことは、成り行きにまかせよう、と思えば、あなたの悩みも軽くなると思います。


NO.46

第三者に対し遺贈の方法を委託する遺言

執筆者/公証人 木原幹郎

 長男が幼児三人を残して失踪しました。私は、家屋敷など財産全部をその孫の一人に継がせたいのですが、幼過ぎるためその内の誰にするかを決められません。どうすれば宜しいでしょうか? 

(75歳 女性) 

 遺産を子孫に承継させるにあたり、子を飛び越えて、直接、孫に遺贈することもできます。通例、遺言者は、財産全部を遺言者の長男Aの長男であるBに遺贈する、などというように定めています。けれども、貴女の場合、遺贈する相手方候補者である孫達が幼すぎるため、将来の生活設計を立てられず、三人のうち誰に相続させたら良いのか見当がつかないというのですからその方式はとれません。財産を取得させるための具体的内容を、貴女の死後においても決定することができるように、決定する時期を延長する措置を講ずる必要があります。
 その方法は、貴女が最も信頼しており、且つ貴女の希望するところを充分に理解してそれを実現してくれる第三者に対し、「遺贈を受ける人及び方法を定めることを委託する」旨の遺言をすることです。
 たとえば、貴女の弟C若しくは妹Dに対し、その仕事を委託したとしましょう。母の遺言に基づいて、叔父様や叔母様が遺贈を受ける人と方法を定めるのであれば、失踪した長男の弟姉妹も文句をつけ難いでしょう。あるいは、夫に失踪されて女の細腕だけで孫の養育監護に努めている、長男の嫁であり孫達の母である人に対し、貴女から孫に対する遺贈につき具体的な方法を定めさせる、という方式も良さそうです。これは孫の福祉に適するでしょう。
 選択の範囲を広く委託することもできます。たとえば、財産全部を一人の孫に取得させる措置から、逆に三人の孫全員が、何らかの分配に与れるように措置するまでの広い範囲内で最も相当であると考える内容をもって決定して下さい、と委託しても宜しいのです。


NO.45

遺言を作成するときの証人と手数料は?

執筆者/公証人 小西武彦

 遺 遺言を公正証書で作成する場合は、証人二人の立ち会いが必要だとのことですが、適当な人がいないときはどうすればよいのですか?  また、手数料はどのくらいかかりますか? 

(72歳 女性) 

 遺言は大事な書類なので、二人以上の証人が作成の場に立ち合うことが必要となっています。相続人やその家族は証人にはなれませんので、遠縁の人や知人と一緒に来てもらえばよいのですが、適当な人がいない場合は、公証人の方で、絶対に口の堅い、しっかりした人を紹介することができますので、心配ありません(若干のお礼を支払っていただきますが)。
 手数料は、相続する財産の額(不動産の評価額と預貯金など)と、その財産を分ける相手の人数によって違うのですが、大体いくらくらいになるのかが分かるように、一覧表(上記)を作成してみましたので、参考にしてください。


NO.44

遺言状は前向きな人生をバックアップ

執筆者/公証人 田子忠雄

 遺言状は、「遺書」と同じようなもので、縁起が良くないような気がするのですが。

(72歳 男性) 

 遺書といえば、東京オリンピックのマラソンで3位になった円谷幸吉氏の、「父上様、母上様、三日とろろおいしゅうございました」で始まり、「幸吉はもうすっかり疲れ切ってしまって走れません」などで終わる、哀切極まりない文章が良く知られているところです。
 似たようなものに、辞世の句があります。豊臣秀吉の作といわれる、「露と置き露と消えぬる我が身かな なにわのことは夢のまた夢」や、浅野内匠頭の「風さそう 花よりもなお我はまた 春の名残をいかにとかせん」などが有名です。
 これらの遺書や、辞世の句に共通しているのは、死が迫っているときに作られ、書かれている内容が残された人への感謝、人生を振り返っての想い、或は未練、死に臨んでの絶望感などであり、いずれにしても後ろ向きであって、建設的なものでない点です。確かに元気なときには書きたくないでしょう。
 これに対して遺言状は、将来遺産を巡って肉親の間で無用の紛争が起こるのを未然に防止するために作るものです。
 また、残された家族、特に妻の老後の生活を守ろうとして作成されることもあります。そのため、遺言状は「愛のメッセージ」とか「最後のラブレター」などと呼ばれることがあるのですが、いずれにしても前向きであり、積極的なものです。
 ですから遺言状は、満足できる内容のものが作れるよう、判断力が健全なときに作成するのが望ましいのです。そして以後は、後顧の憂いがなくなり、精神の安らぎを得たことで一層元気で長生きするというのが、遺言作成における理想的な姿です。
 このように遺言状は、死が差し迫ったときに作る縁起の悪いものとはおよそ無縁のものです。


NO.43

不動産を売却すると、遺言書も書き直すの?

執筆者/公証人 小川 修

 以前作った公正証書遺言の中に書いてある不動産を、他に売却したいと思っています。その場合、遺言書を作り直す必要がありますか。

(70歳 男性) 

 遺言書を作り直す必要があるか否かは、遺言書の内容によります。
 現在所有している特定の不動産を、何人かいる相続人中の特定の相続人に相続させる内容の遺言であれば、遺言書の中に、不動産の所在地等を特定して書かなければならず、その不動産を売却して、その相続人に別の不動産を残してやりたいときには、当然、遺言書の作り直しが必要となります。
 次に、遺言書中に、不動産の所在地等が特定して書かれてあったとしても、遺言書が「その不動産を含む全財産」を特定の相続人に相続させるとなっていれば、いくらその財産の内容が変化しても、遺言書を作り直す必要はないのです。
 よく、妻に全財産を相続させたいという人から、遺言書の中に、不動産の所在地等をきちんと書いておいて欲しいと頼まれることがあります。
 しかし、全財産を特定の人に相続させるといったような場合には、単に「私の所有する全財産を○○に相続させる」という記載がよいと思います。この記載方法で、将来、困ることは何もありませんし、不動産を買い替えたときにも、遺言書の記載内容で心配することもないからです。
 つまり、あなたが遺言書を作り直す必要があるか、ないかは、遺言書の内容によって異なりますので、心配であれば、公証人にお訊ねください。 
 なお、遺言書は、一度作ってしまえば、それを、自ら変更、取り消しをしない限り、何年たっても効力がなくなるということはありませんので、体や頭がハッキリしているうちに遺言書を作っておくことをお勧めいたします。


NO.42

自分の所有財産になっていない財産の処分

執筆者/公証人 木原幹郎

 実家の家屋敷は、亡父所有名義のままですが、これを実家を継いでいる甥に譲りたいと思います。また、夫も遺言を作成して現住居の家屋敷を私にくれると言っておりますが、私はこれを私夫婦の面倒を見てくれている二女に相続させたいと思います。 

(70歳 女性)

 貴女の所有名義になっていない資産についても、遺言で相続方法を定めることができます。
 始めのご質問ですが、亡父名義の家屋敷、つまり遺産分割手続が済んでいない亡父の相続財産に対する貴女の相続分について、これを甥に譲渡する方法は、先ず生前に甥に対し相続分を贈与する契約を締結し、それを公正証書に作成して確定する方法があります。この方法は、譲渡が完成しますから、以後、変更はできません。他方、未だ意思が完全に固まっているわけでなく、且つ譲受けの相手方である甥に対しても自分の生存中は内緒にして、死後に譲渡したい意向であるならば、遺言で定めるのが良策です。そして、甥は、固有の相続分に貴女から譲り受けた相続分を加えた増加後の相続分に基づいて、亡父の遺産分割協議に参加することになります。
 次のご質問ですが、将来、相続が開始されるまでに取得することが予想される財産権の処分に関し遺言することも、差し支えありません。未だ現存していない資産、たとえば、ある土地の地上に建築する予定の建物というのであっても、貴女が生前に建築工事を完成しておけば、有効に働きます。けれども、たとえば、土地の東側三百平米をA男に、西半分二百平米をB女に相続させたい場合には、あらかじめ○○番と××番の各土地に分筆し、Aに対し○○番の土地をBに対し××番の土地を譲渡する旨の遺言をした方がよろしいのです。そうしないと、貴女の死後に、二筆の土地に分筆する手続につきAB間に合意が成立しない限り、ABそれぞれに所有権移転登記することができない事態に陥ります。


NO.41

夫婦相互遺言とは?

執筆者/公証人 小西武彦

 最近テレビで「夫婦の相互遺言」という言葉を聞いたのですが、どういう意味ですか?  

(72歳 女性)

 それは、夫婦がお互いに、「自分が先に死亡したら、自分の全財産は残った相手(配偶者)に相続させる」という遺言をすることです。最近そのような遺言をする夫婦が増えているのです。
 特に、夫婦の間に子供がいない場合は、どちらかが先に死亡したときは、相続人は残った妻または夫だけではなく、死亡した人の兄弟姉妹(その中に死亡した人がいればその子供たちも含む)も法定相続人となってしまい、残された妻または夫は後の手続きに大変苦労することになってしまいます。ところが、夫婦がそろって先ほどのような相互遺言をしておけば、残された妻または夫の印鑑だけで後の手続きが全部出来るので安心なのです。なお、夫婦の兄弟姉妹には遺留分はありませんから、右のような遺言さえあれば夫婦の遺産は全部確実に残った方の人のものとなります。
 夫婦の間に子供がいる場合でも、どちらかが先に死亡した場合に、残される妻または夫が安心できるようにするために、夫婦相互遺言をする人も増えつつあります。その場合は、子供たちの遺留分の問題がありますが、両親がそのような遺言をしたときに遺留分のことを言い出す子供は普通はいませんので、気にしなくてもよいと思います。
 なお、いずれは、夫婦の両方ともがいなくなりますので、その場合のことも考えて、「もし夫婦が同時に死亡した場合、もしくは、どちらかが先に死亡し、自分が死亡したときには夫婦が両方ともいない状態になった場合には、自分たちの財産は誰々に相続させる」ということも合わせて書いておくことができます。 その点がまだ決まっていない場合は、とりあえず相互遺言をして、夫婦のどちらかにいつ何があっても安心できるようにしておき、右の点は後で決めて追加するということでもかまいません。


NO.40

書いた遺言に束縛されないの?

執筆者/公証人 田子忠雄

 遺言を、早く作るのも良いのですが、後で財産を処分できなくなったり、事情で変わったときに困ったりしませんか? 

(67歳 男性)

 そのようなことはありません。というのは、遺言は自分の財産を死後どうするかについての独り言みたいなもので、誰かと約束をしたというものではないからです。
 ですから、相続させることにした不動産を売却しても、預金や貯金を全部払い戻して使ってしまっても、一向にかまわないのです。
 遺言の内容を変更することも自由です。たとえば、長男に相続させるとした不動産を、次男に相続させると変更することもできます。複数の遺言の内容が矛盾する場合は、後から書いた遺言が有効になります。
 「身の回りの世話を良くしてくれる人に財産を全部相続させる」との遺言を作ったところ、これで遺産が我が物になると勘違いした相続人が態度を豹変させて遺言者を粗末に扱うようになり、遺言者を困惑させることがあります。
 そのようなときは悩んでいないで、新しく遺言状を作り、相続人を変えれば良いのです。
 幸いにして、遺言状作成後に財産が増えたときは、新たに遺言状を作らなければならない場合と、その必要がない場合があります。 たとえば、ある相続人に「全財産を相続させる」とか、「それ以外の財産を全て相続させる」との遺言があるときは、その後に増えた財産もその人に相続させたいのであれば、遺言状を書き直す必要はありません。
 また、複数の相続人の相続分を、均等割にしたとか、持分で決めた場合で、新財産も同じように分けたい場合も同様です。それ以外の場合は、遺言の追加をしなければなりません。
 いずれにしても、一旦遺言を書いてしまえば、その後の変化に対応できなくなるというようなことではないのです。思い立ったが吉日です。先々の不安を解消するために、早めに遺言状を作りましょう。


NO.39